たしかに場末のキワモノみたいな店だったが、少し酔っていたせいもあって、俺には不思議と落ち着ける場所になった。


それから、何回となく飲んだ帰りに「妖怪ハウス」に立ち寄っては、朝まで飲み続けるようになった。


あの頃はたしかに俺は壊れていた…



朝帰りは週末だけにおよばず、しばしば平日にもするようになっていたからだ…

妻が起きる一時間くらい前に、そ~と家に入り、そのまま自室で寝たフリをする。ていうか、もちろん仕事もあるのでたとえ一時間でも寝る。



妻も、初めは小言を言ってはいたが、そのころには何も言わなくなっていた。


俺達は、もうすでに夫婦とは言えないようなスレ違いの生活を送っていた…



何回かM(妖怪ハウス)に通っているうちに、自分でも気付かなかったのだが、麻奈美の事を気に入りはじめていたようだ…


店のスタッフたちには、まるわかりだったらしいが(笑)
優先的に麻奈美を俺の席につけてくれていたらしい…

他のキャストと話してる時と、麻奈美と話してる時では、俺の表情がまるで違っていたらしい…


この後、


そんな俺が、自分でも麻奈美に対する気持ちを自覚する事になった、ちょっとした事件が起こる事になる…




本当に出会うならここ

     ↓


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その店はスナックぐらいの大きさで、ラウンジ としては小さな方だった。

店の名は「ラウンジM」と言う…

3時を回っているのに意外に賑わっていた。

俺と同じく家に帰りたくない?男たちが集まっていた。

見渡すと、客も個性的(変?)だが、キャストたちも強烈なキャラクターがそろっているようだ。

俺は密かに「妖怪ハウス」と名付けた(笑)


「はじめまして麻奈美です」


取り立てて美人というわけでもないが、周りの妖怪たちのなかにあっては、砂漠のオアシス、二割増しに見える(笑)


それでも、あまり若くないのは予想通り、29歳だった。


「もしかしてバツイチ、子持ちやったりして(笑)」



軽くジャフ゛をかますと


「そやで!三年生の子供がいて、寝かしつけてから出てくるから、12時出勤やねん(笑)」



あっさりと認めて、屈託のない笑顔をみせた…


「ふ~ん、大変やな」



その時は、子持ちの嬢なんて、いくら美人でも気を引かれる事なんてあり得ないと思っていた。
つまり完全対象外。


その時までは…





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その日は2月の寒い夜だった。

由佳の営業メールで呼び出された俺は、いつものようにいそいそと飲みに出かけた。

しかし、その日は特に指名がかぶってたのか待たされる時間が多かった。

それに分かりやすい由佳の営業トークにも飽きてきていた俺は、90分のワンセットで帰る事を決心しはじめていた…

そんな俺を察してか

「アルファさん、今日はどこか飲みに連れて行ってください♪」

「え?でも指名のお客さん他にも来てはるやろ」

「ううん、ほとんどのお客さんは帰らはったし、あと一組も、もう一回席についたら帰らはると思うし…」

「それに由佳はアルファさんともっとゆっくりお話ししたいから…」




あざといなぁあせる

と思いながらも即OKを出す俺(笑)



そして俺のお気に入りのバーSへ…


そこは夜中でもイタリアンが食べられる、穴場のバーである。


由佳は無邪気に喜んで、バーテンダーのS君にチーズの種類についての蘊蓄をレクチャーされていた…



いい感じに酔いが回ってきたのも束の間、やはり送りで帰ると言う。
なんかいいように使われてる感じがしまくりの夜だった…

さて、と由佳と別れてもなぜだか呑み足りない気がした俺は、ふらふらと歩きだした。

時、すでに3時。周りの店は全部閉まっていた。
このあたりは大体1時で看板の店がほとんどだ。

川向こうへ渡ろうか?
あっちなら朝まで飲める店なんていくらでもある。


しかし、なぜか俺は反対方向に向かって歩いていた。

「あと少し飲んでいきませんか?」


ドレスにコートを羽織った女が声をかけてきた。
キャッチだ。
数年前の条例改正で違法になったはずだ…

「え?まだ飲めるの?」

無視すればそれまでだったのに…
反応を返してしまったではないか!
自分でも何かを期待?何かを求めていたのかも知れない…おそらくそんな顔をして歩いていたに違いない。

「もう~寒いし早く行こ♪店はすぐそこやから」


女は俺の腕に腕を絡ませて、歩きだした。


それが麻奈美との出会いだった…

当時、キャバックラRの他に由佳の店の近くで新規開拓したラウンジBがあった。

その店はラウンジという事で指名制ではなかったのだが・・・・


ちょっとS気のある、S嬢に妙に気に入られたようで・・・この娘は大学生のバイトで、誕生日だなんだ、今日は絶対に来て!だのストレートな営業メールをがんがん飛ばして来た。


店が暇な時だったりしたら、俺一人に3人の女の子がやってきて、ボトルを空けるべくワイワイ盛り上げにかかる。(泣)

友達同士で飲み会してるんじゃねーんだぞ!


おかげで、店の娘ほとんどと知り合いになったけど・・・飛んで火に入るなんとやらあせる

カモがネギしょってなんとやらあせる


むしろ、俺としてはM嬢の方が好みだったりするのだが、みんなの間ではなんとなく俺はSちゃんの客という暗黙の了解ができていて、俺に選択権はなかった(笑)


その店はクラブM(由佳の店)の時間調整に使っていたのだが、通りで店長(黒服)に見つかって連れていかれたりしてかれこれ一年ぐらい通ってたと思う・・S嬢の就職が決まるまでは・・・


まあ別に珍しくないけどね・・・夜の仕事から足を洗って連絡が途絶えるなんて。


所詮、客とは仕事上の関係でしかないのだから。

俺だってそんな事は重々わかっている・・・いくらこっちが嬢の事を人として理解して、人として好きになったとしても、嬢にとっては多くの客の一人でしかないのだから・・・


しばらく後にあの嬢に出会うまでは・・・