
「KEDAMONO 獣」
原題:1/3情人
英題:1/3 Lover
別題:1/3 Emotion Person
製作:1993年
●人気のない海岸で、村上麗奈が翁世傑(『香港・東京特捜刑事』)に襲われている。翁世傑に指示を飛ばしているのは悪徳刑事の陳流(『闘え!ドラゴン』の“紫の蛇”)だが、村上の反撃によって翁世傑は死亡する。
彼女は歳の離れた病床の大富豪・田青(ジャッキーの『奇跡』や張徹の『刺馬』等に出演)と結婚しているが、誰がどう見ても遺産目当てである事は明白だ。そんな村上の元に従姉妹の曾玉茹が身を寄せてきたが、陳流も村上をゆすろうと接近を図っていた。
田青の養子である李浩群が村上と関係を結び、その一方で曾玉茹も李浩群への好意を寄せていく中、陳流は「田青の遺産を持って来い」と村上を脅迫。当の彼女は李浩群に告白されるが、2人の密会を知った田青は心臓発作で死んでしまう。
遺産強奪を目論む陳流はこの機に漬け込み、タブーだらけの人間関係は破滅の一途を辿っていくのだが…。
私がこの作品の存在を知ったのは、大島由加里のフィルモグラフィーを調べていた時の事でした。当初はそこまで気にはしていなかったのですが、後になってその作品が日本でソフト化済みだったと知ったときは、大いに驚きました。
本作はいわゆる三級片(成人映画)であり、こうしたタイプの作品に目を通すのは私としても初めてでしたが、内容の方はとてもアングラ。エロっちいシーンは充実していますが、登場人物は全員最低なキャラばかりだし、救いようの無い因果応報なラストも含め、非常に居心地が悪かったです。
ところで本作は動作片として種別されていますが、残念ながら格闘アクションはありません。戦いと言えそうなのは、ラストで陳流が李浩群をしばき倒すシーンくらいで、そっちを期待していた身としては実にガッカリしてしまいました(爆
しかし、本作は完全なポルノ映画でありながら、比較的メジャーな俳優が多数参加しています。陳流や田青を筆頭に、弁護士役の午馬(ウー・マ)、医師役でゲスト出演の鄭浩南(マーク・チェン)など、思わぬビッグネームの登場に目を惹かれます。
そして一番のサプライズは、製作も兼ねている大島さんのカメオ出演でしょう。本作の彼女は舞台となる屋敷に住みこむお手伝いさん役で、メガネでドジッ娘というレアなキャラを熱演(笑)。陰惨な物語の中、コメディ・リリーフとして作品を守り立てていました(ちなみに大島さんの濡れ場は無し)。
それにしても、どうして本作のようなダークな作品を大島さんが製作したのでしょうか? 基本的に香港映画は「何でもアリ」な世界ですが、動作片で名を馳せた彼女がいきなり三級片のプロデュースをするとは、実に不思議な話です。
なお、一部のデータベースに記載はありませんが、本作の監督は王振仰(トミー・ウォン)が担当しています。王振仰といえば、異端の動作片『群狼大戦』を監督した人物ですが、ここだけは本作にマッチした人選だったので、ちょっとだけホッとしてしまいました(苦笑
どうやら、本作の他にも意外なサプライズが秘められた三級片はたくさんあるようなので、いつかまた紹介していきたいと考えています。

「ジル・リップス 殺戮者」
「ジルリップス」
原題:JILL RIPS
製作:2000年
●本作はドルフ・ラングレン主演のサイコサスペンスだが…まぁ、この作品は語るジャンルが違いますね。
