※※※※※※※マイン※※※※※※※※※※
フェルディナンドと古文書の研究をすることになってしまった。彼に近づく事は良くないと思っているのだが…
なんとか回避できないかと考えていたらフェルディナンドの幼馴染の彼女との噂のあるアドルフィーネから呼び出されてしまった。
彼女はどうもヒルシュールに抗議に行ったようなのだが古文書を複数の人に開示したくないヒルシュールに却下を食らったようだ。そのために私に辞退しろと迫ってきた。
まぁ私としてもフェルディナンドに近づきたくないのでこの申し出は願ったりなのだがあのヒルシュールに普通に辞退して受け入れられるかが問題だ。
彼女は成績第3位であるらしいのだがどうも2位のフェルディナンドとの差がかなりあるらしい。
そうするとあのヒルシュールの了解を取るのは厳しいかもしれない。それに施設の後援者の機嫌を取るにはこちらとしても断りづらいどうしたら…と考えていたら…
「ねぇあなたもしかしてあのマインなの?」と問いかけられた。ふとそちらを見るとなんとディートリンデが立っていた。
アドルフィーネがディートリンデに「知り合い?」と聞いているが…
ディートリンデはまぁお金持ちだからこの学校に通っていても不思議ではない。アドルフィーネの家程ではないがかなりの家の筈だった。ディートリンデは意地悪な顔をしてアドルフィーネに私のことを「使用人の娘」と言った。
まぁ確かに間違ってはいない。ディートリンデの父親と再婚した母はディートリンデ家の家庭教師だった。
ディートリンデ達の母親が離婚して出ていった後に母が乳母のような家庭教師として入ったのだ。私の治療費を捻出するために朝も夜も働いていた母を気の毒に思い高給なその仕事を亡くなった父の親友が紹介してくれたのだ。
父と母も元はお金持ちの子供だった。しかし対立する両家の反対を押し切って駆け落ちして生まれたのが私。
母は元がお嬢様。苦労は慣れていなかったのだ。家庭教師として入ったのだが直ぐにディートリンデの父親に見初められた。そして結婚して元のお金持ちの生活に戻った母はもうその暮らしを手放せなくなったのだ。
一旦は亡くなった父の実家に私を託そうとしたようだが父の実家は没落していて祖父母は亡くなっていた。
母は駆け落ちだったので自分の実家に頼ることは出来ずにディートリンデたちと折の合わない私を手放す事にしたのだ。条件として施設にはいれるが心臓の高額な治療費だけは払ってくれるというもので。
まぁ私は5歳で目覚めたから母にそれほどの思慕はない。
前世のギュンター父さんや、エーファ母さんのように慕う気持を持つ前に再婚されディートリンデ達に虐められたから、麗乃の母みたいな感情もわかない。
今母とディートリンデの関係がどうなっているのかはわからないがはっきり言ってなんの感情もわかないし興味もない。
しかし、こんな所でディートリンデと出会うなんてなんと運の悪い事か。まぁフェルディナンドの幸せなは私の不幸が前提だから仕方がない。
ディートリンデに何か言われる前にこれはヒルシュールにどうにかして辞退しなければならないと悟った。
アドルフィーネにはどうにか辞退してみると告げその場はなんとか切り抜けた。
そしてその足でヒルシュールを訪ねた。
ヒルシュールには自分が施設出身で職員の家に下宿中でありその家のお手伝いとアルバイトをしなければならないので週2回の拘束は負担であるから別のことで貢献させてほしいと懇願した。
ヒルシュールは暫し考えるとそれならば昼休みに研究室に通いヒルシュールの研究を手伝うことを条件に辞退を認めた。
フェルディナンドと会えなくなるのはホッとしたような淋しいようななんとも言えない気持ちになったがこれで良かったと思えた。自分が側にいては彼の幸せが遠のいてしまうかもしれないし。
…
※※※※※フェルディナンド※※※※※
今日は古文書の研究の第1日目。ヒルシュールの研究室に行くとそこにはアドルフィーネがいた。
ヒルシュールから本須マインが研究を辞退したので3位のアドルフィーネに代わったと告げてきた。
何故?と思ったがアドルフィーネが裏から手を回して無理矢理に彼女を辞退に追い込んだんだろうとは直ぐに気がついた。
彼女ではなくアドルフィーネになったことに酷く気持ちが落ち込んだ。
ヒルシュールの説明も頭になかなか入らず古文書の解読も興味がなくなってしまった。こんな気持ちになるなんてなぜだろう?そんな自分を持て余した。
なんとなく気分が悪くアドルフィーネが何かを熱心に話しかけてきたが聞く気にもなれなくてそのまま帰宅した。
家に帰る途中迎えの車の中から外を何気なく見ていたら本須マインが足早に歩いていた。運転手にこの後は自分で帰るから降ろすように言って彼女の後を何となくつけてみた。
彼女はブックカフェへと入っていった。自分も中に入ってみると店の奥に消えた彼女がエプロンをして出てきた。
その姿を見た時雷に打たれたような痺れを感じた。
彼女はあの野暮ったい眼鏡を外して髪をおろしていたのだ。その姿はまるでどこかで見た女神のように輝いて見えたのだ。
彼女に気づかれないようにそっと隠れてそのまま彼女を見つめた。
この店でアルバイトをしているのだろう。壁一面の本を見つめる姿はドキドキとさせた。客に飲み物を渡した時の微笑みは他人に見せたくないと思うほどだった。
こんな気持ちになったのは初めてだ。小さな頃から女性はあまり得意でないし、母と家のメイド以外近づきたくなかった。幼馴染のアドルフィーネは母の親友の子供であったし本当に小さな頃から一緒で妹のような存在だった。だから彼女は女性としてカウントしてなかった。
しかし、今本須マインをしっかりと意識してしまった!
どうするべきか?ひとまず家に帰ってかんがえることにした