
歹路不可行
英題:Fighting Duel Of Death/Don't Take the Wrong Way
制作:1981年
●本作は色々と資料の少ない作品で、知ってる役者が陳鴻烈ぐらいしか出てないミニマムな映画である。監督の王重光は傑作『七歩迷踪』を作り上げた人だが、顔ぶれを見る限り本作は十中八九台湾映画であることが察せられる。個人的にはプロデューサーとして名を連ねているトーマス・タンの存在が気になるのだが…(本作はIFDや通用の製作ではないし、いつもトーマス・タンの相方を務めているジョセフ・ライの名は、本作に無い)。
李小飛はヨタ者との揉め事で傷害致死を犯してしまい、現在は刑務所に収監されていた。彼の掌にある"忍"の刺青はムショ入りする前に妻から彫られたもので、「二度と同じような事を起こさないで」という彼女の思いが込められたものだった…っていうか、夫に刺青彫るなよ!(爆
てなわけで出所した李小飛、未だにヨタ者たち(リーダー格に李敏郎)との遺恨は残ったままだが、無事に愛する妻と息子の元に帰ってくることが出来た。幼馴染の崔守平とも久しぶりに再会したのも束の間、崔守平から「私の妻・陳麗雲がギャンブルにのめりこんでいて…」と相談を持ちかけられた。夫婦仲が冷え切っていたことも起因して反発を繰り返す陳麗雲。李小飛は陳麗雲の説得を試みるのだが、賭場の元締めである陳鴻烈は陳麗雲をモノにしてしまおうと企んでいた。
陳麗雲が捕まり自身も襲撃を受けた李小飛は、怒りの頂点に達して陳鴻烈のもとに乗り込む。しかし陳鴻烈のボスが李小飛と刑務所で知り合った馬沙だったおかげで、どうにかこの一件は手打ちで済むことになる。ところが崔守平が事故死し息子も亡くなり、全てを失った陳麗雲は絵に描いたような転落人生を歩んでいく事になるのだが…。
驚いた事に、ストーリーはここから陳麗雲の復讐物語へと方向転換していくのだ。
普通なら馬沙が裏で悪事を働いていたとかいう展開になりそうなものだが、最後まで馬沙はいい奴のまま。物語中唯一純粋な悪人だった陳鴻烈が死んでからは作品そのものがグダグダになり、復讐物語のせいで完全に失速してしまっている。これで李小飛・馬沙・陳麗雲のうち、誰か1人でも感情移入のできるようなキャラクターであれば救われたかもしれないが、そちらに関しても散々な結果となった。
功夫アクション的にはそれほど見どころも無く、ラストでの李小飛VS馬沙の対決もかなり短い。『七歩迷踪』ではあれだけ濃厚な功夫アクションを見せていたのに、現代劇ということで王重光も肩に力が入りすぎてしまったのだろうか?ちなみに本作には、『七歩迷踪』でラスボスを務めた常山も出演している。馬沙の手下として後ろにチラチラと登場するのだが、見せ場といえるような場面は何一つありませんでした(同じ監督の作品なのに…)。

「サイバー・ウォーズ」
原題:EXPECT NO MERCY
制作:1995年
●ビリー・ブランクスとジャラル・メルヒの『キングオブドラゴン』コンビが再び組んだ本作は、大まかに現すとビリー版『アンダー・カバー/炎の逆襲』といった感じの作品だ。ストーリーは裏で暗殺を請け負う格闘養成機関の陰謀を、ビリーとジャラルの筋肉コンビが金髪ねーちゃんの協力を得て倒すという、至極シンプル(悪く言えば単純)な物語である。
作品自体の規模に関しては、大勢のエキストラを動員したり派手な爆破シーンを用意していたりと、頑張っている様子が伺える。一方で物語は随分と凡庸な印象を受けるものの、劇中の格闘アクションは中々見応えのある物に仕上がっている。
同じビリー&ジャラルのコンビで製作された『キングオブドラゴン』は、鷹拳を取り入れた野心的な作品ではあったものの、格闘アクション自体は少々もたつく印象があった。しかし、本作の場合はマーシャルアーツ映画的なスタイルに従事しており、全編に渡ってビリーの伸びやかな蹴りが炸裂する快作となっているのだ(ちなみに武術指導はビリーとジャラルの両名)。
