数式で計算してから実験をやるのが普通です。なぜなら、実験はお金がかかるし、自分の貴重なエネルギーと時間も多大に費やされるからです。研究費と労力のムダを避けるために、できるだけ正確に実験をモデル化して、成功の可能性を計算するのです。もちろん、モデル化できない部分(ゆらぎや雑音など)もあり、実際の実験装置も理想ではありませんから、「やらないとわからない」ことがたくさんあります。

実際に実験をやると、予想できなかった問題がいくつか出てきて、解決しないと成功できない場合はよくあります。しかし、「やらないとわからない」という言葉の意味を誤解されると、困ります。計算をして、「できそう」という結果が出て、実際にやってみたら「できなかった」というケースはたまにありますが、計算をして、「できそうもない」という結果が出て、実際にやれば「できた」というのはほんとどありません。それができたら、本当に「運が良かった」と言うしかありません。

会社にいたごろの上司に、「できそうもない」という計算結果を見せても、「やってみようよ。やらないとわからないから、奇跡が起こるかもしれない。」みたいなことを言ってきたのです。「できる」と思わせる理由は全くなかったのに、ただ「やってみようよ。」と言っていました。費やされるのは上司のエネルギーと時間ではないから、簡単に言えますね。あのときから、仕事から逃げたくなりました。