
「リメインズ/美しき勇者たち」
Remains: Beautiful Heroes/Yellow Fangs
1990
●JAC(ジャパン・アクション・クラブ)の創立20周年記念として企画された作品だ。真田広之を筆頭に、菅原文太、黒崎輝といったメンバーが多数参加。監修に深作欣二、そして本作こそが千葉真一の初監督作でもある。
本作は大正時代、突如現れた人喰い熊アカマダラを追うマタギたちの物語で、移りゆく世の中で生きるマタギとその運命。そして大自然に挑戦する彼らの奮闘を描いている。広大な雪国をバックに繰り広げられるスタントは、当時の邦画としても最先端のレベルで、初監督ながら手堅い作りにしているあたりは、さすが千葉真一といったところだろう(これ以後の監督作が『覇拳』ぐらいしかないのが不思議だ)。
本作の目玉である人喰い熊・アカマダラは本物の熊を使用して撮影しているが、さすがに街中にアカマダラが現れるシーンや、ラストの真田&村松美香とアカマダラの決戦では着ぐるみのダミーが使用されている。とはいえ、その迫力はなかなかのもの。かつてモンスターパニックものの映画で『グリズリー』(『ジョーズ』の熊バージョン)という作品があったが、本作のほうが出来としては秀逸。人VS人の戦いではないものの、これは面白かった。
だが、本作で一番気になるのが、ヒロインである村松美香の存在である。独立愚連隊の如き行動を取る彼女の存在は見ていてあまり必要とは思えないキャラで、特に終盤のアカマダラとの決戦では、女の匂いで寄ってくるアカマダラをおびき寄せる為に皮ビキニで現れるのだ(爆
ここまでかなりの盛り上がりを見せておいたのに、なんだかこれでバカ映画へ突き落とされたような気分だ。こういうシリアスなストーリーへ安易に恋愛要素を絡めたヒロインを登場させてしまうと、一気に陳腐に見えてしまう例の典型。正直、ここだけは見ていてガッカリしてしまいました。

「タイガークロー」
TIGER CLAWS
1992
●かつて、香港映画界に彗星の如く現れ、その卓越した技量で香港中を圧巻せしめた1人の白き女ドラゴンがいた。それがかのシンシア・ラスロックである。『レディ・ハード/香港大捜査線』でD&Bの旗揚げ作品を楊紫瓊(ミシェール・ヨー)と共に華々しく彩り、その後もいくつかの作品で活躍していたラスロックだが、のちに彼女はアメリカへ凱旋する事となる。
だが、武術指導・スタントの技術などの土壌がしっかりしていた香港映画とアメリカ映画とでは、その見せ方に関しての差は歴然としていた。その点ではもう少し香港にいて欲しかった向きもあるが…本作も香港時代を知るファンから見れば、今ひとつといった印象を感じる事だろう(事実、私も最初はそうでした)。
内容はありきたりな刑事アクションで、ラスロックとジャラル・メーリが組んで、謎の連続格闘家殺人事件を追うといった物語だ。その犯人が楊斯(ヤン・スェ)で、タイトルにもある"タイガークロー(タダのひっかき技)"を使って暴れ回っている。
アクションはもっさりとしていて派手ではなく、武術指導のせいか楊斯も含めてあまりいい動きをしていないが、マーシャルアーツ映画ではこれくらいで及第点。ラスロックVS楊斯という対戦カードも興味深い物があり、一概に切って捨てられない作品でもあると言えよう。
ところで、最近の彼女はどうした?と思う方もいるだろうが、実は今でも第一線で活躍中なのだ。主にドン・ウィルソン、リチャード・ノートンらとの仕事が多い様で、何を隠そうこの作品もシリーズ化されていたりするから驚きだ(笑)。本作の続編である『Tiger Claws 2』には再び楊斯が、『Tiger Claws 3』には黄家達(カーター・ワン)まで出演しているとの事。う~ん、見たいような見たくないような…(苦笑

流氓英雄
英題:The Innocent Interloper
製作:1986年
