女子は神村学園が5年ぶり2度目
  男子は佐久長聖が6年ぶり3度目

 

 

 駅伝のスピード化はとどまるところをしらないようだ。
 今回の男子の佐久長聖は大会新記録で2時間01分00秒……。とうとう2時間01分を切るかどうかのところまでやってきた。とくに今回の佐久長聖は留学生ランナーがひとりもいない。留学生がいなくても、ここまでやれるのだということを佐久長聖の陣営はしきりに強調しており、マスコミもトピックとしてとりあげていた。
 対照的に女子は留学生を配する仙台育英と神村学園の争いとなり、神村学園が最終区のカリバ・カロラインが激走、トラック勝負で仙台育英をねじふせた。
 ケニア人留学生をめぐっては、いままでさまざまな議論がなされてきたが、次回大会からは最短距離の区間に限定することが決まったという。
 最初のころはエース区間の最長距離区間に登場、テレビ画面を留学生たちが独占するというので禁足にし、今回のルール改正では最短距離の3km区間に限定するという。
 いったい何のためにケニアからの留学生を受け入れることにしたのだろう。日本長距離、高校生のレベルアップのためではなかったのか。ならば競い合ってこそ目的にかなうのではないだろうか。留学生を最短距離の3km区間にとじこめて、留学生同士で競わせようとする。これでは本末転倒ではないか。留学生をまるで別物意識、差別である。留学生を受け入れるのなら、そんな姑息な縛りをかけずにオープンにしなければ意味がなかろう。
 制度の改革はもうひとつ。次回からは地域代表をくわえて、記念大会とおなじように、出場校を58にするという。これはいいだろう。ヒット企画だと思う。
 今回、第35回の記念大会だった女子は58チームが参戦、地域代表チームがベストテンのなんと3チームがもぐりこんできたのである。地域予選でやぶれても、地区大会で復活して、本大会で花ひらくこともある。ランナーたちにとって夢がふくらみ、励みになるのではにかと思う。


神村学園!
最終区、トラック勝負で抜け出たー女子


 女子のみどころは先行逃げ切りか怒涛の追い上げか、というところだった。オーダーからみて候補の一角・仙台育英あるいは地元の立命館宇治は前半でリズムをつくり、流れにのって、そのまま逃げ切りたい。強力な助っ人エースをもつ神村学園は、前半・中盤を耐えぬいて、最終区で決着をつけたい。多少の紛れは最終区でなんとか帳尻を合わせられる。そんな思惑をひめていた。逃げ切りを図る両校は、アンカーにタスキが渡った状態で神村にどれほどのアドバンテージをつくることできるか。そのあたりが勝負のポイントになっていた。

第1区(6.0km)
 よく晴れて陽ざしがさんさんと降り注ぐなか、レースはハイペースで幕あけた。
 グラウンド周回で早くも大分東明の奥本菜瑠海が先頭に立ち集団をひっぱり、70秒前後で駅伝ゲートをとびだしていった。
 1km通過が3:04、立命館宇治の山本釉未も前にやってきて、2人がレースの主導権をにぎって五条通りに出て行った。1kmから2kmも3:04とハイペースである。2人の後ろは、長野東の名和夏乃子、学法石川の湯田和未、新潟明訓の橋本和叶らが追っていた。
 2.8kmになって山本が抜けだして引き離しにかかるが、後ろもしっかりついてくる。
 中間点は9分27秒で通過、ペースは少し落ち着いてくる。ここで山本と奥本が抜け出して、5秒差で名和と橋本がつづき、その後ろには仙台育英の細川あおい、など5チームほどが集団でつづいていた。
 4kmをすぎると山本と奥本がほとんど並走で後ろをひきはなしにかかる。激しい先頭争いがつづくなか、あと1kmで山本が前に出た。勝負は決着したかと思いきや、また奥本がもりかえして並走状態はゆるがない。
 決着がついたのは残り300mあたり、耐えていた奥本がスパート、そのまま中継所へとびこんだ。2位は立命館宇治で5秒差、3位は仙台育英で11秒差、4位は長野東で16秒差、5位は大健闘のルーテル学院で17秒差、6位はこれも大健闘の銀河学院で18秒差、7位は新潟明訓で19秒差、8位は大阪薫英女で21秒差。神村学園は31秒差の13位と出遅れた。
 区間賞は大分東明の奥本菜瑠海である
 
