続・功夫電影専科 -142ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


邊城皇帝/邊城梟雄/未代響馬/末代響馬
Country Side Hero/Border Town Hero
1995/1992

▼田俊(ジェームス・ティエン)、黄家達(カーター・ワン)、劉永(トニー・リュウ)…彼らはゴールデン・ハーベスト(以下GH)初期を支えた男優たちである。
田俊は言わずもがな、三人の中で1番の出世頭は黄家達で、郭南宏作品の常連となった台湾時代での姿のほうが我々日本のファンにはおなじみだろう。遂には『ゴースト・ハンターズ』でハリウッドにまで行き、現在でも『片腕拳王2005』などでその勇姿が確認できる。
…さて、では劉永はどこにいったのだろうか?彼はあまりGH時代もパッとせず、苗可秀らと同時期にショウブラへと移籍。武侠片へとスタイルを変えた。ところが暴力事件等々で80年代後半から出演作はガックリと落ち込むも、今でも一応俳優業は続けているらしい。
そして、そんな劉永の近作がこの作品なのだ。

■時は日本軍占領下の中国。狄威(ディック・ウェイ)の仕切る馬賊が警官隊の一斉攻撃を受けた。その争乱で賊は散り散りとなり、狄威の忘れ形見を伴って配下の1人が逃げ延びた。
それから15年後…忘れ形見は警官隊の隊長・劉永へと成長したが、盗賊によって恋人を殺されてしまう。劉永は悪の一掃を誓い、例え目の上のたんこぶである日本の犯罪者だろうが容赦なく断罪した。
狄威は小さな村に馬賊の生き残りと共に隠遁していた。たまに街へ出ることもあったが、そのときヨタ者の起こした事件で日本軍が街の人間を無差別に捕らえ、狄威の妻も捕まってしまった。住民の解放を望む劉永だが日本軍は譲らない。そこで狄威は妻を奪還すべく、再び銃を手に立ち上がる決意を固めた。
何も出来ない自分にもどかしさを感じていた劉永。その矢先に狄威たちが日本軍の護送団を襲撃し、彼らの姿に触発された劉永は狄威たちに加勢する。だが、狄威が賊だと知った劉永は彼を倒さんと立ちはだかった。狄威は劉永に何か共感できるものを感じていたようだが…。
勿論、こんな事件を日本軍が黙っているはずが無い。大島由加里にちょっと似たサムライ女や上官たちが兵を率い、劉永たちと狄威ら馬賊を一網打尽にしようと出動したのである。後日、劉永は引越ししようとする馬賊たちと合流していたが、そこに日本軍の無差別爆撃が振りかかる!
必至に応戦する馬賊と劉永たちだが、数の差に圧倒されて次々と多くの仲間たちが死んでいく。卑怯な日本軍に捨て身で立ち向かっていく劉永と狄威は…。

▲2人の親子を通して語られる動乱の物語…という感じの話なのだろうが、字幕無しの北京語吹替えVCDでの視聴だったこともあって、あまり詳しい内容までは解らなかった。
大勢のエキストラを動員した乱戦のシーンは迫力があり、広大なロケーション効果もなかなかのものである。しかし、思わせぶりに登場したサムライ女は全く活躍しないし、アクションも製作年度を考えるとどことなく味気無いのが残念だ(ラストバトルはテイストが『嵐を呼ぶドラゴン』っぽい)。
劉永VS狄威という、ありそうでなかった顔合わせの対戦が見られるのは嬉しいが、ドラマもセリフで補完しようとする部分もあるように見え、傑作とは言いづらいものになっている。
だが、本作での劉永はちょっと老けているが今でも二枚目で通用するルックスだ。場面によっては劉徳華に見えなくも無い…ってこんな事書くと劉徳華のファンに怒られそうだが、歳の割にはなかなかハンサムである。アクションもどうにか頑張っていたし、このままフェードアウトしてしまうのはちょっと惜しいと思うのだが…。


好小子的下一招
Fighting Ace/Kung Fu Ace/Master of Death/Kid's Ace in the Hole
1979

▼足技ファイター・劉忠良(ジョン・リュウ)の主演作だ。これは台湾映画なのだが、いつも台湾映画にあるような泥臭さはあまり感じられず、ストレートな正統派の功夫片として仕上がっている。
本作の特色は師匠が一人ではないというところだ。劇中劉忠良は様々な師匠と出会うのだが、これがまた多種多様な面子揃い。とりあえずまずはレビューをご覧あれ。

