
「少林寺炎上」
原題:火燒少林寺
英題:The Blazing Temple
製作:1976年
▼李小龍が没して間もない1975年ごろから、黄家達(カーター・ウォン)は台湾での仕事をこなしていくようになります。そこで彼は、様々な武侠片を世に送り出してきた台湾きっての巨匠、郭南宏(ジョセフ・クオ)と出会いました。郭南宏の監督作『少林寺への道』に出演した黄家達は、その暑苦しいまでの熱演で注目を浴び、多くの功夫・武侠片に出演します。
本作はそんな彼が台湾時代の初期に出演した作品の1つで、監督はもちろん郭南宏。当時の台湾功夫スターが勢揃いしたオールスター大作で、その規模は台湾映画とは思えないほど大きく、豪華なセットや多量のエキストラが投入されています。物語は「雍正帝と少林寺焼き討ち」というお馴染みの話ですが、数々のスターの中から黄家達が主役として抜擢されているあたりに、彼に対する郭南宏の期待の大きさが窺えます。
■稀代の暴君・雍正帝(易原)は、朝廷に反抗する少林寺が目障りでならなかった。彼の学友である嘉凌(ジュディ・リー)も謀反を起こし、激怒した雍正帝は少林寺の焼き討ちを強行。砲撃の雨が降り注ぐ中、少林僧の張翼(チャン・イー)たちは十八銅人に挑戦して下山を、黄家達たち残りの門弟は禁じられた抜け道からの脱出を試みた。
館長や高僧たちが犠牲になりながらも、なんとか生き延びた少林僧たち。彼らは雍正帝への復讐を誓うが、雍正帝もまた少林僧の皆殺しを目論んでおり、仲間の金剛(カム・カン)が討たれてしまう。少林僧たちはさっそく雍正帝の暗殺に乗り出すが、皇帝の影武者に惑わされて衛子雲(ビリー・チャン)が落命。この暗殺失敗の際、無傷で帰ってきた黄家達にスパイ疑惑が向けられるが、本当のスパイは仲間の1人・唐威であった…。
隠れ家を追われて後の無くなった少林僧たちは、遂に雍正帝の根城へと突入する。そこで裏切り者の唐威と出会うが、彼は「これは皇帝に近付くための演技だ」と言う。張翼たちは唐威の言葉を信じて動くのだが、すぐに周囲を敵兵に囲まれてしまった。やはり裏切り者は裏切り者か?しかし、まともに闘えるのが黄家達だけとなったその時、姿を現した雍正帝の体を唐威の毒矢が貫いた!
すべては皇帝を倒す決定打を与えるために、憎まれ役を買って出た唐威の策だったのだ。張翼と唐威の死を乗り越え、ただ1人で雍正帝とその軍団を相手取る黄家達。果たして、彼は憎き暴君を倒す事が出来るのか!?
▲郭南宏の監督作といえば、裏切りやヘンテコ銅人などのイメージが先行しがちですが、本作は正統派の少林寺映画として仕上がっていました。嘉凌と雍正帝の確執から幕を開け、ミニチュアセットを交えて描かれる大規模な焼き討ちシーン、ツッコミどころ満載の脱出シークエンス、そしてクライマックスにおける男の友情など、最初から最後まで見せ場が詰まっています。
また、それぞれのキャラクターの立たせ方も見事で、個人的には冷静なリーダーとして戦い抜いた張翼に一番魅力を感じました。一方、黄家達は演技面ではそれほど印象に残りませんが、ラストでは大勢の敵を相手に大立ち回りを展開!肝心なところは突然現れた嘉凌に奪われてしまいますが(苦笑)、決めるところはしっかり決まっていたと思います。
『少林寺への道』を経て、黄家達は郭南宏作品の花形俳優として各個たる地位を築きました。それと同時に、いつしか彼は台湾映画界を代表する功夫スターにまで成長していきます。黄家達にとって、郭南宏とその監督作に出演したことが人生のターニングポイントとなったのです。両者の関係はしばらく続き、最後にタッグを組んだ作品は功夫片史上に残る傑作と呼ばれる事になります。次回はその傑作功夫片…の前に、台湾映画らしい衝撃的なイロモノ映画をひとつ紹介いたします。(次回へ続く!)