本作にはもう1つ、取り上げるべき事柄がある。劇中、敵の刺客の中に白髪の大柄な黒人が登場しているが、彼こそはビリーの弟であるマイケル・ブランクスその人だ。マイケルは兄譲りの腕で序盤からいいファイトを披露しており、クライマックスに至っては夢の兄弟対決が実現する。その暑苦しさたるや、以前紹介した『少林童子功』の羅鋭VS唐龍の極悪兄弟とタメを張る暑苦しさ(笑)!動作自体もかなりの迫力で、この手の映画としても珍しい顔合わせのレア・バトルとして、本作にそれなりの価値を与えている。
惜しむらくはボスであるウルフ・ラーソンとのラストバトルが、このビリーVSマイケルを越える物ではなかったことだ。序盤から後半まで一貫したアクションのテンションを保っていたのに、ウルフとの戦いはショボいCGワールドに移動したりと、いまいち高揚感に欠けている。もし最後のビリーVSウルフの対決が派手であれば、本作は間違いなく傑作になっていただろうに…。
いかんせんCGが本格的に進歩する前の作品なので、随所に挿入されるCGのカットが恐ろしくショボい。そこだけに目を瞑ることができるなら、本作は良質のマーシャルアーツ映画として楽しむ事が出来る筈だ。ところで本作でビリーと共に主役を務めているジャラルは、『キングオブドラゴン』など複数の作品で製作者としても映画に携わっている。もしかしてメルヒって苗字から察するに、PMエンターティメントのジョセフ・メルヒと関係があったりするのだろうか?

少林童子功
英題:Shaolin Chastity Kung Fu/Revenge of the Dragon
制作:1981年
▼本作は羅鋭(アレクサンダー・ルー)主演、唐龍(タン・ロン…もちろん羅鋭のアニキの方)共演、そして戴徹(ロバート・タイ)の監督作である。
この顔ぶれならどんな作品かは大体察しが付くだろうが、いつもと違ってお色気要素だけが抜け落ちている。これは本作が子供向け作品…すなわち好小子系列の作品であることが起因しているのだろう。ちなみに実質的に主役は羅鋭であるため、特にこれといった好小子は登場しておらず、本作を形容するならば「好小子系列風味の羅鋭作品」といった感じだろうか(もちろん羅鋭作品なので、血生臭いシーンは一杯あります・笑)。
■ある日、平和な山村が突如として現れた荊國忠・楊雄・李海興ら盗賊団の手によって灰燼に帰した。暴れん坊の羅鋭や、ヒロインの劉皓怡たちと遊んでいた少年少女たちはどうにか生き延びるものの、盗賊団の追及は止まるところを知らない。この盗賊団たちの目的は陣地の確保であり、護送される親分の唐龍を助け出す事にあったのだ。
羅鋭たちの窮地を救ったのは、異変を察知して様子を見に来た少林僧だった。故郷を失った羅鋭と少年少女たちは少林寺に迎え入れられ、ついでに功夫の修行なんかも施してもらえる事に。妙にサービス精神旺盛な少林寺だが、いくらなんでも子供に童子功(鐵布杉に似た技)を教えるのはやりすぎではなかろうか?(爆
その後も、少林寺を尋ねてやって来た日本人の王圻生が盗賊団に殺され、遺された息子たちも羅鋭たちと共に特訓へ参加。かくして、脅威の武闘派集団となった子供たち。羅鋭は再び敵の懐へ飛び込むが、唐龍に童子功を破られて捕らえられてしまった。
少林寺の館長が犠牲になって危機は脱したものの、果たして盗賊団たちをどう打ち破れば…。そこで羅鋭たちは盗賊団の一味をバラバラに分散させ、各個撃破で打ち破る戦法を思いつく。それぞれの持ち場でそれぞれの思いを秘め、幾多の死闘が繰り広げられる!本作はここから最後まで、延々と闘いっぱなしのまま話が進んでいく。時にコミカルに、時にガチンコにバトルが展開されるのだ。
