▲トーキング・ヘッズ feat. アーサー・ラッセル「サイコ・キラー」アコースティックver.














1978⇒1998
デビュー20周年

サザンオールスターズ13th album 

『さくら』
('98.10.21)




2週連続1位
年間32位
84・8万枚ミリオン割れ

Total︰78分27秒 16曲
シングル表題曲は4曲





M1.NO-NO-YEAH/GO-GO-YEAH
M2.YARLEN SHUFFLE~子羊達のレクイエム~
M3.マイ フェラ レディ
M4.LOVE AFFAIR ~秘密のデート~
M5.爆笑アイランド
M6.BLUE HEAVEN
M7.CRY 哀 CRY
M8.唐人物語(ラシャメンのうた)



M9.湘南SEPTEMBER
M10.PARADISE
M11.私の世紀末カルテ
M12.SAUDADE ~真冬の蜃気楼~
M13.GIMME SOME LOVIN' ~生命(いのち)果てるまで~
M14.SEA SIDE WOMAN BLUES
M15.(The Return of)01 MESSENGER~電子狂の詩(うた)~(Album Version)
M16.素敵な夢を叶えましょう







 前回、12thアルバム『Young Love』の稿でサザン第4期最初の4年('93~'96)が、デビュー以来1番苦しかった時期ではないか(その結果、売上は過去最高を記録した)と書いた。



 だが、ここから第4期のラストを飾る20周年13thアルバム『さくら』まで2年間のサザンは、ビッグスターでありながら、従来に比してセールス面のみ、軒並み低迷し続ける。その理由は何故か?






 それはアーティストの楽曲ジャンルが多様化した中で、サザンが楽曲的に勝負に出たからとも言えなくもないが、要は━━<“世間一般のサザン像”を打ち破りたかったから>━━ではないだろうか。




 

 それゆえ、「ネオジャパネスク」を掲げて制作されたと言われる13thアルバム『さくら』は、『Young Love』ではなお実験的であったコアな楽曲ばかりで構成した、(二十)世紀末日本の骨太なメッセージ・アルバムなのである。そして、硬派な軟派サザンオールスターズの<バランス感覚の本質>に貫かれたアルバムでもある。


 したがって、セールスが振るわなかったこのアルバムで、【一般的なサザンのイメージを木っ端微塵に打ち砕く】という課題を克服したからこそ、むしろ、サザンオールスターズは永遠に不滅のバンドとなった。






 『さくら』は制作にのべ3,000時間、期間として1年半以上を費やした。



 制作期間中、桑田佳祐はこう言った。



 “このアルバムは売れなくていいんだ、30万枚売れれば満足だ”、と。




 結果的に『さくら』は90年代にサザンが発表したアルバムでゆいいつミリオン割れしたものの(84・8万枚)、249.4万枚を売り上げた前作『Young Love』ではなしえなかった、初動から2週連続1位を達成したのであった。





 すなわち、サザンは12枚目のオリジナル・アルバム『Young Love』でテーマとした痛快なロック・サウンドを即座に否定し、2年後のこの時この『さくら』で、商業主義を真っ向から否定した強烈なROCKアルバムを完成させた!


 ──咲き誇り、華やかに散る『さくら』には生と死が見事に描かれた。



 洋に溶け込む和、和に食い破られる洋。
和洋折衷が7thアルバム『人気者で行こう』なら、<生と死・和と洋の自己矛盾的自己同一(アンビヴァレント)>を描いたのが13thアルバム『さくら』なのである。



 90年代最もセールスが低かった13thアルバム『さくら』の完成こそが、今日のサザンオールスターズの生命線となった! 

 言い換えれば、このアルバムが聴き手に選ばれることは、サザンにとって“名誉”の証(あかし)に他ならない。



 <生死・和洋の自己矛盾的自己同一>、すなわち、「ネオ・ジャパネスク」と銘打ったこのアルバムは、聴き手を選ぶハードコアでアクの強い鉄壁のサウンドが揃いながらも、あたかも狂い咲く桜を愛でるかのように、人の愚かさをいつしか愛おしむ珠玉の作品集なのであった。



 たとえサザンファン全員を敵に回したとしても、サザン13枚目のオリジナル・アルバム『さくら』は、そう言いうるに足る歴史的名盤であると私は確信している(個人的にはサザンのベスト❗)。
 ズバリ言うならば、『さくら』がなければ、サザンオールスターズは<ポピュラー・ミュージックのフルコース>16thアルバム『THANK YOU SO MUCH』の境地に達する事もなかったであろう。

 サザンオールスターズの音楽世界観を余す所なく刻み込んだ、これぞサザンのオリジナル・アルバム!

 大衆音楽の第一線に君臨し続けながらも「カウンター」を自称し、(ボブ・ディランのように)1枚として同じアルバムを作ることなく、つねに攻めに攻めまくる──ポピュラー・ミュージックの大海原(おおうなばら)を航海し続けるサザンのこれは<実存的自由の冒険>なのだ!

 本作『さくら』とは、つねに、この一瞬の音楽的感動をめざして、ただ愚直に、ひたすらに、己の信じた道を進み(作品至上主義)、不断に原始創造を繰り返してきた彼らサザンオールスターズがついに本性を曝け出した快心のアルバムに他ならない! 