▼『酔拳』で最強の敵として君臨し、多くの人々に強烈な印象を与えた黄正利(ウォン・チェン・リー)。彼は70~80年代を中心に活躍していましたが、現代劇が主流となった80年代後半からは、徐々にその動向が窺えなくなっていきます。
実はこの時期、黄正利は『鐵膽雄風』などの現代アクションに出演していましたが、日本ではそのほとんどが未公開のまま。わずかに『デブゴンの霊幻刑事』などで確認できるのみで、今後は彼の出演作も追っていきたいと思っています。
さて、本作はショウ・ブラザーズでも有数の悪役スターであり、監督としての顔も持つ王龍威(ワン・ロンウェイ)がメガホンを取った作品です。どうやら彼と黄正利の接点は本作だけらしく、このコラボだけでも実に貴重ですが、本作の魅力はそれだけに止まりません。
というのも、共演には『天使行動』の呂少玲(エレイン・ルイ)を始め、多くの著名な俳優たちが顔を出しているのです。さながらミニマムなオールスター映画といった趣の作品であり、特別ゲストを探すのも楽しみの1つと言えるでしょう。
■ある日、黒社会の大物・陳卓輝の邸宅に黄正利が進入し、ある重要な品物が隠された本を奪い去った。手下の成奎安らに追われ、図書館に逃げ込んだ黄正利は本棚にそれを隠すが、直後に捕まってしまう。
一方、こちらは問題児だらけの復職支援学校。教師の呉啓華(ラウレンス・ウー)は、手間のかかる生徒たちに加え、いつも厄介ごとを持ち込む借金まみれの父親・沈威に頭を悩ましていた。
そのころ陳卓輝は黄正利を尋問し、やっとのことで本の所在を白状させたが、目当ての品は呉啓華によって借し出されてしまう。すぐに成奎安が追いかけるが、呉啓華が住んでいるのが公務員寮(もちろん警官もいる)だったため、退散を余儀なくされる事となる。
かくして、呉啓華・沈威・そして黄正利の仲間?の呂少玲と、陳卓輝の組織による争奪戦が始まった。そんな中、呉啓華の留守中にまたもや沈威が面倒を起こし、くだんの本が燃やされてしまう。ところが本の中から出てきたのは、なんと偽札の原板! 組織の狙いはこれだったのだ!
組織はボヤ騒ぎに乗じて寮に乗り込んできたが、組織から脱出した黄正利によって呉啓華は救い出された。彼らは原版をエサに組織と取引を行うが、もちろんこれがタダで済むわけがない。果たして組織との戦いの行方は…!?
▲前述の通り、本作には多くの著名人が出演しています。
眼鏡をかけた図書館の係員に李麗麗(リリー・リー)、組織の手下に王力、組織が依頼したマヌケな奪還屋に陳惠敏(チャーリー・チャン)、呉啓華の教え子に曹査理や趙志凌、呉啓華の知り合いに李修賢(ダニー・リー)刑事、せっかちなタクシー運転手に董驃(トン・ピョウ)、レストランのウェイターで太保(タイ・ポー)、ラストシーンには汪禹(ワン・ユー)まで登場していました。
他の映画でしょっちゅう敵対している李修賢と成奎安の顔合わせ、アホアホな陳惠敏など、彼らの登場シーンはなかなかバラエティに富んでいます。しかしその一方で、ストーリーはやや足早に進んでいくため、登場人物の関係性などが把握しづらくなっているのです。
また、事あるごとに癇癪をおこす沈威のキャラクターはとても不快で、彼が絡んでくるシーンはあまり楽しめません。とはいえ、王龍威が監督しているだけあって、功夫アクションのボリュームについては及第点以上でした。
今回は黄正利が味方なので心強く、敵に向かって浴びせる殺人キックは本作でも健在。また、呂少玲もハツラツとした人物を元気に演じており、黄正利に負けじと体当たりの肉弾戦を見せています。
対する大ボス・陳卓輝も負けず劣らずのキレっぷりを見せ、ラストバトルでは黄正利という大物を相手に一歩も引かない激突を見せていました。ところでこの人、ここまでの技量を見せながら出演作は少なく、本作と『目中無人』にしか出ていません。いったい何者なんでしょうか?

