▲♪あの日から何度目の 夏が来ただろう
2008年のoverture
▼2013年のoverture













②のつづき。




 2013年サザン復活ツアーが終了し一ヶ月が経った10月23日、原由子がヴォーカリストとして参加した、冨田ラボの4枚目のアルバム『Joyous』(SPEEDSTAR RECORDS)が発売された。

冨田恵一が「冨田ラボ」名義で発表するアルバムでは、楽曲本位でアーティストが選ばれるが、今回のゲスト・ヴォーカリストには原由子(サザンオールスターズ)、横山剣(クレイジーケンバンド)、椎名林檎、さかいゆうが参加した。また、作詞では椎名林檎、高橋幸宏(サディスティック・ミカ・バンド、YMO)、坂本慎太郎(ex.ゆらゆら帝国)、中納良恵(EGO-WRAPPIN'エゴラッピン)、堀込高樹(キリンジKIRINJI)、青山陽一が依頼された。
原由子はソロヴォーカル曲『私の夢の夢』に加え、『この世は不思議』、『都会の夜 わたしの街』でヴォーカルを披露している。

さらに、原由子が書き下ろした『ヘヴン』が主題歌である映画『人生、いろどり』(御法川修監督作品)のDVDも12月25日に発売された。
サザンの『人生の散歩道』も含め原由子は2012年から等身大の音楽活動を再開したのだった。






翌日10月24日、桑田佳祐が電撃的にソロ活動を発表した。






4年ぶりにAct Against AIDS(AAA)コンサートを恒例のパシフィコ横浜国立大ホールで開催する、というのだ。11月30日-12月1日、12月3日-12月4日と初の4デイズ開催で、しかも4日の最終公演は、全国映画館で生中継されると共に8日にWOWOWで放送されると発表された。


Act Against AIDS 2013 桑田佳祐

『昭和八十八年度!第二回ひとり紅白歌合戦』


である。
サザンが活動休止した2009年以来4年ぶりのチャリティ・コンサート開催だ。



サザンのスタジアム・ツアー最終公演より、わずか2ヶ月。9月8日の豊田公演で、折から決定した「2020年東京五輪」開催のニュースに触れた桑田佳祐は、オリンピックがそうであったように、かつて歌謡曲も人々の人生に希望の明かりを灯してきたはずだ、と考えた。桑田は迷わず“ひとり紅白歌合戦”を取捨選択した。



当初、東京にまつわる歌を中心にしようとしていたが、どうもしんみりしてしまう、かつ20代から10代の若者にも刺さる最近の曲もレパートリーに加えたい。こう桑田は考えた。

その結果、桑田は「禁断のひとり紅白」に踏みきる決断をする。



リストアップ200曲から100曲、そして60曲にしぼりこんだのは、なんと11月に入ってからであった。




「禁断の紅白」──桑田佳祐の「ひとり紅白歌合戦」は元々、桑田が紅組と白組と交互に分かれ全60曲近くもの歌謡曲coverを4時間弱ひとりで歌い上げるという企画だ。ここから派生したのがAKB48の「紅白対抗歌合戦」、さらにももいろクローバーZの(「ゆく桃くる桃」を発展的に解消し、「歌の真剣勝負」「全出演者が生歌でフルサイズパフォーマンス」「性別によって組分けはしない男女混合方式」が話題となり大晦日の恒例音楽番組として一般的にもガッチリと定着した)「ももいろ歌合戦」要するに桑田はこれをたったひとり(バンドセット)でやってのける訳だ。実際、2008年の第一回開催時、桑田は(サザンのヒロシと原坊の歌った『3年目の浮気』)1曲をのぞいて、60曲ほぼフルver.で歌い上げた。





今回の『昭和八十八年度!第二回ひとり紅白歌合戦』最大の焦点は、言うまでもなくサザンのツアーを終え2ヶ月しか経ていない状態の中、果たして2010年術後の桑田が一体何曲歌い上げるか?、だった。




だが、還暦間近の桑田は1公演につき60曲(メドレーを1曲と換算すれば、公称55曲)約4時間を歌い切った。

しかも中1日あけて4日間! 240曲❗


われわれは驚きを禁じえなかった!





しかも、この音楽家の情熱たるや凄まじかった。桑田が生まれる20年前1936年の藤山一郎『東京ラプソディ』に、1949年の高峰秀子『銀座カンカン娘』から始まり、槇原敬之・aiko・奥田民生・いきものがかり・斉藤和義、美空ひばり・(2013年に紅白引退を発表した)北島三郎まで、歌謡曲・演歌・クラシック・ラテン・ジャズ・GS・フォーク・ポップス・ロック・リズム&ブルースまで日本ポピュラー・ミュージック史を総なめにしてしまったのである。




そもそも、きゃりーぱみゅぱみゅとゴールデンボンバーもリストアップしていたようだが生バンドでの盛り上がりを考えて今回は見送った。

代わってドリフメドレーでサザンオールスターズが出演し会場を湧かせたのだった。

中盤から終盤にかけては一気に会場のボルテージがあがった。特に、2011年の世界的ヒット曲レディ・ガガの『ボーン・ディス・ウェイ』を「ジジイ・ガガ」と称しつつハチャメチャなコスプレとヅラで完全武装し、英詞と自作の日本語詞のチャンポンで披露。超ド級のエンターテイナーぶりを発揮した。途中、1964年の三波春夫版『東京五輪音頭』をサンドウィッチし熱狂的なメドレーを展開した。


そしてラストを飾ったのは和田アキ子1970年のヒット曲『笑って許して』。特別枠の大トリと称し「和田アキ男」ことジャンボ・アッコが、国立大ホール客席後方扉より乱入。登場を予見した「甘皮静夫」「マッタイラ・サダトモ」「黒乳首徹子」の3人が直前に失禁するという余興映像すら挟みつつ、桑田は『笑って許して』を熱唱しフィナーレを迎えたのだった。