 デビュー20周年──こうしてサザンは、見事、《新境地》を切り拓いた。









1992年発表の12thアルバム『世に万葉の花が咲くなり』を超えるメガヒットを飛ばした、13thアルバム『Young Love』発表の翌年
【1997年】

 2月、サザンはニューアルバムのレコーディングに入った。


 同時に各メンバーがソロ活動を進めていった。



 まず、デビュー記念日6月25日、ベーシストの関口和之が念願のソロアルバムを発売した。ウクレレをこよなく愛するアーティストを招き、

関口和之 presents UKULELE CALENDAR

を完成させたのである。
 

 ▲2026年9月6日横浜で開催





 次いで、8月22日、前年11月9日にパーカッショニストの野沢"毛ガニ"が主演した映画、『アトランタ・ブギ』のビデオがリリースされた。



 さらに、10月22日には2枚同時にソロアルバムが発表された。




 一つはドラマー松田弘の前作から14年ぶりのミニアルバム

DRMS(ディルムス)

だ。


 林田健司&CHOKKAKU、岩田雅之&和田毅、森雪之丞、松尾由紀夫ら豪華作曲家陣が楽曲を提供した。


 ヒロシは11月8日に、斎藤誠・片山敦夫らと、

『松田弘 "Live DRMS"』

ライブを、日清パワーステーションで実現した。




 もう一つは、桑田が参加した故ローウェル・ジョージのトリビュート・アルバム

Rock And Roll Doctor

がリリースされたことである。


 元リトル・フィートの名ギタリストに敬意を表して制作された企画盤で、ジャクソン・ブラウンやアラン・トゥーサンらと共に、日本からはリトル・フィートをリスペクトするまさにサザンオールスターズのこの人、ということで桑田が招聘され、

『Long Distance Love』

を歌った。

Lowell George Tribute Album
『Rock And Roll Doctor』より収録
「Long Distance Love 」 Keisuke Kuwata

【Musicians】
Engineer: Britt Bacon
Bass: Carl Sealove
Mixer: Ed Cherney
Engineer: Ira Ingber
Guitar: Ira Ingber
Organ: Ira Ingber
Producer: Ira Ingber
Vocals: Julia Waters
Vocals: Keisuke Kuwata
Vocals: Maxine Waters
Vocals: Merry Clayton
Composer: Lowell George
Engineer: Dean Bart
Drums: Ian Zenith
Percussion: Ian Zenith
Engineer: Kenichi Hayashi



 このテイクは現在、2012年7月18日に発表された桑田佳祐のスペシャル・ベスト・アルバム『I LOVE YOU - now & forever -』の「完全生産限定盤」の、[BONUS DISC]に収録されよみがえった。








 桑田佳祐は11月28日に神戸、30日と12月1日にパシフィコ横浜国立大ホールで、


『Act Against AIDS'97 歌謡サスペンス劇場』


を開催した。この年のテーマは歌謡曲に特化された。






 キーボーディストの原由子もこの年、2作のシングルをリリースした。


 まず、10月29日、SMAPの香取慎吾とのデュエット・シングル

『みんないい子』



を発表した。この曲は同じスマップの『中居正広のボクらはみんな生きている』のエンディングテーマで、別に制作された3タイプのMixも収録された。売上げの一部がエイズと闘うルーマニアの子供たちへの支援金となった。


 その1ヶ月後、11月27日に原由子は、6年ぶり13枚目のシングル

涙の天使に微笑みを

を発売した(NHK朝ドラ『甘辛しゃん』主題歌)。

 なお、C/Wは万城目正が作曲した、美空ひばりの代表作『悲しき口笛』のcoverであった。

▲A面
▼B面



▲Bluesが選ぶ生涯で5本指に入る1曲
1949年9月リリース。
 美空ひばり当時12歳?!の最初の大ヒット曲。
  「子供が大人の恋愛の歌を歌うなんて」「近頃、大人の真似をするゲテモノの少女歌手がいるようだ」と(初期の桜エビ~ず=ukkaさながらに)批判も多かった中、この曲(ブルース)が戦後間もない混乱期に人びとの心に希望の灯りをともした業績は計り知れない。静かに淡々とむせび泣くボーカルはビリー・ホリデイに匹敵する。私はいつもこの曲のオリジナルver.を聴くたびに胸打たれる。
▼24年後の1973年再録ver. 歌の解釈、表現力の広がりに唖然とする。











 なお、原坊が次のシングルを発表するのはここから12年後となった。






 この只中で、サザンは7月21日にニューシングル、

01MESSENGER ~電子狂の詩(うた)~

をリリースした(5位)。


 斬新で衝撃的なデジタル・ハードロックであったがゆえに、27thシングル以来7年半ぶりに、30万枚を下回る売上げとなった。

▲A面
私見では、最高傑作はシングルver.の方ではなく、ドラムンベースの厚みのあるアルバムver.の方。

▼B面






 ここから3か月後の11月6日には、記念すべき40枚目のシングル、

BLUE HEAVEN

を発表(5位、40万枚)。

 なお、カップリングの『世界の屋根を撃つ雨のリズム』は、レディオヘッドばりのエレクトロニカなオルタナティヴ・ロックをめざした野心作であった。

 だが、サザン12枚目のアルバム以来のプログレッシヴ・ロック路線を引き継ぐこの曲は、残念にも、収録時間オーバーを理由に、翌年発表した『さくら』には収録されなかった。
▲A面
▼B面

 2020年12月31日に無観客配信ライブとして開催された(横浜アリーナで事前収録)『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020「Keep Smilin’~皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!~」』にて、
『走れ!!トーキョー・タウン』との並びで、この曲『世界の屋根を撃つ雨のリズム』が選曲されたのは記憶に新しい。