▲本作は好小子系列の流れを汲んだ作品だとは前述したとおりだが、この子供たちが凄いのなんの!アクロバティックなアクションや組み体操なんかはお手の物で、柔軟な体でヨガみたいなポーズを取ったりと、みんなかなり頑張っている。惜しむらくは数が多すぎるせいで1人1人の個性が発揮されていない点だが、本作は集団戦で見せるタイプの演出で勝負に出ている。
一方、その側では羅鋭VS唐龍を筆頭に、劉皓怡VS李海興や少林僧VS楊雄といった高度なバトルが目白押しとなっており、中でも特筆すべきは羅鋭VS唐龍の兄弟対決だ。多くの作品で共演する機会の多い羅鋭ら兄弟だが、拳を交えている場面を見たのは個人的に今回が初。やたらめったら強くて手が付けられない唐龍を、一体どうやって倒すのかも本作の見どころの1つだろう。
ストーリー性よりも派手な功夫アクションに重きを置いた快作。お色気シーンが全然無いので、羅鋭作品だからなぁ…と敬遠している人は、ぜひ本作から鑑賞してみるのをオススメします。

鬼打鬼之黄金道士/鬼打鬼之靈幻天師
英題:Mad Mad Ghost
制作:1992年
▼さて、この作品はキョンシー映画ファンの間でも「面白い」と評判で、私も常々気になっていた作品である。
一般的に日本でのキョンシー映画ブームというものは80年代で終わっているが、香港では90年代に突入しても続いていた。しかし90年代は古装片ブームの嵐が吹き荒れる年であり、香港でもキョンシーブームは終息に向かっていたのである。90年に『スウォーズマン』が、91年に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』が現れて香港映画界を席巻。この時期のキョンシー映画には『霊幻道士』シリーズの中でも評判の悪い『霊幻道士6』(92年)が存在するが、ものの話によると3日で上映が打ち切られたという。
本作もその例に漏れず、HKMDBによるとたった5日間ほど上映されただけで上映が終わっている。第1作と同キャストが集結し、ファンの間でも評価が高かった『霊幻道士7』でさえも9日間で切られており、いかに古装片へ人気が移っていたかが窺い知れる。しかし、だからといってこれらの作品が駄作であると断ずる訳にはいかないのだ。
■林正英は現代に生きる霊幻道士。金十二・李輝・史美儀といった五大弟子たちと共に修行に励んでいたが、この近代に道士という職で食っていくのは流石に難しく、林正英は警備員のバイトで生計を立てている。
しかし家賃が払えず立ち退きの危機に瀕し、仕方なく幽霊が出没する屋敷を仮の新居として選ぶことになった。この幽霊屋敷には陳志文(『香港・東京特捜刑事』で楊麗をからかう駐車違反の男で有名。『妖怪道士2』では劉皓怡の配下を演じる)と羅慧娟の幽霊夫婦が住んでいるが、この陳志文がとんでもないDV夫。事あるごとに妻をどつき回しており、哀れに思った林正英は羅慧娟を助け出した。
この騒動によって羅慧娟は林正英を気に入り、陳志文が逃げ出したあとも屋敷に定住することを決意。最初のうちは五大弟子との間で珍騒動が持ち上がったり、陳志文がリベンジに現れたりと次々に事件が巻き起こったが、羅慧娟は次第に皆と打ち解けていった。そんな中、屋敷にエディ・メイハーとマーク・ホートンの西洋人コンビが姿を見せた。実はこの2人、屋敷の地下にある黄金を盗み出そうと企てる悪党だったのだ。
林正英とすっかり都会色に染まった羅慧娟(笑)は、この悪徳外人コンビを撃退。そこでホートンたちは密教の陳龍を使って逆襲しようとするが、羅慧娟に火傷を負わせただけで失敗に終わった。痺れを切らしたホートンたちは、とうとう重武装して実力行使に打って出た。瀕死の羅慧娟を抱え、林正英と五大弟子は連中を撃退しようと決死の作戦に賭けるのだが…?
