『WOWOW presents
サザンオールスターズ LIVE TOUR 2015
「おいしい葡萄の旅」』

2015年4月11日~8月18日

全国11ヶ所23公演

50万人動員



2️⃣
MC

13.よどみ萎え、枯れて舞え
14.顔
15.Happy Birthday
16.死体置場でロマンスを
17.Computer Children

(OH!FRESH!!~ドクダミ・スパークのテーマ~)

18.栞(しおり)のテーマ
19.あなただけを ~Summer Heartbreak~

20.真夏の果実


MC


21.おいしいね~傑作物語
22.Soul Bomber(ソウルボマー)(21世紀の精神爆破魔)
23.(The Return of)01 MESSENGER~電子狂の詩(うた)~
24.ブリブリボーダーライン





13.よどみ萎え、枯れて舞え


⇒MCをはさんで、サザンの“伝家の宝刀”が連発される。この曲も7th『人気者で行こう』の二曲目。

時はMTVの普及と共に米英でニュー・ウェーヴやポスト・パンクが席巻。桑田は鋭い時代感覚で音楽シーンの一歩先を読んでいた。
日本ではドラマ『金曜日の妻たちへ』略称<金妻>ブームがおこっていた中、「不倫」文化に物申した曲。

♪「いつも心に愛倫不倫症(アイ・リン・ブーケ・ショウ)」の歌詞は、桑田が作った造語だが、英語の響きを逆手にとって、日本語で韻を踏む<英語仮名まじり文>とでも呼ぶべき歌詞は当時衝撃的で、その後の日本のロック&ポップシーンに多大な影響をもたらした。


6thアルバム『綺麗』に収録されたレズビアン同士の駆け引きを描いた『赤い炎の女』と共に、渇いたリリシズム溢れるAOR。この曲でのサビでの三連の手拍子は、80年代の洋楽を彷彿とさせる。

“サザン狂”の間では、この曲のイントロと桑田の裏声コーラスが始まった途端、ヤッタ!、とばかりにガッツポーズが起った。



1984年『人気者で行こう』は、マイケル・ジャクソン『スリラー』、サントラ盤『フットルース』についで、年間アルバムチャート3位を獲得。邦楽ではぶっちぎりの1位に輝いた。






14.顔


⇒ここからロックバンドの金字塔を樹ち立てた二枚組アルバム8th『KAMAKURA』の曲が連打される。

渇いたAORに続くは、ひたすら容姿を嘆く歌。『イヤな事だらけの世の中で』以上に、レゲエ色が強いアレンジに。

70年代のボブ・マーリー⇒エリック・クラプトンに次ぎ、スティーヴィ・ワンダー『レゲ・ウーマン』を経て、80年代にはジョー・ジャクソンやスティングもレゲエ風味の作品を発表。デビュー当時から『当って砕けろ』『レゲエに首ったけ』などレゲエ好きだった桑田も、音楽の流行を鋭敏にとらえながら、モダンでデジタル・ビートなレゲエを基調とした曲を頻繁に発表した。



今回のライヴでは、グルーヴ感が抜群の曲順となった。

2016年発表の『ヨシ子さん』で、ついに〈桑田グルーヴ〉が大爆発する!