▲発表前に全国ネットで演奏を披露。当初、仮タイトルは「トルコ行進曲とは似ても似つかない音楽」だった。










 こうして、97年年末、桑田佳祐のAAAイベントライブの後、12月27日-31日まで、サザンオールスターズは年越しライブを実現した。


「Southern All Stars 1996年越しライブ in 横浜アリーナ『牛』」


は3万3千人を動員した。










【98年】

 桑田の誕生日前日の2月25日、原由子は、初のベスト・アルバム

Loving You

を発表した。


 3rdアルバムから6年8ヶ月ぶりのこの作品は、サザン・デビュー20周年イヤーにふさわしく、最高3位を獲得した。





 また、6月6日には日清パワーステーションで


「FINAL COWNTDOWN SESSION
『来ればわかる!!』
~NISSIN POWER STATION~」


が開催された。



 このイベント・ステージは、サザンのメンバーそれぞれがバンドを組んでセッションするというものだった。大トリは桑田佳祐がつとめたが、久々に「嘉門雄三」名義で登場したのである。




「嘉門雄三ブルースクインテッド with 八木のぶお」


嘉門雄三=桑田佳祐(SAS)

原由子(SAS)

バーベQ和佐田(爆風スランプ)

ファンキー末吉(爆風スランプ)

中シゲオ(THE SURF COASTERS)

八木のぶお(ジョー山中らと横浜BLITZでオープニング公演)


※ちなみに、横浜BLITZは2013年10月14日に閉館を迎えた。




23.Stomy Monday

24.All Your Love

25.Hoochie Coochie Man

26.Ain't No Sunshine When She's Gone

27.Rock Me Baby

28.Have You Ever Loved A Woman

29.Sweet Home Chicago


30.Big Star Blues(ビッグスターの悲劇)
Southern All Stars



31.勝手にシンドバッド
ALL





を披露した。








 ところで、ニュー・アルバムを制作するレコーディング期間は、もうすぐ1年半を迎えようとしていた。


 だが、その前にサザン20周年記念日が訪れた。




 6月25日当日、完成が間にあわなかった新譜に代わってリリースされたのは、ベスト盤であった。

 このコンピレーション・ベスト


海のYeah!!


初動1位(100万枚)、2週連続1位を達成し、累積244万5千枚を売上げ年間6位に輝いた。


 その後も、本作はサザン最大のロングセラーとなった。
チャート登場回数357回、累計340万枚を達成。

 出荷枚数も400万枚に及び、「4ミリオン」に認定された。




 現在、2枚組以上の作品では、史上最大の売上げを誇っている。

 DISC-1は「SEA SIDE」、DISC-2は「SUNNY SIDE」とイメージ別に分かれた全30曲のオール・タイム・ベストである。




 コアなファンには少々食傷ぎみだし、彼らの魅力のほんの一端の一端のただの一端でしかない<夏だ・海だ・サザンだ>という使い古されたフレーズに辟易してしまう訳だが(楽曲内容ではなくキャッチコピーのことだが)、サザンの入門編としては完璧な1枚であった。



 特筆すべきは、

『平和の琉歌』

がこのコンピレーション・ベスト・アルバムのフィナーレを飾っていることである。



 なお、2013年にサザン復活★=再始動が発表されるや否や、『海のYeah!!』("海の家"も、8月6日からサザンビーチちがさきに期間限定でOPEN!!された)も、7月15日付オリコンでTOP100内に復活。

 86位を獲得し、二枚組以上のCD累積売上記録を、348万9千枚まで伸ばした。
 さらに、2021年上半期の時点で、
399万枚に達している。





 この勢いのままサザンは、8月8日から、浜名湖畔弁天島海浜公園「渚園」にて、ライヴを開催し、2日間で10万人を動員した。



「1988夏 サザンオールスターズ スーパーライブ in 渚園 

『モロ出し祭り~過剰サービスに鰻(ウナギ)はネットリ 父(チチ)ウットリ~』」




である。

 3時間半、34曲にのぼる『渚園』で、サザンは20周年イヤーを飾る集大成のステージを魅せつけたのであった。


 また、20周年コンピレーション・ベスト盤を発売する前後、サザンのアルバムからの先行シングルが発売された。



2月11日に


LOVE AFFAIR ~秘密のデート
(57.1万枚)、


7月29日に


PARADISE

をリリース。いずれも最高4位を獲得した。







 そして、ついに、10月21日、サザンオールスターズ13枚目のニュー・アルバム

『さくら』

が発売された。





 サザンのリーダー・桑田佳祐が「30万枚売れれば満足」と言ったように、ダブル・ミリオンの前作との比較では本作はミリオン割れしたものの、前作ではなしえなかった、久々の週間アルバム・チャート2週連続1位を奪取した。つまり、コアな音楽ファンには当時、抜群に受け入れられたからである。





 13thアルバムをひっさげたツアーは、翌年99年3月24日にグランディ・21 宮城県総合体育館からであった。






 年末の締めくくりとして、カウント・ダウン・コンサートは出来なかったが、11月30日・12月1日・2日の3日間、パシフィコ横浜国立大ホールで、この年


『Act Against AIDS '98 オール リクエスト ショー』


のタイトルでライブが行われた。






 こうしてサザンは20世紀のラストイヤーに史上空前のシングル売上を記録する橋頭堡を築き上げたのであった(シングルCD売上オリコン歴代1位のトリプル・ミリオンセラー。2026年現在ではSMAP『世界に一つだけの花』に次ぐ歴代2位を保持)。








②へ続く。











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▲ほぼノーカット55分
 歴代編集者が語る東野圭吾秘話
 代表作「ガリレオ」シリーズ
 最新作『永遠の記憶』発売記念イベント
(2026年8月5日 紀伊國屋書店本店)






▼①②のつづき。







サザンオールスターズ12th album 
『Young Love』
('96.7.20)



