(この記事は昨日の時点で書き上げていましたが、N響の2日目を聴きに行かれる方がご覧になって先入観を持たないよう、アップは本日にしました。)

 

パーヴォ・ヤルヴィさんがご出身のエストニアの素晴らしい男声合唱団と共演する、大変楽しみなコンサートを聴きに行きました。

 

 

NHK交響楽団第1882回定期演奏会Cpro.

(NHKホール)

 

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ソプラノ:ヨハンナ ・ルサネン

バリトン:ヴィッレ・ルサネン

男声合唱:エストニア国立男声合唱団

 

シベリウス/レンミンケイネンの歌

シベリウス/サンデルス

シベリウス/交響詩「フィンランディア」(男性合唱付き)

シベリウス/クレルヴォ

 

 

パーヴォさんとN響のシベリウスは、これまで存分に楽しんで来ました。最高の演奏だった2002年の初共演時の交響曲5番、大きく抑揚を付けた第2楽章に魅了された昨年2月の交響曲第2番、濃密な表現が素晴らしかった今年5月の交響詩「4つの伝説」。今日も楽しみで楽しみで仕方ないプログラムです。

 

(参考)2017.2.11 パーヴォ・ヤルヴィ/N響のシベリウス2番

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12247082514.html

 

(参考)2018.5.12&13 パーヴォ・ヤルヴィ/N響の交響詩「4つの伝説」

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12375711489.html

 

 

 

1曲目はレンミンケイネンの歌。プログラムには、「4つの伝説」の第4曲「レンミンケイネンの帰郷」と同じ楽想が活用されている、とあり、確かにその雰囲気もありましたが、私はカレリア組曲の第3曲の方をより感じました。「愛の魔力」の歌詞の辺りで一瞬エグい和声になるのがもう何とも(笑)。

 

 

2曲目はサンデルス。スウェーデンの名将ヨハン・サンデルスのフィンランド戦争での活躍を描いた「騎手ストールの物語」からテクストを取った曲です。戦いをテーマにした曲ですが、前半はコミカルな雰囲気の音楽。当たり前ですが、フィンランド語(1曲目)とスウェーデン語の歌ではかなり印象が違います。ゲルマン系のスウェーデン語、男声合唱団ということもあり、ワーグナーの曲のようにも聴こえてきました。

 

途中、フルートが大きくうねる怪しい音楽の場面は「4つの伝説」の第1曲「レンミンケイネンと乙女たち」を思わせます。後半は勇ましい音楽で非常に盛り上がりました!歌詞に歌われるサンデルスは、どこかトルストイ「戦争と平和」のクトゥーゾフを思わせました。

 

 

3曲目はフィンランディアの合唱付き。私、この曲は曲名を見ただけで涙が出そうになります。ただでさえ感動的なフィンランディアに加えて、フィンランド第2の国家とも言われるフィンランディア賛歌を合唱が歌う、それはそれは感動的な曲だからです。

 

しかし、今日の演奏と歌は、もちろん上質でさすがでしたが、盛り上がりという意味では、昨年聴いたハンヌ・リントゥさんとフィンランド・ポリテク男性合唱団と都響の、大いなる感動に包まれたフィンランディアにまでは及ばない印象でした。やはりフィンランド人による魂のフィンランディアは特別なのでしょう。パーヴォさんのフィンランドへの配慮なのかな?とすら思ったり。プログラム上の位置(途中か最後か)のこともあるかも知れません。

 

 

 

後半はクレルヴォ。昨年11月には、前日のショスタコーヴィチ11番と合わせ、フィンランド独立100周年を記念する、ハンヌ・リントゥさんとフィンランド・ポリテク合唱団と都響の真に感動的なクレルヴォを聴くことができました。今日はどうでしょうか?