15.Happy Birthday


⇒デジタルを大胆につかったモータウン・ビートの秀作。スティーヴィー・ワンダーやマイケル・ジャクソンっぽい曲と言っていいだろう。



誕生日の歌。

黒っぽいのにメロウな曲調は桑田の十八番。ポイントは桑田の裏声とドゥ・ワップ風コーラス。








16.死体置場でロマンスを

⇒サザン年越しライブ2014「ひつじだよ!全員集合!」に続いて選曲された。

ハイテンションな冒険活劇。歌詞はまたもパーカッショニスト“毛ガニ”還暦をもじった歌詞に。

♪「そこに見たのは 白い T-born T-born

月の光に浮かぶ T-born T-born」

この「T-born T-born 」のコール・アンド・レスポンスが演りたかったのだろう。ロックバンド色全開のナンバーが続く。








17.Computer Children


⇒この曲も年越しライブ2014に続いて選曲された『KAMAKURA』のオープニング・ナンバー。

桑田クリティークが炸裂する。

ディスコ・ビートでも、ハード・ロックでも、ブルース・ロックでもある最高にカッコいい曲。

原曲でレコード針が跳ぶかのようなスクラッチ音のエフェクト処理が施された箇所は、ライブでは一瞬、演奏が止み照明が落とされる。


会場の空気感が一挙に張りつめ、爆発する。








18.栞(しおり)のテーマ


⇒サザンのヒットナンバーを期待するマイルドな聴衆を突き放し続けた挙げ句、久々にサザンのバラッド代名詞のこの曲が来る。8分の6拍子(ハチロク)のロッカ・バラード。

ここから<バラッドのサザン>三連発。

個人的には、<3・11>から半年を経て開催された桑田佳祐「宮城ライブ~明日へのマーチ!!~」の「弾き語りサザンコーナー」で桑田と原がデュエットしたのを思い出し、目頭が熱くなる。

苦難をこえて、いつしか祝祭と化し、音楽の神が降りた、あの敬虔な空間が。


ラブソングが続く。








19.あなただけを ~Summer Heartbreak~


⇒サザン復活、NHK『SONGS』以来の選曲。筒美京平とウォール・オブ・サウンド。AKB48『真夏のSounds good』の元ネタと言っても間違いではないだろう。誰もが、こんな曲が生涯に一曲でも書けたら……と思うはずだ。




アイドルみたいにシビレてた

Ah,それはせつないだけのLong Vacation



優しさも裏切りも身体(からだ)ごと受け止めて

波音に揺れながら Ah,愛されてた





の歌詞は、フランソワーヌ・サガン女史の『悲しみよ、こんにちは』や山田詠美女史の『ベッド・タイム・アイズ』のよう。


大人のラブソングであり、この渇いた切なさが素晴らしい。
今回のライブでは熱く胸に迫ってくる。これぞ極上のポップス!








20.真夏の果実

⇒ここでダメ押し的に来た!、と思っても、やっぱり酔いしれさせられる桑田マジック。


世代をこえて、日本のラテン歌謡的伝統への追体験を迫る名曲だ。



『あなただけを』が終わった途端、いったん照明が落ちて暫し、バンドの演奏が始まる。


イントロの原坊の旋律が夏の終わりの切なさを響かせる。





涙があふれる 悲しい季節は

誰かに抱かれた夢を見る


泣きたい気持ちは言葉にできない

今夜も冷たい雨が降る




こらえきれなくて ため息ばかり


今もこの胸に 夏は巡る




四六時中も好きと言って


夢の中へ連れて行って


忘れられない Heart & Soul


声にならない



砂に書いた名前消して


波はどこへ帰るのか


通り過ぎ行く Love & Roll



愛をそのままに






マイナス100度の 太陽みたいに

身体を湿らす恋をして


めまいがしそうな真夏の果実は

今でも心に咲いている




遠く離れても 黄昏時は


熱い面影が胸に迫る











こんな夜は涙見せずに


また逢えると言ってほしい


忘れられない Heart & Soul




涙の果実よ





「こんな夜は涙見せずに/また逢えると言って/ほしい」の箇所が実に美しい。


このタイミングでのこの曲の披露には、参りました、と言う以外にない。








21.おいしいね~傑作物語

⇒MCをはさんで「いらなかった曲コーナー」。

この曲でも、“サザン狂”が熱狂した。


この曲はブルース、あるいはリズム&ブルース。レイ・チャールズの『サムデイ・ベイビー』にインスピレーションを受けたのは間違いないだろう。それと童謡の『月の砂漠』だろうか。
桑田がクールになるのも無理はない。88年6月25日、サザン24thシングル『みんなのうた』のC/Wとして発表されたこの曲は 、実に3年ぶりの、サザンオールスターズのシングルだった。