週間1位
年間7位
(249.4万枚)
初のダブル・ミリオンセラー

Total︰64分48秒 14曲
シングル表題曲は3曲のみ



M1.胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ

M2.ドラマで始まる恋なのに

M3.愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~

M4.Young Love(青春の終わりに)

M5.Moon Light Lover

M6.汚れた台所(キッチン)

M7.あなただけを~Summer Heartbreak~

M8.恋の歌を唄いましょう





M9.マリワナ伯爵

M10.愛無き愛児(まなご) ~Before The Storm

M11.恋のジャック・ナイフ

M12.Soul Bomber(ソウルボマー)(21世紀の精神爆破魔)

M13.太陽は罪な奴

M14.心を込めて花束を







 ジャケットではメンバー各々がROCK名盤のジャケ写を模している。まさにこのアルバムでサザンは原点回帰することを目指している。関口和之も復帰した本作でサザンは、今一度、バンド・サウンドの基本に立ち返った。









①『胸いっぱいの愛と情熱をあなたへ』





 ブリティッシュ・ロックで幕が開く。

 タイトル、サウンドともにレッド・ツェッペリンを意識。イントロからすでに素晴らしい。ポール・マッカートニー&ウィングス『ジェット』に匹敵するご機嫌なオープニングだ。
 だが、この曲の最大の肝はデヴィッド・ボウイのグラム・ロックナンバー『Starman』(スターマン)!














②『ドラマで始まる恋なのに』

 アコースティックな佳曲。桑田好みのメロウでメロディアスな曲だが、「ドラマで始まる恋なのに」という大衆受けの陳腐な詞でなければ……。泣かせのメロディラインは完ぺきなだけに……。
 結局、ライブで一度も披露されなかったのは、キーが高すぎるからであろう。











③『愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~』

(アルバムver.)

 サザン流ブラック・コンテンポラリーの最高傑作。
 間奏部のラップについてはコンテンポラリー色を出すためにあえてインドネシア語のラップを採用しており、民族音楽学者の梅田英春が参加している。

 桑田曰く、この曲は仏語っぽい「そわ」と「とは」がやりたかった、あの当時はともかく洋楽(和洋折衷)をねらっていた、と語る。


 ちなみに言霊(ことだま)とは、日本には古来、万葉の昔から言葉に霊が宿っているという〈言霊信仰〉のことである。人が発した言葉には魂が宿っており、吉凶問わず、必ず森羅万象に反映し・実体化するという伝承の学問。
 この言霊思想を前提として、桑田は音楽には人をして現実的に感動を起こしむる力があると言わんとしている。作り手(アーティスト)の音楽、歌(言わば音霊)への向き合い方が真摯であれば、決して音楽の神様は裏切らないと、彼は考えている。


 たとえば2011年<3・11>以後、二度にわたる宮城の会場で、われわれは彼の音楽に勇気づけられ、桑田は力尽きるまでリスナーに音楽を伝え続け、勇気と自信を得た。そういうお互いを理解(共振)しあえる瞬間がここ十数年の桑田佳祐、そして、サザンオールスターズのステージには訪れた。

 ということを前提として話を先に進めると、京都から鎌倉へと"古都"でつなぎ、いにしえの昔からの人の営みを凝視(みつ)めているような歌だ。


 戦(いくさ)から戦争へ……だからこそ、愛の力を言葉として発しようとする普遍的な作品である。


 ヒップホップやラップなどあらゆるコンテンポラリーの要素を駆使しているが、この曲の核心はゴスペルをベースとしたソウル・ミュージックであり、ジャズ・ブルースである。


 おそらく『JAPANEGGAE(ジャパネゲエ)』『古戦場で濡れん坊は昭和のHero』『稲村ジェーン』を書き直した進化形ではないか。そしてこの成果は、やがてまた同時にサザン15枚目のアルバム『葡萄』へと結実化されるのである。


 発表当時、最新の音楽でありながら、どこか懐かしく馴染みやすい作品であった。言霊が宿るこの曲も、2013年灼熱のマンピー★復活ツアーで欠かせなかった。

 2018年8月12日「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の大トリとして15年ぶりにロッキンジャパンのステージに立ったサザンオールスターズはこの曲『愛の言霊(ことだま)~Spiritual Message~』を披露。このステージを観覧していた私立恵比寿中学と共に、モーニング娘。'18の当時のメンバーは自分たちの音楽性とも通底する<愛の言霊>を初めて聴いて、絶賛した。 
 サザンオールスターズは46周年を迎えた2024年、再び三たび、6年ぶりに

国営ひたち海浜公園で開催された「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA」最終日9月23日に、期間中の大トリとして<GLASS STAGE>に起った。このステージでの肝にあたるのが、この『愛の言霊』であったのが記憶に新しい。

 ライブ最終盤には、当日出演した全アーティスト、ヤバイTシャツ屋さん・ももいろクローバーZ・緑黄色社会・Creepy Nuts・WANIMA・THE YELLOW MONKEYがサザンのステージに集結し、圧巻の大団円を迎えたのだった。













④『Young Love(青春の終わりに)』


 ザ・ビートルズに代表される60年代ポップスへの憧憬! 
 ボブ・ディランの『我が道を行く』とザ・ビートルズときたら、ザ・バーズに、ブルース・スプリングスティーン『涙のサンダーロード』のような、ストレートだがとても印象的なサウンドだ。


 当時、10年前と言えば『KAMAKURA』か……。桑田佳祐はソロ『夏の日の少年』でさらにこのテーマを追求する。









⑤『Moon Light Lover』


 スティーヴィー・ワンダー『ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ』の系統のモータウン・サウンド。


