小泉和裕さんが都響に客演するコンサートを聴きに行きました。ドヴォルザークとブラームス、直球勝負の曲目です!

 

 

東京都交響楽団第881回定期演奏会Aser.

(東京文化会館大ホール)

 

指揮:小泉 和裕

チェロ:宮田 大

 

ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調

ブラームス/交響曲第2番ニ長調

 

 

 

毎回非常にクオリティの高いコンサートを堪能できる都響の公演は、大野和士さんの指揮する公演を中心に楽しんでいますが、隠れた本格派、小泉和裕さんが都響に客演するコンサートを聴くのも大いなる喜びです。

 

今日はドヴォルザークのチェロ協奏曲とブラームスの2番という、それぞれが大好きな曲で、ブラームスとドヴォルザークという繋がりのある組み合わせも素晴らしい、どストライクなコンサート!楽しみで楽しみで仕方ありませんでした。

 

 

 

前半はドヴォルザークのチェロ協奏曲。この曲はエルガーと並んで大好きなチェロ協奏曲、これまで何度となく素晴らしい演奏を聴いてきましたが、最近聴いたこともあり、特にこの冬のニューヨーク旅行で聴いたパーヴォ・ヤルヴィさんとゴーティエ・カプソンさんとニューヨーク・フィルの公演が印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2019.1.4 パーヴォ・ヤルヴィ/ゴーティエ・カプソン/ニューヨーク・フィルのドヴォルザーク&シベリウス&ラヴェル

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12453441556.html

 

 

第1楽章。冒頭から勢いの良い演奏。テッテレッテレッテッテッ、バンバンバン♪と強調が入って小泉さんの意欲的な指揮。第2主題は沈み込むような弱音のホルン、続く同じく弱音のクラリネットが見事!痺れる瞬間にクラクラきます!まだソロのチェロが始まっていないのに(笑)。

 

その宮田大さんのチェロは、ヴィヴラートは比較的控えめで正確な音程。都響の響きにしっくり合っているように思いました。第2主題はたっぷりで懐かしい音色、本当にとろけます!昨日のショパン/ピアノ協奏曲第1番の第1楽章第2主題に続き、古今東西の名曲の中でも特筆すべき第2主題を連日聴ける喜び!

 

切々と歌われるチェロに魅了された第2楽章に続いて、第3楽章は決然としたチェロが印象的。後半、素敵なオーボエの導入の後、第3主題はためらい気味に入り、そして快活になり、ヴァイオリンに主題が引き継がれる瞬間の飛翔感といったら!最後のチェロのソードドー♪は、あたかも地上を名残り惜しむかのように、たっぷり伸ばして、大いに魅了されました!

 

 

 

後半はブラームスの2番。ブラームスの交響曲4曲の中で一番好きな曲。最近では、理想的だった昨年のフランツ・ウェルザー・メスト/ウィーン・フィルの来日公演が特に印象に残っています。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.11.20 フランツ・ウェルザー=メスト/ウィーン・フィルのブラームス2番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12420474966.html

 

 

第1楽章。肩の力を抜いて自然体で入った冒頭。立ち上がるフルートにはいつもゾクゾクします。その後の弦が刻む場面では一転、軽快になり、第4楽章を予感させるものがありました。

 

残響たっぷりのサントリーホールと異なり、東京文化会館はより直接的に都響の音が聴こえます。サントリーホールでの2番が少し離れて美しいペルチャッハの情景を眺めるような演奏とすれば、今日の2番はあたかもヴェルター湖に浮かぶ小舟から、湖の揺らぎをヴィヴィッドに感じながらペルチャッハのまちを眺めるような、そんなより臨場感のある演奏に感じました。

 

途中からススーと速くなって雰囲気のある流れ、小泉さん心憎いばかりですね。中ほどの厳しい短調になる場面は咆吼する金管、弦がザクザク刻んで聴き応え満点!終盤にホルンが懐かしい音色でたっぷり吹く場面は、それに合わせる弦が一音一音ニュアンスが変わって絶妙!