龍拳蛇手
The Dragon's Showdown/The Dragon's Infernal Showdown
1980
▼なんだか最近、バッタもん李小龍作品をレビューしようとすると巨龍(ドラゴン・リー)の作品ばっかりになっているなぁ…。特別思い入れがあるというわけじゃないのだけど、呂小龍などのどうしようもない作品と比べると、ついつい巨龍に手を伸ばしてしまいがちなってしまいます。とはいえ、巨龍の作品もどうしようもないものなんですが(笑
そんな巨龍の作品といえば、いつも出てくるむさ苦しいオヤジたちが恒例です。崔旻奎(マーティン・チュイ)、李芸敏といったコリアン功夫片いつもの顔がいますが、今回は香港から孟秋を呼び寄せているのが特筆です。
孟秋はその名の通り、かの武術指導家・孟海(マン・ホイ)の姉にあたる人物だ。そんなに多くの出演作があるわけではないが、ショウブラ作品や協利の『出閘虎』、あの『麒麟掌』などに出演。なにげに日本では風間健の『少林寺拳法 ムサシ香港に現わる』にも顔を出しています(この作品は彼女以外にも于洋や袁小田も出ているらしいので、いつかは見るつもり)。
■さて肝心の物語なんですが、こちらはよくあるオードソックスな復讐記となっています。
山の地上げを狙う崔旻奎や李芸敏たち悪党一味が、反発する土地の持ち主夫婦を殺害した。崔旻奎は赤ん坊を手土産に帰って行き、最後には幼い2人の息子と侍女が残された。それから幾星霜…うち1人の息子は巨龍に成長し、死に際の侍女の言葉を受けた巨龍は幼馴染の元秋と共に、崔旻奎たちへの仇討ちを誓った。
ちなみに連れ去られた赤ん坊は閔復基となり、崔旻奎の娘として成長した。そして巨龍たちとは別に崔旻奎の周囲を探る、妖しげな男・林子虎…物語はこの三者を映し出しながら進んでいく。
物語が進むうちに、林子虎こそが巨龍の兄でもう1人の生き残りであった事が発覚し、重傷を負っていたところを巨龍に救われる。だけど初対面であるはずの林子虎に対し、いきなり巨龍は「ブラザー!」と呼ぶのだ。巨龍が林子虎と離れ離れになったのはまだ赤子の時。それなのにいつ解ったんだよいつ!
で、巨龍は林子虎を倒した李芸敏のもとへ突入。李芸敏の武器である発光ダイオードを仕込んだ変な剣(爆)を、磁石で無効化して撃破した。だが、巨龍が戦っている間に林子虎はあっさり死亡(今回いいとこ無しだなぁ…林子虎)。崔旻奎は巨龍の襲来を予期して娘のように可愛がっていた閔復基を幽閉し、巨龍はひとり敵地へと向かうのだが…。
▲この映画、巨龍と孟秋は仇に対する手がかりが少ないためもあってか、あまり必死こいて崔旻奎を探す事も無く、のらくりと旅を続けていく。林子虎も引っ張って登場させた割には役立たずだし、全体的に本作はツメが甘いのだ。
アクションについてもただ蹴っ飛ばしてるだけな印象があり、脱力必至のギミック(李芸敏の発光ダイオード剣や、崔旻奎のカラータイマーなど)や笑えないコメディ演出とも相まって、妙な肌寒さを感じてしまったところである。う~ん…とりあえず無理して見るような作品ではありませんね。

「“酔猿拳”VS“蛇拳”」
原題:猴形扣手
英題:Snake in the Monkey's Shadow/Snakefist vs The Dragon
製作:1979年
▼以前レビューした『真説・モンキーカンフー』と同じく、酔拳プラス猴拳を扱った映画である。しかしあまり魅力の無かった『真説~』に対し、本作は張午郎(チャン・ウーロン)・唐偉成(タン・ウェイシン)・陳耀林・侯朝聲・尹發と実力派揃い。おまけに製作が協利電影ということで前々から見たかった作品であり、もうこれである程度の質は保証されたも同然である。
