読書雑記 -14ページ目

読書雑記

読書日記。

ほとんど自分のためのものです。


☆☆☆☆☆


著者の執筆動機は「最新のマルクス研究の成果を踏まえて、気候危機と資本主義の関係を分析していくなかで、晩年のマルクスの到達点が脱成長コミュニズムであり、それこそが人新世(人類が地球を破壊しつくす時代)の危機を乗り越えるための最善の道だと確信したから」である。


希少性を生み出しながら利潤獲得を行う資本主義こそが、気候変動の根本原因であり、私たちの生活に欠乏をもたらしており、資本主義によって解体されてしまった〈コモン〉を再建する脱成長コミュニズムの方が、より人間的で、潤沢な暮らしを可能にしてくれるはずだと説く。


結びには、ハーバード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究を引いて、「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるとして、まず3.5%が、今この瞬間から動き出し、その動きが大きなうねりとなれば、資本の力は制限され、民主主義は刷新され、脱炭素社会も実現されるに違いないとする。


資本主義の限界を克明にあぶり出すとともに、当たり前と思って生きているこの資本主義システムの変革に向けて、われわれの背中を強く押してくれる。



☆☆☆☆★

新世代のリーガル・サスペンスといったところでしょうか。

作者の経歴もおもしろい。



☆☆☆★★


『罪をまっとうに裁かせること』

検事として、仕事人として、依って立つ信念を持ち、その信念を貫き通す。

かくありたいです。



☆☆☆☆☆

映画を観た後しばらくして読みました。
映画もよかったですが、当然ながら端折られている箇所や異なる演出もある映画とはまた違った感動を得られました。

蒔野聡史の次の言葉は印象深く、物語全体でも重要な意味を持ちます。
「人は、変えられるのは、未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」

愛や幸福とはどういうものか、とても共感できる定義です。
「幸福とは、日々経験されるこの世界の表面に、それについて語るべき相手の顔が、くっきりと示されることだった。」

小峰洋子の父であるソリッチが語った次の言葉は、自由意志か、決定論かのいい使い分けだなと思いました。
「自由意志とは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かが出来るはずだと、人間は信じる必要がある。・・・だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が慰めになることもある。」

☆☆☆★★
(ビジネスノウハウ本は実践しないと意味がないので、どんなに良くても本書に責任のないところで低めの評価になる)

マイクロソフトは、自社製品の「ワークプレイスアナリティクス」と「マイアナリティクスによって従業員の働き方を見える化し、そのデータを集積している。

その膨大な職場データから導き出された「職場の科学」を28の知見として紹介している。

そこから得られた知見は汎用性があるとのこと。

「働き方改革」は、単にスタイルや雇用制度の話ではなく、人材獲得力格差、ビジネスモデル格差、ひいては国力格差までつながる重要テーマであるという。

特に、マネージャー職、情報部門、人事部門に有用な知見だと思う。

☆☆☆★★

戦後最年少の直木賞作家によるエッセイ集。

子供の頃や大学時代の自分を面白おかしく揶揄するようなエピソードに富んでいるが、随所に将来小説家になるべく才能の片鱗を見せている。

小学校の卒業前に、原稿用紙100枚ほどの小説を書き、先生に渡すと、先生が「先生と生徒」でなく、ひとりの人間同士として、3枚の便箋にびっしりと感想を綴ってくれたという話。
その時、「文章をあいだに挟めば、「自分と違う」と思っていた人たちが、自分に向き合ってくれるのだ。ものすごい武器を手に入れた」と感じる著者は、ちょっと普通の小学校6年生とは違う。

疲れたとき、深く考えたくないとき、気落ちしているときに、元気になれそうな本。

☆☆☆☆☆

東京学芸大学個人研究員として美術教育を研究しつつ、中高の美術教師として教壇にも立つ著者は、「13歳」が美術を好きになるか、嫌いになるかの分岐点であり、「技術・知識」偏重型の授業スタイルが、中学以降の美術に対する苦手意識の元凶ではないかと考え、「美術=アート思考」は大人が「13歳」に戻り「最優先で学び直すべき科目」であると力説する。

「アート思考(アート的なものの考え方)」とは、
①「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、
②「自分なりの答え」を生み出し、
③それによって「新たな問い」を生み出す
思考プロセスだという。

VUCAの時代において、アート思考は、「自分のものの見方」「自分なりの答え」を手に入れるための考え方で、すべての人に役立ち得るものとしている。

19世紀のカメラの登場により、写実的な表現というアートの目的が見失われてしまった時代において、20世紀のアーティストたちは、自分自身のなかに「興味のタネ」を見出だし、そこから「探究の根」を伸ばすことで、「表現の花」を咲かせるというプロセスに自覚的に取り組むようになっている。

アート思考を育む題材にふさわしい、20世紀の代表的なアート作品を取り上げたエクササイズを通じて、「写実的な表現」「遠近法」「具象物を描くもの」「視覚で味わうべきもの」「イメージを映し出すためのもの」といったアートの常識が次々と覆され、「これがアートだ」と考える『確固たる枠組み』さえ存在しないのではないかというところまで行き着く。

「アートなんてものは存在しない。ただ、アーティストがいるだけだ」(歴史家・美術史家のエルンスト・ゴンブリッチ)
「自分の興味・好奇心・疑問」(=自分の愛すること)を皮切りに、「自分のものの見方」で世界を見つめ、好奇心に従って探究を進めることで「自分なりの答え」を生み出すことができれば、誰でもアーティストであると著者は言う。

アートに触れる敷居が下がると同時に、その奥深さにも気づかせてくれる。


☆☆☆☆★

昭和の未解決事件であるグリコ森永事件を題材にした長編ミステリ作品。

幼い頃の自分の声が脅迫事件に使われたことを知ったテーラーを営む曽根俊也と、新聞の年末企画のために事件を追う阿久津英士、それぞれが別々に事件の「真相」に迫る物語はやがて一つに収斂していく。

上質のノンフィクション作品を読んでいるかのよう。