今日は2016年3月のドイツはハンブルクからです。
仕事終えて、一旦家に帰り、それからライスハレへ車で向かいます。
今日のコンサートはNDR Sinfonieorchester(北ドイツ放送交響楽団)。第二次世界大戦後できたオーケストラで、ハンブルの主要オーケストラの一つです。2017年からは本拠地を新しくできた『エルプフィルハーモニー・ハンブルク』に移し、NDR Elbphilharmonie Orchester(NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)と名前も変えていますが、この時点ではライスハレが本拠地です。
今日の指揮者、Krzysztof Urbański(クシシュトフ・ウルバンスキ)。ポーランド出身の指揮者です。フレデリック・ショパン音楽大学で指揮を学び、プラハの春国際音楽コンクール指揮者部門で優勝、これまでワルシャワフィルの副指揮者、ノルウェーのトロンハイム交響楽団の首席指揮者などを務めています。NDRの首席客演指揮者でもあります。東京交響楽団の首席客演指揮者も務めているので、そちらでご存知の方もおられるのではないでしょうか。
最初の曲は、
リヒャルト・シュトラウス:ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら
Richard Strauss: Till Eulenspiegels lustige Streiche op. 28
この曲は、演奏会でも繰り返し取り上げられる曲で、なじみのある曲の一つですが、リヒャルト・シュトラウスが交響詩「死と変容」を作ったのち取り組んだ曲です。1894年から1895年に作曲され、初演は1895年11月5日ケルンでフランツ・ビュルナーの指揮で行われています。初演は大成功し、シュトラウス自身の指揮で11月29日にミュンヘンで演奏されています。
なんともかわいらしく、奇想天外でハチャメチャで、そして残酷な曲です。そのすべてがシュトラウスの完璧なオーケストレーションで構成されており、何度聞いても飽きない曲です。
二曲目に演奏されたのは、
グスタフ・マーラー:歌曲集「少年の魔法の角笛」
Gustav Mahler: Lieder und Gesänge aus »Des Knaben Wunderhorn«
少年の魔法と角笛は、アルニムとブレンターノが収集したドイツの民衆歌謡詩集がベースになっています。元々別々に作曲されたものを集めており、曲の組み合わせ、タイトルなど出版時に少しづつ違っているようです。今回は、バリトンとオーケストラバージョンで演奏されました。
独唱は、トーマス・ハンプソン(Thomas Hampson)。アメリカ出身のバリトン歌手です。バースタイン、アーノンクール、サイモン・ラトルなどとの共演も多く、モーツァルト、ロッシーニ、マーラー、シューベルト、チャイコフスキーなど幅広いレパートリーを持つ、現代を代表するバリトン歌手の一人です。
今回は、1.魚に説教するパドヴァの聖アントニウス(Des Antonius von Padua Fischpredigt)、2.ラインの伝説(Rheinlegendchen)、3.塔の中で迫害されている者の歌(Lied des Verfolgten im Turm)、4.歩哨の夜の歌(Der Schildwache Nachtlied)、5.原光(Revelge)の5曲が演奏されました。
とても表情豊かな歌唱で、楽しめました。とても人気のある人で拍手が鳴りやみません。アンコール2曲ほどありました。
休憩を挟んで三曲目は、
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
Dmitrij Schostakowitsch: Sinfonie Nr. 10 e-Moll op. 93
1953年に書かれ、ショスタコーヴィチの最高傑作ともいわれる曲です。当時はソビエト連邦の時代。交響曲9番で最高指導者スターリンの不興を買い、ショスタコービチは苦境に立たされます。一つ間違えば、粛清で命を失う可能性もある状況。そしてスターリンが亡くなったのち発表されたのがこの10番です。DSCH音型を使い、自分の時代が来たことを表現しているのではないかともいわれています。DSCH音型は、DーEsーCーH。ドイツ語のレ、ミ♭、ド、シを使った音型。これは、ショスタコービチのイニシャル、DSCH(ドミートリイ・ショスタコービチ)に符合します。まあ、様々な憶測を呼んでいる10番ですが、素晴らしい曲であることは間違いなく、カラヤンもお気に入りの一曲のようです。
ウルバンスキの指揮、なんだか生々しいしぐさ、少々オーバー気味なアクションがあったり、巨匠たちのようにどんと立っているというよりは、体重をずらしながら指揮する様は、なんとなく気になりますが、細部にこだわった指揮が効果的に行われていて、演奏は素晴らしいものになっていました。
今日も素晴らしい曲と素晴らしい演奏堪能しました。