 この後の『あなただけを』や、2013年に発表された『ピースとハイライト』、さらに2016年の桑田ソロ『愛のプレリュード』にも連綿と受け継がれてゆくタイプの曲で、桑田佳祐はこういう黒っぽいポップスやソウル・ミュージックを作らせたら名人芸の域。桑田ほど耳のいいミュージシャンは山下達郎をおいて他にいないだろう。











⑥『汚れた台所(キッチン)』





妖怪達の台所(キッチン) 闇の中での会議

民衆(ひと)の声無き嗚呼「ガラス張り」など見果てぬジョーク

”無理矢理だけど“ と大臣(センセイ)は言うと

”国民のIQの低さに課税(かけ)よう“

 ボブ・ディラン『イッツ・オーライト・マ』や『やせっぽちのバラッド』『サブレタニアン・ホームシック・ブルース』、そして、『見張り塔からずっと』といった所。『日本のヒール』と『漫画ドリーム』の続編。



 ボブ・ディランの系譜に間違いなく、


マギーズ・フォーム』が桑田名義『ROCK AND ROLL HERO』収録の『HOLD ON(It's Alright)』なら、


見張り塔からずっと』が『汚れた台所(キッチン)』、


イッツ・オーライト・マ』『追憶のハイウェイ61』『サブタレニアン・ホームシック・ブルース』『トゥームストーン・ブルース』が桑田名義ディランアルバム『孤独の太陽』収録の『漫画ドリーム』『貧乏ブルース』なら、


地下室(ザ・ベースメント・テープス)』が2013復活★シングルC/W『栄光の男


やせっぽちのバラッド』&中島みゆき節が『葡萄』収録の『青春番外地


であろう。


 そして、桑田によるディランへのオマージュ総決算にして、鏑木創『江戸川乱歩の美女シリーズテーマ曲』、そして中島みゆきへの敬愛が、『大河の一滴』である。





 個人的には『愛の言霊』と並んで好きな曲だ。桑田名義のソロアルバム『MUSICMAN』ド頭の『現代人諸君(イマジン オール ザ ピープル)!!』へと発展させた。ジョン・レノン『イマジン』『女は世界の奴隷か! Woman Is The Nigger Of The World』風に。


 さらに、サザン最新作『葡萄』では、ボブ・ディランやザ・ビートルズへのオマージュで満たされてもいる。



 なお、この頃の桑田のLIVEアレンジは大胆不敵で、ボブ・ディラン/ザ・バンドのライヴ盤『偉大なる復活(Before The Flood)』からの影響が色濃かった。



















⑦『あなただけを~Summer Heartbreak~』



 ジェファーソン・エアープレインの同名曲と同じタイトルだが、内実はスティーヴィー・ワンダー風モータウン・サウンド&ザ・ピーナッツの和製ポップスをベースに、フィル・スペクター風ウォール・オブ・サウンドで筒美京平が料理したといった風情。

 夏の終わりの失恋の歌で、夏の爽やかな記号がサザンではなく、夏の終わりのせつない叙情詩がサザンであることを証明した名曲。
 桑田佳祐は自分の書いた曲のベスト3に挙げている。自分の葬儀にはぜひこの曲をBGMに使って欲しい、とも語っている



 サザンLIVEツアー2015『おいしい葡萄の旅』で久方ぶりに選曲された。会場にせつないメロディ・ラインが響きわたった。













⑧『恋の歌を唄いましょう』


 『愛さずにはいられない』などを想起させるポップナンバー。この曲のサビはなんと美しいのだろう。原由子のリードボーカルは、離れ離れになった後の歌であることを少しも感じさせないほど、温かく麗しい。













⑨『マリワナ伯爵』


 ミュージシャンの薬物使用に否定的な立場から、マリファナ狂いのミュージシャンを揶揄した歌。リズムセクションがうねる。








⑩『愛無き愛児(まなご) ~Before The Storm』



 ザ・ビートルズ『ビコーズ』、クイーン『ボヘミアン・ラプソディ』のようなプログレ風味。ピンク・フロイドや、とりわけレッド・ツェッペリン『天国への階段』がやりたかったのだろうか。13階段か、孤独の極致を歌った問題作だが、本質的には作者の心象風景を抽象的に表現しているようにも感じる。

 この作風はよりハードなアルバム、次作『さくら』へと発展転化してゆく。











⑪『恋のジャック・ナイフ

▲完成形のアルバムver.
▼直前にリリースしたシングルver.(B面)

 ⑩と⑫の間に入れて、怒涛の終盤へ。評価が分かれるが、個人的にはとても好きな曲だ。

 アッパーな歌謡曲。サビのCメロからサビのマイナーの使い方が抜群。

 『葡萄』ド頭の『アロエ』もそうだが鏑木創『江戸川乱歩の美女シリーズテーマ曲』や、ザ・ピーナッツ『恋のバカンス』および『ルパン三世のテーマ』のあたり。だが、楽曲をアレンジしている過程で、当時の歌手「やや」のデビュー曲・『夜霧のハウスマヌカン』ののりこえをめざした感も。

 いずれにせよ、ラガービールのCMに使用されたこの曲は、桑田佳祐版のコンテンポラリーな天知茂+ザ・ピーナッツ。












⑫『Soul Bomber(ソウルボマー)(21世紀の精神爆破魔)


 キング・クリムゾン『21世紀の精神異常者』とクリーム『ホワイト・ルーム』『サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ』および『レッド・ツェッペリン Ⅱ 』。この曲も次作『さくら』への予兆。サザン式プログレ路線。悪くない。

 プログレやハード・ロック、オルタナ路線になると桑田のインテリジェンスが黙っていないのもご愛嬌。


 2015年に発表したプログレ、ハードロック、ブルースロックの最新作はもちろん、超弩級のクリームにしてジミ・ヘンドリックスばりの『Missing Persons』(『葡萄』四曲目)だ!


