前回の記事
‐東アジアの今とこれから その25(戦前における日本共産党の海外展開)‐
反帝同盟の活動は、朝鮮半島でも展開されました。
朝鮮 慶尚道 (Wikiより)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%85%B6%E5%B0%9A%E9%81%93
慶尚北道(キョンサンプット)大邱府において、十二月初め(注1931年)に、市内に分宿せる第八十聯隊に呼びかけた反戦ビラがまかれた。
ビラには反帝同盟の署名があった。・・・・・・当局は、あらゆる徴候(兆候)からみてビラは日本人によってまかれたと認めざるえをえなかった。・・・・・・当局は、数日後当局は秘密の共産主義組織を摘発することに成功した。
この組織には、第八十聯隊の若干の士官もまた積極的に参加していたのである。・・・・・・この組織に参加した七十人の日本人と朝鮮人および、この組織に参加した二名の士官が捕縛された・・・・・・。
(前掲『日本の情勢と日本共産党の任務』)
※歩兵第80連隊(同)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A9%E5%85%B5%E7%AC%AC80%E9%80%A3%E9%9A%8A
これらの日本反帝同盟の活動は、各国民衆につよく支持されました。
1933年1月30、31日両日、ドイツ・フランクフルトで開かれた『国際反帝同盟拡大書記局会議』では、以下のように述べられた。
各国支部の活動報告中、日本支部の天皇制テロル(恐怖政治)に抗する英雄的闘争は、すべての代表の注目の的となり、日本強盗が侵略してゐる中国に於ける同盟支部の巨大な成長と共に、最も高く評価された
(『赤旗』、三三・四・六)
日本反帝同盟の活動で、強調しておかなければならないことは、
日本の労働者農民の間には、独り朝鮮についてだけではなく、台湾、中国における独立運動について驚くほどの受動性、無関心が支配してゐる。わが反帝同盟にも、同盟を反戦同盟と考えて、帝国主義の民族的植民地抑圧との闘争を看過し、軽視する傾向がある
(『植民地民族独立支持』の指令、『プロレタリア科学』、三一・九)
と反省して植民地問題を重視したことです。
これは現代においても、たとえば私のブログ活動の先輩である英語ブロガーのMichikoさんが、アメリカ人たちと米国の戦争問題や基地問題を話すとき、大多数のアメリカ人たちが「無関心」で、いつまでも男女間の『セックススキャンダル』や、『アイデンティティ・ポリティクス』の問題ばかりに振り回されていて、まるで反戦活動に興味を示さない事態を指摘しています。
氏は、これを『帝国の民』と定義づけられました。
これは自国の「圧倒的状況」を背景に、物的・精神的にも、自分たちが常に優位であると潜在的意識を持ち、他者の状況や不条理な問題について、本質的な思考が及ばなくなる現象を差しますが、それは過去の大日本帝国でも同様で、世界の『帝国内部の情報環境』で暮らす大衆の行動原理と考えればよろしいと思います。
Friedrich Engels
https://alchetron.com/Friedrich-Engels
“他国民を抑圧している国民は自分自身をも解放することができない”
エンゲルス『ポーランド人の宣言書』
そして、
日鮮労働者間の民族的偏見打破のための日常普段に活動すること。同盟員は率先して朝鮮の兄弟たちとの親切な相談相手となり、日本帝国主義と闘争における信頼すべき戦友とならねばならない
朝鮮人労働者に対する、差別的労働条件および虐待に反対して積極的に闘うこと
いかなる部分的要求のための闘争においても、日鮮労働者農民が自己の政府を樹立し、朝鮮の労働者農民が『完全なる独立』を実現するための闘争においても、日鮮労働者の団結によることなしには、勝利しえないことを強調し、日鮮労働者を打倒日本帝国主義の共同闘争にひきいれる
とくに朝鮮の政治的事件に関連して、
カンパーニアを提唱し、朝鮮の情勢に関する報道を不断におこない、朝鮮問題に関する研究会を組織すること
(『在日朝鮮人労働者間における日本反帝同盟の活動』、『プロレタリア科学』三一・九)
という方針にみられるように、朝鮮解放の問題を重視しました。
※カンパニア [3] 【ロシア kampaniya】
①政治的な闘争ないし活動。特に,大衆に訴えてある目的を達成しようとする運動。
②カンパ に同じ。
