名匠ユベール・スダーンさんが東響に客演して、ハイドン・モーツァルト・ベートーベンを振るという、珠玉のコンサートを聴きに行きました。

 

 

東京交響楽団第663回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:ユベール・スダーン

ヴァイオリン:堀米ゆず子

 

ハイドン/交響曲第100番ト長調「軍隊」

モーツァルト/ヴァイオリン協奏曲第4番第4番ニ長調

ベートーベン/交響曲第6番ヘ長調「田園」

 

 

 

このブログでこれまで何度となく書いていますが、私はユベール・スダーンさんと東響はほとんど唯一無二の特別なコンビだと思っています。音楽監督を退任後も、年に1回振りに来られるのが本当に嬉しい。在任中もそうでしたが、欠かさず聴きに行っているコンサート。しかも、今日は曲目がハイドン・モーツァルト・ベートーベン!!!めちゃめちゃ楽しみです!

 
 

 

1曲目はハイドンの軍隊。第1楽章。冒頭からニュアンスに溢れた非常に雰囲気のあるオケ!マエストロ・スダーンは昨日のN響のパーヴォ・ヤルヴィさんのようにドラスティックに味付けをするタイプでは必ずしもありませんが、自然体の指揮の流れの中での、的確かつ絶妙なニュアンス付けに本当に魅了されます。

 

主題に入ってのフルートとオーボエの掛け合いが素晴らしい!スダーンさん、展開部では大きめのルフトパウゼを入れていました。この演奏にはハイドンの愉悦を大いに感じます。マチネのモーツァルトの愉悦に続いて、ハイドンの愉悦!今日はどんだけ幸せな一日なんでしょう!

 

思えばハイドンの愉しさはスダーンさんに教わりました。音楽監督時代の2007年。マエストロ・スダーンは東響のそのシーズンの定期演奏会に、自分が振るコンサート以外も含め、全てのプログラムにハイドンを入れる、という離れ業をやってのけたのです!

 

私はスダーンさんの振った交響曲1番・2番・3番・9番の4つのコンサートを聴いて、「ハイドンって、こんなに楽しかったんだ!」と大いに唸りました。東響の快進撃、今日の隆盛もそこから始まったように思います。

 

大太鼓、シンバル、トライアングルの鳴りものが聴きものの第2楽章も過剰にエキゾチックに流れず格調高い!愉しい第3楽章、音楽の喜びに溢れた第4楽章も素晴らしい!最高のハイドン!!!

 

 

2曲目はモーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番。モーツァルトもニュアンスに溢れた素晴らしい演奏。ホーネックさんのモーツァルトはどちらかと言うと大らかで大胆、スダーンさんは細やか(神経質ではない)で活き活きですが、どちらにしても素晴らしい。

 

マチネに続き、再びモーツァルトを聴く愉悦!堀米ゆず子さんのヴァイオリンもニュアンス満載で、オケと溶け合って本当に見事。第3楽章ではコンマスのグレブ・ニキティンさんとの音合わせのようなシーンも楽しい!

 

この曲はヴァイオリンとオーボエによる協奏曲?と思うくらいにオーボエが大活躍する曲ですが、4月のロッシーニの素敵なオーボエ一発でメロメロになった荒木奏美さんのオーボエは今日も全く素晴らしい!マエストロ・スダーンの両手の動きとシンクロして、見事なまでに活き活きとしたオーボエでした。

 

 

 

後半はベートーベンの田園。この曲も冒頭からの弦のニュアンスにゾクゾクします。第2楽章では、ほとんど水音としか思えない弦、そして木管のみなさまの鳥の声に感動。ハイリゲンシュタットやカーレンベルク、ハイリゲンクロイツなどウィーン近郊の森に行くと、あちこちで小さな鳥たちが本当に賑やかに歌っていたのを思い出します。

 

最後のナイチンゲール(フルート)→ウズラ(オーボエ)→カッコウ(クラリネット)も素晴らしい!カッコウは先日パーヴォさんとN響で「クラップフェンの森で」を聴いたばかりなので、クラリネットによるカッコウにはお茶目さを感じて萌えました(笑)。この曲は第5楽章の出だしで泣くのが恒例なのですが、今日はあまりにも美しい東響の第2楽章にこみ上げるものがあり、涙溢れてきました…。

 

第3楽章はコントラバスが勢いをつけてスピードアップするシーンに魅了されます。第4楽章は迫力の嵐のシーンですが、それこそ嵐に舞う雨の一粒一粒がクッキリハッキリ見えるようなクリアな演奏!第5楽章はただただ感動。特に最後の盛り上がり後の後奏の弦のニュアンスにゾクゾク来ました!

 

 

 

何この至福のベートーベン!さりげないけど、珠玉の名演!!

 

 

 

幸せな雰囲気に満ちた美しい演奏に心の底からの感動!ほとんど、スダーン/東響の集大成ではないか?と思わせるくらいの最高のハイドン・モーツァルト・ベートーベン!!!

 

 

今日はマチネからモーツァルト→モーツァルト→モーツァルト→ハイドン→モーツァルト→ベートーベンと幸せ過ぎる一日。3連休の初日を最高の形でスタートできました!