■悪党の程清に父母を殺された劉忠良は、父母の使用人と共に仇を探してさすらっていた。そんなある時、彼らは成金の家に招かれた功夫の達人・権永文と出会う。あの凄い足技を身に付けたいと思った劉忠良たちは、その成金の家に小間使いとして潜り込んだ。
朝は小間使いとして仕え、夜はこっそりと覗き見した権永文の技の特訓に励む劉忠良。もともと筋のよかった劉忠良は独学でもかなりの腕を上げ、仲良くなった小間使いの王太郎のつてで、なんと権永文に直接指導してもらえる事になった。最初は渋い顔をする権永文だが、指導していた成金のバカ息子がダメダメだったこともあり、劉忠良に指導を施すのだった。
しかしこの秘密授業が成金にバレてしまい、劉忠良はクビになってしまう。ここで同じくクビになった王太郎が劉忠良に同行し、次に大道芸をやっている功夫の達人と知り合った。その後、チンピラに襲われていた午馬(ウー・マ)とも出会うが、こちらも実は功夫の達人。助けてくれたお礼に技を教えてくれる事になったが、これで同時に2人の師匠を持つ事になってしまうのだった(しかし、午馬が師匠でその上強いってのも珍しいなぁ…)。
大道芸の師匠からは手技を、午馬師匠からは拳法を習う劉忠良と王太郎。権永文の娘である龍君兒(ドリス・ロン)が合流するが、「私の父に弟子入りしたのに、この上さらにかけもちなんて!」と、もっともな事を言われ、龍君兒の横槍でかけもち修行がバレてしまった。しかも運の悪い事に、この2人の師匠は犬猿の仲!結局2人の修行はうやむやになってしまった。
その後、暴漢に襲われていた龍君兒を助け、改めて謝罪する劉忠良たち。だがこの暴漢たちのボスが何を隠そう、程清だったのである。お互いの素性を知らぬまま、程清は強い劉忠良に「もっと腕を磨いてみんか?」と弟子入りを持ち掛けた。龍君兒の一件で懲りていないのか、劉忠良は程清と手を合わせた。
程清は悪事に劉忠良を利用し、様子を見に来た劉忠良の使用人は程清の存在を確認する。その頃、劉忠良は程清に自身の生い立ちを話してしまう。「あの時のガキか…」不敵な笑みを浮かべる程清。劉忠良が全てを知ったのは、程清とその手下たちが襲い掛かってきたときだった。遂に仇敵と向かい合う劉忠良は、決死の戦いに挑む!

▲本作で劉忠良が弟子入りするのは権永文・大道芸の人・午馬・程清と4人に上る。仇討ちのために強くなりたいのは解るが、これじゃー龍君兒じゃなくても節操無しだと言いたくなるレベルだ(笑)。とはいえ、それら修行してきた技はちゃんとラストシーンで役立っており、アクションのレベルもきちっとしていて楽しむことができる。
また、本作において劉忠良と共に登場した王太郎が個人的に気に入りました。彼は茅瑛の『舞拳』で師匠の一人を演じ、『片腕カンフーVS空とぶギロチン』では龍君兒にヌードにされていた猿拳使いのあの人だが、見た目のショボさとは打って変わってアクロバットなアクションを難なくこなす技巧派(たぶん京劇系の人でしょうね)。コメディリリーフとしても活躍し、ラストバトルでは劉忠良の手助けをするなど、本作の彼は中々おいしい役として光っていました。
ストーリーに?が付く事もありますが、個性的な面々が繰り出す功夫アクションとも相まって普通に面白い功夫片ですので、劉忠良作品の入門編としてみてもいいかもしれません。


雙馬連環
英題:Mystery of Chess boxing/Ninja Checkmate
製作:1979年

▼本作は、かつて某功夫映画レビューサイトにて『ミステリー・オブ・将棋拳』(だったかな?)として紹介されていたものである。くだんのサイトによると海外で結構なヒットになったとの事で、その証拠に"Mystery of Chess boxing"の名を冠した黒人ラッパーによる曲が存在する(同じ様に海外のラッパーが功夫片から名前を貰った例はあり、『少林寺三十六房』『五毒』と同じ名を持つものもあるらしい)。
さてその内容だが、まさしく典型的なコメディ功夫片の一本ともいえるもので、ご丁寧に袁小田も引っ張り出されている。

