霊能者なおこの事件ファイル9~引っ張る手①~
霊能者なおこの事件ファイル9~引っ張る手②~
の続きです
観覧車に乗り込むとき
恵子は、少し不安そうな顔で
私を振り向きましたが
私はわざと笑顔で
「じゃあ、後でねー!」
と手を振りました
恵子は、どちらかというと
消極的な方で、自分から
話しかけていくタイプではないし
森君も、
あまり積極的には見えません
少し強引だったかもしれないけれど
「観覧車で、2人の距離が近づけば良いな。」
そんな気持ちで、
私は恵子と森くんを見送りました
さて、私と彼は
観覧車の中で
”今日のWデートを成功させる計画”
でも練ろうかな!
なんて考えながら
ゴンドラに乗ったその時
また
あの匂いがしました
あの
祖父の匂い・・・
今度は、後ろから引っ張られる様な
感覚はなく、ただ祖父の匂いがした
それだけだったのですが
漠然とした不安と
嫌な予感に、私の笑顔は固まり
心臓がバクバクいい始めました
「どうしてん?」
私の顔を訝しげに覗き込む彼に
私は思い切って、
今日これまでに感じた事を
話してみました
彼は相槌も打たずに
静かに聞いていましたが
私の話が終わると
うーんと唸った後
「俺には、分からん!」
「分からんもんは、
気にしてもしゃーないから
何となく気をつけてたら、
ええんちゃう?」
「なんかあっても、
なんとかなるって!」
と言いました
もともと彼は
こういう楽天的な性格で
そこが時々、いい加減に感じて
不満でもあったのです
でも、この時は
色々な想像が膨らんで
怖くなった私が
「ねぇ、ゴンドラ落ちたりしないよね?」
と言うと
「大丈夫やって!」
と笑い飛ばしてくれる姿に
救われる思いで
「そやな。考えすぎやんな!」
と、笑って答えました
私達4人は、それから
いくつかの乗り物に乗って遊び
「少し、疲れたね」
とお茶をしていると
あっという間に、もう恵子が
帰らないといけない時間なのでした
みさき公園の駅で
コインロッカーに預けていた
浴衣の紙袋を出し
私と恵子は、車で帰る彼らに
「じゃあね」と
手を振り別れました
恵子と2人
南海電車に揺られながら
帰る道すがら
森くんの話をしましたが
恵子が言うには
「楽しかったけど、恋愛に
発展しそうな気配はなかったな」
という話で、私は
「そっかぁ」
と返事をしました
しばらくすると、恵子は
うたた寝を始め
私は
車内吊りのファッション誌の広告に
視線をやりながら
2人を引き合わす作戦は
あまり上手く行かなかったけれど
何も起こらなくて良かったと
内心、安堵していました
続く・・・
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