乳がん症例数日本一 がん研有明病院 乳房再建外科医のブログ -2ページ目

シリコンインプラントによる再建と自家組織による再建③ 〜若い人の再建に適しているのは❓〜

再建方法ごとのメリットデメリットは以下の通り。


①シリコン
入院期間:3泊4日
手術時間:2~3時間+麻酔時間の1時間
術後安静:術当日
次回外来:手術一週間後


メリット
身体を傷付けずに乳房を作る事ができる
短時間で手術が終わり身体の負担が少ない
手術の次の日には自由に歩け、その次の日に退院できるため拘束期間が短い

デメリット
人工物であるため感染のリスクが伴う
違和感を感じる人がいる
再建乳房が冷たく感じる方がいる
再建乳房が動かない、ゆれない
下垂感は出せない
上胸部の陥凹は残ったまま



②自家組織(腹部の穿通枝皮弁の場合)
入院期間:約2週間(最短で8日で帰られた方がいます)
手術時間:10時間
術後安静:術後3日ベッド上安静、その後トイレ歩行、車椅子、歩行器の期間を経て、一週間程度で独歩
次回外来:退院後1週間(術後3週間)


メリット
自分の身体の一部が乳房になる(人工物を用いない)
下垂感が出せる
感染の心配が殆どない
腹部の脂肪を取るため身体が細くなる
温かい
揺れる


デメリット
手術時間が長く身体の負担が大きい
入院期間が長く仕事をしている人はなかなか時間が作れない
腹部に大きな傷ができる


さてここで若年者の乳房再建について考えてみたいと思います。
我々が乳房再建手術をする上で、若年者と判断するのは40歳を境にしています。


一般に若年者の乳がん患者さんは乳房再建の方法としてどの再建方法を選ぶのか❓


やはり身体に傷を付けないシリコンインプラントを選択する場合が多いです。


我々も現在では40歳以下の患者さんには自動的にシリコンインプラントでの再建、という風に説明しています。


その理由として、
1.妊娠・出産の可能性がある
2.対側の乳がんになる可能性が40歳以上の患者さんより高い可能性がある


解説すると、
1についてはやはり傷が妊娠に影響します。
筋肉を使わない穿通枝皮弁でも、腹直筋にダメージはありますのでヘルニアや腹直筋の菲薄化などを発生する可能性もあり、オススメはできません。

実際に20代で腹部の自家組織再建を行い出産された方もいるため不可能ではありませんが、今現在我々は勧めていない方針です。


2.このように曖昧に、「可能性がある」と表記したのは理由があり、術後10年のフォローアップで若年者も40歳以上の方も対側に発生する率は変わらないという文献が出ております。
しかし、仮に30歳と60歳で比較した時、10年後までのフォローアップでは発生率が変わらないとすれば、40歳と70歳までは問題ありません。

ではその後は、、、❓
平均寿命の86歳まで生きたとして、残り46年と16年、この間の発生率はまだ研究はまだされていませんから、やはり若年者の再建にはシリコンインプラントが適していると考えられます。

両側を再建する場合、同じ素材で再建するのが形態上優れています。
シリコンインプラントなら両側再建が可能ですが、腹部皮弁は二回採取できないため、同じ素材での再建が不可能になります。

授乳期には左右差がかなり出てしまうことも頭に入れておかなければなりません。





シリコンインプラントによる再建と自家組織による再建②

先日のブログでシリコンと自家組織の特徴を示しましたが、以下の通りです。


①シリコン
入院期間:3泊4日
手術時間:2~3時間+麻酔時間の1時間
術後安静:術当日
次回外来:手術一週間後


メリット
身体を傷付けずに乳房を作る事ができる
短時間で手術が終わり身体の負担が少ない
手術の次の日には自由に歩け、その次の日に退院できるため拘束期間が短い

デメリット
人工物であるため感染のリスクが伴う
違和感を感じる人がいる
再建乳房が冷たく感じる方がいる
再建乳房が動かない、ゆれない
下垂感は出せない
上胸部の陥凹は残ったまま




