昨日に続いてウィーン・フィルの来日公演を聴きに行きました。何と言っても、フランツ・ウェルザー=メストさんのブラームス2番が楽しみです!

 

 

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

(サントリーホール)

 

指揮:フランツ・ウェルザー=メスト

ピアノ:ラン・ラン

 

モーツァルト/オペラ「魔笛」序曲

モーツァルト/ピアノ協奏曲第24番ハ短調

ブラームス/交響曲第2番ニ長調

 

 

 

あれ!?フランツさん、昨日のブログで、今回の来日公演の中では1つだけ室内楽の公演を選んだ、とか言っていたような?

 

はい、そうなんです。チケットを取ったのは昨日の公演だけで、その他の公演は取っていませんでした。しかし、いろいろといきさつがあって…、ラッキーなことに今日になって、チケットが舞い込んできたのです!

 

何と言う幸運!!!もはや今年の運を全て使い果たしたレベル!(笑)

 

私のウィーン・フィル愛が神様に通じたのでしょうか?いつもニコニコ親切、前向きに生きていれば、いいことありますね。そして、持つべきは友。本当にありがたい限りです。

 

 

サントリーホールの座席に着くと、何となく雰囲気を感じます。そうなんです!皇太子殿下が聴きに来られたんです!観客は大きな拍手で迎えました。大いなる感動!皇太子殿下としてサントリーホールでご一緒させていただくのも、あと少しですね。

 

 

 

1曲目は魔笛の序曲。演奏前のチューニングの音の奥深さに早くもメロメロ(笑)。3つの和音の後のシラソファ~の弦!とろけます。思えばサントリーホールでウィーン・フィルのモーツァルトを聴くのは、2006年のニコラウス・アーノンクールさんとの来日公演以来(交響曲第39・40・41番)。

 

あの時はウィーン・フィルを感じる以前に、アーノンクールさんの強烈な解釈のモーツァルトにのけぞりましたが(笑)、今日はメストさんによる自然体のモーツァルトを聴ける感動!フルートのミステリアスな響き、低弦の迫力、と素晴らしい魔笛!そのまま全曲聴きたいくらいでした。

 

 

2曲目はモーツァルトのピアノ協奏曲24番。冒頭はあっさり入り、すぐにハッとさせられる短調のフォルテ!やはりオケの音色や響きが素晴らしい!自然体でしっくりなじむモーツァルト。

 

第1楽章のカデンツァの前の迫力、第3楽章の長調に転じる瞬間のオーボエ、そしてフルート!素晴らしいモーツァルトに大いに魅了されました。(なお、ピアノの感想は差し控えます。)

 

 

 

後半はブラームス2番。第1楽章。冒頭のチェロにゾクゾク、そして差し込む朝の光のようなヴァイオリンが美しい!オーボエののどかさ、そしてフルートの瑞々しさ!素晴らしい出だしに痺れます!

 

メストさんは予想通り、あっさり楷書体の指揮。これです、これ!この2番を聴きたかったんです。途中のトロンボーンが響く厳しい場面もそこまでの激情は見せず、弦の強奏を短く切って、引きずりません。

 

最後は美しいホルンによる長い旋律。どこか懐かしい音色、夕暮れの景色が見えてきます。そして黄昏の弦はそこまでたっぷりせず、ほのかにずり上げていたのが絶妙!素晴らしい第1楽章!

 

第2楽章。ここも速めのテンポで自然体の演奏。途中、ホルンが高まって、弦が下降旋律を奏でる場面。弦と木管の素敵な掛け合いに感動。最後の方の厳しい場面では、メストさんはオケのトゥッティの強奏のところでごくごくルフトパウゼを入れていました。

 

第3楽章。冒頭のオーボエの軽やかな音色!軽快な弦の展開にも魅了されます。プログラムの解説では、金管とティンパニを用いていない、とありましたが、確かに舞曲風の音楽で第2楽章からは明るくなりましたが、まだつましい明るさ、という印象です。

 

第4楽章。いよいよ明るい調子が全開となります。ここまで速めのテンポで来ましたが、さらに速めることはせず、メストさん、そのままのテンポで悠然と進めます。何もかもピタピタッと曲にはまるウィーン・フィルの音色と響き。さすがはこの曲の初演を行ったオケ!

