コルネリウス・マイスターさんが読響に客演する定期演奏会、オール・R.シュトラウス・プログラムを聴きに行きました。

 

 

読売日本交響楽団第579回定期演奏会

(サントリーホール)

 

指揮:コルネリウス・マイスター

チェロ:石坂 団十郎

ヴィオラ:柳瀬 省太

 

R.シュトラウス/交響詩「ドン・キホーテ」

R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」から前奏曲と月光の音楽

R.シュトラウス/歌劇「影のない女」による交響的幻想曲

 

 

今日の指揮者のコルネリウス・マイスターさんは、GWの旅行でシューベルト/交響曲第8番をご自身も参加する解説・演出付で聴いたばかりです。また、前回の読響の客演時も、今日と同じR.シュトラウスで、アルプス交響曲を聴きました。今日で3回目ですが、それ以上に馴染みのある指揮者に感じます。

 

 

まず、先日ご逝去されましたゲンナジー・ロジェストヴェンスキーさんへの哀悼の意を込めて、チャイコフスキー/バレエ音楽「くるみ割り人形」から「情景/冬の松林」が演奏されました。魂の飛翔を大いに感じる感動の演奏!ロジェストヴェンスキーさん、改めて、素晴らしい音楽を本当にありがとうございました!

 

 

前半はドン・キホーテ。私はR.シュトラウスの交響詩はみな大好きですが(特に、死と変容)、どうもこのドン・キホーテだけは今ひとつピンと来ません…?演奏は石坂団十郎さんのチェロのドン・キホーテ、柳瀬省太さんのヴィオラのサンチョ・パンサによる素敵な感じの演奏。注意深く聴きましたが、やはり曲自体がすっと入って来ない感じです。ティル・オイレンシュピーゲルほどのユーモアを上手く見出すことができません。もっと聴き込みが必要、と反省しきり…。

 

 

後半の最初はカプリッチョから、前奏曲と月光の音楽。私はカプリッチョというオペラが好きで好きで仕方ありません。ばらの騎士と並んで、R.シュトラウスの15作品の中で最も好きなオペラかも。中でも、月光の音楽には特別な感情を持ちます。今日はどうでしょうか?

 

前奏曲はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロによる弦楽六重奏。弱音を基調に強めるところ、溜めるところ、いい意味で各々が主張する雰囲気のある演奏。途中、同じ弦楽ということもあり、R.シュトラウス/メタモルフォーゼンを思わせる旋律を感じ、昨年夏に聴いたメタモルフォーゼンの感動が甦りました。

 

(参考)2017.8.20 ヘルベルト・ブロムシュテット/ウィーン・フィルのR.シュトラウス/メタモルフォーゼン(ザルツブルク音楽祭)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12325050132.html

 

読響の素晴らしい弦楽六重奏を聴きながら気付いたのは、この弦楽六重奏による前奏曲は、オペラの主要な登場人物、すなわち、伯爵令嬢マドレーヌ、伯爵、フラマン、オリヴィエ、ラ・ロッシュ、クレロン、この6人が彩なす物語を予告している音楽ではないか?ということでした。果たしてどうでしょうか?

 

 

そして、続いて月光の音楽。冒頭のホルンが素晴らしい!ここは朗々としたホルンではなく、曲想的に遠慮がちに、でもたっぷりと入る方が雰囲気が出るので、大いに感動しました!今日はここで涙涙…。そして、オケ全体が加わる転調の瞬間には本当に痺れます!オペラだと演出にも目の行く場面ですが、音楽だけで聴くと、フルートとピッコロがいい感じで相の手を打っていて魅了されました。

 

コルネリウス・マイスターさんのカプリッチョは雰囲気があって本当に素晴らしい!読響の演奏も味わいがあってとても良かったです。ここで思い付いたのですが、コルネリウス・マイスターさん指揮で、読響がピットに入って、新国立劇場でカプリッチョを上演したら、最高ではないか?ということ。アンサンブル・オペラなので、歌手は全員日本人の実力派で。伯爵令嬢マドレーヌは歌といい、演技といい、美貌といい、安藤赴美子さんの一択のように思います。考えただけでワクワクする公演!カプリッチョは新国立劇場ではまだやっていません。大野芸術監督、ぜひに!

 

 

最後は「影のない女」による交響的幻想曲。影のない女もこれまた好きなオペラ。一番最後に観たのが2014年なので、そろそろまた観てみたいオペラです。ここで交響的幻想曲が聴けるのはありがたい限り。オペラの音楽は頭に入っているので、全く予習せずに聴いた方が却って楽しめると思い、何も準備せずに向かいました。

 

(参考)2014.12.27 R.シュトラウス/影のない女(バイエルン国立歌劇場)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-11975807844.html

 

冒頭はオペラと同じく力強いカイコバートの動機。続いて、第1幕後半のバラクの歌。バラクの人の良さが感じられる素敵な音楽。そして、次は私の大好きな第1幕の侍女たちの歌のシーンが来ました!もう陶酔の極致!高音に高音を重ねるR.シュトラウスの官能の世界!ここは歌なしでも十分いけますね。一番盛り上がるところでの大胆な不協和音!R.シュトラウス、天才としか言いようがありません!

 

第2幕の賑やかな音楽を挟んで、第3幕のバラクと妻の2重唱の音楽。夫婦が分かり合う感動的な場面に、R.シュトラウスが何と魅力的な旋律をつけていることか!次から次へと見せ場が出てきて本当に盛り上がります。

 

そして、最後は予想通り、第3幕の大団円のラストが来ました!オペラだとソプラノ2人による長く感動的な2重唱の音楽。ここは以前に観たザルツブルク音楽祭では、エヴェリン・ヘルリツィウスさん(バラクの妻)とアンネ・シュヴァンネヴィルムスさん(皇后)の2重唱に、卒倒しそうになるくらいの感動を覚えたことがあったり、ソプラノの2重唱の凄まじさを実感する場面ですが、オケだけで聴いても、全然いけますね!むしろ伴奏はこうなっているのか、とクリアに体感できるくらい。

 

そして、マイスターさんが、そのザルツブルク音楽祭の公演のクリスティアン・ティーレマンさんばりに、嬉しいことに、もうたっぷりと溜めた指揮!最後のトロンボーンの振り下ろしを、まるでスローモーションかのごとくゆっくりやってくれて、めちゃめちゃ感動的!ラストの生まれざる子供たちの歌のところの、生のグロッケンシュピールとチェレスタがまたいい!大いなる感動!マイスターさんと読響による、最高の影のない女でした!

 

 

コルネリウス・マイスターさんと読響のR.シュトラウス、めちゃめちゃ素晴らしかったです!そして、今月は4日にもダニエル・ルスティオーニ/都響でイタリア幻想曲を聴けたので、ちょっとしたR.シュトラウスの珍しい作品の特集月間となりました。とても楽しめた、2つのコンサートでした!

 

 

 

(写真)R.シュトラウス/影のない女の愛聴盤はカール・ベーム/ウィーン国立歌劇場の1977年のライヴ。もう何回聴いたか分りません。