 

(参考)2017.11.8 ハンヌ・リントゥ/フィンランド・ポリテク男性合唱団/都響のシベリウス/クレルヴォ交響曲

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12326788591.html

※この記事、読み返してみたら、大好きなフィンランドもの、シベリウスものということで、もの凄いハイテンションで書いていて、自分で言うのもなんですが、かなり面白かったです(笑)。

 

 

「導入」。見事にコントロールされた演奏。リントゥさんの感性のままに突入するような激しい演奏とは、いい意味で一線を画します。楽譜を冷静に見て分析した上での精緻でユニークな演奏。ヴァイオリンを抑えて、チェロやヴィオラを豊かに鳴らしたり、既存のクレルヴォと明らかに異なった演奏です。

 

そんな演奏だったので、途中で木管により、ジークフリート第2幕のアルベリヒとミーメが言い争う場面に似た音楽を見つけたり(笑)。好きな演歌っぽい旋律の場面では大きくメリハリを利かせたり、最後の方に第1主題が帰ってくる前の音楽をタップリ伸ばしたり、パーヴォ節も魅せます。楽器のバランスも随所に変えて、ほとんど違う版ではないか?とすら思わせた「導入」。パーヴォさん、さすがでした!

 

「クレルヴォの青春」。ここも非常に考えられた演奏!第1主題は裏の弦の大きく上下するフレーズが聴こえて印象的。クラリネットから始まる木管はよく歌っていました。最後はゆっくり溜めて静かにフィニッシュ。とても青春とは思えない、クレルヴォの後半の運命を暗示するような音楽でした。

 

「クレルヴォとその妹」。合唱の前にガツンとティンパニの強調が入り気分が高まります。いよいよ合唱が加わりました!エストニア国立男声合唱団の歌はクリアで切れよくピタッと揃った合唱。繊細なニュアンス、オケとも見事に合って本当に素晴らしい!さすが歌により国の独立を勝ち取ったバルト三国を代表する合唱団です。

 

ヨハンナ ・ルサネンさん、ヴィッレ・ルサネンさん、ソリストの2人も聴き応え十分。ヴィッレ・ルサネンさんは「愚かで無能な子で」を何とも言えない声色を出していて印象的。お2人の短い掛け合いはもちろんのこと、後半のそれぞれの長い独唱も大変な聴きものでした!

 

「戦闘に赴くクレルヴォ」。ここはリントゥさんが盛り上げるだけ盛り上げていたのと対称的に、もちろん華々しい音楽ですが、比較的粛々と、どこかしら投げやりなニュアンスすら感じました。ここがクライマックスではないよ。パーヴォさんの声が聞こえてきそうです。

 

「クレルヴォの死」。冒頭から雰囲気に満ちた、オケのニュアンスのこもった素晴らしい演奏と合唱!ここのシーンのために、その前の華々しい音楽があるかのようです。クレルヴォの死を歌う合唱の後の、オケによること切れる描写の音楽!最後の合唱の迫力!素晴らしいフィナーレでした!

 

 

 

パーヴォ・ヤルヴィさんとエストニア国立男声合唱団とN響のクレルヴォ、素晴らしかったです!やはりパーヴォさんのシベリウスは一味も二味も違い、オリジナリティに溢れていいですね!エストニア国立男声合唱団は、噂のその実力をまざまざと見せ付けた、素晴らしい合唱でした!ソリストのお二人も傑出。ものの見事なクレルヴォでした!

 

 

 

 

 

(写真)フィンランドのウォッカ、フィンランディア。今日のオール・シベリウス・プロのコンサートの後に、このお酒を飲まない選択肢はあり得ませんでした。このパターン、もう何回目?(笑)いえいえ、この日こんなに感慨深く飲めるお酒はありません!

 

なお、プレーンのフィンランディアの後、クレルヴォの妹の歌詞にもあった、こけもも(クランベリー)で味付けされたフィンランディア(写真下)もいただきましたが、これもめっちゃ美味かった件!(笑)

 

 

 

(追伸)この9月21日のN響定期の後、9月23日にエストニア国立男性合唱団のコンサートを聴きに行きました。特にエストニアの作曲家トルミスの合唱曲が素晴らしかったです!ご参考まで!

https://ameblo.jp/franz2013/entry-12407088146.html