▲御本家ザ・ビートルズの『ドライブ・マイ・カー』をオマージュ!











⑬『太陽は罪な奴』



 モータウン・サウンドの決定版。実はイントロから冒頭がイナタくて好きだったりする。

おまけに、「Aクラスの姐ちゃん達の放射線」って歌詞も好き。

(「放射線」を描いて御小水が排出されるのか、陽光を受け麗しい肢体から「放射線」が放たれるのか、実は意味内容の境界線はすこぶる曖昧。)







Aクラスの姐ちゃん達の放射線
悩殺にヨロめくSTAGE

あこがれた女性はなぜか
太陽のニオイがした


高気圧はVENUS達の交差点
愛欲にときめくSTAGE

あの空へしぶき上げて
太陽にKISSをしよう



恋する夏は去く
太陽は罪な奴









 一見、ハレンチ、でも繊細で愛おしい歌詞は見事だ。

 小麦色の素肌と、太陽でジリジリと焦げた香り漂う日焼けした肢体を掛けている訳だが、視覚・触覚・嗅覚を見事ワンフレーズで表現している。

 おまけに擬人法すら駆使し、太陽は小麦色の素肌を独占する罪な奴、そして、太陽に焦がされた素肌はそれ自体が罪だ、という訳だ。

 何と繊細な歌詞なのだろう。傑作だ。











⑭『心を込めて花束を』


 サザン初のストレートなウェディング・ソング。ソロ2nd『孤独の太陽』に温かみを加味したような、包容力ある素晴らしい曲だ。

 作詞にあたりエピソードを提供してくれていた友人の祝賀をこめて『幸せのラストダンス』に止揚された。
 さらに、2016年、『百万本の赤い薔薇』を完成させたのである。




 当時、桑田佳祐もついに40歳、6thアルバム『綺麗』収録の『サラ・ジェーン』(こちらは女性)が大人になったかのよう。








若さにまかせて家を出た時
励ます言葉が身に沁みたよ

どんなに背伸びをしても
腕の中で甘えてた





期待通りの僕じゃないけど
人並みに愛を叶えた
もしも涙が溢れそうなら
時間を止めて抱き寄せて

心を込めて花束を










 サザンはこうした痛快なロック・サウンドを即座に否定し、2年後、商業主義を真っ向から否定した強烈なROCKアルバムを完成させる。


 咲き誇り、華やかに散る『さくら』には生と死が見事に描かれた。

 洋に溶け込む和、和に食い破られる洋。和洋折衷が7thアルバム『人気者で行こう』なら、<和洋の自己矛盾的自己同一>を描いたのが13thアルバム『さくら』なのである。



 90年代最もセールスが低かった13thアルバム『さくら』の完成こそが、今日のサザンオールスターズの生命線となった!

 言い換えれば、このアルバムが聴き手に選ばれることは、サザンにとって“名誉”の別名(あかし)に他ならない。




 たとえサザンファン全員を敵に回したとしても、サザン13枚目のオリジナル・アルバム『さくら』は、そう言いうるに足る歴史的名盤であると私は確信している。













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「最近、君たちがすごく縛られている、<コンプライアンス>をぶち破ろう!、と」(2013年桑田佳祐談)。











▼①のつづき。





サザンオールスターズ12th album 
『Young Love』
('96.7.20)








 1995年5月14日大阪城ホールで桑田佳祐はMr.Children とのジョイント・ライブのツアーを終えた。



 その8日後、5月22日には1年半ぶりにサザンオールスターズ<復活>の狼煙が上がった。


 楽曲タイトルに世が騒然となった
この35枚目のシングルこそ、

2013年8月10日の日産スタジアムから幕開けした復活ツアーのタイトル──

『サザンオールスターズ
SUPER SUMMER LIVE 2013
 「灼熱のマンピー!! G★スポット解禁!!」』


 さらに、COVID-19下の2020年大晦日に開催された、サザン2度目の無観客配信ライブのタイトル──

 『サザンオールスターズ ほぼほぼ年越しライブ 2020
「Keep Smilin’〜皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!〜」』


に採用された、


桑田曰く「下衆(ゲス)の極み」
(1995年当時、桑田&ミスチルのジョイントライブの楽屋で、桑田佳祐がそのタイトルを紹介すると、桜井和寿が大爆笑した、という逸話もある)




マンピーのG★SPOT

である。
▼B面





 ベーシスト関口和之が「健康上の理由」から復帰したこの曲は、スライ&ザ・ファミリー・ストーンを彷彿とさせる強烈なグルーヴとドライヴで、オリコン4位(50万枚)に輝いた力作である。








芥川龍之介がスライを聴いて
"お歌が上手"とほざいたと言う

僕はベッピンな美女を抱いて
宴(うたげ)に舞うばかり


Come On!! 情熱や美談なんて
ロクでもないとアナタは言う

たぶん本当の未来なんて
からっぽの世界



悲しい男と女が
今日も暗闇で綱渡り
Ah Woo 浮き世は舞台
待ち人は来ない



やがてマンピーはJuke Box
Juke Box Juke Box
湖に赤いバラを捧げた憂(うれ)いの旅

だからマンピーはJuke Box
Juke Box Juke Box
君と濡れた貝を拾う
灼熱の恋のメロディ








 ここでは都々逸(どどいつ)と言うべき、男女の完璧な情歌が展開されている。
(易学ならぬ)占いブームのインチキ性さえ暴き出しているのはお見事(京極夏彦著『魍魎の匣』講談社文庫参照)。



