ティーレマン/ウィーン・フィルのベートーベンも今日が最終日。名残惜しい限りですが、最終日に相応しく、感動的な名演となりました!!!
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2013(サントリーホール)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者:クリスティアン・ティーレマン
ソプラノ:エリン・ウォール
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
テノール:ミヒャエル・ケーニヒ
バリトン:ロベルト・ホル
合唱:ウィーン楽友協会合唱団
合唱指揮:ヨハネス・プリンツ
ベートーベン/交響曲第8番ヘ長調
ベートーベン/交響曲第9番ニ短調「合唱付」
8番はウィーン・フィルの輝かしい音色の出だしの後、さっそく大きく「ジャン!ジャン!」が入り、今日もティーレマンさんの指揮は快調です。ヴィオラやチェロのリズムを刻む音も本当に心地よい。第2楽章は規則正しいリズムで、プログラムにはメトロノームの話が出ていましたが、連想してウィーン市時計博物館を思い出しました。ここは歴史的な時計が沢山展示されていますが(日本の時計も!)、博物館の閉館後、深夜に大小の時計たちが楽しくダンスを踊り始めますが、トントントントントンとドアを叩き入ってくる警備員にビックリし慌てて元の場所に戻る…。ウィーン・フィルの音色で聴くと、そんな楽しい物語を想像してしまいます。
第3楽章のメヌエットもゆっくりめのテンポでやや大げさな印象。今度は滑稽な王侯貴族の踊りでしょうか?第4楽章で速くなるのかな?と思ったら、ここもたっぷり。これまで聴いた第4楽章で一番ゆっくりだったかもしれません。プログラムの前半に組まれることも多く、同じリズムを刻む系の曲では7番より軽い曲に見られがちの8番ですが、今日の演奏を聴くと、大変に聴き応えのある曲だということを再認識させてもらえます。非常にスケールの大きな8番、それを支えるウィーン・フィルの音色、名演でした。
9番ではウィーン楽友協会合唱団が初めて登場します。大きな拍手に迎えられての登場、オーケストラと合わせて、サントリーホールの舞台からはみ出てしまうのではないか?と心配してしまうくらいの大人数となりました。このチクルス一番の静寂の中、冒頭の空虚5度の和音が放たれます。基本的にはウィーン・フィルに任せつつ、随所でいろいろなニュアンスをつけてきたティーレマンさんですが、この9番に至っては、緩急自在かつそれが本当にしっくりきて、9番の魅力を120%伝えてくれる指揮。特に弦のニュアンスが凄くて、音を抑えて演奏している部分でも、背後で何か大きなものが動いているのが感じ取れるような、そんな凄味のある弦でした。劇的な演奏に、第1楽章の時点で早くも自然と涙が。
第2楽章はやや速めのテンポでウィーン・フィルの名人芸が体感できます。途中、長調になった時の期待感やチェロの懐かしい音色と言ったら!第3楽章は静かに優しく奏でられるヴァイオリンの美しさに陶然となります。この第3楽章、美しいものの時に間延びしてしまい、マーラーの4番の第3楽章と並んで苦手にしていた楽章でしたが、「こんなに美しい音楽だったのか!」と今日初めてこの楽章の素晴らしさを体感できたのかもしれません。ゆっくりゆっくり、愛おしむように進んでいき、感涙ものの演奏でした。
そして感激の第4楽章!冒頭は意外とややぶっきらぼうに入り、チェロとオケとの対話を経て、総休止に。いつ始まるんだろう?としばし緊張の沈黙を経て、チェロが最弱音で歓喜の歌の旋律を奏で始め、様々な楽器に受けつがれ高らかに鳴り、今度は劇的な冒頭が帰ってきて歌が始まり…。この辺りはもうティーレマンさんの真骨頂で、劇的かつ大胆な指揮がピタピタッと決まり、本当に感動的です。そしてとどめの合唱が。ウィーン楽友協会合唱団の合唱は揃っていることはもちろんのこと、さらに前に前にとどんどん声が出てきて観客に大きく働きかけてくるような歌声の印象です。私たちの音楽だ、という自負を感じます。ソリストの4人もバランスが良く、オケや合唱に溶け込み、素晴らしかったです。ますます冴えるティーレマンさんの指揮。この辺りになると、感動の嵐に包み込まれてほとんど号泣、正直良く覚えていません。第9が偉大な曲であることを改めて体感することができた神演奏でした!!!
観客のみなさんもこのチクルス一番の熱狂的な拍手と歓声で応えます。オケと合唱が舞台から降りた後もスタンディング・オベーションが続き、一度ティーレマンさんが出てきましたがそれでも収まらず、2回目はキュッヘルさんと一緒に、3回目はソリストと合唱指揮者のプリンツさんと、そして最後またティーレマンさん1人あいさつしてお開きとなりました。
正に人生で一度聴けるか聴けないかレベルの最高のコンサートだったと思います。第9の真の魅力も体感することができました。ウィーン・フィルのみなさん、ウィーン楽友協会合唱団のみなさん、ソリストのみなさん、そして何と言ってもティーレマンさん、本当にありがとうございました!!!
