『流氓英雄』 | 続・功夫電影専科

続・功夫電影専科

香港映画を始めとした古今東西のアクション映画の感想などを書き連ねています。


流氓英雄
英題:The Innocent Interloper
製作:1986年

▼『酔拳』で最強の敵として君臨し、多くの人々に強烈な印象を与えた黄正利(ウォン・チェン・リー)。彼は70~80年代を中心に活躍していましたが、現代劇が主流となった80年代後半からは、徐々にその動向が窺えなくなっていきます。
実はこの時期、黄正利は『鐵膽雄風』などの現代アクションに出演していましたが、日本ではそのほとんどが未公開のまま。わずかに『デブゴンの霊幻刑事』などで確認できるのみで、今後は彼の出演作も追っていきたいと思っています。
さて、本作はショウ・ブラザーズでも有数の悪役スターであり、監督としての顔も持つ王龍威(ワン・ロンウェイ)がメガホンを取った作品です。どうやら彼と黄正利の接点は本作だけらしく、このコラボだけでも実に貴重ですが、本作の魅力はそれだけに止まりません。
というのも、共演には『天使行動』の呂少玲(エレイン・ルイ)を始め、多くの著名な俳優たちが顔を出しているのです。さながらミニマムなオールスター映画といった趣の作品であり、特別ゲストを探すのも楽しみの1つと言えるでしょう。

■ある日、黒社会の大物・陳卓輝の邸宅に黄正利が進入し、ある重要な品物が隠された本を奪い去った。手下の成奎安らに追われ、図書館に逃げ込んだ黄正利は本棚にそれを隠すが、直後に捕まってしまう。
一方、こちらは問題児だらけの復職支援学校。教師の呉啓華(ラウレンス・ウー)は、手間のかかる生徒たちに加え、いつも厄介ごとを持ち込む借金まみれの父親・沈威に頭を悩ましていた。
 そのころ陳卓輝は黄正利を尋問し、やっとのことで本の所在を白状させたが、目当ての品は呉啓華によって借し出されてしまう。すぐに成奎安が追いかけるが、呉啓華が住んでいるのが公務員寮(もちろん警官もいる)だったため、退散を余儀なくされる事となる。
かくして、呉啓華・沈威・そして黄正利の仲間?の呂少玲と、陳卓輝の組織による争奪戦が始まった。そんな中、呉啓華の留守中にまたもや沈威が面倒を起こし、くだんの本が燃やされてしまう。ところが本の中から出てきたのは、なんと偽札の原板! 組織の狙いはこれだったのだ!
組織はボヤ騒ぎに乗じて寮に乗り込んできたが、組織から脱出した黄正利によって呉啓華は救い出された。彼らは原版をエサに組織と取引を行うが、もちろんこれがタダで済むわけがない。果たして組織との戦いの行方は…!?

▲前述の通り、本作には多くの著名人が出演しています。
眼鏡をかけた図書館の係員に李麗麗(リリー・リー)、組織の手下に王力、組織が依頼したマヌケな奪還屋に陳惠敏(チャーリー・チャン)、呉啓華の教え子に曹査理や趙志凌、呉啓華の知り合いに李修賢(ダニー・リー)刑事、せっかちなタクシー運転手に董驃(トン・ピョウ)、レストランのウェイターで太保(タイ・ポー)、ラストシーンには汪禹(ワン・ユー)まで登場していました。
 他の映画でしょっちゅう敵対している李修賢と成奎安の顔合わせ、アホアホな陳惠敏など、彼らの登場シーンはなかなかバラエティに富んでいます。しかしその一方で、ストーリーはやや足早に進んでいくため、登場人物の関係性などが把握しづらくなっているのです。
また、事あるごとに癇癪をおこす沈威のキャラクターはとても不快で、彼が絡んでくるシーンはあまり楽しめません。とはいえ、王龍威が監督しているだけあって、功夫アクションのボリュームについては及第点以上でした。
 今回は黄正利が味方なので心強く、敵に向かって浴びせる殺人キックは本作でも健在。また、呂少玲もハツラツとした人物を元気に演じており、黄正利に負けじと体当たりの肉弾戦を見せています。
対する大ボス・陳卓輝も負けず劣らずのキレっぷりを見せ、ラストバトルでは黄正利という大物を相手に一歩も引かない激突を見せていました。ところでこの人、ここまでの技量を見せながら出演作は少なく、本作と『目中無人』にしか出ていません。いったい何者なんでしょうか?