 さらに、この2番の「芥川龍之介がスライを聴いて~」の歌詞が素晴らしい。

 あの世で、文豪・芥川がファンク・ミュージックの天才・スライを聴いて、知ってか知らずか上座(かみざ)から誉めそやす(笑)。そんな凡庸な「僕」は、二枚目のジゴロとして美女と戯れるだけの空虚な人生を謳歌するばかりだ、と人生の真理を問いてみせる(笑)のである。



 しかも、「お歌(うた)」と「宴(うたげ)」で韻を踏むという高踏技術を駆使してさえいる。


 「待ち人は来ない」(来ず)はおみくじの慣用句で、(契りを交わす)恋人が今すぐには出来ないことの例え。


 男女関係のむつかしさなんて占える訳がない、「たぶん本当の未来なんて知りたくない」し分かる訳もなし、と惚れた晴れたならぬ<浮き世の本質>を言いあてる。


 つまり、『マンピーのG★SPOT』とは単なるアソコの歌ではなく、井原西鶴の浮世草子ばりの、男が女を愛する情歌なのである。

 

 

 この作品が放送コードにもひっかからなければ、「放送中止」にもならないのは、桑田師匠の"巧みさ"による。

もっとも、サザンも活動再開、一発目にあえて桑田佳祐ソロアルバム『孤独の太陽』とは正反対の、サザン全開のトーンで勝負したのであって、ちょっとやそっとの事では一歩も引かなかっただろう。
 




 つい先ごろ2012年、「なんでこんな歌つくっちゃったんだろうなぁ」とぼやいたその舌の根もかわかぬうちに、桑田とチームサザンはちゃっかりと2013再始動ツアータイトルに採用したのだった。こうして、マンピーはいつの間にやら灼熱の代表曲におさまっているのである。
(2015年「おいしい葡萄の旅」ツアーでも選曲!)


 これはヒューマニストである桑田のもう一つの顔と言うべき、アナーキストとしての側面でもある。“健全な下衆の極み”(ゲスのきわみ)をマジメに演りきるサザンの裏の顔でもあるのだ。たかだかチンケな放送コードにROCKおよび大衆音楽が規制・統制されてたまるか、ふざけルナ!とでも言えなくもない音楽的遊び心の発露でもある。
「最近、君たちがすごく縛られている、<コンプライアンス>をぶち破ろう!、と」(2013年桑田佳祐談)。



 とはいえ、“下衆の極み”が炸裂する井原西鶴「浮世草子」ばりの好色の情歌『マンピーのG★SPOT』は、歌詞中の「♪メケメケの世界」にも示されているように、核心的に言って、※※美輪明宏が日本に輸入した『メケ・メケ』(だけどそれがどうしたの?)の世界観を一つのモチーフとして発酵した、稀代の傑作なのである。




▼※※『メケ・メケ』の世界観とは?⇒「だけどそれがナニか?

フランス語の「Mais, qu'est-ce que c'est?」(メケスクセ)で、「だけどそれがどうしたの?」という意味。


 仏領マルティニークの原住民が訛って、「Mqu mqu?」(メケ・メケ)と発音したことから、フランスのシンガー・ソング・ライターであるシャルル・アズナヴールがインスピレーションを受け、1954年に作詞し発表した。作曲はジルベール・ベコー


 アズナヴール(存命中)は、1946年に偉大なるシャンソン歌手エディット・ピアフに認められ、名声を博した。


 1957年、丸山明宏(現在の美輪明宏、2026年逝去)が日本語でカヴァーした『メケ・メケ』が一世を風靡した。1966年に作詞作曲した労働歌『ヨイトマケの唄』と並んで、美輪明宏の世界観が如実に刻印された名曲である。
シャンソン歌手・美輪の根底に流れる魂は Bluesである。
※※









 続く、7月17日には36thシングル


あなただけを ~Summer Heartbreak~


をリリース。



 福山雅治が主演したTVドラマ『いつかまた逢える』のテーマ曲で、週間1位、年間25位、111.8万枚を売上げ、『涙のキッス』『エロティカ・セブン EROTICA SEVEN』に次ぐ、歴代サザンのシングル中、3作目のミリオンセラーを達成した。

 カップリングは『LOVE KOREA』。桑田は下町の陽気な人びとに遊び心満載でこの曲を捧げた。桑田ほど、ありとあらゆる音楽ジャンルを書き上げ、発表した作家は皆無である(むしろ、すべての音楽ジャンルを遺してやろうとしている節すらある)。抜群にセンスに富んだ曲だが、個人的には余り陽気な曲は興味が薄かったりする。桑田が沢尻エリカの代表作『パッチギ!』を観て、興味が再燃したフォークルことザ・フォーク・クルセダーズの『イムジン河』『悲しくてやりきれない』のカヴァーの方が好きだ。




 ちなみに、<マンピー>はオリジナル・アルバムに収録されていないが、こちらの<あなただけを>は収録された。桑田の思い入れが強いこの曲は2013サザン復活直後のNHK『SONGS』収録時のスタジオ・ライヴ以来、2015年サザン10年ぶりの本格ツアー「おいしい葡萄の旅」で久々に選曲された。






 ところで、この両シングル発売の間隙をぬって、6月24日、『すいか SOUTHERN ALL STARS SPECIAL 61 SONGS』以来6年ぶりにベスト盤が発表された。

桑田佳祐みずからが選曲した


『HAPPY!』


は、シングル、C/W、アルバム収録曲の枠をこえサザンが発表した全曲の中から、発表順にもこだわらずセレクトされている。高額7,000円にもかかわらず、完全予約限定70万枚が即日完売した(1位、年間29位)




