※※※※※※マイン※※※※※※※
今日は高校入学から始めたバイトの日だ。
駅から少し離れた所にあるブックカフェ。オシャレなインテリアに壁一面の本棚。ここの社長はフランの先輩でなんとラザファムなのだ!
彼はなかなかやり手でこのブックカフェの他に普通のカフェを3件も持っている。フランの口利きでバイトができるようになった。何度生まれ変わっても書痴の私にはまさに天国のような仕事場だ。
しかしここに勤めていることはあまり知られたくはない。出会ってしまったディートリンデなんかに知られたら大変なので普段から容姿を誤魔化すためにレトロな眼鏡をかけたりしているのだがそれを止めて本来の姿でバイトしている。まぁこの格好なら前世のローゼマインのような美少女なのでまさか冴えない本須マインとは誰も気が付かないだろう。
ブックカフェだから客もそれ程入れ替わりもなく体的には楽だし、気に入った本があれば貸してくれる。本代は死活問題だから大変ありがたい。それに週3日というのも心臓に爆弾を抱えている身としては非常にありがたかった。
ここは9時には上がれるし理想的なアルバイト先である。
しかし、まさか高校でディートリンデと再会するとは思わなかった。あの凄絶な苛めを思い出してしまうがもう縁を切っているから大丈夫だと思いたい。フェルディナンドとは古文書の研究辞退でこれ以上は関わらないだろうし無事に3年間過ごせれば言うことないのだけど…
※※※※※フェルディナンド※※※※
今日は生まれて初めて体験した気持をどうするか思案中だ。
先ずは本須マインの事を知らなければならない。
彼女は確か庶民クラスの特待生だったはずだ。特待生ということは何かしらのコンクール等で優勝や、入賞をしているはずだ。それならばネットで検索すれば何かしら出てくるだろう。
と、先ずはネットで検索してみた。出てきたのは中学時代に何度となく作文コンクールや、読書感想文のコンクールで最優秀を取っていた。そして全国中学模試で3年連続1位を取っていた。僕は模試には興味なく受けたことがない。かなりの秀才だ。
これだけの秀才ならば数学オリンピックなどに出ていてもおかしくないのだがそんな所で会ったことはない。
それに彼女はスマホを持っていなかった。今、この時代でスマホも携帯も持っていないなんてあるのだろうか?
そして本来アルバイト禁止の我が校でアルバイトをしている事実。庶民クラスでは許可されているが特待生ということは彼女の家は貧しい?
確かに今どき珍しい時代遅れの野暮ったい眼鏡をしていたし制服も新入生が着る新品ではなくどう見てもお古だった。
庶民クラスでも制服や靴、カバン等は新品であるはずなのに彼女は全てがお古だった。
しかしそんなお古を彼女は見事に着こなしていて古さを感じさせていなかった。益々彼女のことが気になるのだが…
そしてブックカフェで見た本来の姿。今まで見たどんな女性より清潔で美しかった。そしてあのふんわりとした笑顔どこか懐かしくて心が締め付けられた。今思い出してもドキドキしてしまう。そんな思いをどうするべきか?困った。
そんな事を考えていたら今日の夕飯に珍しく両親が揃っていた。
普段は仕事が忙しくて夕食など一緒に取れないのだが何故か今日は兄までも居たのだ。
久しぶりに家族揃っての夕食。両親の会話で…
「そう言えばそろそろマインの定期検診なのだけど手術から10年経つでしょ?このままでは後数年よね?移植の目処はたったのかしら?」
と母が珍しく仕事の内容を口にした。
父は「そうだな…ドナーが見つかればすぐにでも移植したほうが良いのだが確か彼女は施設に入ったのではなかったか?」
「そうね…確かそうだったわ。小学校に入るくらいから検診の付き添いは施設の職員が来ていたわね。移植となると費用は莫大ですものね。」
「まぁあの手術も奇跡的に上手く行ったものだからなぁ。本来ならあの時命を落としていてもおかしくない。だから尚更気になるし助けてあげたいのだがな。」
うん?マインなんて変わった名前そうそうあるものじゃない。両親にちょっと訪ねてみた。
「お母様マインというのは?」
「あら、貴方は覚えていない?5歳の頃家の病院に入院していて貴方と随分仲良くしていたじゃない?」
そう言えば5歳位の頃父の病院に良く遊びに行っていたなぁ🤔その時に遊んだことのある少女?
「病院の中庭で車椅子に乗った本を読んでいる女の子と仲良くなって一緒に本を読んだりヴァイオリンを弾いてあげたりしてたじゃない?」
「その子がマイン…?」
「そう。本須マイン。お父様が早くに亡くなってお母様嵩で育てられていた子よ。病院で毎月行われてた演奏会で仲良くなったって言ってたじゃない?退院するまでの半年良く一緒にいたわよね。貴方覚えてないの?マインが退院した時貴方もう会えないのか?としつこく聞いてきたわよね?」
母は面白い事を見つけたようなイタズラ顔で言ってきた。
本須マインがあの僕にとっては初恋のマインなのか?
愕然とした。確かに病院の演奏会で僕が弾くヴァイオリンに涙を流しながら聞いていたマイン。5歳だった僕はマインを守らなきゃって思って彼女の周りをうろついた。そして本を読んでいる彼女のそばでずっと彼女の髪を指に巻き付けて遊んでいたっけ。あのマインが彼女なのか?
そして彼女は重い心臓病?
僕は両親に彼女の病状をも聞いた。しかし両親はこれ以上は何も言えない。患者の事は他人には言えないという。
それ以上は聞けなかった…
その晩僕は一睡もできなかった。
と、ここまで。