■父を悪党の龍冠武(マーク・ロン)に殺された李藝民(サイモン・リー)は、仇討ちのために功夫道場へと入門する。下っ端ゆえに先輩からもイビられ、修行もロクにさせてもらえない李藝民。主人公特権(笑)で袁小田にちょっとだけ修行を受けさせてもらう李藝民だが、道場の師匠に龍冠武と関わりのある人物だと知られ、「面倒事は御免だ!」と破門されてしまう。
行く宛の無い李藝民は、以前会った将棋と功夫の達人・龍世家(ジャック・ロン)の元へと駆け込み、そこで新たな修行生活を送る事になった。隠遁していた龍世家は最初こそ渋っていたが、熱心な李藝民の頼みでようやく奥義・将棋拳を伝授させるに至った。
 李藝民はメキメキと実力を上げていくが、そこに龍冠武が姿を現す。龍冠武は先に登場した道場の師匠を倒し、次にいよいよ龍世家のもとへとやって来た。さすがに龍冠武は強敵で、さしもの龍世家でも敵わない。そこに李藝民が救援に現れ、仇敵との最後の闘いが始まった!

▲監督の郭南宏(ジョセフ・クオ)は、過去にも本作と似通ったキャストで『ドランクマスター・酒仙拳』という作品を撮っている。こちらは『酔拳』におんぶにだっこといった目論見が見え、作品自体も余り面白いものではなかったが、本作は下手に傾倒しなかったおかげで良質の作品になっている。
 英語吹替えのものを見たので龍冠武の目的がいまいち解りづらいが、ストーリーはオードソックスだが破綻は無いし、アクションもスピーディーかつアクロバットな殺陣で、とても見応えがある(武術指導は出演もしている王圻生や程天賜など)。なかなかに手堅い作りで、なるほどこれなら海外でもヒットした理由が何となく解る気がします。個人的には今まで見てきた李藝民の主演作ではベスト。功夫映画依存症の方にも是非見てもらいたいタイトルです。


詠春興截拳/詠春截拳
Bruce Lee's Deadly Kung Fu/Story of the Dragon
Bruce Lee's Secret/Bruce Li's Jeet Kune Do/Dragon Story
1976

▼何宗道(ホ・チョン・ドー)の李小龍伝記映画だ。何宗道といえば『ブルース・リー物語』でも李小龍の伝記に主演したが、当然のように似たような企画は作られ、本作のようなものが生まれている。でも、既に『ブルース・リー物語』では李小龍の伝記を一通り描き終わってしまっている。製作者側もさすがに同じ様なものを繰り返して作るような真似まではしない。じゃあどうすれば…?

■本作はいきなりルビー・チョウのレストランで住み込みバイトをしている場面から始まる。要するにこの作品は、李小龍のアメリカ時代に焦点を当てた物語なのだ。
レストランで白人とケンカをしてクビになってしまった何宗道とその友人。彼らは港の運搬業へと再就職するが、件の白人たちが親玉の黒人と共に横槍を出してきた。どうにかそこは黄家達(カーター・ウォン)が場を収めたが、騒ぎの発端となった何宗道たちは信用を失ってしまう。
今度は白人の親玉の親玉であるロイ・ホランが動き出し、面目躍如とばかりに白人一味を打ち倒した何宗道。ようやく失った信用を取り戻し、ついでに功夫道場なんかも開いたりなんかしちゃったりすのだった。
一方、白人たちの所ではホランの親玉であるロバート・カーバー(『神腿鐵扇功』でもホランと共演)が乗り出してきていた。レストランでのケンカから始まった揉め事がここまで大事になるとは、世の中何が起こるか解ったものではないですねぇ(爆
それから何宗道と対立していた黄家達も仲間になったが、白人たちの嫌がらせはますますエスカレートし、遂には用心棒の黄正利(ウォン・チェン・リー)が放たれるまでに至った。
黄正利はさすがに強く、道場の黄家達や何宗道でさえも敗北してしまう。だが、師の教えを思い出した何宗道はえらくハイペースな修行でパワーアップ。黄正利にリベンジを果たすと、改めてロバートらの本陣へと突入し、最後の対決へとなだれこむのであった。

▲この映画、どことなく呉思遠の匂いがするのだ。というのも、出演者が何宗道やロイ・ホランや黄正利など、呉思遠の関係者であるというのも気になる。それにザコの白人一味のリーダー格が、『死亡の塔』の冒頭で黄正利に挑戦した白人ファイターに似ている気がするのだが…果たして真相は?
…で、作品自体の感想はというと、やっぱり『ブルース・リー物語』よりかは落ちるかなぁ。顔ぶれこそそこそこの面子を揃えているが、アクションはどこかもっさりしているし、特別ストーリーも面白いというわけではない。それにラスボスがショボく、どうせなら黄正利を持って来ていたらよかったと思わずにはいられないところである。
また、黄正利はこの前年に『南拳北腿』に出演しているが、彼の名物である決め技の飛び三段蹴りといった技などが、本作ではあまり見られないのだ。これはちょっと残念な気がしないでもないが、一応素早い蹴りは既に存在しており、まだ初期形態の黄正利が見られるという意味では面白いものがあるかもしれない。


