
「ダブルブレイド」
中文題:雙[金票]/双[金票]
英題:Twin Daggers
制作:2006年
●本作は中国とアメリカの合作という事になっているが、全編に漂うテイストはまさしく香港映画そのもの(というか、スタッフはほとんど香港系が主)。パッケージこそ『ブレイド』のパチモンみたいだが、実際の中身はストーリーが80年代前半の武侠片で、アクションが90年代前半の動作片といった趣のものとなっている(なんのこっちゃ)。
物語はレット・ガイルズら元暗殺部隊の面々が、蘇瑾(スー・ジン)の依頼で彼女の双子の姉(蘇瑾の二役)を狙い、賞金を巡って血で血を争う戦いを繰り広げる…というもの。
ガイルズは身分を偽って蘇瑾(姉)に接近するが、次第に彼女に惹かれてしまう。完璧に依頼を遂行するため、ガイルズは他の仲間たちを次々と仕留めていき、遂に残ったのは彼1人となった。蘇瑾(妹)から「今日以内に依頼を遂行しなければ賞金は無し」との最後通告を受け、蘇瑾(姉)を殺そうとするのだが…。
香港系のスタッフが手がけているだけあって、本作のアクションは(当然だが)質が高い。武術指導の呉勉勤は洪家班出身の武師。当ブログでも取り上げた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地激震』にも関わっており、彼がメガホンを取った『チャイニーズ・ファイター/天空伝説』なんて作品も存在しているが…しかし、さすがに本作で見せた早回しとワイヤーアクションはやりすぎではないだろうか。
確かに殺陣自体は迫力があったが、この過剰な早回しとワイヤーワークは荒唐無稽を通り越し、作品全体のアクションバランスを崩壊させている。90年代に最盛を極めたワイヤー古装片であればまだ視聴に耐えられただろうが、ごく最近に作られた近代を舞台にした作品では完全に水と油。せめてもう少し演出を抑え目にしてくれたら良かったのだが、そういえば『天地激震』でも似たような感じだったので、これが呉勉勤のスタイルなのだろう。
ちなみにラストではガイルズに驚愕の真相が告げられるのだが、この真相というのがとんでもないクセ物。意外な結末ではあるが、これによってガイルズにも蘇瑾(姉)にも感情移入が出来ない状況を生んでいる。オチに至っては完全にイラズラ番組の種明かしと化し、その雰囲気と蛇足っぷりは『シベリア超特急』並みと言ってしまっても差し支えないかもしれない。真相が明かされる直前までは結構楽しめていたが、これは流石になぁ…。
個人的には一回見ただけでもう十分。見栄えのする殺陣が見たいのならオススメだが、前述のいらない特殊効果や役者のスタントダブルが多いので、気になる方はご注意を。

「アルティメット・マシーン」
原題:HEATSEEKER
制作:1995年
●前作のハッピーエンドを台無しにした『キックボクサー2』、李小龍の有名作品をパクった『キックボクサー4』、笑えないアクション喜劇の『ワイルド・スマッシャー』、ベニー・ユキーデが宝の持ち腐れと化した『ブラッド・マッチ』…今年は一年を通してアルバート・ピュンに悩まされる年でもありましたが、今回もピュン印の作品の登場です(萎
舞台は近未来。人体に改造を施した半機械のファイターが席巻していた格闘大会で、キース・クックは生身の体でありながら王者となった。しかし、クックに倒されたゲイリー・ダニエルズが更なる改造を受けて復活。ゲイリーの雇い主はクックの恋人(兼トレーナー)を強引に誘拐し、自ら企画した格闘大会にクックを半ば無理矢理に出場させてしまう。ヒロインはゲイリーの雇い主からゲイリーを指導せよと強要され、否応なしに大会へ参加したクックはゲイリーとの最終決戦に挑むのだった…と、話だけを見るなら結構ありがちな感じだ。
だが本作は、格闘大会が始まった途端に無個性な格闘アクションが淡々と続くだけの作品に成り下がってしまう。
言うなれば、『片腕カンフー対空とぶギロチン』の格闘トーナメントが延々と続いていく(ただし選手は全員没個性的で、ファイトスタイルは全く差別化されていない)と言えば解りやすいだろう。この格闘大会での演出もまたクセモノで、全体的に画面がボカシ気味の効果で覆われており、正直言って見え辛いことこのうえないのだ。クックとゲイリーの格闘アクションは流石に素晴らしいものの、この全編を通して炸裂するピュン独特のタルい雰囲気で、全てがご破算となっている。
ストーリーは格闘大会モノにありがちな八百長やそれぞれの確執を挟み、クライマックスに向けて展開していく。だが、最後の戦いに挑むクック・2人の男の間で揺らぐヒロイン・疑問を感じ始めるゲイリー・雇い主の末路などといった物語の決着を、ああいう形で処理してしまったのは流石に酷過ぎる。香港映画ならこの終わり方でも許せたかもしれないが、いかんせんこの作品は近代のハリウッド映画。それなのにあんなラストで締めてしまうなんて、ピュンは他所から文句を言われなかったのだろうか?