余談だが、桑田の“ひとり紅白”に自身の歌が選曲されることを待望していたのが和田アキ子だった。和田にとって桑田は10年も下の後輩であるが、元祖「リズム&ブルーズの女王」の異名を取った彼女にとって、魂の叫びを誰よりも感じるのが桑田の音楽・歌唱だった。その桑田が企画し選曲する「ひとり紅白」の演目に自身の歌が2度にわたって加えられることは、時代をこえ音楽史に残る最高の栄誉なのだからである。北島三郎が2013年を区切りとし「紅白引退」を表明した中で、和田アキ子が歌手として今後も歌い次ぐ、何よりの気概にもなるのだろう。


同じく「ふとした病」から復帰し<生涯一音楽屋>として人生を全うしようとする桑田にとっても、音楽の前に頭を垂れる以外ない。一説によると桑田は今回のコンサートにラインナップした歌手に直筆の手紙を送ったらしい。便箋7枚もの手紙に、律儀な男だ、と和田アキ子は痛く感心した。


▲中西正樹は2019年より「45歳という異例の若さで」アミューズ代表取締役社長、2008年からはビクターの音楽レーベルSPEEDSTAR RECORDS内のサザンのプライベートレーベルタイシタレーベルの代表取締役社長を務めた。
2025年6月29日、アミューズ・サザンの<育ての親>である代表取締役会長の大里洋吉が実に44年ぶりに、代表取締役社長を兼任することが発表された。
中西正樹はアミューズの取締役を外れて、系列子会社であるアミューズミュージックと(サザンのプライベートレコードレーベル)タイシタレーベルおよび茅ヶ崎エフエムの代表取締役社長を継続している。



こうして、桑田佳祐は音楽産業総体が空洞化しつつあった2013年末、サザン活動再開に連動して4年ぶりのAAAチャリティーコンサートに出演し、日本ポピュラー・ミュージックの伝統と現在(いま)を鮮明に提示し、見事今に受け継いだ。


同時に桑田にとって「ひとり紅白歌合戦」で追求したことは、お客さんに楽しんでもらうばかりでなく、日本の音楽をルネッサンスする営みであると共に自身の音楽的ルーツに立ち返りつつ日本歌謡曲を批判的に継承し、さらにみずからの音楽性をもう一度新たに追求し直し(反省し)・深め・掘り下げる、まさに現在的画期的意義をもった。




 こうして、2013年を通し、音楽家としての桑田佳祐は“いつも通り”音楽に手を抜かなかった。


 核心的には再始動したばかりのサザンオールスターズの歴史をツアー終了と同時にまたしても否定し、来たるべき2014年~2015年に向けた<革命>を準備(止揚、アウフヘーベン)する道を選んだのである。






すなわち、サザンオールスターズは過去のベスト盤を発売せず、自身の口からデビュー以来の歴史を饒舌に語ることなく、現在直下リリースした新曲とライヴそのものだけで勝負した。しかも、同じやり方は通用しないとばかりに、もはや2013スタジアム・ツアーのくりかえしを勇気をもって拒否し、2014年越しライブ、2015ライブツアー「おいしい葡萄の旅」に撃って出た!



プロデビュー35周年、驚くべきことに、またしてもサザンオールスターズと桑田佳祐の底力を魅せつけられた1年となった。






Act Against AIDS 2013 桑田佳祐

『昭和八十八年度!第二回ひとり紅白歌合戦』

atパシフィコ横浜
11月30日、12月1日、12月3日、12月4日
20,000人動員4公演チャリティー

3h45min


座席に演出用サイリウム
映像友情出演:爆笑問題



【Set list】



<紅白ベテラン対決>

01.東京ラプソディ
藤山一郎

02.銀座カンカン娘
高峰秀子



〈GS・ビート歌謡対決!!〉

03.銀河のロマンス
ザ・タイガース

04.虹色の湖
中村晃子

05.スワンの涙
オックス

06.涙の季節
ピンキーとキラーズ

MC

07.小さなスナック
パープル・シャドウズ

08.涙のかわくまで
西田佐知子

09.エメラルドの伝説
ザ・テンプターズ

10.京都の恋
渚ゆうこ(ザ・ベンチャーズ)




〈フォーク・ソングからニュー・ミュージック対決〉

11.若者たち
ザ・ブロード・サイド・フォー

12.この広い野原いっぱい
森山良子

13.風
はんだのりひことシューベルツ

MC

14.なごり雪
イルカ

15.22才の別れ
風(伊勢正三)

16.わかれうた
中島みゆき




〈バブルからの贈り物…対決〉

17.I LOVE YOU
尾崎豊

18.恋におちて -Fall in Love-
小林明子

19.リバーサイドホテル
井上陽水

20.桃色吐息
高橋真梨子


MC
次の曲は日本の“エルトン・ジョン”と言っていい人の曲です



21.遠く遠く
槇原敬之

22.春よ、来い
松任谷由実




〈昭和歌謡大ヒットメドレー〉

23.グッド・ナイト・ベイビー
ザ・キング・トーンズ

24.小指の想い出
伊東ゆかり

25.星のフラメンコ
西郷輝彦

26.太陽がくれた季節
青い三角定規

27.傷だらけのローラ
西城秀樹

28.手紙
由紀さおり

29.港町ブルース
森進一

30.恋の奴隷
奥村チヨ

31.シクラメンのかほり
布施明

32.みずいろの手紙
あべ静江

33.東京砂漠
ヅラ山田洋とクール・ファイブ feat.桑田佳祐

34.~おいしい秘密
ヅラ山田洋とクール・ファイブ feat.桑田佳祐


35.北の宿から
都はるみ

36.見上げてごらん夜の星を
坂本九

37.喝采
ちあきなおみ




〈時空を超えた異色対決〉

38.~8時だヨ!全員集合大特集チョットだけヨ!全員集合
ザ・ドリフターズ(サザン)


MC
設定⇒いかりや(桑田)、加藤(松田)、高木(関口)、ブー(原※仲本はいない)、志村(毛ガニ)

⇒弘が編みタイツで加藤茶のギャグ「チョットだけヨ!」(ストリップ小屋もどきのコント)をやった


39.ドリフのズンドコ節
ザ・ドリフターズ(サザン)