「スカイホーク鷹拳」
原題:黄飛鴻少林拳
英題:The Skyhawk
製作:1974年
▼1970年代初頭、香港映画最大の牙城・ショウブラザーズ(以下ショウブラ)から離脱した面々により、ゴールデンハーベスト(以下GH)というプロダクションが設立されました。この当時の香港映画界は、対抗馬のいなかったショウブラによる1人舞台となっていたのですが、同社の独裁体制に反感を抱く者たちが現れたことにより、GHは誕生したのです。
とはいえ、設立間もないGHの規模はそれほど大きくなかったため、即戦力となるスターが必要となってきました。そこでGHは3人の俳優を代表格として推し、俳優の層が厚いショウブラになんとか追いつこうとします。その3人が田俊(ジェームス・ティエン)、劉永(トニー・リュウ)、そして黄家達(カーター・ウォン)だったのです。
…というわけで今月は、我らが無敵の銀魔王こと黄家達のキャリアを、出演作と一緒に振り返っていきたいと思います!
■かつての旧友・司馬華龍を訪ねて、黄飛鴻こと關興(クワン・タクヒン)は弟子のサモハンと共にタイへ来ていた。道中、黄仁植(ウォン・インシック)一味に襲われた青年・黄家達を伴い、關興御一行は司馬華龍と娘の苗可秀(ノラ・ミャオ)の元を訪れる。だが、現地では司馬華龍の会社と趙雄(手下に金珠・唐偉成)の率いるライバル会社との間で、深刻な対立が起きていた。
趙雄は会社経営の傍ら、殺人や人身売買を平気でするという正真正銘の悪党だった。連中は司馬華龍サイドの社員を脅迫し、食堂の女主人にまで乱暴を働こうとした。傍若無人の限りを尽くす趙雄たちに対し、サモハンや黄家達は何度となく屈辱を味わったが、關興は「むやみに争うのはイカン」の一点張りだ。
そして調子に乗った趙雄らは、ギャンブル狂の李昆(リー・クン)から食堂の権利書を強奪。司馬華龍とサモハンが返還交渉に出向くが、帰り際に襲撃を受けて死んでしまう。ずっとガンジー路線を貫いてきた關興も、ここに至って遂に行動を開始する。復讐しようと先走った李昆が第3の犠牲者となる中、趙雄と手を組んだ黄仁植との最終決戦が始まるが…。
▲ショウブラとの圧倒的な物量差に対応するために、GHはできるだけ多くのヒット作を求めていました。李小龍(ブルース・リー)や許冠文(マイケル・ホイ)の参入で状況はそれなりに好転しましたが、彼らに依存し続けるわけにもいきません。十分な興行収入と、ニューフェイスのスターを観客に印象付ける事…。この2つの課題をクリアする事が、当時のGH作品における共通の優先事項だったと思われます。
本作はその点において明確な回答を示しました。監督の鄭昌和は、まず長年続いた關徳興版『黄飛鴻』を復活させることで幅広い層にアピールします。黄仁植ら韓国人俳優を起用して韓国マーケットを射程圏内へ収め、黄家達に対しても冒頭と最後のバトルに参加させてしっかり目立たせています。2つの課題をあっさりと解決してしまうとは、さすがは『キングボクサー大逆転』の鄭昌和。まったくもって抜け目がありません。
ただ、そういった各々の要素を充実させる一方で、ストーリーやアクションは盛り上がりに欠ける出来となっています。特にアクション面については、黄仁植が『ヤングマスター』を髣髴とさせる激しい蹴りを見せていますが、正直言って凄いのはそこぐらい。武術指導はサモハン自らが行っていますが、当時の彼の殺陣はまだまだ洗練されてない部分が多く、『少林門』では動作のテンポが不均等でした。
本作では老齢の關徳興を黄仁植に勝たせるべく、その勝利に説得力を持たせるだけのバトルが求められましたが、成功したとは言い切れない結果になっています。のちにサモハンは『燃えよデブゴン7』で再び關徳興の殺陣を振付けていますが(武術指導は袁和平と共同)、こちらでは李海生(リー・ハイサン)を相手に見事なファイトを作り上げています。もしかすると『~7』における關徳興のアクションパートは、本作で苦汁を飲んだサモハンによる雪辱戦…だったのかもしれません。
さて話は黄家達に戻りますが、彼は同期の田俊・劉永と比べてブレイクはしませんでした。映画経験の豊富な田俊、ハンサムで立ち回りもこなせる劉永に対し、黄家達はGHで自らの個性を完全に発揮することが出来なかったのです。まだまだ発展途上にあった黄家達…しかし彼は新しい活躍の場を得て、一気にトップスターへの階段を駆け上がることになります。そう、台湾の巨匠として名高い"ある大導演"との出会いによって……(次回へ続く!)

