続・功夫電影専科 -140ページ目

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


新月傳奇/楚留香之新月傳奇
The Sun Moon Legend/The Young Moon Legend
1980

●前回紹介した『碧血[ン先]銀槍』と同じ、古龍(クー・ロン)原作の武侠片だ。『碧血[ン先]銀槍』はしっちゃかめっちゃかだったが、本作はちょっとだけ安心できる要素がある…この作品、かの『楚留香』シリーズなのだ。
『楚留香』は多くのシリーズがあり、天下のショウ・ブラザーズで狄龍(ティ・ロン)主演によって3本ほど作られている。無論、それ以外のプロダクションなどでも同シリーズは映像化されており、本作もその1つである(…とはいえ、まだ私は他の『楚留香』シリーズを見ていないのですが)。
雨の中、ふらりと飯屋に来た楚留香。そこに謎の老人・葛香亭が現れ、曰く「孫娘を探して欲しい」と依頼される。楚留香はせっせと情報収集に励むが、行く先々に現れる楊鈞鈞が気になる様子。ついにはラブラブになる2人だったが、この単なる人探しにしか過ぎなかった一件の裏には、大きな陰謀が秘められていた…。
息をもつかせぬサスペンスだった『碧血[ン先]銀槍』に対して、本作はラブストーリーを交えた謎解きの物語だ。おかげで次々に登場人物が死んだりする『碧血[ン先]銀槍』よりは、落ち着いて見る事が出来た。しかし、物語の大部分で交わされるセリフの応酬がよくわからないのが惜しいところである(私が見たものは中英文二段字幕、広東語?のバージョン)。
武侠片を見ている際に、最もネックとなるのが言語の問題だ。功夫片のようにビジュアルだけで表さず、セリフを交えて状況説明がされるため、一から十まで内容を把握していないと、面白い物語でもすぐに取り残されてしまう。日本語字幕や吹替えアリならまだしも、英語や広東語だとついていくのがやっとで、ややっこしい作品となると完全にお手上げだ。…やっぱり中学の頃にしっかり英語とか勉強しておけばよかったなぁ(涙
さて、狄龍を筆頭に鄭少秋(アダム・チェン)など二枚目スターが扮した楚留香。それを本作で演じているのは、なんと孟飛(メン・フェイ)なのだ。孟飛といえば日本でも二枚目アイドル、方世玉スターとしても有名だが、いささかキャラクター違いじゃないか?童顔の孟飛がヒゲを生やしているのは、かなり違和感のある光景だ。
個人的には、孟飛を筆頭に、白衣の侠客・王冠雄、楊鈞鈞に付き従う剣士・凌雲と、台湾の武侠片系スターが勢揃いしているのも興味深い。また、『碧血[ン先]銀槍』同様にセットが結構豪華で、アクションも健闘している(特にアクションは数こそ少ないが見応えは十分。武術指導は蘇真平が担当している)。キャラクターも魅力的だったし、意外な黒幕の正体なども含めて悪い作品ではない事は確か。これで詳細もはっきりすればもっと評価が上がりそうなところだが…う~ん。
なお、一部資料によると本作には姜大衛(デビッド・チャン)が出演している事になっているが、本作を見る限り姜大衛の姿は確認できませんでした。


