血液の大部分を局所へと送り込んだまま風呂に入った僕は、のぼせ上がった頭を冷やそうと、コーラを額に当てながらソファに座り込んでしまった。
彼女はベッドサイドにある照明のスイッチをいじっている。
ほどなくして、お互いの表情や体の起伏が視認できる照度にまで、ダウンライトを調整し終えてから上体を起こし、
「ねえ、しないの?」と少し上気した顔を向けると、
「うん。」と言ってベッドに上がった僕の首に、腕を絡めてきたのだった。
彼女の体からタオルを取り去り、両肩を真新しいベッドカバーの上に押し付け、目が慣れたところで仰向けになった彼女の一糸纏わぬ姿をしばらく観察してから、再び露になった首筋から胸の膨らみへと舌を這わせ、その先を指先で弄び、つまみ上げ、手の平で転がす度に、彼女の唇が開き、吐息が僕の髪をなでた。
右手を腰から太ももへと滑らかな肌の上を這わせ、小さな膝に辿り着くと、そこを左右に押し開き、今度は逆に、内腿からゆっくりと、時折、迷ったフリをしながら、彼女の奥へと向かわせた。
短く縮れた体毛に囲まれた、小さな唇のような柔らかい襞に指先が触れた途端、唇が合わさる割れ目からは、彼女の堪えていたものが零れ落ちてきた。
暖かい湿り気を絡めながら、指の腹を使ってリズミカルにその内側をかき回している内に、水面を軽く叩くような猥雑な音が上がり、淫らな芯が硬く膨らみながら顔を出していた。
包皮をめくり上げて、直接触れると、いよいよ体を密着させ、眉間に皺を寄せながら、僕の指の動きに合わせて腰を動かす彼女。
僕は体を一旦離すと、彼女の脚の間に顔を入れて、両もも持ち上げ、ぐっしょりと濡れそぼつ様子を視認した後、その唇に似た部分に舌を割り入れ、上下に動かし、指で広げつつ更に奥へと押し込んだりしながら、とめどなく溢れてくるものを受け止めていた。
「だめ、、、あ、恥ずかしい。」切れ切れの声で抗おうとするも、その言葉とは裏腹に、硬く充血しむきだしになった芯を舌先が捉え、唇で挟み、強く速く往復しているうちに、
「あ、ああ、、大きい声がでちゃう、、、いや、、イク、、」
体を大きくビクッと振るわせて、彼女は果てたのだった。
放心する彼女に冷蔵庫から、アイスティーを手渡し、僕は再びソファに腰を降ろして、まだ冷たいコーラをコップに注ぎ、喉に流し込んだ。
しばらく体を横たえていた彼女は、
「なんか、私ばっかり。」
そう言って、僕の下腹部に顔をうずめると、浴室での続きをし始めたのだった。
彼女の舌使いは、忽ち僕の我慢を限界まで追いやろうとしていた。
「ねえ、ねえってば。」
「は、ふぁに?」口が塞がったまま答える彼女。
「ベッド行こ。」
強引に彼女の顔を持ち上げ、そのままベッドへと連れて行くと、彼女は、すかさず僕のを口に運び、今度は、僕が彼女の下になり、彼女は僕の顔の上に腰を落としてきた。
肉欲の虜となった2つのシルエットが間接照明に照らされ、壁に浮かび上がる。
僕は、ただひたすら、左右に開いた小ぶりな彼女自身を下から吸い上げ、その内側に舌を這わせた。
声にならない喘ぎを漏らしていた彼女は、口を離して体を反転させると、僕の顔の上に跨り、それを押しつけて来たのだ。
硬くなった芯がさらに充血し、飛び出さんばかりになって目の前にある。
体をのけぞらせる彼女のそこを、しばらく集中的に攻めると僕の顎から下はベッタリと濡れ、体を反らし尚も貪欲に腰をくねらす彼女。
僕は上半身を起こしてコントロールパネル付近にある備え置きのオカモトに手を伸ばした。
すると、「いらない。あれ終わった後だから。」と、彼女は跨ったまま、僕を導き腰を沈めたのだ。
薄いヒップが、最初は一定のリズムで、次に、速く、時にゆっくりと、肉を打つ音を響かせる。
しばらくそうした後、今度は僕が上になった。それに飽きると、彼女を後ろ向きに立たせたり、手足をつかせたりしながら、とめどなく溢れ、絡みつく暖かい粘膜の中を何度も出入りしたのだった。
彼女の押し殺したような声は、途中から箍が外れ、時折、淫らな言葉を挟みながら、艶やかな嬌声となって部屋中にこだましていた。
だが、オカモトのたった0.03mmの隔たりがないだけで、僕の限界は予想以上に早くやってきてしまっていた。
「ねえ、も、もうダメかもしれない。」
生え際から噴出した汗が、シーツに落ち、シミを作っている。
腰を浮かせようとした僕を、うっすら薄目を開けて見上げた彼女は、ギュッと体を密着させ、僕の腰を両脚で固めてしまったのだ。
「出して良いよ。」
その一言が耳に届いた瞬間、水際で保っていた我慢が決壊した。
「中って、それはさすがに、、、あ、あああああああ」
そう、意に反し、僕は彼女の中で果ててしまったのだった。
