上岡敏之さんが、音楽監督を務める新日フィルと、オール・R.シュトラウスのコンサートを敢行するので、聴きに行きました。

 

 

新日本フィルハーモニー交響楽団第593回定期演奏会

(すみだトリフォニーホール)

 

指揮:上岡 敏之

オーボエ:古部 賢一

 

R.シュトラウス/交響詩「ドン・ファン」

R.シュトラウス/オーボエ協奏曲ニ長調

R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

R.シュトラウス/交響詩「死と変容」

 

 

このプログラムは好きなタイプの指揮者の上岡敏之さんが、大好きな作曲家のR.シュトラウスで固めたプログラム、ということでチケットを取りました。オーボエ協奏曲に死と変容と、流れもいい感じのプログラムです。オール・R.シュトラウスのプログラムは6月にもコルネリウス・マイスターさんと読響の素晴らしいコンサートを聴きました。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.6.19 コルネリウス・マイスター/読響のオール・R.シュトラウウ・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12384978822.html

 

 

 

1曲目はドン・ファン。冒頭から勢い良く、というよりはやや抑えめに入り、中間部をたっぷりと歌って陶酔の演奏。逆に最後の追い込みは急激に。コントラストが見事な演奏でした。

 

 

2曲目はオーボエ協奏曲。カプリッチョや最後の4つの歌にも通じる、ひなびた明るさの音楽。古部賢一さんのオーボエはリズミカルに進めつつ、味わいのあるオーボエでとてもいい感じ。

 

アンコールは何と、カプリッチョの六重奏曲!通常は弦楽だけですが、オーボエが加わります。もうこれしかない!という、プログラム全体の流れを踏まえた、ズバピタのアンコール。素晴らしかったです!それにしても、これ聴くと、月光の音楽も聴きたくなりますね。

 

 

 

後半1曲目はティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら。もう楽し過ぎる演奏!弦がポルタメントで弾いたり、ティンパニが思い切って強調したり、木管が素っ頓狂な音を出したり、ヴァイオリンが雰囲気ありまくりだったり、などなど。その他この他、各楽器が芝居っ気たっぷりの楽しい演奏!

 

最後、ティルが死刑になる場面。金管の重々しい響きに対抗して、木管が破綻するんじゃないか?と心配するくらいに強く吹いて、農民を代表して都市の市民階級に抵抗したというティルの気概を感じました。ショスタコーヴィチ/交響曲第13番の第2楽章すら連想します。最後も歯切れよく逃げ切り。素晴らしいティルでした!

 

 

最後は死と変容。名曲揃いのR.シュトラウスの交響詩の中でも、個人的に一番好きな曲です。

 

(参考)R.シュトラウス/交響詩「死と変容」。ご存じの方も多いと思いますが、参考までに。

https://www.youtube.com/watch?v=mu2M67IQ68Q (25分)

※Simfonieorkest Vlaanderenの公式動画より

 

冒頭の静かな弦は尋常でない音色。オーボエ→フルート→長調に転調してのヴァイオリンのソロに痺れます!ティンパニが先導する短調の場面は、それまでの抑えめの演奏から、一転して激しい演奏。フレーズを短めに切って、まるで悪魔に追い立てられているかのような印象。心にビンビン響きます!

 

弦の伴奏に伴って歌われる、心洗われるフルートも素晴らしい。そして決然とした木管のフレーズから弦が長調で飛翔する瞬間!ここたまらなく好き!その後の闘争の音楽も聴き応え十分。そしていよいよ浄化の動機。心の底からのカタルシスを感じる瞬間!準備の音楽を伴って何度か昇りますが、この辺りのもって回りながら昇っていく節回しが堪らない!上岡さんの真骨頂です。

 

そして最後の盛り上がりの前、ハープがこだましながら魂の浄化の場面を迎えますが、今まで聴いたことないようなタップリの演奏!悠久の、永遠の時の響き。ほとんどクナッパーツブッシュ指揮のワーグナー/パルジファルの場面展開の音楽のよう!今日の一番の上岡さんの渾身の表情付けだと思いました。

 

 

何この素晴らしい死と変容!上岡マジックきた~!

 

 

演奏も素晴らしかったですが、4曲聴いてみて唸ったところは、この日のプログラムは、あたかも全体で一つの交響曲のように感じたところです。すなわち長調の弾けるドン・ファンが第1楽章、牧歌的な印象をも持つオーボエ協奏曲が第2楽章、スケルツォ的な要素満載なティルが第3楽章、闘争を経て最後壮大なフィナーレを迎える死と変容が第4楽章、と。

 

R.シュトラウスはご存じの通り、交響詩のジャンルで活躍した作曲家ですが、今日のプログラムには上岡さんの大いなる遊び心を感じた次第です。

 

 

上岡敏之さんと新日フィルのオール・R.シュトラウスのコンサート。演奏といい、プログラミングといい、素晴らしかったです!新日フィルの新しいシーズンの開幕のコンサートでもありますが、非常に幸先の良いスタートでしたね。観客も静かに唸っていたもよう。帰りがけにすれ違ったお2人の女性が「良かった~!」とお互いに笑顔だったのが印象的でした。

 

このコンビはこの後も何度か聴きに行く予定。非常に楽しみです!

 

 

 

(写真)ティル・オイレンシュピーゲルゆかりの町、ドイツはハンブルク近郊のまちメルンにあるティル・オイレンシュピーゲル像

 

 

 

(追伸)ところで、今日は、9月8日(土)以来、6日ぶりの記事のアップとなりました。私のブログは毎日のアップを目的としておらず、むしろピアノの練習などに時間が取れるのでありがたいくらいですが、夏の旅行記は既に20記事ほど準備していて、いつでもアップできる状況です。

 

しかし、北海道の震災の状況を伺うに、なかなかそういう気持ちになれず…。日常のコンサートなどは生ものなので、間を置かずにアップできればと思いますが、夏の旅行記の続きは、10月に入ってからにしたいと思います。

 

寒くなってきたのがとても心配ですが…、改めて北海道の早期の復旧を、心より祈っております。