乳がん症例数日本一 がん研有明病院 乳房再建外科医のブログ -5ページ目
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乳がんの治療法 温存VS全摘②

当院の温存率は2006年にピークを迎え約70%でしたが、2014年は40%となっています。
年間1000例と単純計算すると、700例温存手術をしていたはずが、400例になったということですが、なぜ300例も温存が減ってしまったのか❓❓

その理由の一つには2006年から形成外科の乳房再建が始まったからです。
乳房再建は温存症例にはできないため、全摘が前提となります。
そうなると、無理に大きく取って温存していた症例は形が悪くなる事が分かっているので、どうせなら全摘にして、再建をしようという流れが当院の方針になりました。

当時は保険適応もなく、自費診療で100万円もかかっていましたが、それでも年々再建希望患者が増え、保険適応前の2012年で年間150例以上のインプラント再建を行っていました。

2013年は一部保険適応がスタートすることがわかり、一旦予約をしていた患者さんにわざわざ自費で払う必要もなく手術中止を勧めたため、症例は一気に減りましたが、2014年の保険適応からは年間200例を越えるインプラント再建を行い、現在は年間300例近いペースとなっております。

乳がん手術を受ける患者さんにとって、温存にするのか、全摘で再建しないのか、全摘で再建するのか、ここらへんが悩みどころだと思います。

再建するのにもメリット、デメリットがありますので、そのへんは次の回に。

③に続く


乳がんの治療法 温存VS全摘①

現在女性のがん罹患率第1位となってしまった乳がんですが、日本では14~15人に一人が乳がんになると言われています。欧米では8人に一人程度なのですが、今後欧米化が進んでいくと言われています。

乳がんの外科的治療法には温存と言われる部分切除術と全摘といわれる乳房切除術があります。
治療法の選択は乳腺外科の先生方が決定してくれますので、ここではあまり触れないようにします。
温存というと聞こえは良いですが、適応を間違えるととんでもない事になります。

一般的に乳房全体の1/4~1/5以上が欠損する場合は全摘の方が良いと言われており、それは無理に温存をすると変形が高度になるからです。

乳がん手術は一時、この温存手術をどれだけやってるか、という率だけで素晴らしい病院だという評価を下していました。
「うちは温存率90%以上です❗️」
なんて病院が優れてるなどと雑誌で取り沙汰されていたのですが、高度な変形を起こす症例を除いて温存を行うと、必ず40~60%くらいに収束するんですね。

なので90%なんてのは論外で、きちんとやってると40~60%に落ち着くため、評価が単一では難しい事が分かります。
さらに最近は再建ができるかどうかも大きく関わるので、乳腺外科と形成外科の連携も乳がん治療の質に関わる大きな要因と考えられています。

②につづく


ブログスタート

本日より乳房再建についてのブログをスタートしました。
少し専門的な内容が多くなり解りづらいかもしれませんが、皆様よろしくお願いします。


私の簡単な経歴ですが、
がん研有明病院の形成外科に勤務している前田拓摩、10年目の形成外科専門医です。
美容外科医としても様々活動しておりますが、基本はがん専門病院にて再建をメインに行っております。

がん研有明病院の形成外科ページ


当院では2005年12月より乳房再建を保険適応に先駆けて自費でスタートしており、2013年7月のアナトミカルタイプのティッシュエキスパンダー(TE)挿入術、2014年1月のアナトミカルタイプのシリコンブレストインプラント(SBI)挿入術が保険適応となった時点でTE:1000例、SBI:700例の症例を経験しておりました。

簡単に言うと8年くらいフライング気味にスタートし、保険適応の時にはインプラントを用いた乳房再建のシステムが確立していたということです。
そのため現在、教育機関として毎月3~6名のドクターにアカデミアという講習セミナーを行い、講演などを行っております。


ブログテーマとしては乳房再建のこと、自分の日常や、思った事など綴っていこうかと思っております。


実はアメブロは何年も前に登録はしていたんですが、一件も書いてなかったんですよね笑
数年越しの復活でしたが、IDもパスワードも問題なく使用できました。
では頑張って更新していこうと思いますので応援よろしくです。




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