(写真:クリムトの「ベートーベンフリース」のあるセセッシオン)
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2013(サントリーホール)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮者:クリスティアン・ティーレマン
ソプラノ:エリン・ウォール
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子
テノール:ミヒャエル・ケーニヒ
バリトン:ロベルト・ホル
合唱:ウィーン楽友協会合唱団
合唱指揮:ヨハネス・プリンツ
ベートーベン/交響曲第8番ヘ長調
ベートーベン/交響曲第9番ニ短調「合唱付」
8番はウィーン・フィルの輝かしい音色の出だしの後、さっそく大きく「ジャン!ジャン!」が入り、今日もティーレマンさんの指揮は快調です。ヴィオラやチェロのリズムを刻む音も本当に心地よい。第2楽章は規則正しいリズムで、プログラムにはメトロノームの話が出ていましたが、連想してウィーン市時計博物館を思い出しました。ここは歴史的な時計が沢山展示されていますが(日本の時計も!)、博物館の閉館後、深夜に大小の時計たちが楽しくダンスを踊り始めますが、トントントントントンとドアを叩き入ってくる警備員にビックリし慌てて元の場所に戻る…。ウィーン・フィルの音色で聴くと、そんな楽しい物語を想像してしまいます。
第3楽章のメヌエットもゆっくりめのテンポでやや大げさな印象。今度は滑稽な王侯貴族の踊りでしょうか?第4楽章で速くなるのかな?と思ったら、ここもたっぷり。これまで聴いた第4楽章で一番ゆっくりだったかもしれません。プログラムの前半に組まれることも多く、同じリズムを刻む系の曲では7番より軽い曲に見られがちの8番ですが、今日の演奏を聴くと、大変に聴き応えのある曲だということを再認識させてもらえます。非常にスケールの大きな8番、それを支えるウィーン・フィルの音色、名演でした。
9番ではウィーン楽友協会合唱団が初めて登場します。大きな拍手に迎えられての登場、オーケストラと合わせて、サントリーホールの舞台からはみ出てしまうのではないか?と心配してしまうくらいの大人数となりました。このチクルス一番の静寂の中、冒頭の空虚5度の和音が放たれます。基本的にはウィーン・フィルに任せつつ、随所でいろいろなニュアンスをつけてきたティーレマンさんですが、この9番に至っては、緩急自在かつそれが本当にしっくりきて、9番の魅力を120%伝えてくれる指揮。特に弦のニュアンスが凄くて、音を抑えて演奏している部分でも、背後で何か大きなものが動いているのが感じ取れるような、そんな凄味のある弦でした。劇的な演奏に、第1楽章の時点で早くも自然と涙が。
第2楽章はやや速めのテンポでウィーン・フィルの名人芸が体感できます。途中、長調になった時の期待感やチェロの懐かしい音色と言ったら!第3楽章は静かに優しく奏でられるヴァイオリンの美しさに陶然となります。この第3楽章、美しいものの時に間延びしてしまい、マーラーの4番の第3楽章と並んで苦手にしていた楽章でしたが、「こんなに美しい音楽だったのか!」と今日初めてこの楽章の素晴らしさを体感できたのかもしれません。ゆっくりゆっくり、愛おしむように進んでいき、感涙ものの演奏でした。
そして感激の第4楽章!冒頭は意外とややぶっきらぼうに入り、チェロとオケとの対話を経て、総休止に。いつ始まるんだろう?としばし緊張の沈黙を経て、チェロが最弱音で歓喜の歌の旋律を奏で始め、様々な楽器に受けつがれ高らかに鳴り、今度は劇的な冒頭が帰ってきて歌が始まり…。この辺りはもうティーレマンさんの真骨頂で、劇的かつ大胆な指揮がピタピタッと決まり、本当に感動的です。そしてとどめの合唱が。ウィーン楽友協会合唱団の合唱は揃っていることはもちろんのこと、さらに前に前にとどんどん声が出てきて観客に大きく働きかけてくるような歌声の印象です。私たちの音楽だ、という自負を感じます。ソリストの4人もバランスが良く、オケや合唱に溶け込み、素晴らしかったです。ますます冴えるティーレマンさんの指揮。この辺りになると、感動の嵐に包み込まれてほとんど号泣、正直良く覚えていません。第9が偉大な曲であることを改めて体感することができた神演奏でした!!!
観客のみなさんもこのチクルス一番の熱狂的な拍手と歓声で応えます。オケと合唱が舞台から降りた後もスタンディング・オベーションが続き、一度ティーレマンさんが出てきましたがそれでも収まらず、2回目はキュッヘルさんと一緒に、3回目はソリストと合唱指揮者のプリンツさんと、そして最後またティーレマンさん1人あいさつしてお開きとなりました。
正に人生で一度聴けるか聴けないかレベルの最高のコンサートだったと思います。第9の真の魅力も体感することができました。ウィーン・フィルのみなさん、ウィーン楽友協会合唱団のみなさん、ソリストのみなさん、そして何と言ってもティーレマンさん、本当にありがとうございました!!!
(写真:クリムトの「ベートーベンフリース」のあるセセッシオン)