かつてクックとゲイリーは、共にゴールデンハーベストのスクリーンで闘い(クックは『チャイナ・オブライエン』、ゲイリーは『シティ・ハンター』)、共に呉思遠の薫陶を受けた(クックは『キング・オブ・キックボクサー』、ゲイリーは『BloodMoon』)。そんな上質の素材も料理人の腕がトンチキならゲテモノに成り果ててしまうものなのだと、本作を視聴する前に2人の名前を見て少しでも期待していた自分に言い聞かせてやりたい気分になる映画でした(爆

「ジャッキー・チェンの必殺鉄指拳」
「ビッグマスター」
原題:刀手怪招
英題:Master With Crack Fingers/Snake Fist Fighter/Ten Fingers of Death
制作:1979年
▼とうとう『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫セールもこれにて完結。一応とはいえ、遂に完全制覇を成し遂げたとあって感慨深い思いもありますが、まずは作品の紹介から。本作の成り立ちについては前回の『燃えよジャッキー拳』で説明済みなのでそちらを参照していただくが、『ジャッキー拳』はあまりユーモアのある描写は無く、果たしてどうやってこの作品からコメディに仕立て上げるのか気になっていましたが…さて?
■まず出だしは権永文(クァン・ユンムン)の演舞からスタート(そういえばこの人、同じバッタもんジャッキー映画の『醒拳』にも出てたなぁ)。権永文は殺し屋一門のボスで、自らの意にそぐわなかった手下を殺した。これが『ジャッキー拳』では陳鴻烈に田豊の兄弟子が殺される場面に相当するのだろう。ただし『ジャッキー拳』ではいきなり大人になっていたが、こちらでは子供時代のエピソードが加味されている。
子供ジャッキーの前に乞食の酔いどれ師匠・袁小田が現れ、お約束の修行へと移行。しばらくして子供ジャッキーは『ジャッキー拳』のジャッキーに成長し、袁小田の指導の下で更なる修行を続けた。ここから『ジャッキー拳』が本格的に流用されていき、ストーリーは『ジャッキー拳』そのままの道筋を辿る。田豊なども登場(ただし花屋の設定はカット)していくが、コメディっぽいBGMを乗せるなどしてコメディ功夫片に見せている。
袁小田はジャッキーを見守る役で顔を出しているが、実際に共演はしていない。それでも絡むシーンになると偽者ジャッキーの出番となり、不自然に顔を隠したり後頭部のアップばかりとなる。この袁小田との絡みで生まれた唯一の救いは、田豊による叱咤の印象が変わったことだろう。『ジャッキー拳』での田豊の叱る様は暴力的で嫌なだけのシーンだったが、袁小田が優しく接する事でジャッキーにとって救いが生じる結果となっている。
その後、石天(ディーン・セキ)演じる麻雀大将とのバトルを経て、田豊と陳鴻烈との対面へ(田豊がジャッキーと姉を戦わせて大怪我をさせる場面はカット)。この陳鴻烈が権永文の子分という設定に変わり、隠れ家を放火される場面で田豊はそのまま死亡する。物語は韓國才が殺されて陳鴻烈とのバトルになるが、当然ここで終わらない。ここからは偽ジャッキーの独壇場になり、袁小田の修行を受けて権永文との決戦に挑むのだった。
▲見ての通りニコイチもどきの作品ではあるが、ストーリーの根本は『ジャッキー拳』そのままだ。
やっている事はフィルマーク作品…というか『火爺』に近いのだが、元ネタよりも豪華な俳優をそろえている点では『火爺』よりも格段にこちらが勝っている。だが、無理矢理コメディに仕立てた場面がミスマッチで、オリジナルで付け加えた部分も全然面白くない。そもそも元の『ジャッキー拳』という作品からして面白くない作品だったので、いくらコメディ功夫片にしようとも面白くなるはずが無かったのだが…ま、話のネタに見るぐらいで十分な作品だろう。