MC


40.ドリフのビバノン音頭
ザ・ドリフターズ(サザン)


41.Jupiter
平原綾香




〈やっぱり現役も負けてられないよね!!コーナー〉

42.カブトムシ
aiko

43.ありがとう
いきものがかり

44.イージュー★ライダー
奥田民生

45.やさしくなりたい
斉藤和義




〈TOKIOロックスター対決〉

46.六本木心中
アン・ルイス

47.TOKIO
沢田研二




〈スーパーアイドル対決〉

48.なんてったってアイドル
小泉今日子

49.男の子女の子
郷ひろみ




〈R15指定! 愛と欲望の守護神対決!!〉

50.どうにもとまらない
山本リンダ

51.(Sing,Sing,Sing)
~(Stop! In The Name Of Love
ダイアナ・ロス&ザ・スプリームス)

52.Born This Way
ジジィ・ガガ(とある農村)

53.~(東京五輪音頭
三波春夫)
withサザン



【ENCORE】

54.SOMEDAY
佐野元春

55.ひだまりの詩
Le Couple


MC


56.アンパンマンのマーチ
ドリーミング

57.愛のさざなみ
島倉千代子

58. 帰ろかな
北島三郎

59.川の流れのように
美空ひばり

60.笑って許して
和田アキ男




桑田佳祐 Vocal & Guitar

斎藤誠 Guitar & Chorus
中重雄 Guitar
角田俊介 Bass
河村“カースケ”智康 Drums
はたけやま裕 Percussion
片山敦夫 Keyboards
深町栄 Keyboards
山本拓夫 Sax & Flute

吉田治 Sax
鍬田修一 Sax
佐々木はるか Sax
西村浩二 Trumpet
菅坡雅彦 Trumpet
横山均 Trumpet
村田陽一 Trombone
広原正典 Trombone
東條あづさ Trombone
朝里勝久 Bass Trombone
CHICA Violin
笠原あやの Cello
TIGER Chorus
田中雪子 Chorus
佐藤嘉風 Chorus
角谷仁宣 Synth & Programming

EBATO Choreographer

AAA“ひとり紅白”DANCERS
Dancer


AND

サザンオールスターズ







<2013年年末~2014年7月>


2013年の年の瀬も押し迫る12月21日、百田尚樹原作・山崎貴監督作品『永遠の0』が公開された。前述したようにサザンオールスターズの『蛍』がエンディングに流れるこの映画は、8週連続1位を記録し、年頭から今年度日本映画ナンバー1の呼び声をほしいままにした。




批評的な評価は賛否両論となったが、涙で手拭いを濡らしこの映画の主人公にインスピレーションを受けた桑田は、「戦争放棄」の意志をこめて『蛍』を作曲した。映画エンディングver.のテイクは、シングルver.のテイクが完成する前に山崎組に提供された。



映画の大ヒットに比例し、54枚目のシングル『ピースとハイライト』は再び三たびシングルチャートを急上昇し、2014年7月現在、その累積売上は37万枚に達した。





さらに、12月31日サザン復活ライヴ映像作品

『サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013 灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!! 胸熱完全版』

がリリースされた。



35年間の声援とリベンジ・イヤー1年間の感謝を込め、何とか2013年中にお届けしたい、との桑田の思いに応えサザンのフロントチームが結束した結果、大晦日発売にこぎつけた。


その結果、このサザンのライブDVD&Blu-rayはオリコン週間チャートで3冠に輝くと共に映像作品としては4つの年代で首位達成の金字塔を樹ち立てたのであった。


1月13日付

★オリコン週間映像DVDランキング1位

★オリコン週間映像BDランキング1位

★オリコン週間総合ミュージックDVD・BDランキング1位

の3冠達成。




ミュージック映像作品では史上初の4年代1位を獲得した。
(1980年代・1990年代・2000年代・2010年代)



◆89年4月12日発売
『女神達への情歌(報道されないY型(ケイ)の彼方へ)』
⇒25thシングルと同時発売されたビデオシングル



◆93年3月27日発売
『歌う日本シリーズ1992~1993 LIVE at YOKOHAMA ARENA 29th Dec. 1992』



◆06年3月15日
『FILM KILLER STREET & LIVE at TOKYO DOME』



◆08年DVDは12月3日、BDは12月17日発売
『サザンオールスターズ真夏の大感謝祭 LIVE』





こうして、サザンは35周年リベンジ・イヤーを華々しく飾ったのである。






【2014年】


2月8日、TVドラマ『最高の離婚Special 2014』が放送された。桑田佳祐が約1年前にリリースした『Yin Yang(イヤン)』がエンディングに流れた。






その1ヶ月後、3月13日、横浜市立横浜吉田中学校の卒業式で、原由子が作曲と歌詞の一部を手がけた校歌が斉唱された。校歌は元々2013年に、原由子の実家の天ぷら屋を経由して依頼された。それは原由子の母校である吉田中学が、耐震上の理由により2013年4月21日をもって閉校となり「横浜吉田中学校」として再編統合されたことが彼女の心を揺り動かすきっかけとなったのだった。


なお、閉校直前の2012年11月21日、吉田中学校にももいろクローバーZが訪れ、中学時代の想い出にと、新曲『黒い週末』を校内放送で流し体育館でライブを行ったことも記憶に新しい。
中島みゆき作『泣いてもいいんだよ』で初のオリコン週間1位を獲得したももいろクローバーZは、7月30日にニューシングル『MOON PRIDE』をリリースした。




その前日、3月12日、<3・11>から3年を経た翌日、

『桑田佳祐 Act Against AIDS 2013 昭和八十八年度!第二回ひとり紅白歌合戦』

の映像作品がリリースされた。



作品化にあたって収録曲全曲承諾は洋楽もあり容易ではなかったが、スタッフチームが海外に訪れる等尽力し、最終的に発売にこぎつけた。


オリコン3月24日付ウィークリーBlu-ray&DVDチャートで同時1位を獲得。映像作品としては、男性ソロ・アーティスト初の総合首位を獲得した。




同じく3月30日、元ORIGINAL LOVEの宮田繁男さんが永眠された。

桑田・原の後輩として青学時代“Better Days”に在籍し、サザンのデビュー後も尽力。在学中にドラマーとしてプロデビューを果たし、輝かしい音楽人生を歩まれた。