▲本作はコメディ風味の現代劇で、キョンシーはいないが楽しい作品に仕上がっている。お馴染みの林正英による道士様っぷりは相変わらずだし、ゲスト出演の樓南光(ビリー・ロー)も見逃せない。功夫アクション的には中盤の林正英VSマーク・ホートンのバトルが意外と面白く、ストーリーもアクションもバランスが取れていおり、キョンシー映画ファンからも好評である理由がよく解る。この出来なら、日本でビデオリリースされても良かったのではなかろうか?
しかし、本作が作られた92年といえば、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』『ドラゴン・イン』で徐克(ツイ・ハーク)が絶頂期を極め、周星馳が『ロイヤル・トランプ』で切り込んでいた古装片の戦国時代にあたる(このブームに背を向けて成功を収めたのは、『ポリス・ストーリー3』で命がけのスタントを見せ付けて対抗したジャッキーぐらいか)。
本作は間違いなく佳作の部類に入る作品なのだが、同年のラインナップがこの凄まじい顔ぶれでは…これでは公開5日目での打ち切りも止むべからず、流石に相手が悪すぎたとしか言い様が無い。せめてあと2年ぐらい早く製作されていたらと思うところだが、そう思うと本当に残念な作品である。

「カンフー無敵」
原題:功夫無敵
英題:Kung Fu Fighter
制作:2007年
●この作品、結論から言うと『カンフーハッスル』のような抱腹絶倒のコメディアクションではない。確かに『カンフーハッスル』にあやかったキャスティングが成されているし、コミカルな描写もあるにはある。しかし、少なくとも『カンフーハッスル』と同じタイプの作品として見るには難がある作品で、どちらかというと作品的には『馬永貞』…というか、金城武の『暗黒街』に近いテイストの作品なのだ。
怪力の持ち主である呉建豪(ヴァネス・ウー)は、生き別れの父を探して上海へ来ていた。ここでは陳國坤(チェン・クォッククン)と田啓文(ティン・カイマン)の二大勢力がにらみ合っており、同郷のダメ男・林子聰(ラム・ジーチョン)と共に騒動に巻き込まれてしまう。その際に梁小龍(ブルース・リャン)らが経営する食堂を壊してしまった呉建豪と林子聰は、修理費を捻出するためにそこで働く事になる。
物語はここに陳國坤の女である黄伊[シ文]と呉建豪の交流を交えつつ、最終的には田啓文が呉建豪らを討伐するために放った凄腕の刺客・樊少皇(ルイス・ファン)との死闘を迎え、呉建豪の秘密が明らかになっていく…のだが、本作はこのへんで随分と損をしている。この黄伊[シ文]とのサブストーリーが本筋である呉建豪の父親探しに全く絡んでこず、樊少皇の登場も随分と唐突。樊少皇を仕向けた田啓文が健在なまま話が終わっている点など、アラの多い作品になってしまったのは残念だ。
だが、その一方で功夫アクションの方は素晴らしい出来になっているのだから皮肉なものである。
本作の動作設計は樊少皇が担当しており、基本的にあまりCGに頼らない重厚なスタイルのファイトに挑戦している。この樊少皇、樊梅生の息子として知られているが、過去に多くの動作片に出演していた経歴を持ち、日本でも彼の主演作である『力王』がリリースされている。この他には『衝破死亡遊戯』や『力王』系列などがあるのだが、いずれも日本未公開の物ばかり。個人的には『衝破死亡遊戯』が見たくて仕方が無いのだが(爆)、これらの作品群で培ってきた経験ゆえか、本作の功夫アクションは本当に見事なものばかりなのだ。
もちろん呉建豪は十分頑張っていたし、梁小龍に関しても言わずもがな。クライマックスの梁小龍VS樊少皇と呉建豪VS樊少皇の対決は、本作でも1番の見どころだろう。これで物語が簡潔であったならなぁ…。
…というわけで(?)、突然ですがこれが今年最後の更新となりますので、次回以降は来年から更新を再開するつもりです(もしかしたら前の正月の時同様、1月中は更新が停滞するかもしれません・苦笑)。来年もまた当ブログにご愛顧の程を何とぞ宜しくお願いしまして、本項の〆にしたいと思います。それでは、来年もよいお年を!
(管理人:龍争こ門)