と、そんな訳で『Martial Arts 50 Movie Pack』の収録作品を巡るレビューもこれにて完結である。思えば『Martial Arts 50 Movie Pack』の中で最初にレビューした『猴[馬付]馬』で、私は「全部制覇するのもそう遠くない話かも」と締めくくっている。しかし、この言葉を実際に達成するまで幾多の難関が待ち構えていようとは、当時の私は知るよしもなかった。
『雌雄雙殺』のラストバトル編集問題、『猛獅』『大惡寇』『七殺街』の抗日映画三連発、収録作品で唯一傑作のカテゴリにランクした『三毛流浪記』の登場、苦行のようだった大長編『鬼面忍者』三部作の視聴、そして今回の特集…様々な事のあった『Martial Arts 50 Movie Pack』だが、こうして見終わってしまうと随分と寂しいものだ。中には二度と見たくないようなつまらない作品や、一度も見ずに封印した作品もあるというのに、何故だか無性に名残惜しい。
50本収録というかつてないスケールで発売された『Martial Arts 50 Movie Pack』。だが、いつまた第2第3の同パックが発売されるとも限らない。その時はきっと今回のように十把一絡げのクズ作品がかき集められて収録されるのだろうが、それでも私はそれを見てしまうことだろう。『Martial Arts 50 Movie Pack』を購入した、あの時のように……。

「燃えよジャッキー拳」
「タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道・序章」
原題:廣東小老虎
英題:Little Tiger from Canton/The Cub Tiger from Kwangtung
制作:1974年
▼9回に渡って色々と紹介してきた『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫セールも、いよいよ『必殺鉄指拳』でオーラス。だが今回はちょっと寄り道して『必殺鉄指拳』の元となった本作の紹介から先に済ませておこう。
ご存知の通り、『必殺鉄指拳』は本作を再編集して作られたデッチ上げ作品だ。似たようなタイプの作品で『醒拳』という作品があるが、こちらはジャッキーが途中で撮影を投げてしまったという複雑な事情がある。だが『必殺鉄指拳』の場合は、ジャッキーの人気が高まってきた時期に勝手に既成の本作を利用して設けようと企んだ、文字通りの詐欺映画でしかないのだ(とはいえ、フィルマークやIFDのニコイチ映画と比べたら随分と良心的なのだが)。
■…という訳で元ネタの本作は、ジャッキーが初主演を飾った記念すべき作品なのだが、やはりというかなんというか凄まじくショボい作品である(爆)。かつて悪党の陳鴻烈(『大酔侠』)によって田豊(ティエン・ファン)の兄弟子が殺された。兄弟子の遺児を育てる事になった田豊は、兄弟子の二の舞にならないようにと、遺児のジャッキーに私闘を厳しく禁じた。
しかし、私闘をしなけりゃ功夫映画は始まらない。さっそくスリの韓國財(ハン・クォツァイ)らに当り散らすチンピラどもと戦いになるジャッキーだったが、ケンカを起こすたびに田豊はジャッキーを叱り飛ばした。このチンピラグループのボスが都合良く陳鴻烈だったりするのはご愛嬌だが、こんなに近くに田豊がいたというのに18年間も行方を掴めなかった陳鴻烈たちは、相当頭が悪いと言わざるを得ないだろう(爆
なんだかんだでジャッキーと田豊の関係は陳鴻烈の知る所となり、ジャッキーは陳鴻烈によって傷を負った田豊を匿って港町へと居を移した。しかしここにも陳鴻烈組織の魔の手が迫り、遂には韓國財が殺されてしまう。怒りを爆発させたジャッキーは不適にあざ笑う陳鴻烈に、怒りの鉄拳を打ち込む!