原由子ソロデビューアルバム『はらゆうこが語るひととき』(1981.04.21)と、ソロデビューシングル『I LOVE YOUはひとりごと』(同上)は故人の力添えなくして、歴史に名を残すことはなかった。

嘉門雄三名義でリリースされた桑田の伝説の洋楽カヴァーLIVEアルバム


『嘉門雄三 & VICTOR WHEELS LIVE!』


(@Shibuya eggman 1981.12.11-12

/1982.03.21リリース)

での故人のドラム・プレイ、中でもオーティス・クレイのカヴァー『Trying To Live My Life Without You』に入る寸前の「ハイ、宮田です!カウント行きます!」の第一声は永久に不滅である。



4月4日故人の葬儀が営まれた。




4月に入ると、9日『サッポロプレミアムアルコールフリー』のコマーシャルに桑田佳祐が出演していると共に、サザンの新曲『パリの痴話喧嘩』が使用されていることが発表された。

サッポロのプレアルでは昨年桑田のソロ名義の新曲が使用されてきたので、サザンの新曲CMオンエアは意表をついた。

この曲は日本語にもかかわらず、フランス語で歌っているかのようなシャンソンである。






さらに、4月18日竹内まりやの新曲に夫・山下達郎に加えて、桑田佳祐・原由子夫妻がコーラスとしてゲスト参加していることが発表された。この楽曲は20日より毎週日曜に放送されたドキュメンタリ対談番組『ワンダフルライフ』のテーマ曲で、7月23日にリリースされた竹内まりやのニューシングル

『静かな伝説(レジェンド)』

である。



公私にわたり親交が深いこの4人が楽曲制作で顔を揃えるのは、山下達郎の傑作アルバム『僕の中の少年』収録の『蒼氓』以来、実に26年ぶりとなった。
竹内まりやは『静かな伝説(レジェンド)』も収録された、35周年イヤーを締めくくる7年ぶりのニューアルバム

『TRAD』(トラッド)

を9月10日にリリースした。



また、5月28日、平井堅がコンセプトカヴァーアルバム

『Ken's Bar Ⅲ』

をリリースした。このアルバムは平井がアコースティックをメインに据えたコンセプト・ライヴ「Ken's Bar」15周年を記念して発表したものだが、サザンの『いとしのエリー』が収録されライヴでも披露された。平井は6月6日の『ミュージック・ステーション』にも出演し、「国宝級の名曲」と紹介し『いとしのエリー』を心こめ歌唱披露した。余談だがタモリが寄ってきたカメラに向け「クワタくん」と呟いたのも印象的だった。新作披露を待っているという合図(サイン)であった。


同じく28日、aiko15周年イヤーの締めくくりに『別冊カドカワ 総力特集 aiko』が角川マガジンズより出版された。同書には同日リリースされたaikoのニューアルバム特集と並んで、桑田佳祐のメッセージが寄稿された。


このaikoの11枚目のアルバム



『泡のような愛だった』

は6月9日付オリコン週間チャート1位を獲得した。





④につづく。

.








.



 



▲2026.10.04  本人初の新作解説動画公開

 




 

 



 


▲2026.03.27 全国ロードショー



















①のつづき。




 ①で見てきたように、サザンが復活ツアーを開幕した直後、ぶっちぎりの1位に輝いた新曲『ピースとハイライト』に込められたメッセージを題材とし、8月15日の終戦記念日を境に新聞各紙が積極的に論説を展開した。


その直後の8月20日、当時、日本維新の会共同代表であり大阪市長であった橋下徹が休暇開け、共同通信社に抗議したことが話題となった。


18日のサザンオールスターズ神戸公演を安室奈美恵、金本知憲、関西のタレントらが観覧したが、家族同伴で観覧した市長・橋下が、最初から着席したままで時折拍手していた、と報じられた記事について、共同記者会見で市長・橋下が異を唱えたのである。


橋下はサザンに失礼であり、悪意に満ちた記事だと抗議した。同伴した身内は大ファンでずっと立って観覧していたし、自分は腰をすえてサザンと自分の35年間を振り返りながら味わい深く楽しんでいた、と弁明した。

この事態は、サザンの楽曲が多くの人々のその時々の人生に深く関わっていることを示唆していると共に、人それぞれのコンサートの楽しみ方を再考させる契機となったことは記憶に新しい。





そして、8月31日。サザン茅ヶ崎公演が近づいていた。


前日のテクニカル・リハーサルには、観光地さながらに、数多のギャラリーが訪れた。



サザンオールスターズにとっては、2000年8月18日(公開ゲネプロ)・19日・20日、当時5万人以上の署名が集まり実現した「伝説の茅ヶ崎ライブ」(茅ヶ崎はリーダー・桑田佳祐の故郷)以来、13年ぶりの<凱旋=復活ライブ>だからだ。

しかも、2000年当時、諸々の事情を抱え必ずしも(要するに演奏が)完全に満足いった訳ではなかった茅ヶ崎公園野球場でのライブに、桑田佳祐がリベンジを賭けていることが話題となっていた。

その結果、42都道府県全国120館の劇場で2日間にわたり開催される、サザン茅ヶ崎公演ライブビューイングのチケットがほぼ即日完売となった。

初日に桑田佳祐が服部信明茅ヶ崎市長から「茅ヶ崎市民栄誉賞」を授与されるニュースが流れた。さらに、2日目の公演では「サザンオールスターズ茅ヶ崎公演パブリックビューイング実行委員会」が主催し、茅ヶ崎市役所西側駐車場で5000人規模のパブリックビューイング開催も発表された(巨大スクリーン縦4・6m×横6・1m。当日は屋台や出店が出店し、近隣にもギャラリーが集まり、賑々しい雰囲気で大盛況となった)。



