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4.ひろがるキセキ。 還るべきところ ― 異聞 源九郎稲荷神社 ~ 大和郡山市洞泉寺町15

3.闇の中からいずるものたち 」のつづきです。


ある早朝のことでした。

いつものように、中川さんは社務所をあけます。
一人の女性が鳥居の傍でたたずんでいます。
近所では見かけない人です。
中川さん神社をあずかってからというものの訪れる人々に源九郎さんの伝説について語るようになりました。
さっそく、その女性に声をかけます。
聞けば、なんと、ついさっき関西国際空港から駆けつけたというではありませんか。
その女性は、北海道からこの神社に詣でにきたのでした。


2010年の暮れ。

すっかりかたづいた源九郎稲荷神社
山伏さんのおかげで祈祷も済みました。
しかし、中川さんは気が気でなりません。
電気もガスも水道も止まってしまった社務所。
しかも宮司さん不在です。
そうこうしているうちに、日が暮れていきます。

・・・ええいっ!

中川さん、奥さんにいって近所中に「ぜんざい」を炊くように指示します。
境内に焚火をします。

そうです。

年の暮れ、初詣に訪れる人たちを迎える準備を始めたのです。

中には、遠方から帰ってくる人たちもいます。

「ぜんざい」は参拝者にふるまうためです。

たいしたことはできません。

しかし神社が真っ暗なままでは、参拝する人が近寄れません。

せめて少しでもがっかりさせたくないので、年明けの三日間、お勤めされました。

人が住むところにある神社というのは、故郷の象徴です。

遠くへ移り住んだ人たちが還(かえ)るところに他ならないのですね。

・・・

ある日のことです。
ひょっこりと男性がやってきていいました。

「鳥居が随分色あせているねぇ」

掃除はしたものの、祠や鳥居はボロボロのままです。

「あたしが塗りなおしてやろう」

そうして鳥居は見事な朱色に蘇ったのでした。



またある日、祠を守る二匹の狐のボロボロだった前掛けが新しいものに変わりました。
近所の奥さまたちの手作りです。
奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ-大和郡山 源九郎稲荷神社 源九郎狐



祠の前の参拝所に、屋根ができます。



またまたある時には、トラックが飛び込んできました。
荷台にはジャリが積まれています。
むき出しの土だった地面に、たちまちジャリが敷き詰められました。



人びとを寄せつけず、うち捨てられた神社だった源九郎稲荷神社。



とよさん、中川さん夫妻がはじめた活動が、すこしずつ人を呼び、
大きな善意という奇蹟を招き寄せる結果となったのですね。

・・・


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2011年6月11日。

とよさんからメールをいただいた私は源九郎稲荷神社を訪れました。
既に祠のそばにご婦人が3人いらして、歓談されています。
ひとまず一番に参拝だろうと祠へと進み出ると、

「こんにちは」

そうご婦人が笑みをなげかけてくれるではありませんか。

この日は率川神社のゆり祭りに参加される方々が集まって、社務所の広間で稽古されていました。

その後も、ひっきりなしに人がおとずれてきます。

そして口々に、

「きれいになったね。」

「ほんと、みちがえるようやわー。」

とおっしゃっています。



5.源九郎さんのヒミツ 」へつづきます。



きつね異聞 源九郎稲荷神社
1.はじまりは、とよさんでした。
2.大和郡山の町中に響く法螺貝の声
3.闇の中からいずるものたち
4.ひろがるキセキ。 還るべきところ
5.源九郎さんのヒミツ


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源九郎さん出番ですよ!―日本三大稲荷の「源九郎稲荷神社」

3.闇の中からいずるものたち ― 異聞 源九郎稲荷神社 ~ 大和郡山市洞泉寺町15

2.大和郡山の町中に響く法螺貝の声 」のつづきです。

大和郡山市洞泉寺横に源九郎稲荷神社 があります。
五穀豊穣、商売繁盛の御利益があり、小さな稲荷ですが、伏見稲荷豊川稲荷と並び日本三大稲荷の一つに数えられています。

毎年4月の第一日曜日には「源九郎稲荷春季大祭」が行なわれ、白狐面をつけた子供行列が練り歩きます。

奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ-源九郎狐 大和郡山 源九郎稲荷社
※写真は2010年3月の大和郡山城お城祭り のものです。

中川さんは、昔から近所の子供たちを集め、お祭りのまとめ役をされています。

・・・

少し話を戻します。



ギギギ・・・



すっかり傾いだ社務所の扉をあけると、バサバサと落ちてきたのは、沢山の手紙でした。
中川さんご夫妻と、とよさん、それを拾い上げます。
電気、ガス、水道の料金未払いの督促状の山でした。
それもそのはず。
源九郎稲荷神社を管理していた宮司さんは亡くなられて、随分経ちます。
今や社務所の電気もガスも水道もすべて止められています。

