『WOWOW presents
サザンオールスターズ LIVE TOUR 2015
「おいしい葡萄の旅」』

2015年4月11日~8月18日

全国11ヶ所23公演

50万人動員



3️⃣
25.道
26.栄光の男
27.東京VICTORY

28.アロエ
29.マチルダBABY
30.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN
31.ボディ・スペシャルⅡ(BODY SPECIAL)
32.マンピーのG★SPOT

【ENCORE】

EN1.
{アブダ・カ・ダブラ(TYPE 1)~}

<愛媛・宮城・広島・5月2日新潟公演>
■C調言葉に御用心


<5月3日新潟公演>
■チャコの海岸物語


<大阪・東京・札幌・名古屋・福岡・沖縄・日本武道館公演>
■匂艷(にじいろ)THE NIGHT CLUB



EN2. ピースとハイライト
EN3. overture「♪あの日から何度目の」
~みんなのうた
EN4. 蛍




25.道


⇒MCは入らない。照明が長めに落ちる。

場末のベンチに(関口と)座る桑田。さながらフェリーニの『道』というより黒澤明の『生きる』。

桑田にとってこの曲はブルースの最高傑作『クロスロード』(ロバート・ジョンソン)の位置づけとなった。年越しライブ2014での的はずれな喧騒が、逆に桑田をして「歌うたい」として生き抜く決意たらしめた。哀切の詩人・日本のロイ・オービンソンにふさわしい詞曲が完成した。
したがって、この曲はツアーのステージで披露することを想定して練り上げられた。

今回の『おいしい葡萄の旅』で桑田佳祐は、年越しライブの喧騒を経て、一歩も引かなかった。メッセージソングも「平和」への誓いもますます詰めこんだ。そして、この曲は今回のツアーの一番の見せ場となった。汚ない声で調子っぱずれ、だらしなくて、どうしようもない「歌うたい」の男だけれども、たった一つ真実がある、それは“あなた”なしじゃ生きられないのであり、“あなた”を愛し、愛を唄い続けることだけは、絶対に譲れないのだ、と。



目眩くファンタジックで切ない世界がステージで展開する。
サザン楽団に支えられながら、桑田は独唱で会場に応える。
まったく力みなく、しかし会場全体が総毛立つように、桑田の絶唱が完ぺきに会場を支配する。それは凄まじい光景だ。

ライブ会場でのこの曲の雰囲気は、一体、何と形容したらいいのだろう。
デヴィッド・ボウイとも、美輪明宏とも言える、果ては『愛の讃歌』のエディット・ピアフなのだろうか。さらには『ジョアンナのヴィジョン』のボブ・ディランなのだろうか。晩年のビリー・ホリデイなのか。

映画のひとこまのようなのだ。

結論から言うと、ステージで披露される『道』は、なにものかであって、だがほかのなにものでもない。まったく独創的なのだ。

生涯一「歌うたい」の宣言は、まさに桑田佳祐というブルースマンの独壇場であり、サザンオールスターズのさらなる進撃の宣言となった。

才能と情熱と執念のステージの前には、すべてがひれ伏すとしか言いようがない。この曲はサザン37年間のベストステージと言っても過言ではないように思う。


そして、桑田は2016年に、この曲と全くタイプの異なる、桑田版〈クロスロード〉第二弾、『ヨシ子さん』を発表したのだった。


この曲を転回点としてライブは怒濤の終盤戦に突入する。








26.栄光の男


⇒エヴァーグリーンでフォーク・ロックなイントロが響き渡る。


テンポが従来よりも速い。

閉塞感をふっとばす最高の演奏だ。


過去のサザンという呪縛から解き放たれよう、そう決意した桑田は、今一番唄いたい歌を心ゆくまで歌うのだ。









27.東京VICTORY


⇒ライヴは頂点に。サザン37年目の最高到達点のこの曲で、会場は激震する。



時が止まったままの


あの日の My hometown


二度と戻れぬ故郷




夢の未来へ Space goes round


友よ Forever young


みんな頑張って


TOKYO,The world is one!!



We got the victory.






今の曲でこそ勝負する!










28.アロエ


⇒ところが、ライヴはさらに爆発してゆく。

毛ガニのクッキング映像がはさまれ、会場は大爆笑。一瞬のちにすでにお馴染みの、フックの効いた4つ打ちビートと共に、ステージでは全員が腕組み。

あれは何だ!

電撃チョモランマ隊が扮する黒装束、黒タイツ、グラサン、アロエパンツ、アロエT(シャツ)をまとった「アロエマン」だ!

