その日は2月の寒い夜だった。

由佳の営業メールで呼び出された俺は、いつものようにいそいそと飲みに出かけた。

しかし、その日は特に指名がかぶってたのか待たされる時間が多かった。

それに分かりやすい由佳の営業トークにも飽きてきていた俺は、90分のワンセットで帰る事を決心しはじめていた…

そんな俺を察してか

「アルファさん、今日はどこか飲みに連れて行ってください♪」

「え?でも指名のお客さん他にも来てはるやろ」

「ううん、ほとんどのお客さんは帰らはったし、あと一組も、もう一回席についたら帰らはると思うし…」

「それに由佳はアルファさんともっとゆっくりお話ししたいから…」




あざといなぁあせる

と思いながらも即OKを出す俺(笑)



そして俺のお気に入りのバーSへ…


そこは夜中でもイタリアンが食べられる、穴場のバーである。


由佳は無邪気に喜んで、バーテンダーのS君にチーズの種類についての蘊蓄をレクチャーされていた…



いい感じに酔いが回ってきたのも束の間、やはり送りで帰ると言う。
なんかいいように使われてる感じがしまくりの夜だった…

さて、と由佳と別れてもなぜだか呑み足りない気がした俺は、ふらふらと歩きだした。

時、すでに3時。周りの店は全部閉まっていた。
このあたりは大体1時で看板の店がほとんどだ。

川向こうへ渡ろうか?
あっちなら朝まで飲める店なんていくらでもある。


しかし、なぜか俺は反対方向に向かって歩いていた。

「あと少し飲んでいきませんか?」


ドレスにコートを羽織った女が声をかけてきた。
キャッチだ。
数年前の条例改正で違法になったはずだ…

「え?まだ飲めるの?」

無視すればそれまでだったのに…
反応を返してしまったではないか!
自分でも何かを期待?何かを求めていたのかも知れない…おそらくそんな顔をして歩いていたに違いない。

「もう~寒いし早く行こ♪店はすぐそこやから」


女は俺の腕に腕を絡ませて、歩きだした。


それが麻奈美との出会いだった…