特集・50Movies(09)『燃えよジャッキー拳』 | 続・功夫電影専科

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「燃えよジャッキー拳」
「タイガー・プロジェクト/ドラゴンへの道・序章」
原題:廣東小老虎
英題:Little Tiger from Canton/The Cub Tiger from Kwangtung
制作:1974年

▼9回に渡って色々と紹介してきた『Martial Arts 50 Movie Pack』在庫セールも、いよいよ『必殺鉄指拳』でオーラス。だが今回はちょっと寄り道して『必殺鉄指拳』の元となった本作の紹介から先に済ませておこう。
ご存知の通り、『必殺鉄指拳』は本作を再編集して作られたデッチ上げ作品だ。似たようなタイプの作品で『醒拳』という作品があるが、こちらはジャッキーが途中で撮影を投げてしまったという複雑な事情がある。だが『必殺鉄指拳』の場合は、ジャッキーの人気が高まってきた時期に勝手に既成の本作を利用して設けようと企んだ、文字通りの詐欺映画でしかないのだ(とはいえ、フィルマークやIFDのニコイチ映画と比べたら随分と良心的なのだが)。

■…という訳で元ネタの本作は、ジャッキーが初主演を飾った記念すべき作品なのだが、やはりというかなんというか凄まじくショボい作品である(爆)。かつて悪党の陳鴻烈(『大酔侠』)によって田豊(ティエン・ファン)の兄弟子が殺された。兄弟子の遺児を育てる事になった田豊は、兄弟子の二の舞にならないようにと、遺児のジャッキーに私闘を厳しく禁じた。
しかし、私闘をしなけりゃ功夫映画は始まらない。さっそくスリの韓國財(ハン・クォツァイ)らに当り散らすチンピラどもと戦いになるジャッキーだったが、ケンカを起こすたびに田豊はジャッキーを叱り飛ばした。このチンピラグループのボスが都合良く陳鴻烈だったりするのはご愛嬌だが、こんなに近くに田豊がいたというのに18年間も行方を掴めなかった陳鴻烈たちは、相当頭が悪いと言わざるを得ないだろう(爆
なんだかんだでジャッキーと田豊の関係は陳鴻烈の知る所となり、ジャッキーは陳鴻烈によって傷を負った田豊を匿って港町へと居を移した。しかしここにも陳鴻烈組織の魔の手が迫り、遂には韓國財が殺されてしまう。怒りを爆発させたジャッキーは不適にあざ笑う陳鴻烈に、怒りの鉄拳を打ち込む!

▲本作は武術指導をジャッキーと元奎(コリー・ユン)の七小福コンビが担当。この2人が手がけているだけあってか、当時の低予算映画にしては功夫アクションの出来は良い。
だが初期作品であるためか動作はどこかもっさりしており、ジャッキー自身もまだ自分なりのファイトスタイルを確立できていない。また、肝心のラスボスである陳鴻烈があまり動けないためか、ラストバトルも随分と小ぢんまりした出来になっている。ネームバリューはあるし、ショウブラスターとジャッキーの対決もレアではあるが、さすがに陳鴻烈がボスというのは…。
また、本作で一番癪に障った存在が陳鴻烈ではなく田豊というのも気がかりだ。田豊はいつもの頑固一徹キャラを演じているが、いくらなんでもジャッキーの話を聞かずに叱咤一辺倒というのは見ていて息苦しすぎる。陳鴻烈の組織がもっと悪らつに描けていれば、あるいは田豊が組織の悪事を知っていた上で自らも我慢していたりすれば、田豊の叱咤にも説得力が持たせられたはず。だが陳鴻烈の組織がやる悪事は月並みなものばかりで、田豊は単に怒ってばかり。その結果、更に田豊のドメスティックぶりが目立つジレンマを抱えている。
私としてはとっとと田豊が陳鴻烈に殺されてジャッキーが怒りの鉄拳を振り上げる展開を望んでいたのだが(酷)、しぶとくも田豊は最後の最後まで生存。巨悪を倒してスカッとしている視聴者とジャッキーに冷や水を浴びせるラストの台詞(あれで今までの爽快感が全てブチ壊し)に至るまで、不快感ばっかりが先行する結果となってしまった。
JVDの仕様にも憤慨したが(いくらフィルムが入手できなかったからといって、セピア同然の画質で中文二段字幕が入ったまんまの素材をソフト化するなんて…)、作品自体も非常にお粗末なもの。この作品が『必殺鉄指拳』になるとどうなっているのかは、また次回のレビューにて。