会場は狂乱のディスコティークに!

「なんじゃあこりゃあ!」式の異様な熱狂に。


ツアーの目撃者はこの曲の黒っぽさ、ぶっ飛んだ様にノックアウトされるだろう。

馴染みやすい歌詞がぴったりとはまっている。


参りました、と言う他ない。








29.マチルダBABY


⇒間髪入れずに、爆発音が炸裂する(爆竹っぽい爆発音はやや安っぽいものの)。炎がアチチ(歌詞も一部変更)。


6thアルバム『綺麗』の巻頭ナンバー。サザン往年のライヴ・レパートリーで「灼熱のマンピー」ツアーでも選曲された冒険活劇もの。


ディスコ・ビート・ロックで、息つく間もなくたたみかける!









30.エロティカ・セブン EROTICA SEVEN


⇒エバトダンシングチームが5色の水着とマントの「けっこう仮面」スタイルで登場。


ラテン歌謡ロックの決定版。もちろんオリジナル・アルバムには収録していないが、サザン歴代シングル売上2位。<ホテパシ><ジャックナイフ><天井桟敷>などラテンバンドの顔をもつサザン印が満開。




異様な熱狂に包まれる。いくみちゃんは実にサザンのイメージにぴったり!
このいくみちゃんがついに『ヨシ子さん』になるとは⁉








31.ボディ・スペシャルⅡ(BODY SPECIAL)



⇒まだまだ、灼熱の終盤が続く。

お馴染みの誠のギターソロ、この間にメンバーはスタンバイする。

爆発音と共にキラー・ロック・ナンバーのこの曲。年越しライブ2014から連続選曲。

吹っ切れた桑田「アリーナ、スタンド、もっと来んかい!」と久々に煽り。









32.マンピーのG★SPOT



⇒本編ラストは何と<灼熱ツアー>と同じ。やっぱりこの曲がないと空気が入らない。

ただし今回は大夫、久々にマンヅラ(マンピー披露用のカツラ)なし(ファイナル武道館公演のみ)。
自粛したとも言えるが、ロック色が全面に押し出されている。とはいえ、エバトダンシングチームのビーチギャルズが水着で熱狂。


ラストは、ヒロシのlongドラムソロで白熱。


本編終了と共に騒然とした雰囲気に!



▲2003年







【ENCORE】

EN1.
{アブダ・カ・ダブラ(TYPE 1)~}

匂艷(にじいろ)THE NIGHT CLUB



⇒2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』から『アブダ・カ・ダブラ(TYPE 1)』の音源が流れ、チャッブリン+雨に唄えばのサイレント映画&ミュージカルの世界。これが抜群に小粋だ。
メンバーが登壇しアンコール開始。
ツアーでは当初、初期サザンの代表作『C調言葉に御用心』だったが、新潟で一度だけ、サザン第二次大ヒット曲『チャコの海岸物語』が披露された。さらに、ドームシリーズ突入以降は、この曲『匂艷(にじいろ)THE NIGHT CLUB』に固定された。
年越しライブ2014に続く選曲。


桑田の売れたい宣言通り大衆受けを狙った『チャコの海岸物語』が2年ぶりに大ヒットを飛ばした直後リリースされ、2作連続トップテン入りを果たした作品。
ここから現在に至るモンスター・バンド・サザンの歴史が本格的に始まる。


ラテン・サウンドを基調とした黒っぽく淫靡なディスコ・ビートのドのつく傑作。
シングルver.のラストのコール・アンド・レスポンスは、圧巻!




俺のKissはきっと 痛いよ

I love you, baby……



アンコールのド頭は、超一流のラテン・バンドとしての顔も持つサザンが、淫靡でアッパーなラテン・ビートにしてディスコ・ビート、そしてファンク・ロックで押しまくる。


▲たしか2014年のひつじだよ全員集合







EN2.ピースとハイライト


⇒続いて、サザン活動再開直後、40万枚の大ヒットを飛ばした、新たなサザンの代表作。

年越しライブ2014の喧騒をやすやすとぶっ飛ばす、熱狂の嵐が巻き起こる。紅白歌合戦でも 『東京VICTORY』と共に披露されたこの曲は、新東西冷戦下のナショナリズムの暗雲を吹き飛ばす、音楽力が素晴らしい。ポップなのにこれほどロックな歌謡曲を私は知らない。『ビー・マイ・ベイビー』におけるフィル・スペクター、そして、ビーチボーイズの『ペット・サウンズ』ばりのサイケデリック・ロックすら挿入されるこの曲は、まさにサザンオールスターズが日本のビートルズであることを証明した最新曲。


