5日前、腰が痛くなって動けなくなった。女性は、秋晴れで天気がよく、心身ともに調子がよかったので、ガーデニングの仕事を山ほどこなした。しかし、しゃがんだ体勢で手を伸ばした瞬間、腰の激痛に見舞われ、動けなくなった。お手洗いにいくのには、ゆっくり這うような状態でしか動けない。2日ほど安静にして、徐々に普段の生活に戻すようにこころがけた。何とか、車を運転できる状態になって、治療を訪れた。
実は調子がよいときほど、大怪我をしやすい。少し不安があれば、何事にも慎重でいられるが、調子がよいと、ついつい実力以上のことをしてしまいがち。ギックリ腰の予防のためにも、実力をつけることが大切だ。
ギックリ腰のように、腰に負担をかけてしまう動きの癖がある人は、かがんだり、しゃがむ動作が、正しくできていない。逆に、かがんだり、しゃがむ動作が正しくできれは、腰に負担がかからない。
スクワットは、しゃがむ動作の訓練として優れている。構造動作トレーニングに基づくスクワットについては、しゃがむ力:スクワット(昌文社 中村考宏著)を参考。かがむ動作については股関節の屈曲運動を正しくできるようにする。スクワットにおいても股関節の屈曲運動を正しくできるようにすることが大切だ。
動作においての腰椎のポジションは、曲げる、反る、捻じることをせず、腰の大黒柱として体幹の中心でキープする。まずは、腰椎に負担がかからない腰椎のポジションを身に付ける。そして、股関節の屈曲に作用する大腰筋を正しく使えるようにする。
大腰筋はT12からL5の椎体の前外側部、それらの椎間板、すべての腰椎の肋骨突起から起こり、大腿骨の小転子に停止する。腸腰筋(大腰筋、腸骨筋)は、股関節で大腿を屈曲させ、下肢が固定されていれば、体幹と骨盤は屈曲する。また、この筋肉は大腿を外側に回旋させるように作用する。座位においては、大腰筋が体幹の平衡に関与しているという報告がある。長時間座ってられない場合は、大腰筋を正しく使えていない、といえる。
▲解剖学アトラス 訳=越智淳三
ギックリ腰の予防のためには、日常動作の質を高め、実力をつけることが大切だ。