 

そして大好きなラストの冒頭の旋律が回帰する場面はたっぷりとして雄大!ヴェルター湖に夕陽が長く差し込む、美しい光景が脳裏にハッキリ見えました。ピィツィカートの余韻も焦らずゆったり。素晴らしい第1楽章!

 

第2楽章。今日の都響の演奏は各楽章とも素晴らしかったですが、一番心を打たれたのはこの楽章でした。全体的に明るい2番の中で、最も短調が続く楽章ですが、こんなにも深刻な楽章だったのかと!

 

都響のうねる弦、強く吹かれる木管と金管がぐいぐい響いてきて、ブラームスの音楽だけでなく、ベートーベン、さらにはバッハを強く感じた第2楽章でした。

 

第3楽章。その厳しい第2楽章の後に、冒頭の素朴なオーボエが何と心に沁みることか!明るいけど、どこか鄙びた雰囲気を宿しているところがいいですね。

 

聴き進めると、今日の活き活きと飛び跳ねるようなリズミカルな演奏からは、深刻なブラームスがヴェルター湖に小舟を浮かべて黄昏れているところ、水鳥たちが取り囲んで励ますような光景が浮かんできました(笑)。ブラームスがパンを上げると、水鳥たちは寄ってたかっての奪い合い(笑)。その光景に笑顔を取り戻すブラームス。

 

第4楽章。ここはオケが爆発して、非常に聴き応えのある演奏!ティンパニや木管を次々と強奏して雰囲気満点、吹っ切れた喜びを感じます。こういう速いスピードでの迫力ある演奏でも、ちゃんとバランスも保っているところはさすが都響です。

 

最後は2段階に加速して熱狂、ラストは聴いたことないような金管の咆吼の余韻のもと、小泉さんの唸り声(笑)まで付いて終わりました。ブラボー!!!

 

 

小泉和裕さんと宮田大さんと都響のコンサート、素晴らしい公演でした!直球勝負の名曲で、これだけ感動させてくれて、さらに新しいイメージすら与えてくれる。小泉和裕さんと都響の演奏にはこれからも目が離せません!宮田大さんも素敵なチェロでした。素晴らしかった3連休に続き、本日も心の底からの幸せを音楽から得ることができました。

 

 

 

(写真)ブラームスが交響曲2番を作曲したペルチャッハの風景からヴェルター湖、そして第3楽章に出てきた水鳥。私、2番を聴いた後のアメブロの感想記事で、ペルチャッハの写真をもう5回はアップしてるかも?(笑)。そのくらい、他には考えられない組み合わせ。ブラームスの2番が好きな方はぜひとも現地に行かれることをお勧めします。

 

 

 

(追伸)ところで、今月の都響のプログラムにモントリオール在住の音楽ジャーナリスト、ロバート・マーコウさんの「海外ジャーナリストから見たアジアのオーケストラ」という記事があり、とても興味深く拝見しました。私が特に印象に残ったのは、マーコウさんの以下の言葉です。

 

 

「東京にはワールド・クラスのオーケストラが8団体あります。」

「かつて日本のオーケストラは、技術はあるけどスピリットが足りないと言われました。しかし現在は、熱意も精神性もあります。」

「東京の首都圏には3500万人が暮らしていますが、これはカナダ全土の人口と同じ。この大きな人口が演奏会を支えているのですね。」

「日本人はもっとプライドを持って良いと思います。料理や伝統工芸品、庭園などは有名ですが、クラシック音楽のクオリティが高いことは、世界にもっと知られて良いのですから。」

 

 

私は昨年、東京のオーケストラの素晴らしさについて、何度か記事を書きました。その思いを強く持っている私には、マーコウさんの記事は非常に共感できるものがありました。今日の都響のコンサートも本当に素晴らしかったですが、これからも音楽家のみなさまへの敬意の気持ちを大切にして、コンサートを楽しんで行ければと思います。

 

(参考)2018.9.22 ユベール・スダーン/東響のハイドン&モーツァルト&ベートーベン

※後半に東京のオーケストラの素晴らしさの記事

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12406961697.html

 

(参考)2018.12.22 2018年の思い出(東京のオーケストラの素晴らしさ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12427572506.html

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12427573758.html