「六本木ソルジャー」
「六本木ソルジャー 喪服の探偵」
製作:1995年
●今回は今度こそ久々かもしれない真樹日佐夫プロデュースのVシネマをご紹介します。本作は初代タイガーマスクである佐山聡の主演作で、いつも裏社会や格闘技をメインに扱ってきたマキ作品にしては珍しく、ハードボイルドな探偵モノとして作られています。
六本木で探偵業を営む元キックボクサーの佐山は、さる汚職事件で逮捕された会社社長の妻・大沢逸美から、「夫が隠していた極秘書類が盗まれたので助けて欲しい」との依頼を受けた。まず佐山は社長の第一秘書にコンタクトを取ろうとしたが、既に秘書は何者かに殺されていた。
いったい誰が彼を殺したのか?死んだ秘書の妻、社長の愛人、そして依頼人の大沢…調査を続けていく中で、捜査線上に次々と疑わしき人物が浮上していく。その後、佐山をたびたび襲撃した連中の黒幕が社長の愛人だと判明するも、秘書の妻が第2の犠牲者となってしまう。
このことで獄中の社長から捜査の打ち切りを告げられるが、佐山は捜査続行を決意。事情通の藤原喜明、情報屋のジェフ・ニコルズらの協力を得て、社長の愛人をマークし始めた。次第に明らかとなっていく意外な事実…果たして、連続殺人犯の正体とは!?
オープニングが女装した男のSMショーという壮絶な幕開けでしたが(苦笑)、物語はあまり奇抜ではないオーソドックスな探偵モノでした。登場人物が少ないので犯人はすぐ解りますが、様々な性的嗜好を交えることで変化を持たせています。また、作品のタッチは『刑事コロンボ』っぽい雰囲気で、殺人シーンには『サイコ』の影響が感じられました。
佐山の演技に関しては本人も認めている通りですが、格闘アクションについては素晴らしいものを見せています。氏はかなり太めの体形ではあるものの、いざ戦闘となると異様なまでに俊敏な動きを発揮!蹴りやパンチの速さがザコと段違いで、宙返りまでこなす様は和製サモハンと言っても良いほどです(依頼人の美貌に見とれてしまう場面など、アクション以外でもサモハンを彷彿とさせるカットもありました・笑)。
惜しむらくは、佐山のアクションが実質2箇所しか無いということです。探偵モノというジャンルの都合上、ラストをタイマン勝負で終わらせる訳にはいきませんが、個人的にはもっと彼のアクションが見たかったなぁ…。なお、今回はマキ作品には欠かせない濡れ場が少なく、真樹センセイの出番も意外と少なめでした。

南北腿王/魔鬼教頭巧鳳凰
英題:The Invincible Kung Fu Legs/The Leg Fighters
製作:1980年(1983年説あり)
●稀代の足技使いであった譚道良(レオン・タン)は、残忍な拳法家・彭剛を接戦の末に葬り去った。しかし、彭剛の兄である大悪党・彭剛(一人二役)は敵討ちを誓い、虎視眈々とリベンジの機会を窺っていた…。
一方、こちらは名家として世間に名高い王侠家。ご令嬢の夏光莉は、召使いの金龍と共に功夫教師の孫榮志からキツい修行を受けていた。毎日がスパルタ特訓の連続だったが、孫榮志が一身上の都合で実家に帰るため、代わりに別の教師が赴任してくる事となった。厄介な師がいなくなり、浮かれた夏光莉らは乱暴なチンピラを必要以上に叩きのめすが、そこに先程の譚道良が現れる。
夏光莉も決して弱くなかったが、実力的には相手の方が一枚も二枚も上手。軽くあしらわれて帰宅した彼女を待っていたのは、噂の新任教師・譚道良であった。夏光莉たちは何とか出し抜こうとするが、譚道良は強すぎて全然敵わない。一時は険悪な関係になりかけたが、鈴の音コンビ(王耀と呂雲保)との闘いで劣勢のところを助けられた事で、夏光莉は譚道良を師匠として認めるのだった。
同じ頃、譚道良を探して各地を暴れまっていた彭剛は、帰郷していた孫榮志とその妻を殺害。遂には王侠家へ果たし状を送りつけ、譚道良を抹殺しようと動き出した。譚道良はこの挑戦を受けて立つが、足技に加えて鷹爪拳まで身に付けていた彭剛はなかなか手強い。そこに修行を受けて強くなった夏光莉&金龍が加勢し、最後の対決が始まる!
