僕は、とある演劇の稽古に車で向かっていた。
稽古場は何階建てもある大きな家を借り切っている。
稽古場の途中に公園があった。
公園の中を通らないと稽古場に着かないので、
公園内の人を避けながらノロノロ運転して稽古場に向かった。
途中に階段があってどうしても車で進めない。
仕方ないので、車を降りて稽古場に行き駐車場を聞くことにした。
公園内は親子連れなどが和気あいあいとしている。
車は入り組んだ公園の奥まで入ってきて出すのも大変そうだ。
とても盗まれそうにないので鍵はかけずに置いていった。
稽古場には未就学の子どもから、定年しているであろう年配の方まで色んな人が居た。
皆のんびりくつろいでるようでもあり、何かを忙しくしているようでもあった。
それぞれにしたいことをしているようで、他者にあまり構っている風ではなかった。
駐車場のことを聞きたいのだが誰に聞いていいのかわからない。
稽古場の中を探索することにした。
少なくとも4階以上ある家だった。
階の移動は階段ではなくハシゴだった。
1階はコンクリートの広場で、ここまで車で来たら駐車はできそうだったが階段の超え方がわからない。
2階はキッチンやリビングがあり、座ってくつろいでいる人が多い。
3階には広いバルコニーがある。バルコニーが部屋より広く、走り回れるくらいだ。
バルコニーの入り口にラジコンのような絵と×マークのステッカーが3貼ってある。
〇〇特機というメーカーのラジコンは電波が悪くて使えないぞという意味のステッカーらしいことを、
近くにいた女の子が教えてくれた。
〇〇特機はよく見るメーカーなので氣をつけようと思った。
4階はまた入り組んでいて、押し入れと通路と居室が混在していた。
奥には監督とおぼしき老紳士が座っていた。
駐車場のことを聞きたいのだけれど、なんとなく聞きにくい。
稽古場のつくりはだいぶ分かってきたのだが、車が心配なので戻ることにした。
公園内を歩いて戻る。
どのあたりに車があっただろうか。
記憶をたどる。
確か階段があって、そこを進めなくて停めたのだった。
階段を下りた。
車はない。
あれ?ここじゃなかったか?
そう思いながらさらに戻る。
公園を管理している係員みたいな人が階段の近くにいたので
僕の車を知りませんかと聞くが、知らないと言われた。
車を降りるとき特に注意もされなかった。
僕は氣にしていなかったが
車を盗むためにあえて注意しなかったのではなかろうか。
疑心暗鬼がつのる。
車の特徴を伝える。
エクストレイルなんですけど誰か乗っていきませんでしたか。
聞いても知らないと、そっけない返事。
公園内をウロウロするが、車の形跡がない。
もう一度稽古場に行った。
車のことを聞いて回った。
4階のハシゴの近くに座っていた未就学の女の子が
車の動く音を聞いたというがそれ以上のてがかりは得られなかった。
人のことには関心が無い人たちばかりだった。
僕と共演するらしき、年の近そうな女性が唯一心配してくれて、
その方の車で一緒に探しに行きましょうかと提案してくれた。
女性の車の後部座席で、女性と向かい合って座る。
運転席には誰もいないのに、なぜか車はちゃんと走っている。
不思議に思う僕の氣をそらすように女性は僕に話しかける。
今回の劇のこと。
大きな家のこと。
いろいろ分かってきて、話は進んでいるようではあるが
僕は車が氣になってそれどころではない。
女性は言う。
私たち、いい関係になれそうね。
僕は車が氣になってそれどころではない
そのうち、女性の車は何かの施設に着いた。
相談所とある。
よく見ると福祉サービスの相談所らしい。
女性が、車のことをここに相談してみる?と言う。
わらにもすがる氣持ではあったが、冷静にちょっと考えて
ここじゃないだろ、と僕は言った。
女性は、あらそう?と答えて車を切り替えした。
とりあえず警察に行ったほうがいいんじゃないかと思い始めた。
まったく、公園の管理人も、稽古場の連中も、
僕の車を盗むためにグルになっているんじゃないかと疑わしい。
という夢を見た。