まず最初に、北海道で震度7の大きな地震がありました。お亡くなりになられた方がいらっしゃって、土砂災害、全戸停電など、大きな被害が出ています。

 

北海道はご出身の方も含め、このアメブロで交流させていただいている方が何人かいます。また7月には札幌で素晴らしいPMFも体験させていただいた、とても思い入れのある場所です。

 

余震も含めこれ以上の被害が出ないよう、また一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

 

 

 

さて、今晩はポーランドを代表する指揮者、アントニ・ヴィトさんが都響に客演するコンサートを聴きに行きました。今を時めくシャルル・リシャール=アムランさんのショパンも楽しみです。

 

 

東京都交響楽団第860回定期演奏会Bser.

(サントリーホール)

 

指揮:アントニ・ヴィト

ピアノ:シャルル・リシャール=アムラン

 

ワーグナー/序曲《ポローニア》

ショパン/ピアノ協奏曲第2番ヘ短調

ルトスワフスキ/交響曲第3番

 

 

 

このコンサートはポーランドの実力派の指揮者によるポーランド・プロ、ということでチケットを取りました。アントニ・ヴィトさんは昨年2月の新日フィルとのシマノフスキ/交響曲第2番が極めて素晴らしく、ルトスワフスキも期待が高まります。

 

(参考)2017.2.24 ヴィト/ヤブウォンスキ/新日フィルのポーランド・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12251026890.html

 

 

1曲目はワーグナー/ポローニア。咆哮する金管、唸る弦、やはりワーグナーの音楽、という感じです。行進曲は非常に賑やかで、もうこれでもかと畳み掛ける音楽。オペラのリエンツィを連想させるものがあり、いささかうるさく感じるところも(笑)。

 

ワーグナーは、1830年のワルシャワのロシアへの蜂起(11月蜂起)が失敗して、ライプツィヒに逃れてきたポーランド人たちとの交流をきっかけにこの曲を書いたそうです。ポーランドを応援する曲で、ポーランドの踊りの音楽を思わせる要素を取り入れながらも、やはりドイツから見たポーランド、という感じでした。いずれにしても、ワーグナーの初期の大変珍しい曲。実演を聴けて、貴重な機会でした。

 

 

2曲目はショパンのピアノ協奏曲第2番。ピアノは6月のショパンのリサイタルでバラード3番などに魅了されたシャルル・リシャール=アムランさんです。

 

(参考)2018.6.2 シャルル・リシャール=アムランさんのピアノ・リサイタル(オール・ショパン・プロ)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12381096511.html

 

 

第1楽章。冒頭の柔らかい音楽を聴いて、ワーグナーの後だと何だかホッとします(笑)。アントニ・ヴィトさんは第2主題の木管と、続く弦をテンポを落としてたっぷり歌っていました。アムランさんは7月と同じく大変繊細なピアノ。その中で、きらめきやゆらめき、瑞々しさ。ごく微妙なニュアンスを醸し出すピアノです。

 

ピアノが第2主題へ入る直前のためらい、そして第2主題はオケと同様にたっぷり歌って感動的。その後のファゴットとの掛け合いも素敵なピアノ。都響もヴィトさんの棒のもと、ニュアンス満載の素晴らしい伴奏。さりげなくも、非常に聴き応えのある第1楽章でした!

 

第2楽章。冒頭から何という雰囲気のあるピアノ!そこまで抑揚は付けてはいなくて、むしろ淡々としている感すらありますが、微妙なニュアンスを付けて、どうしてこんなにもしっくりはまるものなのか?切ない気持ち、揺れる心、そして確かな愛情。様々な感情が交錯します。

 

アムランさんはショパン・コンクールの本選の協奏曲の演奏で、参加者で唯一、この2番を選択したそうです。それが良く分る最高の第2楽章!

 

第3楽章。アムランさんはここでもさりげなくも瑞々しいピアノ。舞曲で踊っている、というよりは、踊っている情景を繊細な筆致で描いた絵画のような演奏。必ずしも派手な演奏ではないので、これは聴き手が試される演奏のように思います。素晴らしい2番でした!