ストーリーは元警官のドルフが、兄を殺した猟奇殺人鬼を追うというもの。本作でドルフは『デスロック』の時と同様に、アクションをメインに添えないドラマ重視の作品に挑んでいる。だが、アクション抜きのドルフがどれだけ魅力に乏しいかは既に『デスロック』で証明済み。しかも本作は活劇ですらないので、完全にドルフの持ち腐れ状態と化している。一応格闘シーンはちょろっとだけあるものの、ドルフが優勢になるのは酒場での乱闘シーンのみ。他の場面では大勢のチンピラにタコ殴りにされてしまうという、非常にみっともない場面まで出てくるのだ。
だが本作でのドルフの醜態はこれだけではない。次々と起こる猟奇殺人事件の犯人がSM嬢だということを掴んだドルフは、犯人と目されるSM嬢のもとへ潜入する…ということはつまり、ドルフのSM体験ショーが繰り広げられるのである(萎)。縛られて逆さ吊りになり、ビシバシとしばかれるドルフ…恐らく、彼の主演作史上最も情けない姿だろう。嗚呼、こんなドルフなんか見たくなかった…。
アクションに全く見どころが無いことがこれで解ったが、ではストーリーはどうなのかというと、これがまたショボい代物だった。私はあまりサスペンス物は見ない方で、たまに休日の昼下がりに再放送されてる数年前の2時間ドラマを見るぐらいだ。なのでこういうジャンルについてはあまり詳しくないのだが、サイコサスペンスである以上、謎解き要素や残虐シーンなどは必要不可欠なはずだ。どこかで見る者にアッと言わせるような、衝撃的な展開の1つや2つはあって当然といえよう。
しかし本作は平坦な出来であり、先述した不快なSMシーンも手伝って見る気がどんどん削がれていく。終盤になって犯人が判明するも、見てるこちらは完全に意気消沈。まぁ監督が『ストーム・キャッチャー』と同じ人なので、こうなったのもなるべくしてなったという事だろうか。とりあえずアクションがあるだけ『デスロック』の方がまだマシ。ジャケ裏の解説で「迫力満点の格闘シーン」と書かれているが、100%嘘なのでご注意を。

「ボディガード牙」
製作:1993年
●主人公・牙直人は空手道徹心会に在籍する空手の達人だが、その正体は巨額の報酬で動く凄腕ボディガードである。師・大東徹源の命によって任務を遂行する直人は、今日も様々な空手家たちと壮絶な死闘を繰り広げるのであった……。以上は『空手バカ一代』の梶原一騎が手掛けた空手アクション劇画、『ボディガード牙』の大まかな概要です。
ハードな内容と迫力のあるアクション描写が売りの活劇だったようで、のちに本編の過去を描いた『新・ボディガード牙/カラテ地獄変』、そして大東徹源の若き日を描いた『新・カラテ地獄変』といった派生作品が作られていきました(…が、私はどの作品も見た事がありません・爆)。
好評により実写映画も作られ、『燃えよドラゴン』によってカンフー熱が燃え盛る前の1973年に、『ボディガード牙』『ボディガード牙/必殺三角飛び』が千葉真一主演で製作されています。本作は梶原の七回忌を記念して作られたVシネ作品で、今回は主人公の牙直人を大和武士(『BACK FIRE/強制奪還』)が、大東徹源を真樹日佐夫が直々に演じています。
舞台は沖縄県那覇市。ヤクザの金を持ち逃げし、幹部(須藤正裕)を刺して服役していた長倉大介は、大和に護衛を依頼してきた。長倉は持ち逃げして隠した五億円の金を回収し、沖縄に置いてきた田中忍を連れ立って脱出しようと画策。しかしヤクザは金を取り返そうと、琉球空手の刺客を差し向けたりと姑息な手段に打って出ていた。
敵の追っ手を交わしつつ、一行はどうにか田中と再会できた…のだが、彼女はヤクザの仲間になって長倉を陥れようとしていた。琉球空手使いの刑事・松田優と共に敵地へ飛び込んだ大和と長倉は、全てのケリをつけようと組長に挑む!
