パーヴォ・ヤルヴィ/N響と共演したシベリウス/クレルヴォが素晴らしかったエストニア国立男声合唱団。その合唱団だけによるコンサートを聴きに行きました。お目当てはエストニアの作曲家、トルミスの歌曲です!

 

 

エストニア国立男性合唱団

(すみだトリフォニーホール)

 

指揮:ミック・ウレオヤ

エストニア国立男声合唱団

 

メンデルスゾーン/晩課の歌

ラフマニノフ/徹夜祷より第1,2,6曲

松下耕/Gloria

シューベルト/水の上の精霊の歌

ボナート/大いなるしるし

 

トルミス/古代の海の歌(共演:お江戸コラリアーず)

マンテュヤルヴィ/偽ヨイク

トルミス/牧童の呼び声

トルミス/サンポの鋳造

トルミス/雷鳴への祈り

 

 

 

まずはメンデルスゾーン。プログラムの解説にはバッハのカンタータの形式、とありましたが、響き自体はバッハの厳格さよりはメンデルスゾーンの温かみのある音楽を感じます。祈りの歌が心地よい。

 

次はラフマニノフ。ピアノで親しんでいるラフマニノフ(先日の浜松のアレクサンダー・ガジェヴさんのコンチェルト3番!)。歌曲も凄い曲があるとは聞いていましたが、これまで聴いたことはありませんでした。これが温かさに満ちた素晴らしい曲!今度はぜひ全曲聴いてみたいと思いました。

 

次は松下耕のGloria。切れの良い曲で、途中のフレーズの短いフーガが印象的。最後も短くあざやかに終わりました。日本の作曲家の曲までカバーしていただいて、本当にありがたいですね。

 

次はシューベルト。さすがは歌曲王シューベルト!という素晴らしい曲。そしてゲーテの詩がまたいい。魂や水のことを詠っていたら、いつの間にか女性の話に。ゲーテ先生、分かっていらっしゃる!(笑)

 

前半ラストはボナート。ジョヴァンニ・ボナートは1961年生まれのイタリアの現代の作曲家。合唱団が客席に降りて、トリフォニーホール1階の両脇に大きく展開。両側からささやくように歌い、それが共鳴して広がっていくような不思議な歌!

 

グラスハーモニカも使って浮遊感を強調します。ルチアーノ・ベリオのシンフォニアの第1部をさらにピュアに、そして幻想的にしたような歌。素晴らしかったです!

 

 

なお、事前の予告では、シベリウス/フィンランディア賛歌が予定されていましたが、この日は歌はありませんでした。N響の時とどう違うのか?興味もありましたが、エストニアの合唱団なので、フィンランディア賛歌よりも、やはりトルミスを聴きたいところ。フィンランディア賛歌は、またフィンランドの合唱団で聴く機会を楽しみにしましょう。

 

 

 

後半はお目当てのヴィリヨ・トルミス。1930年生まれのエストニアの作曲家。今年5月のパーヴォさんのN響定期で序曲第2番を聴きましたが、非常に魅力的な作曲家だと思いました。

 

このエストニア国立男声合唱団を聴きに来たのは、親しみを覚えているエストニアの合唱団ということもありましたが、曲目にトルミスが4曲あったことも大きな理由です。今日はトルミスをまとめて聴くことのできる、とても貴重な機会です。

 

 

まずはトルミス/古代の海の歌。海の厳しさを歌う悲しい歌ですが、もの凄い迫力と言霊!やはりトルミスを聴きに来て良かった!この時点で心の底からの感動!トルミスの歌は、この日の選曲がそうだからかも知れませんが10分以上の物語性のある曲ばかりで、1曲1曲非常に聴き応えがあります。

 

なお、この曲のみ、お江戸コラリアーずという日本人の男声合唱団も加わり、その前にはラトビアの作曲家の歌なども披露されました。こちらもいい感じの合唱でした。

 

次はマンテュヤルヴィ/偽ヨイク。プログラムの解説には、サーミ人の歌ヨイクとの直接的な繋がりはない、とありましたが、昨年12月に見た映画「サーミの血」で主人公のエレ・マリャがヨイクを歌った、その時のリズム感や調性に重なる部分を感じました。「偽」というのは、フィンランドの作曲家マンテュヤルヴィが、サーミの人々に遠慮して敢えてつけたのではないか?と思ったり。

 

次は再びトルミス/牧童の呼び声。エストニアの文学者タムサーレの生誕100周年を記念して作曲された曲だそうです。タムサーレの妹さんが歌う歌(録音)は民謡の独特の歌。途中、ピンポンパンポーンに似た明るい調子になりますが、そこで歌われるのは何とキリストの受難を思わせるような厳しい内容!明るめの曲調とは裏腹に一筋縄ではいかない歌、という印象でした。

 

次はトルミス/サンポの鋳造。カレワラのおなじみイルマリネンによるサンポ鋳造を歌う歌です。鍛治の名人イルマリネンが苦労の末に見事サンポを作る歌ですが、どこかしらユーモラスな雰囲気もあってとても楽しめました。

 

ラストはトルミス/雷鳴への祈り。雄牛を捧げたり、雷鳴に雨が降るのを祈る歌ですが、リズミカルで緊迫感に溢れる素晴らしい歌!合唱による擬態音や太鼓も入って大いに盛り上がります。ラストを飾るに相応しい聴き応えのある歌、大いに興奮しました!

 

 

エストニア国立男声合唱団のコンサート、N響との共演のクレルヴォに引き続き、素晴らしかったです!私は元々エストニア・リトアニア・ラトビアのバルト三国はそれぞれ一度旅したことがあり、またパーヴォ・ヤルヴィさんやマリス・ヤンソンスさん、大好きなエリーナ・ガランチャさんがご出身ということもあり、愛着を持っていました。

 

そして、バルト三国にはそれぞれ歌と踊りの祭典という世界無形文化遺産にもなっている一大イベントがあって、いつか観に行きたいと思っていました。今回のエストニア国立男声合唱団の来日公演は「さすがは歌の国!」と思わせる、見事な公演でした。

 

 

さらにエストニアは今年が建国100周年です。パーヴォさんや合唱団のみなさまを始めエストニアのみなさま、建国100周年、本当におめでとうございます!歌と踊りの祭典、いずれ観に行ければと思いますので、よろしくお願いします!

 

 

 

さて、トルミスを始め素敵な合唱を沢山聴けたので、アフターで錦糸町界隈で美味しいお酒でも飲みに行きましょうか。と思ったら、この人、まっすぐ錦糸町駅に向かって、東京駅に移動して…?

 

そして何と、新幹線に乗っちゃいました!それって、もしかして…、新幹線の移動によるダブルヘッダーですか!?(続く)