
鬼打鬼之黄金道士/鬼打鬼之靈幻天師
英題:Mad Mad Ghost
制作:1992年
▼さて、この作品はキョンシー映画ファンの間でも「面白い」と評判で、私も常々気になっていた作品である。
一般的に日本でのキョンシー映画ブームというものは80年代で終わっているが、香港では90年代に突入しても続いていた。しかし90年代は古装片ブームの嵐が吹き荒れる年であり、香港でもキョンシーブームは終息に向かっていたのである。90年に『スウォーズマン』が、91年に『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』が現れて香港映画界を席巻。この時期のキョンシー映画には『霊幻道士』シリーズの中でも評判の悪い『霊幻道士6』(92年)が存在するが、ものの話によると3日で上映が打ち切られたという。
本作もその例に漏れず、HKMDBによるとたった5日間ほど上映されただけで上映が終わっている。第1作と同キャストが集結し、ファンの間でも評価が高かった『霊幻道士7』でさえも9日間で切られており、いかに古装片へ人気が移っていたかが窺い知れる。しかし、だからといってこれらの作品が駄作であると断ずる訳にはいかないのだ。
■林正英は現代に生きる霊幻道士。金十二・李輝・史美儀といった五大弟子たちと共に修行に励んでいたが、この近代に道士という職で食っていくのは流石に難しく、林正英は警備員のバイトで生計を立てている。
しかし家賃が払えず立ち退きの危機に瀕し、仕方なく幽霊が出没する屋敷を仮の新居として選ぶことになった。この幽霊屋敷には陳志文(『香港・東京特捜刑事』で楊麗をからかう駐車違反の男で有名。『妖怪道士2』では劉皓怡の配下を演じる)と羅慧娟の幽霊夫婦が住んでいるが、この陳志文がとんでもないDV夫。事あるごとに妻をどつき回しており、哀れに思った林正英は羅慧娟を助け出した。
この騒動によって羅慧娟は林正英を気に入り、陳志文が逃げ出したあとも屋敷に定住することを決意。最初のうちは五大弟子との間で珍騒動が持ち上がったり、陳志文がリベンジに現れたりと次々に事件が巻き起こったが、羅慧娟は次第に皆と打ち解けていった。そんな中、屋敷にエディ・メイハーとマーク・ホートンの西洋人コンビが姿を見せた。実はこの2人、屋敷の地下にある黄金を盗み出そうと企てる悪党だったのだ。
林正英とすっかり都会色に染まった羅慧娟(笑)は、この悪徳外人コンビを撃退。そこでホートンたちは密教の陳龍を使って逆襲しようとするが、羅慧娟に火傷を負わせただけで失敗に終わった。痺れを切らしたホートンたちは、とうとう重武装して実力行使に打って出た。瀕死の羅慧娟を抱え、林正英と五大弟子は連中を撃退しようと決死の作戦に賭けるのだが…?
▲本作はコメディ風味の現代劇で、キョンシーはいないが楽しい作品に仕上がっている。お馴染みの林正英による道士様っぷりは相変わらずだし、ゲスト出演の樓南光(ビリー・ロー)も見逃せない。功夫アクション的には中盤の林正英VSマーク・ホートンのバトルが意外と面白く、ストーリーもアクションもバランスが取れていおり、キョンシー映画ファンからも好評である理由がよく解る。この出来なら、日本でビデオリリースされても良かったのではなかろうか?
しかし、本作が作られた92年といえば、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地大乱』『ドラゴン・イン』で徐克(ツイ・ハーク)が絶頂期を極め、周星馳が『ロイヤル・トランプ』で切り込んでいた古装片の戦国時代にあたる(このブームに背を向けて成功を収めたのは、『ポリス・ストーリー3』で命がけのスタントを見せ付けて対抗したジャッキーぐらいか)。
本作は間違いなく佳作の部類に入る作品なのだが、同年のラインナップがこの凄まじい顔ぶれでは…これでは公開5日目での打ち切りも止むべからず、流石に相手が悪すぎたとしか言い様が無い。せめてあと2年ぐらい早く製作されていたらと思うところだが、そう思うと本当に残念な作品である。