サザンビーチもますます賑わいをみせたが、この頃、夜半になると潮風が身に染みた。

ライヴ演出に用いられる「胸熱リストバンド」が配られたのも、茅ヶ崎公演と宮城公演だった。



こうして、8月31日当日を迎えた。

この夜の『蛍』は完璧だった……。




茅ヶ崎公園野球場には群衆が詰めかけた。

公園入口付近から歩道橋と橋下、バックネット裏の国道を挟む両端の車道、その奥の海岸からサザンビーチまで、ライブの“音漏れ”聴きたさに大群集が押し寄せた。


ライブが始まって日が暮れる頃には、野球場のぐるりは、さながら“人間の鎖”でつながれたかのように埋め尽くされた。国道、サザンビーチ、砂浜、歩道橋、路地裏、幼稚園、ラチエン通り、家々の庭にベランダetc.……市役所駐車場で開催された5千人のパブリック・ビューイングを含めれば、2日目の茅ヶ崎公演の動員数は優に5万人(映画館でのライブビューイングを含めれば10万人)をこえていた。



だが、サザン楽団は今回の茅ヶ崎公演を心から楽しみ、ツアー演出に磨きをかけつつも、 "いつも通り" のステージをごく自然に披露した。

時にしんみりと、時に熱狂的に、時に過剰に、メンバー自身が心踊らせ納得ゆく形で<みんなのサザン>として聴衆と絆を育んだ。


しかも、反戦平和を誓う『蛍』では、「胸熱バンド」が放つ光で会場一面にホタルが飛び交うかのような光景が現出した。時の日本天皇制ボナパルティズム国家権力のアジア・太平洋侵略戦争や2011年<3・11>東日本大震災とそれを契機とした福島第一原発炉心溶融・爆発事故の犠牲となった方々、また、すでに召された肉親や知人を弔う鎮魂のムードに包まれた。桑田佳祐は後に、この時会場で見た光景について、長いキャリアの中ステージ上で初めて涙ぐみそうになったが「歌えなくなっちゃうから」こらえた、と語った。今回の茅ヶ崎ライブでサザンオールスターズと全国聴衆が音楽で心通わせた瞬間だった。



サザンオールスターズは、今ツアー開幕以来、最高のステージを披露した。

見事13年前の借りを返す魂のこもったライブパフォーマンスで魅了した。



序盤の『勝手にシンドバッド』で桑田佳祐は「茅ヶ崎カモンじゃあ!」の雄叫びを轟かせた。


さらに、アコースティック・コーナーでサザン楽団はオーディエンスの心に響く演奏に徹した。

リード・ヴォーカルをとる桑田は時にボブ・ディラン、時にエリック・クラプトン、時にスティーヴィー・ワンダー、時にオーティス・レディング、時にレノン&マッカートニーが憑依したかのように、満場を盛り上げつつ、入魂の歌唱と表現力で圧倒した。



"鳥肌が立った"とはこのことである。私見では、日産スタジアム公演ではサザンオールスターズ5人のステージに胸踊った。これに対して、茅ヶ崎最終公演にはサザンの演奏する音楽そのものに胸が熱くなった。<バイバイマイラヴ><エリー><轍>のクワタのシャウトは神がかっていた。もはや術後も年齢も一切関係ない。昨今のヴォーカリストとの、天と地ほどの格の違いを魅せつけた。





♪

あの日から何度目の夏(秋)が来ただろう

出逢ったり 別れたり くり返し

美しい 思い出も 大切だけど

人生はこれからを 夢 見ることさ!

♪

-『みんなのうた』を演奏する前に挿入したover ture、2013胸熱ver.より



▲2008年『夕方Hold On Me』を演奏する前に挿入されたoverture

▼2013年『みんなのうた』を演奏する前に(5年ぶりに)挿入されたoverture













最後に桑田佳祐は宣言した。また必ず茅ヶ崎に来る、と。打ち上げ花火が余韻を残した。


(さらに10年後の2023年、9月27日・28日と9月30日・10月1日には茅ヶ崎公園野球場で、10年ぶり3度目のサザン茅ヶ崎凱旋ライブが初の4DAYS開催された。サザンにとって地元茅ヶ崎でのライブは1981年7月4日の「そちらにおうかがいしてもよろしいですか?」ツアー茅ヶ崎市民会館公演以来、45年間でたった4度目)。


1981年7月4日 茅ヶ崎市民会館



2000年8月18日 茅ヶ崎公園野球場(茅ヶ崎市民限定公開ゲネプロ)

2000年8月19日 茅ヶ崎公園野球場

2000年8月20日 茅ヶ崎公園野球場



2013年8月31日    茅ヶ崎公園野球場

2013年9月  1日 茅ヶ崎公園野球場



2023年9月27日 茅ヶ崎公園野球場

2023年9月28日 茅ヶ崎公園野球場

2023年9月30日 茅ヶ崎公園野球場

2023年10月1日 茅ヶ崎公園野球場 10公演目












そして、豊田スタジアム公演から2週間を経た9月22日、ツアー・ファイナル宮城公演が行われた。



最大の注目点は、5年ぶりに活動を再開したサザンが、8年ぶりのツアーの最終地点(ゴール)として、東京ではなく、「約束の地・東北」は宮城を選んだことだった。



2011年震災からちょうど半年を経た9月10日-11日に桑田は『宮城ライブ~明日へのマーチ!!~』をセキスイハイムスーパーアリーナ(グランディ・21)で開催した。


翌2012年の9月15日-16日は、『桑田佳祐 LIVE TOUR 2012 I LOVE YOU - now & forever -』を同じ会場から開始したのだった。



「また帰って来るからね!」-この“約束”を文字通り果たすため、桑田は1年ぶりに、否、今回、サザンオールスターズとして帰って来た。
サザン宮城公演は、2005年の『みんなが好きです!』ツアーの一環として、10月29日-30日にグランディ・21で公演を開催して以来、実に8年ぶりのことだった。


今回の宮城スタジアム(現・ひとめぼれスタジアム宮城)でのコンサートは、2002年と2003年のスマップ、2010のエグザイル以来、4年ぶり通算3組目の開催であった。
(2014年9月20日にGLAYが開催。また2015年には9月12日にMr.Childrenが、9月19日20日22日23日には嵐が開催。)