②自家組織(腹部の穿通枝皮弁の場合)
入院期間:約2週間(最短で8日で帰られた方がいます)
手術時間:10時間
術後安静:術後3日ベッド上安静、その後トイレ歩行、車椅子、歩行器の期間を経て、一週間程度で独歩
次回外来:退院後1週間(術後3週間)


メリット
自分の身体の一部が乳房になる(人工物を用いない)
下垂感が出せる
感染の心配が殆どない
腹部の脂肪を取るため身体が細くなる
温かい
揺れる


デメリット
手術時間が長く身体の負担が大きい
入院期間が長く仕事をしている人はなかなか時間が作れない
腹部に大きな傷ができる



実際には、仕事をしてる方は、「仕事を休む時間が取れなくて、、、」とか、子供さんが小さい方は「家を長期に空けることができないので、、、」などの理由でシリコンインプラントによる再建を選択する人が多いです。

逆に時間のある方のうち、大きな胸の方やティッシュエキスパンダーの挿入時に違和感が強い方は自家組織を選ぶケースが多くなります。



メリットデメリットではなく、純粋に形を考えた場合、シリコンインプラントではどうしても下垂が作れないため、大きくて下垂のある方は自家組織に興味を示す事が多いです。

逆に小ぶりな方は殆どがシリコンインプラントを選択します。



つまり、形をどこまで再現したいか❓という患者さんのこだわりによっても術式選択は変わってきます。
やはりシリコンインプラントは固く、揺れませんから、温かくて柔らかい自家組織は形態の面で軍配が上がります。


そして上胸部の陥凹をしっかり埋めたい方は自家組織を選ぶ人が多いです。
ここはシリコンで再建できないところなので、、、しかしこの陥凹を改善させる方法として、シリコンインプラントで再建した後に脂肪注入をするというテクニックがありますが、その話はまたいつか。

シリコンインプラントによる再建と自家組織による再建①

お久しぶりのブログです。

このブログを立ち上げてからもう少しで一年が経とうとしていますが、記事が10個以下、、、


気ままに上げていきますのでご容赦下さい笑



がん研有明病院形成外科の手術のうち乳房再建(シリコンインプラントまたは自家組織)の件数はおおよそ300例を超える数なのですが、シリコンインプラントと自家組織の割合が、95:5くらいに偏っています。
ひたすらシリコンをやっている施設なんですね。
自家組織も20数例やっているため、隔週ペースなので決して少なくないのですが、シリコンが多すぎてその割合に差があります。



再建にシリコンを選ぶのか、自家組織を選ぶのか、どうやって選んだら良いのかという質問をされるのでそれぞれのメリット、デメリットを話したいと思います。


①シリコン
入院期間:3泊4日
手術時間:2~3時間+麻酔時間の1時間
術後安静:術当日
次回外来:手術一週間後


メリット
身体を傷付けずに乳房を作る事ができる
短時間で手術が終わり身体の負担が少ない
手術の次の日には自由に歩け、その次の日に退院できるため拘束期間が短い

デメリット
人工物であるため感染のリスクが伴う
違和感を感じる人がいる
再建乳房が冷たい
再建乳房が動かない、ゆれない
下垂感は出せない
上胸部の陥凹は残ったまま




②自家組織(腹部の穿通枝皮弁の場合)
入院期間:約2週間(最短で8日で帰られた方がいます)
手術時間:10時間
術後安静:術後3日ベッド上安静、その後トイレ歩行、車椅子、歩行器の期間を経て、一週間程度で独歩
次回外来:退院後1週間(術後3週間)


メリット
自分の身体の一部が乳房になる(人工物を用いない)
下垂感が出せる
感染の心配が殆どない
腹部の脂肪を取るため身体が細くなる
温かい
揺れる


デメリット
手術時間が長く身体の負担が大きい
入院期間が長く仕事をしている人はなかなか時間が作れない
腹部に大きな傷ができる




メリットデメリットだけで話すと、簡単に終わる手術を求めるか、大変だけれども自分の身体の一部分で乳房を作るか、ですね。


次のブログでは形や年齢などでの適応について触れたいと思います。