三池崇史が監督を務めているのでエログロな場面もあり、物語も中盤で間延び気味になってしまいますが、格闘映画としては十分面白い作品です。大和は『強制奪還』の時よりもスリムで、鋭く突き刺さるような空手アクションは一見の価値があります。もちろん助演の松田優もいいファイトを見せていて、最後には大和VS松田のガチンコバトルが実現していたりします。
また、大和の仲間である倉田プロ出身の咲田めぐみ(ファイブイエロー!)も見事なファイトを披露し、琉球空手の挑戦を受けた真樹センセイの勝負も見逃せません。唯一残念なのはラストの大和VS松田がアッサリ目だった事で、この2人の勝負はもっとじっくり見てみたかったなぁ…と思ってしまいました。とはいえ、全体のアクションレベルは上々のものなので、格闘映画ファンにはオススメの作品と言えます。

「ザ・格闘王2」
製作:1994年
●本作はケイン・コスギ主演の『ザ・格闘王』の続編で、あの感動ぶち壊しオチからどうなるのかなぁ…と思っていたら、その雰囲気をそのまま引きずってしまった不幸な作品です。
前作は、父(宮内洋)を殺されたケインが格闘トーナメントで闘うという話でしたが、最後にヒロインが殺害されるという酷いオチで終わっていました。本作はその直後から始まりますが、アジアンマフィアによって捕まったケインが拷問を受け、全身ズタズタになった挙句に麻薬中毒になるという凄惨な展開からスタートします。
何とか脱出したケインは敵が横浜にアジトを移した事を知り、色々あって陶芸家で武術の達人・清水宏次朗の元へ身を寄せた。自力で麻薬の誘惑を断ち切る(!)と、彼は捕まっている清水の義理の娘&友人の女性記者(実はマフィア首領の情婦)を救うため、2人で敵地へと突入。死闘の果てに清水の義理の娘は助け出したが、この戦闘で女性記者と清水は死亡してしまう。再び胴着に身を包んだケインは、マフィア首領の邸宅へと乗り込む!
…と、このように本作は前作からの落差が非常に激しいものとなっています。ストーリーは単なるケインの復讐記になっているし、立ちはだかる敵の格闘家もたった2人しかいません。前作では倉田保昭や宮内洋を筆頭に、サイモン・リーなどの外人ファイター、石橋雅史や天本英世といった渋いゲストが出演していました。しかし本作には清水宏次朗ぐらいしか有名どころがおらず、画的にも非常に辛いものがあります。
このスケールダウンは前作で豪華なキャストを揃えたせいで、予算を使い過ぎてしまったことが原因だったのではないでしょうか?実際のところは監督のショー・コスギにしか解りませんが、そう思ってしまうほど本作のスケールダウンは著しいものでありました。
唯一、本作が前作に勝っているのはメインキャラの死亡者だけと思われます。本作ではケインの恋人と友人を始め、彼に関わった多くの人物が死んでいきます。その陰惨な雰囲気はさながらD&B(香港映画の中堅プロダクションで、よく鬱展開を好む)を髣髴とさせるもので、ダブル主演の清水すら死んでしまいます。劇中でもケインが「もう友の死は見たくない」と言う場面もあるので、このへんは本当にどうにかして欲しかったです。
しかし格闘シーンは全体的に質が高く、何よりも清水とケインによる夢の競演&対決が実現しただけでも、本作は価値があったと言えます。清水は『極道ステーキ』などのVシネ格闘アクションに出演していますが、実力の見合う相手とは中々巡りあえませんでした。本作ではその鬱憤を晴らすかの如く立ち回り、ハイテンションなバトルを見せています(少なくとも私が見た清水の出演作の中でも、1・2を争う動きの良さでした)。
暗い展開や尻切れトンボのラストなど、ショー・コスギの監督としての技量はあまり評価できないかもしれませんが、ケイン自身の可能性はまだ未知数。このまま未知数のままで終わっては欲しくないのですが、果たして今後ケインはどのような活躍を見せていくのか、座して期待したいところです。

「ブラッド・スポーツ2」
