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Proof of...

祈る神を持たない僕は、ただ言葉の力を信じている。全ての言葉に僕の意味を。

さむいさむい


もうすっかりと秋めいて
夜は長くなりった


身をうつ涼やかな風に
感覚は研ぎ澄まされていく
世界の変化を探ろうとする

黒い鳥が羽ばたいて
お前は何も変わらないと
僕を強かに打った



あくびしか出ないや






あ、タイトルと関係なくなっちゃった
嗚呼













早く














早く




















誰か僕を見つけてくれ
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界面の表裏に煌めきと影が乱れる


息を止めひっそりとたゆたう


水溶性の意識の拡散


色形を保てぬ水泡が
海流に弄ばされて上下する


水面下にあって
光に憧れ足掻くその手足と

深海にあって
闇を好み喘ぐその呼吸が


きっとまた明日も繰り返す波が拐ってく


風よりも明精な音伝達が
無音を思い知らせるアイロニー

何処かへ行けば誰かがいても
此処に居ては誰もいない



深々度の圧力が
映る全て見渡す限りを藍色に

ここまで来ればきっと逃げ切れる

表層の心情心理とさよなら

そしてこんにちは深海魚


愛すべき同

憎むべき異




界面の表裏で煌めきと影が乱れる
夜が更けて、いつまでも騒がしい家の前の通りにふと車の往来が止んだ時なんかに、僕の心臓とは関係無しに右腕が疼くの。

いつか読んだ本に、左腕が抜け落ちてしまうウィルスの話があったな。




3才のときに右腕を骨折した。
2ヶ月右肘にボルトをさして吊るしていたから、なんでも左手でやった。
だから僕はそもそも右利きなのか左利きなのかなんてことは関係無しに、左利きに強制されたことになる。


その時から、どうやら僕の右腕は最も脆く最も死に近いものになったようだ
骨折を4度繰り返した。肘は歪んでしまった。
力が入らずに左右の握力には20キロの差があった。
傷付くのはいつも右腕だった。
右腕にはいつも違和感があった。
自分の体では無いような、不自然さがあった。


そうして今、僕の右手はやはり死に向かい始めている。疼きは止まらない。傷は癒えない。膿みただれて、やがて渇き、ボロボロと崩れてゆく。

僕は右腕から死んで逝く
僕は(死というものを理解してから)初めて家族を亡くすことになる。


曾祖母が危篤だと連絡が入った。

もう長いこと寝たきりで、会話はおろか反応さえも返せない状態だった。このまま逝かせてあげることにしたそうだ。
いつどうなるか分からないと言われていたけど、もっとずっと先の話だと思っていた。


幸いにも僕は、両方の祖父母も、叔父叔母も、皆健在だ。だから、肉親が亡くなる気持ちを理解できないでいた。
二十二年生きてきて、人の死に触れたことが無いわけではないけど、友達が死んだ時も、幼なじみのおじいちゃんが亡くなった時も、友達の親が亡くなった時も、僕は泣けなかった。僕は本当の意味での死を理解していなかったから。だからほとぼりが冷めるまでその人から逃げた。何を言っていいか分からなかったから。何を言っても嘘にしかならなかったから。悲しみに暮れる友人に「悪いけど僕には分からないんだ」などと言えるほど僕は冷めた人間じゃない。



でも初めて、本当に初めて、僕は死を理解する。




胸が痛くて、涙を堪えながらバイトを終えた。
でもそれは死に対する涙ではないのだと思う。
曾祖母が死ぬこと自体には、正直安堵があった。これ以上苦しい思いをしなくて済むのだから。

僕の胸が痛い理由は




後悔。





実家に帰り、祖父母の家に行っても、僕は曾祖母のいる部屋に寄り付かなかった。
恐かったのだ。情けないけど、理由も無く恐かった。
父が話かけるのを廊下から覗き見ていた。曾祖母に反応は無い。



あの耳は聞こえるのだろうか、父の声を。

あの目は見えているのだろうか、覗く僕を。

細く小さくやつれ、骨と皮しか無くなった彼女は、老いと死を僕に見せつけていた。
そして僕は恐くて部屋を離れた。

僕は昔、老人を恐がるところがあった。そのためか、あまり彼女との記憶を覚えていない。
けれど、今になって、思い出す。多くはないけれど。僕に笑いかける彼女。









後悔。








もう少し早く思い出せていたら

例え聞こえない耳でも
その思い出を語って聞かせて


例え見えない目でも
今度は僕が笑いかけて


例え感じない皮膚でも
僕の手で撫でてやって


そしたら彼女は、幸せに思ってくれたはずなのだ。


今ならこんなにも思えるのに!



情けない


情けない


情けない


後悔


後悔


後悔



たったそれだけの恩返しが、僕の命に対する恩返しができなかった




そんな駄目な僕に、彼女は最後に死を教えてくれるのだ。あぁ。やはり情けない。これだけのことをしてくれたのに、僕は何もしてあげられなかった。




ありがとう


ありがとう


ありがとう



僕はあなたのおかげで生きていて、あなたのおかげで死を知ります。生と死を両方与えてくれた。こんなに有難いことは無い。嬉しいことは無い。






想うだけで思いは伝わるだろうか

僕のこの後悔と感謝が伝わるだろうか


できれば、僕が帰るまで生きていて。もう少しだけ、ごめん、辛いのを我慢して。お礼が言いたい。貴女の熱に触れたい。










丁度お盆だ。曾祖父のお迎えで、迷わず逝けるだろう。
どうか、苦しみの無い、幸福な死を。









ありがとう、ひいばあちゃん
あなたとしたかくれんぼ、僕は忘れません
あなたが庭に水をやる姿も、僕は忘れません
あなたに貰ったこの生と死を無駄にしません


ありがとう