この曲は思想的立場すらこえて、会場が一体となる生命力に溢れている。

“いつか来た道を二度と繰り返さない”-このことを桑田佳祐は今、無性に歌いたいのだ。その根底には人間主義(ヒューマニズム)が貫かれている。したがって、この曲の本質は、実は普遍的なラブソングなのだと思うのだ。


余談だが、年越しライブ2014の喧騒に日本の歌謡界は“死の沈黙”に支配された。サザンにすら触れられない中で、「大衆音楽の粋」『葡萄』発表と同時に世間は手のひらを返したかのようにサザンオールスターズを絶賛し始めた(客観主義)。



こうした中で、AKB48は、『ピースとハイライト』と『東京VICTORY 』に応えるかのように、そして中東における痛ましい事件を受け、『僕たちは戦わない』を発表した。
(秋元康がかつてフォークルに、歌謡曲はこんなことも歌えるのか!、と感銘を受けたことを物質的基礎とする)
ここでこの歌の思想的質を問おうとはさらさら思わない。

けれども、サザン=桑田佳祐が今の時代にポップソングとして『ピースとハイライト』と『東京VICTORY 』で無性に愛と希望を歌い、孤軍奮闘することに影響を受けた、AKB48(秋元康)が2015年の総選挙投票券付きCDで、だが逆説的に、(対象を具体的に明示してはいない)メッセージソング『僕たちは戦わない』を歌うことでサザン=桑田の意志にも応えたのだとしたら、それは立派な価値がある。

なぜなら、AKB48は日本の歌謡界に蔓延する“死の沈黙”に迎合せず・与しなかったことを意味するのだから。しかも、AKB48なりの気持ちのこもった歌とダンスで応えている。AKB48はただのアイドルにはとどまらなかった。時代に向き合った彼女たちなりのエンターテインメントで応え、閉塞感を突き破った。このことだけは評価すべきであるように思う。2015年の等身大の新たな反戦歌『僕たちは戦わない』が発表されただけでも、サザン=桑田佳祐が『ピースとハイライト』と『東京VICTORY 』を歌い続けていることが報われたとも言える。



「ただ、それでもおかしいことはおかしいと思うものだし、たまたまそれがきっかけで音楽が生まれたのなら、それを歌えない空気も、そこで歌えない自分も僕は嫌なんです。」

(桑田佳祐談『SWITCH』VOL.33 NO.4 Southern All Stars 「我が名はサザン」 026頁。)



繰り返し言おう!
この曲は会場を大爆発させた。この曲は本質的にヒューマニズムに立脚した〈希望のラブソング〉なのである。









EN3.overture「あの日から何度目の~」
~みんなのうた






あの日から 何度目の 夏が来ただろう


出逢ったり 別れたり くり返し




懐かしい 友の顔 忘れ得ぬ姿


ここにいる幸せを かみしめて




命の重さ みつめて


遠い悲しみの果てに




涙の数だけ人は


強くなれるかも しれない





美しい思い出も 大切だけど


人生はこれからを夢見ることさ



愛する人よ






今回のライヴでは、このovertureがバージョン・アップされ、命の重みが強調された。




『ピースとハイライト』からこの overtureを経て、ついに<みんなのサザン>による『みんなのうた』で会場にメガトン級の大激震が起こる。



かつて桑田佳祐とミスチルの桜井和寿の“カラオケ・バトル”で、桜井和寿が選曲したこの歌は、盛大な手拍子から“サビの頭で”いっせいに頭上で手を左右に振る。






いつの日か この場所で

逢えるなら やり直そう

忘れかけた真夏の恋人は YOU











EN4.蛍


⇒ラストはこの曲を熱唱。『葡萄』ハンドライトが点灯し、会場一面を蛍が舞うかのよう。

桑田佳祐は「平和」の誓いで『おいしい葡萄の旅』を終えたかったのだ。理屈ではない、音楽バカの情熱なのだと思うのだ。


ラストはオープレネリをもじったミュージカル調の小芝居で幕切れ。



「これが日本歌謡界へのサザンからの回答だ!」-
日本音楽史に刻まれる入魂のツアーとなった。

そして、サザンオールスターズ『おいしい葡萄の旅』の終わり(初心の地・22年ぶりの日本武道館公演)は、やがてまた同時にサザンの新たな旅の始まりとなる★








ライブツアー「おいしい葡萄の旅」総括《座談会》
拙稿。
《座談会》のおこし。















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