2011年以来恒例となった「虹の広場」も設置され、地元・東北の出店は過去最大35店に。大漁旗や提灯の燈りが公演を彩った。




当日、会場と全国を繋ぐ生中継で一体感が生み出されるよう、粋な演出が凝らされた。「胸熱リストバンド」を用い、ライトの遠隔操作で、『蛍』が飛び交うかのように演出されただけではない。アンコールでは、茅ヶ崎公演の「SAS」「35」の人文字に続き、今回、「サザン」「ハート」「東北」の人文字が浮かび上ったのだ。再びステージに姿を現した桑田佳祐は、感謝の気持ちをこめ、今回も『青葉城恋唄』をカヴァーし弾き語ってみせた。東北に幸あれ、夢溢る世の中であれ、と。

打ち上げ花火が日々の労苦を癒した。




こうして、今回の『サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013 「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」』ツアーは、サザン恒例の豪雨に見舞われることもなく、猛暑に次ぐ猛暑のまま、いつしか秋風が舞い、幕が降りた。


「やっぱり俺は一生サザンだなっていう気持ちになれましたね。」

(ドラマー・松田弘)。







サザンオールスターズ史上最初で最後の、日本ポピュラー・ミュージックを代表する青春グラフィティー的ナンバーがラインナップにずらっと並ぶ、それも“ほぼ”フルver.のセットリスト。このような選曲のLIVEはもう観られることはないだろう。



サザンオールスターズ『灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!』ツアー≪総括≫-座談会

▲

拙稿。

《座談会》のおこし。





『 WOWOW presents サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013
「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」
supported by Volkswagen Golf』



桑田佳祐:Vocal & Guitar
原由子:Keyboards & Chorus
関口和之:Bass & Chorus
松田弘:Drums & Chorus
野沢秀行:Percussion



斎藤誠:Guitar & Chorus
片山敦夫:Keyboards
TIGER :Chorus
山本拓夫:Sax & Flute
吉田治:Sax & Flute
菅坡雅彦:Trumpet
角谷仁宣:Synth & Programming


《宮城公演出演》
金原千恵子:Strings (金原千恵子ストリングス)





8月10日-11日 横浜公演
日産スタジアム

8月17日-18日 神戸公演
神戸総合運動公園ユニバー記念競技場

8月31日-9月1日 茅ヶ崎公演
茅ヶ崎公園野球場

9月7日-8日 愛知・豊田公演
豊田スタジアム


9月22日 宮城ファイナル公演
宮城スタジアム




平均3時間30分
観客動員35万人

1公演全32曲
宮城公演33曲
選曲総数34曲



8月31日-9月1日 全国120劇場LV
9月1日茅ヶ崎市役所駐車場PV
9月22日WOWOW完全生中継

エンドステージ(サブステ)なし


【セットリスト】



1.

【DAY-1】

海


【DAY-2 & 宮城LIVE】

Ya Ya (あの時代(とき)を忘れない)

2.My Foreplay Music
3.勝手にシンドバッド

MC

4.YOU
5.愛する女性(ひと)とのすれ違い
6.涙のキッス

(ツアー初日と2日目の横浜公演のみ曲順は「6.」「5.」の順。)


7.夏をあきらめて
8.タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
9.Moon Light Lover
10.さよならベイビー
11.愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~

MC

12.人生の散歩道
13.栄光の男

インターミッション
(SAS「青春のフォトグラフ」)


<※アコースティック・コーナー>
14.※ラチエン通りのシスター
15.※NEVER FALL IN LOVE AGAIN
16.※神の島遥か国
17.※慕情

18.太陽は罪な奴
19.Bye Bye My Love(U are the one)
20.真夏の果実
21.LOVE AFFAIR~秘密のデート
22.涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~

23.蛍
24.ピースとハイライト
25.マチルダBABY
26.ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
27.みんなのうた
28.マンピーのG★SPOT



【ENCORE】

人文字

EN1.青葉城恋唄(宮城LIVEのみ披露)

EN2.ロックンロール・スーパーマン~Rock'n Roll Superman~
EN3.フライング・ゲット・ブルース~HOTEL PACIFIC
EN4.いとしのエリー
EN5.希望の轍

エンディング
打ち上げ花火







それから約1ヶ月後の10月22日、サザンが第61回菊池寛賞(日本文学振興会)を受賞した。


文化分野など社会的に影響を与えた個人・団体に贈呈される賞で、歌手の受賞は、94年に安田祥子・由紀さおりが童謡コンサートで受賞するという偉業を達成して以来、19年ぶり2度目かつ音楽バンド・グループでは初受賞となった。


受賞理由は、「デビュー35周年の今日まで、音楽性やキャラクター、メッセージで現代日本の文化に多大な影響を与えてきた。」ことが評価されると共に、「これからも走り続ける日本を代表するバンド」と最大級の賛辞が与えられたのだった。




③につづく。










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▲サザン“名物”、岡野桜子マネージャーによるライブ開幕寸前の前説

▲2013サザン復活

▲配信・SNS担当の岡野桜子マネージャー
現在チーフマネージャーは木村剛






▼デビュー20周年(1998年時)





▲デビュー20周年(1998年時)
ここから15年後(2026年現在はデビュー48周年)






【2013年夏以降】


 ここまでみてきた通り、1998年発表の最高傑作13th album『さくら』でロック・バンドとしてのすべてを出し尽くしたサザンオールスターズは、さらに2005年発表の2枚組14th album『キラーストリート』で古今東西のあらゆるポップ・ミュージックの歴史を注ぎ込み<日本ポピュラー・ミュージック大全>を完成させてしまった。


 サザンがこの後、再スタートを切るには、時代が変わるしかなかった。


 実際、2008年5月19日には、より新しいものをつくるための充電期間……『キラーストリート』完成で全てやり尽くした、今このまま続けようと思えば続けられるがそれではサザンの看板にぶら下がることになる、と桑田が明言し、30万人を動員した日産スタジアム4DAYS『真夏の大感謝祭』を最後に、サザンオールスターズは翌2009年からの「無期限活動休止」を発表した。


 だが、2010年桑田佳祐は<ふとした病>からの術後復帰をきっかけに、2011年<3・11>東日本大震災・福島第一原発炉心溶融事故とそこから半年後の宮城ライブで再生脱構築(ディコンストラクション)を決意した。


 ついに、2013年6月25日、「本日より<デビュー35周年>サザンオールスターズ再始動」の電撃的なニュースが日本全土を駆け巡った! 