本作は台湾製のコメディ功夫片ですが、このころ量産されていたジャッキー映画もどきとは一線を画し、オリジナリティの強い作品となっています。監督は譚道良の主演作を何本か手掛けてきた李作楠(リー・ツォー・ナン)で、今回は基本設定にだけ趣向を凝らし、ストーリーはシンプルにまとめた解りやすい作品に仕上がっていました。
コメディ部分が少々パンチ不足で、後半になっていきなり血の出る描写が出てくるなど、細かな不満はあります。とはいえ、作品そのものの出来はとてもしっかりしていて、なおかつ作中の功夫アクションはどれも高度。物語が進むごとにアクションは激しさを増していき、ラストバトルの夏光莉&譚道良VS彭剛における目まぐるしい足技合戦、最後の主役2人によるキックラッシュも迫力満点です。作品の質は安定し、功夫アクションにおいては傑作と呼べる逸品と言えます。
個人的には、相変わらず表情変化が少ない譚道良を見て、もっと彼の砕けた演技を見てみたいと思ってしまいました(本作では譚道良自身が笑いを取るような場面は殆どありません)。そういえばこの人が思いっきり爆笑している姿を見たことが無いなぁ……?

「ファイヤーズ・ピーク」
原題:FIRE/NATURE UNLEASHED: FIRE
製作:2004年
▼格闘スターのブライアン・ジェネスが、『ファイアーボール 火の玉超特急』に続いてNUイメージで撮った災害パニック映画です。先の『火の玉超特急』はパニック映画に見せかけた列車アクションでしたが、本作は山火事をモチーフにした純粋なパニック映画でして、今のところ日本に上陸したブライアン最後の出演作でもあります。
ところで、どちらのブライアン主演作もタイトルが炎繋がりなのは何故?(笑
■自然公園の警備員だったブライアンは、閉鎖された坑道で金を採掘しようとしていた強欲男を助けようとするが、落盤に巻き込まれて男は奈落の底へ落ちてしまう。
それから6ヵ月後、同公園でバイクレースをしていた若者グループが事故を起こし、ブライアンが救助に向かう事となった。若者グループは意地悪なヤンキー、金髪と黒髪のWヒロイン、怪我をした青年の計4人。彼らを連れてブライアンは公園の出口に向かおうとするが、突如として大規模な山火事が発生した。
まるで行く手を阻むかのように炎は燃え広がり、真赤な地獄が彼らを飲み込もうと襲い掛かるが、実はこの火災は謎の放火魔によって引き起こされた物だった。果たして放火魔の目的は?そして炎に包まれたブライアンたちの運命は?犠牲者を出しながらも難を逃れた一行を待ち受けていたのは、放火魔の意外な(というより予想通りな)正体だった…。
▲本作は元々TVムービーとして作られた作品ですが、燃える炎や深い穴などはCGで処理され、カットによって映像の明るさが違っていたりと、随所でアラが目立ちます。ロケ地も同じような所ばかりですし、かなりの低予算で作られたものと考えられます。
また、ストーリーは主人公たちがひたすら災害から逃げている(むしろ翻弄されている)だけなので、特に際立った部分はありませんでした。後半からはガスが充満して爆発しそうな坑道での脱出劇となりますが、やっている事は前半の山火事シークエンスとほぼ一緒。一粒で二度美味しい構成を狙ったようですが、せめてもう少しドラマに味付けして欲しかったかなぁ…(爆
しかし、低予算でも頑張ってる箇所がいくつかあるため、本作を全否定する訳にはいきません。本物の炎を使って撮影したシーンは臨場感があったし、中盤における走行中のバイクが運転手もろとも爆発するスタントは、本作の見どころの1つと言えます。そしてブライアンの格闘シーン&スタントもきっちり用意され、何度か立ち回りを見せていました。ちなみに彼は後半で足を負傷しますが、最終決戦で思いっきり蹴りをかまし、誰もが「あんた怪我してたじゃん!」とツッコミせざるを得なくなります(苦笑
トータルとしては『火の玉超特急』とほぼ同レベルの出来で、完成度はあまり高くない本作。しかし、低予算でも見せ場を作ろうと努力していた点では、本作が勝っていたと思います。