 その只中、8月5日、6日には、16万人を動員した


『 サザンオールスターズ スーパー・ライブ・イン・横浜「ホタル・カリフォルニア」 at 横浜みなとみらい21臨港パーク』


公演を実現した。




 さらに12月1日には

『Act Against AIDS '95』

に参加。同日、桑田佳祐はタイのThe Mall in Bankokで、原由子は大阪城ホールで、ソロライブを実現した。




 この只中、10月からサザンは4年ぶりに発表することをめざし、ニューアルバムのレコーディングを開始した。







【96年】

 長いレコーディングの末、5月20日サザンは


愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~
(B面はA面と同じくアルバムに収録された『恋のジャック・ナイフ』)




を、6月25日には38thシングル


太陽は罪な奴
(5位、37.1万枚)
▼B面はドラマーの松田弘作




をリリースした。



 前者の『愛の言霊』は、通算2週1位、年間7位を獲得し、サザンが発表した歴代シングル中、4作目のミリオンセラーに輝いた(138.1万枚)。

 しかし、こうして振り返ってみても、なんと売上げに波があるグループなのだろう! いったん落ちたら二度と浮上出来ない、2020年代現在の常識では想像も出来ないのではないだろうか? いや当時も同じなのだ! それは裏を返せば、サザンオールスターズ、桑田佳祐がつねに攻めて攻め抜いて音楽的な勝負をし続けてきたこと。つまり、絶対に音楽では負けない!というミュージシャンとしての業なのだ。
(私見では、サザンオールスターズのシングルは売上がワーストに近い方が最高傑作が多い。例えば、女神達への情歌とかTARAKOとかEMANONとか。)






 かくして、ついにサザンオールスターズ12枚目のアルバム

『Young Love』

がリリースされた。



 久々にバンド・サウンドの原点に返った痛快な本作は、週間1位、年間7位、249.4万枚のダブル・ミリオンセラーに輝き、自身最高売上を更新したのである。




 間髪入れずサザンは、8月4日から


『Southern All Stars Stadium Tour 1996 「ザ・ガールズ 万座ビーチ」』


を開始。10月12日まで全15公演で35万人を動員した。




 中でも、9月15日-16日には阪神甲子園球場で野外ライブ2デイズを実現。

 さらに、10月2日-3日には17年ぶりに沖縄公演2デイズを実現したのである。




 実際、当時のサザンにとって沖縄公演を核心とした万座ビーチツアーには決定的な意味があった。



 それは以下の意味で96年当時、沖縄が最焦点化していたからにほかならない




 1995年の沖縄・在日米軍兵士による少女暴行事件をきっかけとして沖縄人民の怒りは爆発した。米軍地位協定をタテにした米軍の対応が、10・21沖縄県民大会を頂点に、全国の労働者・市民・学生の怒りの火に油を注いだのだ。

 こうして、翌96年には普天間基地「整理・縮小」と米軍地位協定「見直し」を大義名分とした最新鋭の沖縄・新ヘリポート基地建設をめぐる県民投票がまさに開催されようとしていたのである。


 この12月の県民投票を前にして、サザンオールスターズは10月2日と3日、(当時、米海兵隊基地の建設予定地とされていた辺野古がある)沖縄宜野湾市海浜公園野外劇場にて、17年ぶりの沖縄コンサートにのぞんだのだった。




 しかも、桑田佳祐は本ツアーに向けて新曲

平和の琉歌

を書き下ろした。



 琉球民謡を歌い継ぐ沖縄人民に我が身を移し入れ、「雇用」と戦争政策のジレンマに揺れる沖縄の労働者・市民・学生の思いを主体的に受けとめ・心の底から共有し、率直にエールを贈ったのだった。

 サザンは絶えず、支配される民(たみ)の立場にのみ立って、音楽活動を進めていることを隠そうともしないのだ。困難な状況に立たされた人々がいれば、まず行って共有することから出発する-これがサザンオールスターズの存在証明(レーゾン・デートル)なのであった。





 実際、会場とバンドが一体となったフィナーレで、※※サザンは予定になかった『いとしのエリー』を奏で、オーディエンスの声援に心の底から応えたのである。



 その後、『平和の琉歌』は翌97年の1月~3月『筑紫哲也 NEWS23 』のエンディングテーマとなった



※※96年10月沖縄宜野湾市海浜公園野外劇場にて、ラストの挨拶の後、リーダーの桑田がバンドメンバー全員を呼び寄せ、井戸端会議を始めた。

会議が散会すると、ステージ中央の桑田が叫ぶように口上を述べ、ふたたびカウントを開始。

沖縄人民に向け、急遽もう一曲『いとしのエリー』を演奏した伝説のステージ。こうして、聴衆とバンドは一つとなった。




「みんなのおかげでやってます! 君たちも負けちゃいかんぞ!」(桑田)とは、

明言してはいないが、もちろん新ヘリ基地建設をめぐる「県民投票」の事である。※※









 さらに、12月1日~3日、この年のAAAで、桑田佳祐は「夷撫悶汰(いヴもんた)」と称し、全編ジャズのスタンダードナンバーを披露した。


Act Against AIDS'96 
夷撫悶汰レイトショー 
~長距離歌手の孤独 in Jazz Cafe~



をパシフィコ横浜国立大ホールにて3日間開催した。








 年末カウントダウン・ライブも2年ぶりに開催。


Southern All Stars 1996 年越しライブ in 横浜アリーナ『牛』


は12月28日~31日まで全3公演3万3千人を動員した。






③に続く。











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