 かくして、5年ぶりのサザンオールスターズ復活ライブは、8月10日のツアー初日が近づくにつれ、日増しに活況を呈して行った。


『栄光の男』や『蛍』のミュージックビデオも次々と解禁された。


サザンは7月26日と8月2日、2週連続でタモリの『ミュージックステーション』に出演。
さらに、8月7日日テレ系『1番ソングSHOW』にも出演し、スタジオで次々と新曲を披露していった。

サザンが精力的に活動を展開することで、新曲発売日に向けた機運がいや増しに高まっていった。




ついに8月7日、サザン54thシングル『ピースとハイライト』が発売された。



店頭販売が開始される前日6日から全国CDショップでお祭り騒ぎが始まった。

発売当日、7日には『朝日新聞』でなんと2面はおろか4面にわたる全面ぶち抜き広告が掲載されたのだった。シングル収録4曲の歌詞全文、ならびに著名人10人のコメントが紙面を占拠した。


○小山薫堂(放送作家・脚本家)

○俵万智(歌人)

○内田樹(レヴィナス主義思想家)

○森永卓郎(経済アナリスト)

○斎藤環(ラカン主義精神科医)

○阿川佐和子(作家・エッセイスト)

○有田芳生(参議院議員)

○泉麻人(コラムニスト)

○香山リカ(精神科医)

○太田光(コメディアン『爆笑問題』)



各界の知識人・タレントがそれぞれの観点から、サザン復活に対する思いの丈を綴ったのだった。

また、4面には以下のような三井住友ファイナンシャルグループの広告主旨文が掲載されていた。




「サザンも新たな一歩を踏み出した。過去を振り返るのではなく、新たな自分たちに挑む姿。やっぱり、これでいいと思ったら、先へは進めないんだ。」(一部抜粋)、と。





全国津々浦々、各界各層にわたるサザンシンパの物質力を誇示しつつサザンオールスターズのフロントチームは、民族排外主義の鼓吹に一石を投じる新曲(希望のラブソング)を焦点化したのである。




ごくごく一部の所謂「ネット右翼」は一時活性化したものの、程なくして潮が引くようになりをひそめていったのだった。『永遠の0』が大ヒットしサザンが手がけた主題歌『蛍』が再評価された2014年初頭には、サザンの音楽が世代も階層も人種も国籍も性別もジャンルすらもこえ市井の立場に立って奏でられていることが、全社会的に浸透していった。



この只中、サザンは日産スタジアムでライヴのリハーサルを開始した。


この頃には、新旧ファンの間で、5年ぶりのライヴはどんなセットリストが組み立てられるのか?、腰痛を抱えていたパーカッショニストの野沢“毛ガニ”始めメンバーのコンディションはどうか?が話題になっていたこともあり、スタジアム周辺にはそれなりにギャラリーが集まっていった。



そして前日9日、NHK特番『35周年スペシャル 復活!サザンオールスターズの流儀』が放送された。

番組は、横浜を皮切りに4大都市で開催される『「ピースとハイライト」展』に展示された新曲4曲にこめられたメッセージについて桑田がコメントをしたり、サザンビーチちがさきに期間限定でオープンした『海の家』の模様や、メンバーの活動再開に向けた思いと今後の抱負を語ったインタビューで構成されていた。



さらに、活動再開を発表した直後7月6日収録のスタジオライブがオンエアされ、サザン健在ぶりを大々的にアピールしたのである。





ついに、8月10日、5年ぶりの復活にして、8年ぶりのツアーが幕開けした。



『WOWOW presents

サザンオールスターズ SUPER SUMMER LIVE 2013
「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」

supported by Volkswagen Golf』




である。






8月10日11日
横浜・日産スタジアム、


8月17日18日
神戸総合運動公園ユニバー記念競技場、


8月31日9月1日
茅ヶ崎公園野球場
(ライブビューイング全国120ヵ所×2日間)、


9月7日8日
豊田スタジアム、



9月22日
宮城スタジアム
(WOWOWでノーカット完全生中継)





と、全国5ヵ所9公演で約35万人を動員する大復活祭が開幕したのだ。






原由子:Keyboards & Chorus
「音楽のすばらしさを皆さんにお伝えできるよう頑張ります!」



関口和之:Bass & Chorus
「初めて見る方には、『これがサザンだ!』というところをぜひ見ていただきたいと思います。」



松田弘:Drums & Chorus
「炎天下お集まりいただき、本当にありがたいですが、さらにヒートアップしてお帰りいただくことになると思います! 心地よい汗とともに熱い夏にしましょう。」



野沢"毛ガニ"秀行:Percussion
「また新たなサザンが始まります。ぼくらも思う存分楽しみますので、皆さんも楽しんで、楽しんで、楽しんで、今日という日を最高のものにしましょう。」



桑田佳祐:Vocal & Guitar
「そんな5年を経たうえで、これからは『自分達自身がサザンでいることをお客さんといっしょに楽しむ!』をテーマにしていきたいと思います。今回は記念碑的タイミングでもありますので、サザンの『おいしいところ』を存分に皆さんに見ていただこうと思います。ぜひお楽しみに!」


(2013ツアーパンフレットより)





こうしたメンバーの呼びかけの下、当日、雨に見舞われるどころか最高気温38度の猛暑に襲われる中、座席指定券引き換え方式の入場方法がやや手間取り、1時間遅れの18時半に開演となった。