電気がつかないので、真っ暗闇の中、手さぐりで戸を開いていきます。
社務所の中はゴミだらけです。
畳表はホコリでどろだらけ。

玄関先で奥さま、声をあげます。
「なんでしょうね、これ」
中川さん、なんだ?とのぞきこむと、丸い円盤状のものが廊下に転がっていました。
「おいっ、これ銅鏡やんけ。」


とよさんが境内を片付けているときでした。
石積みから扁額が見つかりました。
「?」
訝るとよさん。
いったい、もともとどこにあったものか分かりません。

それに―

静守大神

源九郎稲荷とは、異なる名前ではありませんか。

その他、祭祀につかわれる器物などがゴミにまざって、あちこちからでてきます。


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静守大神」の扁額。
これは―

人形浄瑠璃・歌舞伎の演目「義経千本桜」に、
源九郎狐が登場します。
そこで源九郎狐の名前
の由来がでてきます。
(「奈良のスーパーきつねさま。大和の源九郎狐伝説 」参照)

牛若丸こと源九郎判官義経が都をおわれたとき、狐忠信があらわれます。
奇異な力を駆使して最愛の静御前を守り、義経を困難から救います。
そのお礼に、義経は”源九郎”の名を贈られたとあります。

奈良ふしぎ歴史徹底攻略! 学校・教科書では教えてくれない奈良を親子でも100倍楽しめる観光ガイドブックブログ-源九郎稲荷神社

これは、静御前を守る明神様という意味では・・・と推測されましたね。


そして銅鏡ですが、その台座が祠の裏から出てきました。

今は然るべきところにおさまっています。




これです。






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・・・


生前の宮司さん。

・・・いったいなにがあったというのでしょう。

これは未だ誰も分かってはいません。


もしかすると永遠に。


4.ひろがるキセキ。 還るべきところ 」へつづきます。



きつね異聞 源九郎稲荷神社
1.はじまりは、とよさんでした。
2.大和郡山の町中に響く法螺貝の声
3.闇の中からいずるものたち
4.ひろがるキセキ。 還るべきところ
5.源九郎さんのヒミツ


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2.大和郡山の町中に響く法螺貝の声 ― 異聞 源九郎稲荷神社 ~ 大和郡山市洞泉寺町15

1.はじまりは、とよさんでした。 」のつづきです。

法螺貝の音って、聞いたことがありますか?

山伏さんがもっている
おっきい巻貝です。

私は生で聞いたことはないですね。テレビでみたくらいです。

吉野の山奥に宿泊された方が、早朝耳にされたことがあったと聞いたことがあります。

その迫力に感激されてましたね。

それが、大和郡山の町中に鳴り響いたのです。



さて―

源九郎稲荷神社には、
当時、吉野から宮司さんが通って来て管理していました。

80近いご高齢の方です。

先日以来 、とよさんは、あしげに源九郎稲荷神社 にかよい掃除をしました。

しかし、宮司さん、そんなとよさんに時折、目くじらをたて、そこは触るな、あそこに入るなと煩いことこのうえなく。

どうみてもゴミが積み上がったところです。

手を出すなとはいったい・・・?

怪訝になりつつも、しぶしぶ従います。


そうこうしているうちに、2010年夏に―

宮司さんが亡くなられました。

そのことを聞きつけて近所の方が源九郎稲荷神社をおとずれました。

そこで見たのは泥だらけのとよさんです。

「あんた、なにやってんの?」

そして、かつて荒れ果てていた境内のかわりように、驚いたのです。

・・・

その人こそ、現在、社務所におさまっている中川さんご夫妻です。

神社庁から次の宮司が決まるまで、神社の管理を任されました。

しかし本職の宮司さんではないので、お祈りをささげることができません。

・・・

さて、とよさん。
中川さんご夫妻と親しくなり、これを機に、思い切って境内を徹底的に掃除します。

さわるな、近寄るなといわれたところなぞお構いなしです。

祠をうずめるように積み上げられていた木材をひっぱりだし、消防署に許可をとると、燃やしてしまいます。

業者を呼び、意味のない岩を撤去させ、のび放題の木々も剪定をします。

まるでとりつかれたように、境内を所せましに猫車をひいてバタバタ走り回ります。

・・・

そんなある日のことです。

縁がある
山伏さんが、拝まれていない神社を危惧して吉野 から降りてきたのです。

さっそく、とよさん、中川さん夫妻一同とともに、祠を前にし祈祷をはじめます。

おもむろに、ぐいっと法螺貝を手にし、天へと吹き鳴らします。

大和郡山の町中。

かつては花街であった古い建物がひしめく町中に、

法螺貝の声が天へと高くのびていきます。



まるで源九郎狐様が歓喜の声をあげられているようです。



3.闇の中からいずるものたち 」へつづきます・・・


きつね異聞 源九郎稲荷神社
1.はじまりは、とよさんでした。
2.大和郡山の町中に響く法螺貝の声
3.闇の中からいずるものたち
4.ひろがるキセキ。 還るべきところ
5.源九郎さんのヒミツ



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