それにしても協利はいいねぇ…(笑
■話は、初っ端から猴拳の使い手・[ン先]林VS蛇拳の使い手・陳耀林との激しい対決で幕を開け、この戦いで[ン先]林が勝利する。所変わって、こちらは侯朝聲の酔拳道場。大勢で酔拳の練習をしているというシチュエーションがどことなくユニークだが、その稽古の様子を張午郎が覗き見していた。
張午郎は鮮魚店で働いている功夫修行志望の青年だ。今日も配達の途中で道場に立ち寄ったのだが、それで配達に遅れてしまった。受け取り手の成金はプンプンで、尹發(髪の毛がフサフサ!)といっしょに張午郎をボコボコにした挙句、笑いものにするのだった。
「ちくしょう!俺にも功夫の腕があれば!」…彼は強くなるために侯朝聲の道場へと押しかけた。しかし、酔拳道場らしく酒を飲みまくっての入門試験を受けたはいいが、途中で酔いつぶれてしまう。山林に置いてかれた張午郎だが、そこで彼は[ン先]林と出会うのだった。
後日、張午郎は再び侯朝聲のもとへとやって来た。『蛇拳』よろしく雑用として住み込むこととなり、修行を受けさせてもらえないので深夜に自主トレを重ねていく。そしていつの間にか、張午郎は兄弟子たち以上に強くなっていった…って、後から来た雑用に追い抜かされるなんて兄弟子たちは何やってるんだよ!
兎にも角にも、実力の認められた張午郎は正式に酔拳を学ぶ事に。さらに[ン先]林からも猴拳を教えてもらい、両手に花の張午郎はあの成金と尹發にリベンジを決行する。まんまと仕返しに成功するが、私闘に拳法を使ったことが発覚して、侯朝聲にこっぴどく叱られてしまった。
腹の虫が治まらないのは成金たちの方だった。成金の親父も侯朝聲には歯が立たず、なんとしても見返したくて二人の用心棒を雇った。それが冒頭の陳耀林、そして唐偉成ら蛇拳コンビだった。張午郎の不在時に酔拳道場へと現れた蛇拳コンビは侯朝聲らを倒して道場を壊滅させ、張午郎も叩きのめてしまう。
満身創痍の張午郎は[ン先]林のもとに駆け込むが、蛇拳コンビの真の狙いはもちろん[ン先]林の復讐にあった。ほどなくして[ン先]林のもとに現れる蛇拳コンビ。陳耀林1人だけならまだ何とかできたものの、今回は唐偉成と一緒ということもあって、[ン先]林も倒される。1人残った張午郎は、[ン先]林の"師匠"だった猿の動きを参考に修行し(ここらへんも『蛇拳』ですね)、酔猴拳を編み出して蛇拳コンビに対抗する!
▲功夫を習いたい主人公、蛇拳が悪役、酔猴拳と、『真説~』と似通った設定の本作だが、やはり出来はこちらが数段上だった。協利作品といえばレア対決が作品の目玉だ。本作でも張午郎VS尹發という成家班同士の珍しい対決がある…が、特別見せ場というわけではない。むしろ本作は、アクションの質で勝負した作品だといえるだろう。
ストーリーについては凡庸なコメディ功夫片のひとつと思われがちが、全ての混乱の原因が張午郎にあるのが本作を手放しで評価できないポイントでもある。事の発端である張午郎と成金の確執も、元はといえば配達に遅れたのに詫びる様子も無かった張午郎の自業自得であるし、道場への入門もほとんど逆恨みから来る行動だ。ある意味、張午郎のせいで侯朝聲の道場が潰されたといっても過言ではないかもしれない(爆
…と、物語はちょっとアレな評価を下してしまったが、前述の通りアクションで通そうとしている作品だけあって、頭の先から尻尾の先まで詰まった功夫アクションは良質なものばかり。しかも酔拳・虎拳・蛇拳・猴拳・そして酔猴拳と、バリエーション豊かな拳法の数々を見ているだけでも本作は楽しいものがある。
う~ん、やっぱり協利はいいねぇ…(笑