なぜなら、この頃、サザンは8th『KAMAKURA』を完成させたことで役割を完結してしまっていたのだから。サザンのメンバー全員がソロ活動を積極的に展開した。桑田は全編英語詞・全編ノンシングルカットの 『NIPPON NO ROCK BAND』が日本語でないロックが必要か?の百家争鳴の論争を吹っ飛ばしロックバンドとして史上空前のメガヒットを記録。日本語ロックのシングル4曲では、サザンでもなし得なかった初のシングル週間1位を獲得。日本ロック界を牛耳った。ところが、山下達郎に諭されたことをも契機に、冷静に戻った途端、今度はロックも歌謡曲も洋楽もすべて「ポップス」(桑田佳祐)と言い始め、世間を驚かせた。『悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)』、『いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)』などの“サザンごえ”の傑作を次々と量産した。折から生まれた小林武史、藤井丈司とのトロイカ体制が確立された。その結果、ボブ・ディランの『セルフ・ポートレート』を彷彿とさせる作品ソロ1st『Keisuke Kuwata』が“最高傑作”として誕生した(7月9日発売)。その二週間前の6月25日、デビュー10周年で急きょ“デッチ上げられた”のが、不遇の傑作にしてファンの人気の高い『みんなのうた』だった。

しかも、ソロアルバムと引き替えのレコード会社の要請と言うべきか、モンスターバンドの宿命と言うべきか、7月26日から初のソロツアーならぬサザン10周年「-真夏の夜の夢-大復活祭」ツアーがスタートさせられた。

当時、ソロ活動が軌道にのっていたメンバーからしたら、“なんでやねん!、また、大衆食堂かよ!”の心境だったろう、あくまで当時は。


という訳でこの曲『おいしいね~傑作物語』は、ニュー・ミュージック的なるものへの“最新ヒットチャート”的批判と業界的しがらみの中で大衆的ヒット曲を量産することを義務づけらけた「みんなのサザン」への自虐と憤激の「This song's about my actions」に他ならない。





おいしいね そりゃ見事だね

ぐっと産業ロックの陽が昇る

言葉にならぬほど Oh,yeah
(商う人だらけ)


最高ね 瞳の奥は

ちょいと業界不惑〔fuck〕に汚れてる

お前のためならば
(売り込むためならば)

This song's about my actions



()内は二番の歌詞。




ところが、このブルースが翌年89年売れなかったサザン史上オール・タイム・ベスト級の傑作『女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)』に結実化するのだった。



今回のライブでこの曲は、ライブ全体を引き締める圧倒的な存在感を発揮した。これが桑田ブルースの真骨頂だ。


そして、私は今思う。この曲と『みんなのうた』は、サザンオールスターズにとって必要だったのだ。<3・11>以降、桑田は<みんなのサザン>であることをもう後悔しない。かけがえのない瞬間々々をリスナーと分かち合いたいのだ。

こうして『葡萄』は完成した。「産業ロック」として「歌謡曲」として<我らサザン>の新たなる旅が始まる。

その意味で、現在的に、この曲は「日本大衆音楽の粋」を極めるサザンオールスターズの世界に冠たる独自性を逆証したものとしての歴史的意義をもつ!







22.Soul Bomber(ソウルボマー)(21世紀の精神爆破魔)


⇒続けて、ハードなプログレッシヴ・ロックの爆音が轟く。キング・クリムゾン『クリムゾン・キングの宮殿』収録『21世紀の精神異常者』と、サイケデリック・ロックに傾倒したザ・ビートルズの世界。


プログレになると途端に桑田は曖昧に聞こえる歌詞で、時事問題や哲学、精神心理学を始める。この曲はキング・クリムゾン+ピンク・フロイド風のジュルジュ・バタイユ。


とはいえ、今回のライヴでは、おいしいね⇒⇒電子狂のならびは異様にかっこよく、ダイナミック。小林武史とのタッグを解消した後に生まれた曲を並べた。








23.(The Return of)01 MESSENGER~電子狂の詩(うた)~


⇒前曲が鉄壁のバンドサウンドの大伽藍12thアルバム『Young Love』収録なら、この曲は世紀末日本の<和洋と生死の自己矛盾的自己同一>の名盤13th『さくら』収録、次の曲が日本ポップミュージックの万葉集11th『世に万葉の花が咲くなり』収録。


電子狂を待っていたファンの気持ちに応え、ハードなデジタル・ロック&ブルーノートをかましてくれた。

この曲は当時の“電脳的彩電的疎外”の走りをただ歌っただけではない。国民総背番号制へのクリティークでもある。今や「マイナンバー」の時代。








24.ブリブリボーダーライン


⇒個人的には11th“世咲”で一番ピンと来ない曲だが、久々のライヴver.は盛上った。和洋ゴッタ煮の不思議な曲。

♪ブリブリブリボーダーライン









③につづく。











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