 

 

一点、ここで言及しておきたいのは、この曲の魅力を改めて教えてくれたのは、2月のハンブルク・バレエ団の椿姫のバレエ。よりメジャーな1番ではなく、このピアノ協奏曲第2番の3つの楽章がバレエの音楽として主力で使われていました。それぞれがピッタリ当てはまる印象的なシーン。今日の演奏を聴く上でも大きな助けになりました。音楽を選択されたのは振付のジョン・ノイマイヤーさん。天才としか言いようがありません。

 

(参考)2018.2.2 椿姫(ハンブルク・バレエ団/振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ショパン)

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12350178758.html

 

 

アンコールはショパンの遺作のノクターン第20番嬰ハ短調。ワーグナーのポローニア、11月蜂起、美しいポーランドの田園を思わせるピアノ協奏曲第2番の後で、これしかない、という選曲です。ご存じ映画「戦場のピアニスト」で使われて有名になった曲。

 

映画では1944年のワルシャワ蜂起の場面が出てきますが、前半と後半の曲のイメージとシンクロして、極めて感動的。アムランさんのピアノはそんなに感傷的ではありませんが、どうしてこんなに雰囲気があるのでしょう?そして、最後の右手の上下をここぞとばかりにたっぷりと弾きました!やられた!素晴らしいアンコールでした!

 

 

 

後半はルトスワフスキの交響曲第3番。6月に藝大フィルのオール・ルトスワフスキ・プロで聴いたばかりで、その時も素晴らしい演奏でした。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2018.6.1 ジョルト・ナジ/浜田理恵/藝大フィルのオール・ルトスワフスキ・プロ

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12380837517.html

 

 

力強いダダダダッ!の冒頭。その後の金管の響きはよくよく耳を澄ますと、ラインの黄金のあの冒頭のホルンのような響き。物語の始まりの音楽という印象です。その後の弦が這い回るような音楽はヴィトさん、パウゼをしっかり取っていました。流れ的に、まるであっちこっちでパルチザンの活動を展開しているかのよう。

 

木管が次々に下降していく場面。藝大フィルでは、雪崩を打って連続して下降していく印象でしたが、今日は各自が各々のタイミングで下降していく印象。ここまで聴いて、都響の抜群の上手さに改めて感動!このオケはやっぱり凄いオケです。

 

続いて弦が春の祭典のような印象的な旋律を繰り返すシーン。この曲を音楽に使ったバレエを観てみたくなりました。ジョン・ノイマイヤーさん、取り上げていただけませんでしょうか?その後の金管による多重コラールと言った感じのシーンも聴き応えがありました。

 

オケが騒然とする中、ピアノが鳴るシーン。ピアノはほとんどオンド・マルトノのように響きます。その後はバルトークやスクリャービンを思わせる音楽。特にバルトークの弦チェレの旋律をダイレクトに感じる部分が多いように思いました。

 

終結部の盛り上がりの前の賑やかなシーンは、藝大フィルではアッチェレランドを利かせて走っていましたが、ヴィトさんは悠々としたテンポで進め、最後の盛り上がりも堂々たる演奏で締めていました。素晴らしいルストワフスキ!

 

 

 

アントニ・ヴィトさんとシャルル・リシャール=アムランさんと都響のオール・ポーランド・プロ、素晴らしい演奏でした!ルストワフスキは現代曲で難しい音楽ですが、それでも観客も大いに盛り上がっていましたね!さすがはいろいろ聴き込んでいる、クラシックに造詣の深い都響の聴衆だと思いました。

 

先週末に松本の音楽祭で、「日本のベルリン・フィル」とも言われるサイトウ・キネン・オーケストラを聴いてきたばかりで、それはそれは素晴らしい演奏に魅了されてきましたが、今日の都響の演奏を聴いて、その完璧なルストワフスキの演奏にも大いに痺れました!サイトウ・キネン・オーケストラは年に1回、松本まで行かないと聴けませんが、都響は近くのコンサートホールで度々聴ける。これは本当に幸せなことだと思います。

 

アントニ・ヴィトさんも、特にルトスワフスキの精緻な演奏には相当感激された様子で、オケを立たせて、自らはさっと退場されたり、最大限のリスペクトを表明されていました。この際、アントニ・ヴィトさんにはぜひぜひ都響への定期的な客演を大いに希望。その時はぜひとも、ルトスワフスキが作曲を志したきっかけとなった、シマノフスキ/交響曲第3番「夜の歌」を希望します!もう大大大好きな曲。ぜひに!

 

 

 

ということで、コンサートは非常に素晴らしいものとなりましたが、忘れてはならないのは北海道のこと。最後に改めてですが、北海道の方々のご無事と早期の復旧を祈っております!