「今日は品数多いんだよー」
仕事から帰った私に嬉しそうに、そう言う父。
母が体調を壊してから、平日の夕ご飯は
父が作ってくれている。
食卓に並んだのは、大根おろしとしらすの
和え物、もずくとキュウリの酢の物、エリンギ
とベーコンの炒め物、玉葱がたっぷり入った
味噌汁。
それまで台所に立ったこともなかった父が
ここまでできるようになるなんて、思っても
いなかった。
何十年も勤めた職場を退職したのが2年前
の春。その3ヵ月後に、母は入院した。
やっと自分の好きなことをして過ごせると
楽しみにしていた時間。そのすべてが、母と、
家の事のために費やす時間になった。
父が作ってくれた夕ご飯はとてもおいしい。
そして、とても、切ない。