「あーもう力が入らない。」
とようやく僕を解放した彼女は、タオルを巻いて立ち上がると、冷蔵庫からジンジャーエールを取り出し、口に含んだ。
「中でしちゃったけど、本当に大丈夫なの??」
「大丈夫だって、なに心配してるの?なにかあったら、責任取ればいいだけでしょ。」
まるで人事のように言い放つ彼女。
「だから、それが心配だってこと。」
「ふーん、難しく考えてるのね。」
「いやいや、食べられたのは、こっちだし。無過失だよ、こんなの。」
「分かってて食べたんでしょ~。こういうの何ていうんだっけ、未必の故意じゃなかった?」
「ちょっと違うような気がするけど、そもそも、未必の、、」と言い掛けた僕を、彼女は
「あ、やだ、シャワーしてくる。」とさえぎり、太ももの辺りを気にしながらタオルを巻いて、そそくさと浴室へと入っていった。
僕はトランクスを履き、ベッドに横たわり、頭の中を整理し始めていた。
彼女には婚約者がいる。間違いなく来年結婚し、仕事を辞める可能性が高い。
一方、僕にも恋人はいる。長く付き合った分、僕にはなんらかの責任があるのは否めない。
お互いの事情は、僕も彼女も了解済みだった。
とすれば、今日のことは、割り切った極めて有期的な関係でしかない。
という、えらく都合の良い演算結果が出た頃、
「お待たせ。」とシャワーを終えた彼女が出てきた。
「あ、もう着替えてる。」
「うん、少しクーラー寒いし。」どうせ外に出たら、また汗かくんだろうけど、シャワーでも浴びてこよっかな。」
「そうね。」彼女は携帯をカバンから取り出し、触り始めた。
シャワーで軽く体を流した後、部屋に出ると彼女はタオル姿のまま、ベッドに寝転んでいた。
その横に腰掛け、飲みかけのコーラを喉に流し込む、温く炭酸が抜けたコーラのえぐい甘味が口中に広がった
「そう言えば、ナオちゃん、V君のこと、面接の時から、いいって言ってたんだよ。」
「マジで?」ということは、この前のナオちゃんの態度は、やっぱりナオちゃんなりのアプローチだったのだ。
良かった、最後までしなくてと一瞬安堵したが、そういう問題じゃない。
そして彼女は、次にとんでもないぶっちゃけを投下したのだ。
「ナオちゃんさ、、、、あのコね、整形しているの。」
「はい?」コーラが本当に鼻から出そうになる。
「最初、会社に入ってきた時、髪をギュッと縛り上げて、眉毛はボーボー、ほっぺたもパンパンで、すっごいイモ臭くて、私がメイクとか教えてあげたんだよ。で、顔のラインをどうしかしたいって聞いてきたから、美容整形でもしたらって冗談で答えたのに、本当にしちゃってた。
ほっぺたの肉をピンセットで摘むんだって、ああ、もう痛い痛い。
会社も休んで、都合2回、ほっぺを削って今のナオちゃんの出来上がり。
あとエステとかも行き出して、すごい痩せたんだよ。
そうそう、3年前かな、あのコ、社内じゃないけど不倫もしたんだよね。その相手とランクルで河下りをしていたら、水没しちゃって、それで奥さんにバレたんだって。なんかさ、ナオちゃんて、少しズレてるって言うか、残念なんだよね。そう思わない?」
ナオちゃんのもっとも触れて欲しくないであろう過去を、一気に捲くし立てた彼女は、僕の同意を待った。
「う、うん。僕の知る限りは、無邪気というか、悪いコじゃないと思うけど。」
「悪いコじゃないけど、天然なのよ。」
ナオちゃんとツーカーなのは分かってはいたが、仲良しかどうかは、かなり微妙だ。
彼女がナオちゃんに対抗意識を持っていることは明らかだった。
僕も、どちらかの前で、うっかりなにか言ってしまうことだけは気をつけようと思った。
彼女は、ベッドから起き上がり、クローゼット近くに置いたハンティングワールドの大きなバッグを手に持って戻ってきた。
バックから取り出した紙袋を彼女は、「はい、お土産。」と僕に手渡してきた。
紙袋を開けてみると、中にはエンポリの黒いT-Shirtが入っていたのだ。
「すごい、もしかして特別扱い?」
僕はそのT-Shirtを自分の体の前で広げてみた。
「そうよ。」とシャツの袖をもって僕の体に合わせる彼女。
と、その時、彼女の左手首に、数本の切り傷の跡があるのが目に入った。
そう言えば、彼女が時計を外しているのを見たのは、今日が初めてだ。
明らかに、不慮の事故とかで付いた傷ではなく、静脈を切断するかのように、腱の方向に対して横に何本も入れられていたものだった。
『ちーちゃんには気をつけたほうがいい。』
ナオちゃんの言葉が、冷静さを取り戻した僕の頭の中で、彼女の幾本ものリスカ痕がついた左手首と重なりながら、再びリフレインを始めていた。
(続く)