碧血[ン先]銀槍
Silver Spear/Silver Hermit from Shaolin Temple
1979

●田鵬(ティン・パン)といえば、『少林寺への道』で黄家達と共に主演を張った武星として日本でも知られている。しかし、本当の彼は李小龍登場以前から活躍していた功夫・武侠片スターであり、彼のフィルモグラフィーを探ってみると、李小龍の登場に前後して大量の作品に出演している事が解る。残念ながら80年代前半を境にパッタリと経歴が途切れているが、もしかしたら田鵬は台湾で一時代を築いた大スターだったのかもしれない。
本作はそんな彼の主演作としては後半にあたる物だが、孟飛(メン・フェイ…データベースでは主演格とされているが、実際は冒頭のみの出演)や陳星(チン・セイ)ら台湾系スターが多数動員された武侠片で、田鵬は監督も務めている。なお、本作は製作がIFDとなっているが、これは恐らく二束三文で買い取った作品をIFD名義にしただけのものと思われる。第一、あんなニンジャ映画とかのゴミ作品ばっかり作っているIFDが、わざわざ金のかかりそうな武侠片を好き好んで映画化するとは考えにくい。
さてこの映画だが、いきなり孟飛ら三人の侠客が毒殺されるところから幕を開ける。そこに居合わせた剣客の田鵬は、孟飛たちを毒殺したのではと(たまたまそこへ現れた)蔡弘ら武林のお偉方に疑われ、逃亡を余儀なくされてしまう。田鵬は武林のお偉方に追われながらも、事件の真犯人を追って孤独な逃走劇を続ける。一体"真犯人"は誰で何が目的なのか?そして田鵬の運命は…?
本作はかなりややっこしい物語で、なんとか上記の筋書きは理解できたが、ついさっき登場したキャラがすぐ死んだり、死んだと思ったキャラが生きていたりと、物語は支離滅裂を極める。何の説明もなしに新しいキャラが現れたり(10分に3人は新しいキャラが出てきます)、セリフで語る部分が多かったり(私が見たのは英語版だったので、何がなにやら意味不明)と、話についていくのがやっとの状態だ。
でも、なんだかこの奇々怪々な流れはどっかで見たぞ…?それもその筈、本作の脚本はあの難解なストーリー作りに定評のある古龍(クー・ロン)が脚本を担当しているのだ。それぞれのキャラクターは印象的ではあるが、裏切ったり裏切られたりの滅茶苦茶なストーリーのせいで、あまり感情移入ができないまま物語は進んでいってしまう。
話については完全に置いてきぼりを食らったような形になっているが、アクションについては上々の出来だ。ある意味、本作唯一の救いと言えなくも無いが、後半以降のアクションはほとんどがナイトシーンで、かなり見にくいのが難点だ(画面が完全に真っ暗になる)。しかもラストバトルに至っては全てナイトシーンのため、微かに立ち回りが見える以外はつばぜり合いの音が聞こえてくるだけ…いくらなんでもこりゃあヒドいよ!(涙
大がかりなセットなどは良かったものの、このゴチャゴチャとしたストーリーはとてもじゃないが見ていられない。クライマックスに至っては超展開の連続で、結局ラスボスは吸血鬼の金剛(カム・カン)でしたというオチなのだが、見ているコッチは「そんなもん知るか!」と言いたくなること必至。ちゃんと内容が解っていればそれなりに楽しめるのだろうが、まぁ古龍だしなぁ…。


花街神女/捉鬼女天師
英題:The Transmigration Romance/Transmigration of Romance
製作:1991年

●以前、『未代響馬』では劉永(トニー・リュウ)の近作を紹介したが、それでは黄家達(カーター・ウォン)はどうしているのだろうか?それについては『片腕拳王』なり『ゴースト・ハンターズ』なり参照のこと…と先に記したが、彼の90年代における動向も気になるところ。本作は楊麗(シンシア・カーン)主演のオカルト・アクションだが、この作品に黄家達は出演している。
過去に悪行を犯した幽霊のジジイ(これが黄家達)が、現世に生まれ変わろうと企んでいた。まず転生する為に必要な母体は血の繋がりのある孫娘に決めたが、相手(つまり旦那さん)がいなくては生まれ変わる事も出来ない。孫娘に似合いそうな男を捜す黄家達だったが、自らのミスで孫娘が死んでしまう(!)。かりそめの肉体を使い、期間限定で蘇えった孫娘は黄家達と共に生き返ろうと奔走した(どうやら男と結ばれると転生できるらしい)。
だが、孫娘の正体に気付いた楊麗との対決へなだれこみ、意中の男に幽霊だと知られてしまう(このシーンだけはそれまでのヌルいラブストーリーから一転し、いきなり『霊幻道士』や『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』ばりのサイキックバトルが繰り広げられる…ハッキリ言って浮きすぎ)。一度は孫娘を拒絶した男だが…?
…と、ご覧の通り、かなり支離滅裂なストーリーである。ラブストーリーなのか心霊アクションなのか滅茶苦茶な内容で、終盤に至っては更にグダグダ度合が増していき、収拾の付かない結末へと向かっていく。武術指導は李建生が担当しているがアクションはあまり無く、楊麗のアクションシーンが少しある程度。黄家達は悪役で、最後に黄家達VS楊麗というバトルはある(恐らく、本作唯一の見どころ)が、途中から黄家達が別の男に乗り移ってしまったりと中途半端もいいところだ。
ハッキリ言って見るに値しない作品で、パッケージにある機関銃を構えた楊麗や黄家達(私が入手したのは美亞のVCD)なんて場面はビタ一文出てこないので注意の程を。その代わり、黄家達の女装姿が見られるので気になる人は要チェックか?(爆
しかし、劉永・黄家達の近作を紹介したとなると、やはり田俊(ジェームス・ティエン)の近作も紹介しないといけない…かな?