 

フィナーレは熱狂で終える演奏もありますが、少しアッチェレランドをかけた程度。舞踊の熱狂というよりは、踊りを水彩の風景画に描いたような、見事に一本筋の通った演奏でした!

 

 

 

プログラムの解説は、ウィーン楽友協会資料室長のオットー・ビーバさんによる見事なもの。ブラームス2番の解説では、特に以下の記載に惹かれました。

 

◯音楽作品が創作された場所やきっかけが、その作品の姿や性格に影響を与えることはあるのだろうか。(中略)短く答えるならば「ときにはあるが、大抵の場合はない」ということになる。そのような影響の数少ない好例を挙げるならば、それはヨハネス・ブラームスの交響曲第2番であろう。

◯(交響曲2番のピアノ連弾を聴いて、ブラームスの友人の医師テオドール・ビルロートは)「これこそ高らかな、青い空だ」「泉が流れ、陽が光る、涼しい緑の木陰!ヴェルター湖畔はきっと美しい場所に違いない!」

◯(1877年、ハンス・リヒター指揮ウィーン・フィルの初演を聴いて、当時の楽友協会資料室長カール・フェルディナント・ポールは)「輝かしい作品。ブラームスからのこの世への贈り物であり、そのうえ実に親しみやすい。すべての楽章は黄金のようで、4つの楽章が一体となって、欠くべからざる全体を成している。生命と力が横溢し、感情の深さと魅力が備わる。このような作品は田舎でしか、自然の中でしか作曲できないものだ。」

 

私はブラームスの2番が大好きで、過去にもブログで触れましたが、この曲が書かれたオーストリア・ケルテルン州のヴェルター湖畔のペルチャッハを実際に訪れ、ブラームスが作曲した家や周りの景色を見て、ヴェルター湖を遊覧船で周り、現地の食事も食べてきました。この曲を聴くと、その時の情景以外は思い浮かびません。

 

自然描写としてとても理想的と思われる楷書体の自然な演奏を、同国最高のオケであり初演を行ったウィーン・フィルで聴けて感無量でした!

 

 

 

 

(写真)ヴェルター湖畔のペルチャッハの風景と、現地で見つけた印象的なポスター(笑)

 

 

 

素晴らしい演奏に、観客は大きな拍手で応えます。そしてアンコールは…、何と!J.シュトラウスⅡ/南国の薔薇!そして、これがブラームスと打って変わって、大きく抑揚を付けて、ニュアンスももふんだんに込められた演奏!何というか、解き放たれた感じです!

 

ブラームス2番の書かれたペルチャッハから南西に行くと、すぐにイタリアですが、南国の薔薇の南国とはイタリアをイメージしています。単にウィーン・フィルの十八番というだけでなく、プログラミングの妙を感じた、素晴らしいアンコールでした!

 

ちなみに、この曲は今年のウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでリッカルド・ムーティさんの指揮でも聴きました。今年のニューイヤーコンサートのテーマは「イタリアとの架け橋」。イタリア人のムーティさんとオーストリア人のメストさんの両指揮者の「南国の薔薇」を聴くことができ、とても感慨深かったです。

 

(参考)2018.1.1 リッカルド・ムーティ/ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート2018

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12347172207.html

 

 

アンコール2曲目はエドゥアルト・シュトラウス/テープは切られた!これは汽車の楽しさを表わしたポルカ・シュネルですが、引き続き、イタリア旅行を楽しんでいるとも取れますし、もともとはウィーンから北東の方面への鉄道にちなんだ曲です。地域的な配慮もあるのかも?(笑)。演奏はめっちゃ楽しい!最高のアンコール2曲でした!