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%8B%E3%82%A2
そして、『忘れるな、八月二十九日━朝鮮国恥記念日』、『朝鮮反帝同盟』、『間島鮮農の闘争』、『内地在住朝鮮人の統計』(『反帝資料』)といった論文や資料を作成したり、『植民地民族独立支持カンパニア』を開いたりして、朝鮮独立の問題に重点をおき、『反帝国主義民族独立支持同盟』の名にふさわしい活動を行いました。
‐東アジアの今とこれから その22(満州事変、日中十五年戦争勃発、裏切者続々と現る)‐
満州国の位置 (同)
日本帝国主義は、今や満蒙植民地化政策(軍事属領化)遂行のため・・・・・・軍隊の増派、・・・・・・軍事予算の編成、・・・・・・軍備の充実・新兵器製造、大げさな演習の実施、青年訓練その他一切の反動機関を利用して、軍国主義の宣伝、軍事訓練等・・・・・・
(三一・七・二三、全協日本金属『赤色デーについて』)
と、極東における戦争の危機が切迫していると訴え、帝国主義戦争反対を主張しつづけてきた『日本労働組合全国協議会(全協)』も、反帝反戦を一貫してたたかった。
(満州事変)開戦直後の1931年9月23日、全協は機関紙『労働新聞』で戦争の本質を明らかにし、次のような声明を出しました。
弾薬武器軍隊の輸送を拒否せよ!戦争反対の大衆的罷業(ストライキ)、大衆的示威(デモ行進)を決行せよ
さらに同月25日には、
日本帝国主義政府はいよいよ支那掠奪を決心した。・・・・・・大衆的同胞殺戮が進行している!賃金は急速に低下するぞ!食料は全くの欠乏だぞ!妻子は路頭にまようぞ!老いた親は餓死だぞ!恐るべき大衆迫害・弾圧が下るぞ!
(渡辺徹 『日本労働組合運動史』)
と、最終的に世界恐慌から切り抜ける唯一の道は「強盗戦争ではない」として、後の歴史を見ても、日本の戦争行動が、アジア太平洋戦争へと繋がり、原爆投下と敗戦という、全民衆を地獄に叩き落す結果となったことをみれば、彼らの言葉になお一層重みが出て来るわけです。
こうして全協は、当時の日本における最も先進的な労働組合として、帝国主義戦争反対の激しい闘争を、政府の弾圧の中で組織していきました。
全国農民組合内のリベラル勢力、全農全会派の『帝国主義戦争反対、中国よりの即時撤兵』『帝国主義戦争を資本家地主(いわゆる権力者たち)に対する階級の戦争』『朝鮮、台湾その他植民地に対する干渉圧迫絶対反対、植民地の完全なる解放、植民地労働者農民の日常闘争の積極的支持』『中国革命運動に対する武力干渉絶対反対、中国ソヴェトの擁護』を行動網領(32年1月)とする活動も積み重ねていった。
※()は筆者加筆。
ぜひ強調しておきたいことは、日本反帝同盟や全協の活動のなかで、朝鮮人が絶大な役割を果たしていることです。つまり日朝民衆が共同して中国侵略に反対してたたかったのであり、それと時同じく、中国人は、その侵略被害の『当事者』でありながら、日本帝国主義と日本民衆を区別しました。
それは戦後における中国指導者の周恩来首相の言葉にもある通り、先の侵略戦争を一握りの軍国主義者によって引き起こされたのであり、日本人民もその被害者であるとして、当時の田中角栄首相と共に有盟の絆を結んだことにもつながっていきます。
Japanese response to Mr.awesome
中国の人たちは、満州戦争のさなかで、前線の兵士に向かってさえも『中日韓労農兵団結せよ』と呼びかけ続けたことは、とてもすごいことだと思うし、現代においても、中国の方々と英語でコンタクトを重ね続けるMichikoさんのお話と照らし合わせても、まさに氏のおっしゃる通りだったと、改めて思いました。
<参考資料>
・『アジア・アフリカ講座 日本と朝鮮』第3巻 勁草書房
・Cluttered talk blab blab blab 『それでも見捨てないでいてくれる中国』
https://ameblo.jp/cluttered-talk/entry-12403786150.html
・同 『Japanese response to Mr.awesome』記事
https://ameblo.jp/cluttered-talk/entry-11520200746.html
<ツイッター>
【歴史学を学ぶ大切さを伝えるブログ(ふーくん)】
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