「真説・モンキーカンフー」
醉歩迷猴
Monkey fist, Floating Snake/Monkey Kung Fu/Drunken Monkey
1979

▼日本でもリリースされている作品だが、日本語吹替え無し字幕無しという代物だったらしく、そもそもビデオ自体が今ではレアということで、私は海外版DVDでの視聴となりました。主演は陳木川という人で、一説にはショウブラスターの陳觀泰(チェン・カンタイ)と兄弟であるとされていましたが、実際には「兄弟弟子」が誤解されて広まった事だと最近知られてきています。
ちなみに陳觀泰も本作と同様の猿拳映画『鐵馬[馬留]』を製作していますが、そもそも彼らの師匠である陳秀中も『猴拳寇四』なる猿拳映画に出ていたこともありますので、陳木川が猿拳映画を撮るのもまた必然であったと思われます。

■物語はカンフーを習いたい出前持ちの陳木川(ちょっと頭が弱い役?)が、ふとした事から出会った猿拳の達人・孫榮志に弟子入りするという、コテコテのコメディ功夫片である。最初は弟子入りを断っていた孫榮志だが、結局はその熱意に負けて陳木川を迎え入れる事となった。一方、巷では陳星(チン・セイ)らの経営する功夫道場が張翼(チャン・イー)率いる一味に次々と潰される事件が起きていた(一味の中には高雄などがいる)。
勢力を拡大し、一味は街でやりたい放題暴れている。どうやら張翼は孫榮志を探しているらしく、遂に事態は孫榮志との対決にもつれ込んだ。結果は何とか相打ちになり、街では人々が立ち上がって一味は駆逐されるに至った。だが、これで張翼は引き下がったのだろうか…?
とりあえず張翼の件は片付いたので、ようやく本格的に陳木川と孫榮志は功夫の修行を再開。徐々に力をつけてきた陳木川は、ついに醉猴拳ともいえる奥義を伝授された。ところが平穏は長くは続かない…先の戦いで孫榮志と引き分けた張翼が新たに修行を積み、パワーアップして帰ってきたのだ!
相手が強くなっている事を悟った孫榮志は、陳木川に新たな修行を施していく。その後、張翼によって孫榮志の同門だった女主人が乱暴されて気狂いとなってしまった。張翼と戦った時の傷はまだ癒えていない孫榮志は、無理を押して張翼との雪辱戦に向かった(私の持っているDVDではここらへんの展開がやけに速く、恐らくはカットされているものと思われる)。怪我の上に相手は強くなっているという事で押される孫榮志…そこへ陳木川が駆けつけ、最後の闘いが始まる!

▲ストーリー・アクション共にかなり中途半端な作りだ。武術指導は陳木川自身が担当しているが、場面ごとによってそのクオリティはまちまち。特にスタートを飾るはずのオープニング演舞に迫力が無いというのはイタかった。悪くは無いけど良くも無くもなく、かなり微妙な仕上がりになっている。
キャラクターに関しては当時のコメディ功夫片によくある設定だが、陳星・岳華・高雄なんかはかなり勿体無い扱いを受けている。高雄はまだ全編に渡って出番があるだけマシだったが、陳星は恐らくゲスト出演だったのか、ほんの2シーンに出て終り。岳華に至っては思わせぶりに登場しておいてアクションシーンすら見せていない。
そしてラスボスの張翼だが、本作での彼はちょっとインパクトに欠けており、しかも髪が後退してて現在の元華っぽい風貌になっている(苦笑)。彼は前半で『酔拳』の黄正利っぽい服装で、中盤からは『蛇拳』の黄正利っぽい服装で登場するが、これはただ単にコメディ功夫に便乗しただけのようで、あまり本作独特といえるようなものには見えない。製作側もそれがわかっていたのか、本作では後半から張翼が修行を積むという新たなポイントを盛り込んでいる。
本作に関してはここだけ「おおっ!」と思ったけど、あとはいつものコメディ功夫片の常套句ばかり。女主人が悲惨な目に遭っているのに、無理矢理笑いに持っていってオチをつけたりするのは「どうかなぁ…」と思ったりしました。
ところで…いくらコメディ功夫片だからって、『帰ってきたヨッパライ』の曲で演舞されても……ねぇ?(爆