再建後に悩む患者さんがいるという事実
かなり久しぶりのブログになってしまいました。
完全に努力不足です。
3月下旬より4月の学会のシンポジウム準備に追われ、終わったと思いきや教育用の手術動画の作成、教科書作成、その他国内外への出張と中々手が回らず今日に至ってしまいました。。。
そうです、言い訳です汗
とまぁ毎日手術に明け暮れているのですが、当科では全身麻酔の自科手術枠が週に10枠あります。まさに月曜日から金曜日まで一日二件ずつ、、、そのほとんどが乳房再建。
月曜日は自家組織再建に使うので一日枠で手術をしています。
形成外科の手術枠だけで週10件、1年で50週として一日一件長い手術だけの日もあるので大体自科手術で年間全身麻酔で400件程度。これは医療者だと分かると思いますが結構な数です💧
さらに形成外科は他科の手術のお手伝いをするいわば
「外科医のための外科」
なので、他科の先生が腫瘍を取った後に創部が閉じないとなると、突然呼ばれて近くの組織から傷を閉じるために皮弁を挙げたり、創閉鎖の一助になる手術を加えるんです。そのため1年間にこの倍くらい800例以上の全身麻酔の手術をやってるんですね。。。
昨日は一日で9件の再建手術を担当しヘロヘロ、、、最後は外科の患者さんが臀部組織の広範切除で閉創できないということで臀筋皮弁を用いた被覆を行ったのですが、腫瘍切除が大変で、呼ばれたのは何と24時、、、それから一時間半程度で我々の担当を終え、さらにその後外科の先生方は仕上げの手術に向かうのであります。本当御苦労様です。
先に帰って申し訳ありません。終わるの朝方なんだろうなー、、、
とまぁ本題はここから。
先日他院からの要請で、修正困難症例のお手伝いに行ってきました。
とある有名クリニックで再建された患者さん、、、しかしこれ以上の修正はできないとのことで路頭に迷うところだったのですが、とある先生を頼って手術にこぎつけたと。
そのとある先生は当院の勉強会にも参加したことのある先生で、あまりに難しい症例のためお手伝いに来て欲しいと自分に声がかかりました。
患者さんにお会いしたところ、とても気さくな明るい方でした。色々お話をしていくと、下着が着けられなくて困ってます、温泉にも行きたいです、と少しずつその方の再建のマイナス面が見えてきました。
診察の中で、人工物には限界があること、下垂の程度は健康な側ほどできない、左右の差が少し出るかもしれない、と説明していくと、うんうんと一生懸命聞いてくれてます。
自分もそれに応えて、すごく大変なので時間がかかるんです。普段の僕の手術は三時間くらいかけて形を整えるので、と説明すると何時間かかっても満足できる形にしたい、と本音が聞けたのでトコトンまで手術に拘ってやらせてもらいました。
術中は主治医の先生と話し合いながら、メインは自分にさせてもらい、これ以上の修正はできないと思えるところまでやりきり、最後の閉創まで担当させてもらいました。ご配慮頂きありがとうございます。
終わったあと、自分は新幹線の時間もあったので早々に帰ったのですが、患者さんから預かっていたというお土産とお手紙を頂きました。
内容は、
「どうにもならないとずっと悩んでいましたが、この日を迎えられた事に感謝しております」との事でした。
自分はやはり考えさせられるものがありました。
再建というポジティブな内容の手術にも関わらず、その結果如何によってはさらなる悩みを生み出してしまうんだと。
先日コメントを頂いた方も、再建したタイミングや方法で、思っていたゴールと違う結果になってしまったという内容がありました。
乳房再建は患者さんの納得ありきの手術であり、これは美容手術に近い部分でもあります。
毎日のルーチンワークになっている乳房再建ですが、改めて患者さんの声はもちろんのこと、その奥にある本音を引き出せる医療を行わないと、もしかしたら自分も患者さんに悩みを与えてしまっている側になるんじゃないかと改めて考えさせられました。
現在当院では当院の乳腺外科医が手術した患者さんしか担当しないという原則があり、それでも10カ月待ちという状況です。
しかし全国にはこのような患者さんがたくさんいるんだろうなぁ、、、と考えると、いつかその様に悩んでいる方が手術できる場所を作れたらいいなぁと思いました。
乳房再建研究所を設立された武石明精先生も単一施設ではなく、ニーズがある施設で手術をされていると聞きましたが、まさに今後はその様なドクターが求められていくのだと思います。
保険診療をやっているドクターはなかなか派手な広告を打たないので認知されにくいですが、武石先生のような活動は一つの光になるのかもしれませんね。