原題:BLOODSPORT II/BLOODSPORT 2: The Next Kumite
製作:1995年
▼格闘大会という題材はマーシャルアーツ映画ではとても重宝されてきた。
手っ取り早く格闘シーンを出せる事が最大の利点であり、若きジャンルであるマーシャルアーツ映画(『CIA殺しの報酬』の項を参照)にとって、この即物的なイベントは今も愛用され続けている。だが、格闘大会とは異なる種類の格闘技が集う総合格闘技の場でもある。そのため構成も似たり寄ったりなものになりがちだが、そこで重要となってくるのが「いかに他の作品と一線を画す作品を作れるか否か」ということである。
もちろん格闘シーン自体のクオリティも大切で、『クエスト』や『ファイナルファイト/最後の一撃』『スーパー・ファイト』は、各々のファイトスタイルをきちんと区別して描いている。他にも『ファイヤー・パワー』は武器支給システムを導入し、『ストリートファイター 2050』はアクション超人であるマット・マリンズを担ぎ出し、『12 TWELVE』は視聴者を観戦者へ導く新境地を打ち立てた。しかし、その素材を持て余して三流作品に陥るケースも少なくなく、アルバート・ピュンの『アルティメット・マシーン』や『キックボクサー4』などはいずれも失敗の典型だ。
格闘シーンの見せ方と独創性のある差別化…これが格闘大会系のマーシャルアーツ映画に必要不可欠な、そして重んじるべき命題なのである。
■ダニエル・バーンハードは類稀なる格闘センスの持ち主だが、悪友のフィリップ・タンと共に悪事を繰り返していた。
ところがパット・モリタの所持していた伝説の宝刀を盗んだ際、フィリップの裏切りで刑務所にブチ込まれてしまう。刑務所内では看守であるオン・ソー・ハン(『キング・オブ・キックボクサー』でローレン・アヴェドンに勝負を挑まれたムエタイの人)が睨みを利かせていたが、武術の達人であるジェームズ・ホンがダニエルの前に現れる。彼に師事したダニエルは精神的にも肉体的にも成長を遂げ、ホンから聞いた格闘大会"クミテ"に参加したいと思うようになった。
そんな時、あのモリタがダニエルを保釈して「過去の事は水に流し、あの刀を取り戻してきてくれ」と依頼してきた。かくして、ダニエルは宝刀の奪還と"クミテ"での優勝を目指して闘っていくことになるのだが、"クミテ"にはオン・ソー・ハンも参加しており…。
▲本作はヴァンダム主演の『ブラッド・スポーツ』の続編だが、共通しているのは"クミテ"ぐらいで物語的な繋がりは薄く、前作を見ていなくても楽しめるようになっている。
ストーリーも大筋は上記に挙げただけのもので、あとはひたすら格闘アクションが続いていくのだが…これが本当に凄い!ダニエル以下、参加している選手たちは全員動きが機敏で、加えて先述の要素をどちらもクリアしており、まさしくマーシャルアーツ映画の傑作として華々しい完成度を誇っているのだ。キックボクシング・柔道・中国拳法(虎拳)・テコンドー・空手・ムエタイなど、出場する選手の流派も実に多種多様。それでいて皆が皆持ち味を遺憾なく発揮している様は実に素晴らしい。
時にリアルヒッティング系の殺陣も飛び出したりする中、特に凄かったのがテコンドーVSカポエラの試合だ。このバトルでカポエラ使いの黒人が見せる足技が驚異的で、ここだけの出番ながら見事な立ち回りを見せている。私はまだ『オンリー・ザ・ストロング』や『トム・ヤム・クン』などは見ていないが、ここのファイトには本当に圧倒されました(ちなみにフィリップ・タンは思ったような活躍を見せなかったものの、本作で彼は助監督やアクション・コーディネーターとして八面六臂の活躍をしている)。
細かいアラは少々あるが、余計なサブエピソードを挟む事も無く、信じた道を突き進むダニエルの姿は爽快さすら感じさせる。本作はその後も第4作まで作られたというが、どこか日本のメーカーでソフト化して欲しい!…と思わざるを得ないところである(笑