▲本作は武術指導をジャッキーと元奎(コリー・ユン)の七小福コンビが担当。この2人が手がけているだけあってか、当時の低予算映画にしては功夫アクションの出来は良い。
だが初期作品であるためか動作はどこかもっさりしており、ジャッキー自身もまだ自分なりのファイトスタイルを確立できていない。また、肝心のラスボスである陳鴻烈があまり動けないためか、ラストバトルも随分と小ぢんまりした出来になっている。ネームバリューはあるし、ショウブラスターとジャッキーの対決もレアではあるが、さすがに陳鴻烈がボスというのは…。
また、本作で一番癪に障った存在が陳鴻烈ではなく田豊というのも気がかりだ。田豊はいつもの頑固一徹キャラを演じているが、いくらなんでもジャッキーの話を聞かずに叱咤一辺倒というのは見ていて息苦しすぎる。陳鴻烈の組織がもっと悪らつに描けていれば、あるいは田豊が組織の悪事を知っていた上で自らも我慢していたりすれば、田豊の叱咤にも説得力が持たせられたはず。だが陳鴻烈の組織がやる悪事は月並みなものばかりで、田豊は単に怒ってばかり。その結果、更に田豊のドメスティックぶりが目立つジレンマを抱えている。
私としてはとっとと田豊が陳鴻烈に殺されてジャッキーが怒りの鉄拳を振り上げる展開を望んでいたのだが(酷)、しぶとくも田豊は最後の最後まで生存。巨悪を倒してスカッとしている視聴者とジャッキーに冷や水を浴びせるラストの台詞(あれで今までの爽快感が全てブチ壊し)に至るまで、不快感ばっかりが先行する結果となってしまった。
JVDの仕様にも憤慨したが(いくらフィルムが入手できなかったからといって、セピア同然の画質で中文二段字幕が入ったまんまの素材をソフト化するなんて…)、作品自体も非常にお粗末なもの。この作品が『必殺鉄指拳』になるとどうなっているのかは、また次回のレビューにて。

搏紮
英題:Shadow Ninja/The Killer in White/Ghost of the Ninja/Killer Wears White
制作:1980年
●(※…画像は例によって例の如くということで・笑)
コメディ功夫片の一大ブームは、香港や台湾に無数のジャッキー(或いはサモハンの)フォロワーを大量に生み出す事態を生んだ。
これによって李藝民(サイモン・リー)や張力(チャン・リー)、更にはコメディ系のキャラクターではない戚冠軍(チー・クワンチュン)までもが引っ張り出されることとなったが、徳に重要視されたのが京劇畑の人員だった。香港映画界最大手のショウ・ブラザーズはこの点で最も過敏で、元徳や孟元文といったジャッキーと同郷の面々をコメディ功夫片へと出演させていき、他の七小福も同様の道を辿っていくことは周知の事実である。
このように、京劇独特のしなやかな動きこそが当時のコメディ功夫片に最も求められたものであり、本作の主演を飾った董[王韋](トン・ワイ)もその関係でいくつかの主演作を撮っている。役者としての彼は『プロジェクトD』などで知られているが、ここ最近は武術指導家として活動。近年は話題作や大作に多く参加しており、今なお第一線で活躍し続けている。
本作はストーリーがあまり良く解らないが、新米警官の董[王韋]が任世官(ニン・シークワン)率いる賭博組織と、それに繋がる悪辣な警察内部などの敵(陳龍や大細眼など)と戦うストーリーのようだ。コメディ的な要素はあるものの、物語自体は登場人物が次から次へと殺されていく陰惨なもので、個人的にはあまり好きではない(最後に生き残ったのが董[王韋]だけだというのも…)。
だが、そこでの董[王韋]の活躍ぶりは素晴らしいものがあり、当時の水準以上の仕事をしているのは流石である(クライマックスでを殺されてからキレた董[王韋]のアクションが『ヤングマスター・師弟出馬』チックなのはご愛嬌)。ストーリーが理解できればもう少し評価は上がりそうな作品ではあるが、『Martial Arts 50 Movie Pack』の中では随分マシな方であることは、これまでの特集で紹介したゴミ作品の数々を見れば明白なはずである(爆