5年ぶりのサザン復活ライブは桁違いだった。



ヒロシのドラム、ムクのベース、原坊のキーボード、毛ガニのパーカッション、桑田のうねるボーカルと、サポメン誠の手堅いギター・プレイと、のっけからサザンサウンド全開だった。バラッドもアップテンポのナンバーも、エンターテインメントも、エロティックもあり。特に今回のツアー初日はポップスだろうとロックだろうと、やはりサザンの原点は(かつてのアメリカ南部に象徴される)サザンロックなのだ、と強烈に印象づけた。




序盤は郷愁を誘いつつハイテンション・サウンドで挨拶を済ませると、前半各世代別のラブソングでこの5年間を振り返る。

ボックス・トップス『あの娘のレター』やレイ・チャールズ『わが心のジョージア』を曲間に挿入しつつサザンロックやサザンソウルを連打した。

中盤、新曲とアコースティック・コーナーで遊び放題遊ぶ。

一転して後半からじわりとヒート・アップしてゆく。新曲で静と動のコントラストを浮き彫りにし政治的メッセージをぶちこむと、サザン定番一大スペクタクル&エンターテインメント大会に突入。

ディスコ・ビートにエレクトリック・ビート・ロック、果ては放水パフォーマンスを交えつつ、妖しげなファンク&ビート・ロックにして爆笑と熱狂の“下衆の極み”炸裂で★突き抜け、本編が“炎上”し“昇天”。


アンコールではTレックスに続いて、サザンとAKB48の疑似コラボを“ややエロ真面目”全開に展開。サザンの裏の顔とでも言うべきラテン・ロック・バンドとしての側面で会場を大爆発させた。

ラストはプロコル・ハルム『青い影』とボブ・ディラン『血の轍』にオマージュを捧げる傑作(マスタピース)で圧倒。

『レ・ミゼラブル』風ミュージカルでユーフォリアの内に幕が降りた。



まさに復活祭は桑田曰く、新旧ファンに捧ぐサザンの「ロイヤル・ストレート・フラッシュ」にして、<いつも通り>のサザンをこれでもか!と魅せつけたのだ。




私見では、今回の一曲一曲の充実っぷりは、30周年の時の総花的で終末的な“良きサザン”“みんなのサザン”とはややアプローチが異なってみえた。

サポートメンバーを含むバンド全体が躍動感にみなぎっており、ストイックでありながらも自然体で音楽に向き合ってみえた。

音楽性とか音楽スタイルに無理に拘泥し“優等生サザン”を演じようと四苦八苦することなく、“LOVEからPEACEまで”<みんなのサザンとしてお客さんの前で音楽すること>をサザン楽団全員が楽しんでいることが伝わってきた。

サザンオールスターズであることの内的必然性を向自化した胸熱な大復活祭となった。





なお、当日入場時に会場で配布されたチラシで、9月22日のツアー・ファイナル宮城公演がWOWOWで完全生中継されることが公表された。





翌週に入ると、5年前日産スタジアムに終わり今回日産スタジアムから始まった、サザン復活『灼熱のマンピー!!G★スポット解禁!!』スタジアム・ツアー開幕のニュースが華々しく伝えられた。


同時に、サザン54thシングル

『ピースとハイライト』

は8月19日付オリコン週間チャート初登場1位を獲得


(6日~12日まで連日デイリー1位、2位と9万枚差をつけ初動20.7万枚を記録)


したニュースで持ちきりとなった。




5年ぶり3作連続通算15枚目の1位に輝いたばかりではない。




サザンは(なんと!デビューから11年後の)1989年26枚目(!)のシングル『さよならベイビー』で初の週間1位になって以来、

1980年代・
1990年代・
2000年代・
2010年代と

4世代、すなわち4つの10年代でシングルチャート1位に輝く金字塔を樹ち立てたのであった。



この記録は総合では中島みゆきに続く史上2組目の記録であり、グループでは史上初である。



また、
70年代・
80年代・
90年代・
ゼロ年代・
10年代と、

デビュー以来5つの年代(5世代)でシングル週間チャート2位以上の栄冠に輝いた。



さらに、9月9日付週間8位獲得をもってサザンオールスターズは、山口百恵をこえる<シングル歴代最多週間10位以内獲得週数>の記録を250週まで更新した。

すなわち、盛者必衰が激しい音楽界で極端な浮き沈みなく、楽曲レパートリーが大衆的な規模と形態で最も愛されるアーティストの称号を得たのである。





だが、音楽流通形態の異なる5年前、CDセールスが50万枚をこえ、嵐に次ぐ年間3位に輝いた前作『I AM YOUR SINGER』と比較し売り上げが半減したなどと、「ネット右翼」が悔し紛れに絶叫した。すなわち、社会的メッセージを盛り込んだ『ピースとハイライト』が各音楽サイトやコマーシャルを媒介として社会的に浸透し、概ね好意的に迎えられたことに追い詰められ断末魔の悲鳴をあげた訳である。


ところが、サザンの『ピースとハイライト』は

2週目も6万枚を売り上げ週間4位、

3週目6位、

4週目8位、

5週目にも11位を記録し、

約1ヶ月にわたって週間ベストテン圏内を死守した。


累計で31・6万枚に達し、一定のアイドルグループを上回った。その結果、『ピースとハイライト』はAKB48の32枚目のシングル『恋するフォーチュンクッキー』についで、8月月間2位に輝いた。





この年、『ピースとハイライト』は33・9万枚を売上げ年間17位を記録。アーティストならびにロック・バンドとしてはぶっちぎりのトップに立った。その後、映画『永遠の0』のエンディングテーマ『蛍』が注目を集め話題が再燃。2014年5月、


〈約37万枚〉


に達した。





また、サザン復活とツアー開幕をインパクトとして、サザンのコンピレーション・ベスト・アルバム

『海のYeah!!』と

『バラッド3 ~the album of LOVE~』、

桑田佳祐 Special Best Album『I LOVE YOU - now & forever -』

の3作品も連鎖的にスマッシュ・ヒットを記録した。



『ピースとハイライト』をめぐっては、終戦記念日の8月15日に『朝日新聞』が社説で掲載したのを始め、全国紙や政党機関紙が社説や特集で取りあげ真摯な論説を展開した。

その最中、8月21日サザンオールスターズのシングル全54枚の音源配信が解禁された。








②につづく。









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