「香港近未来バイオレンス/爆裂戦士」
最後一戰
The Final Test
1986

●冒頭、いきなり銭小豪(チン・シウホウ)が工場長の元華(ユン・ワー)に逆らい、イエロー・ヘルメット軍団に抹殺された。暗雲漂うこの島の工場へ、惠天賜(ウェイ・ティンチー)演ずる捜査官が曾志偉(エリック・ツァン)の指示で潜入する。看護婦のデボラ・シズムの手引きにより、密造されている薬物を発見した惠天賜。だが、そこにサイボーグの元華が立ちはだかる…。
主演の惠天賜は、あの惠英紅(ベティ・ウェイ)の兄であり、自身も功夫スターとして活躍していた。しかし、劉家良(ラウ・カーリョン)によって見出された惠英紅とは違って、惠天賜はあまりブレイクすることもなかった。
数少ない主演作も、脇が目立っていたり(『幇規』という作品では主演だったが、むしろ注目されたのはショウブラに凱旋した梁小龍の方)、イロモノ作品だったり(『醒拳』)と、お世辞にも手放しで褒められるような作品ではなく、本作もお粗末なダメ作品となり果てている(尚、惠天賜はその後警匪片へと転向し、それなりに成功したらしい。最近の姿はドニーの『殺破狼』などを参照のこと)。
本作はSFアクションという意欲的なアイディアは良かったが、まったくもって惰性で作っているような悪い出来で話にならない。アラを探せば沢山出てくる本作だが、敢えてピックアップするとすれば、作中に使用されているメインテーマが鼻に付いた。
このメインテーマは『イースタン・コンドル』で秦祥林(チャールス・チン)が特攻する時に使用されていたあの勇壮なBGMなのだが、本作では嫌というほどリピート再生されるのだ。事あるごとに盛り上がりそうな場面にはそのBGMが使用されるが、まるでバカの一つ覚えのように同じBGMを、何度も何度も繰り返し使用している。いくらなんでもこれは…(苦笑
元華もいろいろもったいぶって登場したわりには、大して暴れないうちにすぐ倒されてしまうのもマイナス要素。銃撃戦が続いて肉弾戦があって…散々活躍しておいて、最後がバッドエンドなのもこれまたヒドい。結局何が言いたかったのか最後までわからずじまい。とにもかくにもなんというか、駄作だったな…としか言いようがない。サモハンも、何でこんな作品作ったんだろうか?


形手螳螂腿/清帝密使/鶴形刀手螳螂腿
Death Duel of Kung Fu/Showdown of the Master Warriors
1979

▼正統派功夫スターである王道(ワン・タオ)は、ダブル主演の作品では足技ファイターとの共演が多い。そもそも彼が一躍ブレイクした『南拳北腿』からしてそうで、譚道良(タン・タオリャン)や本作でも共演している劉忠良(ジョン・リュウ)とは、幾度か一緒に共演している。

■反朝派の王道は政府の重役を暗殺するが、追っ手の韓鷹(イーグル・ハン!)によって仲間を皆殺しにされてしまう。韓鷹と因縁のあるらしい謎の風来坊・劉忠良(見たのが英語版だったので詳しい来歴は不明)が手助けをするが、深手を負った王道は倒れてしまった。そんな彼を助けたのは、以前出会った大和撫子だった。ところが、韓鷹の話を聞いていた劉忠良は、彼女が朝廷のスパイである事を知る。劉忠良は大和撫子に迫るものの、王道は「彼女は無実だ!」と譲らない。
そうこうしているうちに王道は韓鷹に負けて捕らえられてしまうが、他の反朝派のアジトを探るために釈放された。韓鷹へのリベンジを誓い修行に励む王道…一方、劉忠良は韓鷹の配下である鐘發と陳龍を撃破していたが、大和撫子の身に付けているペンダントにスパイである証拠があると睨み、再び彼女の元へとはせ参じた。大和撫子を倒し、ペンダントを入手した劉忠良は、王道へ事の真相を書いた手紙を残してその場を立ち去った。
真の敵が韓鷹であることを悟った王道は、韓鷹の仲間である陳耀林を倒し、劉忠良は韓鷹との決戦に赴いていた。激しい蹴り合いの間隙を縫って王道も参戦。三者三様の思いを胸に、荒野で激しい激突が繰り広げられるのだった。

▲この作品、もしかして韓国ロケ作品ではないだろうか?
脇役の格好があまり香港映画じゃ見慣れない姿だったり(韓国武打片などでよく見る、頭に丸い緑色のものを装備した帽子をかぶっている)、ジャッキーの羅維プロ作品で見た景色と良く似た背景があったり(『拳精』『成龍拳』などは韓国ロケが行われている)、そして韓鷹の出演など、そこはかとなく韓国ロケをしたのではないかと感じられる箇所が散見できる。
その韓鷹だが、本作でもキレのいい蹴り技をこれでもかと披露していた。恐らくは『南拳北腿』で王道たちを相手取った黄正利を意識しているのではないかと思われる。そういえば、『南拳北腿』も韓国ロケ作品だったし、そうすると本作はかなり『南拳北腿』を意識した作品にも思えてくるが…さて?
内容としてはハードボイルドタッチの渋いもので、脚本がショウブラ作品でお馴染みの倪匡(イ・クオン)だというところも見逃せない。武術指導が孟海(マン・ホイ)と錢月笙(チェン・ユーサン)なので、功夫アクションについても質は高い。王道・韓鷹も十分いい動きをしているが、劉忠良が珍しく両脚をフルに使ったアクションを見せているところが特筆か。
大和撫子が死んじゃうところがちょっと納得いかなかったが、それ以外は及第点以上。こっそり王道&劉忠良VS鐘發&陳龍というレアなのかそうじゃないのか微妙な顔合わせのバトルもあったりして、意外と満足できる良い作品でした。