 

 

 

 

 

さて、今日の東響を聴いて、芸術の秋の開幕の9月、普段よく聴くオーケストラを一通り聴きに行きました(日フィルのみ11月のラザレフさんとのコンサートがスタート)。どのコンサートも素晴らしく、芸術の秋を大いに楽しめています。

 

(参考)2018.8.30 ヨーン・ストルゴーズ/小山実稚恵/読響のアレッサンドレスク&ショパン&シベリウス

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12401545851.html

 

(参考)2018.9.6 アントニ・ヴィト/シャルル・リシャール=アムラン/都響のポーランド・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12403173686.html

 

(参考)2018.9.14 上岡敏之/古部賢一/新日フィルのオール・R.シュトラウス・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12405006021.html

 

(参考)2018.9.15 パーヴォ・ヤルヴィ/アンナ・ルチア・リヒター/N響のヨハン・シュトラウス&マーラー

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12405274333.html

 

(参考)2018.9.21 パーヴォ・ヤルヴィ/エストニア国立男性合唱団/N響のオール・シベリウス・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12406736545.html

 

(参考)2018.9.22 ライナー・ホーネック/今井信子/紀尾井ホール室内管弦楽団のモーツァルト

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12406886385.html

 

(参考)2018.9.22 ユベール・スダーン/東響のハイドン&モーツァルト&ベートーベン

⇒本記事

 

 

どのコンサートも記事をご覧いただければ分るように、絶好調の各オケの演奏を聴いて、大変感激したコンサート。この素晴らしい流れの中で、この際、近年ずっと感じていることを書いてみようと思います。それは、東京は今やおそらく世界中で一番、地元のオーケストラによる素晴らしいコンサートを楽しめる場所だと思う、ということです。

 

もちろんウィーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンは特別な存在で圧倒的に素晴らしいですが、東京のオケのレベルも、各楽器の演奏者や楽団の弛まぬご努力、若手の優秀な演奏者の活躍などにより、以前に比べると格段に高くなってきている印象です。さらに、これだけ数多くのオケが活躍している都市は世界中にありません。

 

つまり東京は「質」と「量」の両方で、地元のオーケストラの素晴らしいコンサートを楽しめる、クラシック・ファンにとって、非常に恵まれた都市、夢のような都市だということです。

 

同様に多くの優秀なオケを擁する都市にロンドンがあります。ロンドンのオケはもちろん素晴らしいですが、以前にロンドンでロンドン交響楽団やロンドン・フィルなど3つのオケの定期演奏会を聴いた時の経験と比べても、東京は遜色なく、量では勝っているように思います。

 

(なお、海外のオケの来日公演は、定期演奏会やツアーで何度も演奏してきて既に出来上がっているもの、そのオケの今の最高の演目を持ってきている場合が多いので、東京のオケの日常的な定期演奏会の演奏と単純に比較をするのは注意が必要です。)

 

さらには、サントリーホール、オペラシティ・コンサートホール、東京芸術劇場、東京文化会館、トリフォニーホール、紀尾井ホールなどなど。こんなに素晴らしいホールが沢山あって、毎日のように素敵なコンサートが複数あって、多い時には3つ4つ重なって、どこに聴きに行こうか迷う都市、体が2つ3つほしいと思う都市。こんなの世界中どこにもないですよ。(例えばロンドンは基本的にはロイヤル・フェスティバル・ホールとバービカン・ホールの2つ)

 

 

それにも関わらず、一部の心ない人たちのブログやツイッターでは、やれ楽器の◯◯がミスしたとか、音程が悪いとか、冷めた演奏だとか、つまらない指揮だったとか、間違い探しや減点法の書き込みが散見されます。

 

たまにそういうのを見かけると、心底やれやれ…と思ったり、高いお金を払ってチケット買って不満ばっかりで本当にお疲れさま!と思ったり、不満だったら敢えてブログに書く必要なんかないのによっぽど暇なんですね?と思ったり、じゃあ自分で楽器やってみたらどうですか?そう言うあなたは日本の童謡を1曲でもちゃんと歌えるんですか?とか思ったりします。

 

 

ここで一番言いたいのは、そういうつまらない、取るに足らないブログやツイッターは一切無視して、参考にしてこのオケのコンサート聴きに行くのは止めようかな?なんて絶対に思わないで、ぜひともご自身で実際にライヴのコンサートを聴きに行って、ご自身の耳で体感してほしい、判断をしてほしい、ということです。

 

どれもレベルの高いコンサートばかりなので、今日のスダーン/東響のような最高の感動こそ毎回得られないかも知れませんが、一定の感動や何かしら心に残るものは必ず得られるはずです。

 

特に毎日お仕事や家事などでお疲れの方。悩みや不安、心配事を持たれている方。コンサート聴きに行けば、疲れが取れたり、心が明るくなったり、音楽の力には、生演奏の力にはもの凄いものがあります。

 

好きな曲や作曲家、好きな指揮者や演奏家、お値打ちのコンサート、行きやすいホールや日時などなど、コンサートの選び方はさまざまです。ソールドアウトになるコンサートは、4月のブロムシュテットさんとピレシュさんの特別なコンサートのようにごくごく一部なので、もちろん早いに越したことはないですが、比較的余裕を持ってチケットを取れます。

 

若い方々にはデートにも超お勧めします。サントリーホールに聴きに行って、その後に、例えば目の前のAux Bacchanalesで食事をすれば、とても盛り上がります。彼女/彼あるいは気になっている方を誘ってぜひお楽しみに。

 

 

ということで、長くなりましたが、結論としては、東京には世界的に見ても素晴らしいオーケストラが沢山あって、素敵なコンサートが毎晩のようにあるので、ぜひライヴで楽しまれてみてください!強くお勧めします!