第2区(4km)
 2区にはいると2位発進の立命館宇治の大西桃花が500mでトップを奪ってしまう。後ろからは3位発進の仙台育英のジェロップが追ってきた。仙台育英にしてみれば、ここでトップに立つのは想定通りの展開というべきか。
 逃げる大西、ジェロップが2位の大分東明の瀧川ゆめを抜いて2位浮上、4位グループをルーテル学院、長野東がひっぱっていた。
 ジェロップの勢いはとまらず1.5kmで早くも立命館宇治の大西をとらえてトップに立ち、さらにスピードアップした。うしろは長野東ほか、大分東明、新潟明訓、銀河ルーテル学院、薫英女学院、須磨学園、筑紫女学院などが集団をなしていた。
 中間点ではトップの仙台育英と立命館宇治との差は7秒、3位は長野東が28秒差でつづいていた。
 ジェロップは3km地点で大西を17秒をど引き離し、さらにスピードアップ、中継点では37秒までその差をひろげ、ここで仙台育英は筋書き通りにトップに立った。
 3位は銀河学院で43秒差、4位は長野東で46秒差、5位は筑紫女学園で50秒差、6位は須磨学園で51秒差、7位は新潟明訓で53秒差、8位は大阪薫英女で53秒差、なお神村学園は77秒差の9位であった。ここでも銀河学院の健闘が顕著で3位まで押し上げてきた。区間賞は仙台育英のジェロップである。

第3区(3km)
 仙台育英の長岡みさきは37秒もの貯金をもらってトップを独走、神村との差をさらに広げておきたいところ。短い区間ゆえに上位の順位に変動はなかったが、仙台育英と神村学園との差は、じりじりとひろがってゆく。神村は危険水域にさしかかってきた。
 長岡はトップをキープ。2位は立命館宇治で36秒差、3位は銀河学院で1分01秒差、4位は長野東で1分05秒差、5位は筑紫女学園で1分12秒差、6位は大阪薫英女1分14秒差、7位は須磨学園で1分17秒差、神村学園は8位で1分18秒差であった。区間賞は立命館宇治の芦田和佳である。

第4区(3km)
 仙台育英のこの区は磯陽向が逃げるも立命館宇治の佐藤ゆあがじりじりと追ってくる。3位以降は大混戦で銀河学院、長野東、大阪薫英、筑紫女学院などがもつれ、そこへ神村学園が追い上げてくる。神村の小倉陽菜は区間3位の力走で順位を3番まで押し上げてきて、トップの仙台育英との差は1分20秒とした。最終区の攻防をまえにして、この差は実に微妙であった。仙台育英の逃げ切りが濃厚になったと思われた。
 かくして2位は立命館宇治でその差は30秒、3位は神村学園で1分20秒差、4位は銀河学院で1分20秒、5位は長野東で1分21秒差、6位は大阪薫英女で1分22秒差、7位は筑紫女学園で1分32秒差、8位は須磨学園で1分43秒差となっていた。区間賞は立命館宇治の佐藤ゆあ、であった。

第5区(5km)
 仙台育英の橘山莉乃はひたすら逃げる。3区、4区の区間賞で勢いのついた立命館宇治、アンカーの池田悠音が懸命に追う。その後ろから神村学園のカロラインが急追してくる。 中間点ではトップが橘山、35秒遅れで池田、カロラインはそこからもう11秒差に詰まっていた。後ろは大阪薫英、長野東、銀河学院とつづいていた。
 神村の追い上げなるかどうか。興味はもっぱらその一点につきた。残り2.5kmでその差は46秒、微妙なところである。
 カロラインの勢いはとまらない。3.1kmでは池田をおらえて2位に浮上、ラスト1kmではトップとの差は100m、逆転はむずかしいか。あるいは追い上げもそこまでかと思われた。スタジアムのトラックにはいって、その差は10秒、ぎりぎり橘山が粘るかと思われたが……。ゴール前の直線でカロラインがスパート、逃げる橘山の動きは鈍い。みるみるその差はつまり、ゴール目前でなんと順位が入れ替わってしまった。
 仙台育英はほとんどレースを支配しながら、最終区であえなく逆転をゆるしてしまったのである。

 5年ぶり2度目の優勝を果たした神村学園、結果的にまんまと注文にはまったというべきか。前半は10位以下に甘んじていたが、中盤から上位に進出、カロラインを活かす展開になったのが勝因というべきだろう。
 2位の仙台育英は5人のうち4人までが区間1~3位以内、もくろみ通りにレースを進めながら、最後の最後で優勝がこぼれていった。しかしチームとしての地力はきわだっていた。
 トップ争いを演じた2チームは奇しくも留学生ランナーを擁したチーム編成、エース的存在の留学生を活かすレース運びで、ほぼもくろみどおりにレースを進めてきた。ほとんど互角の形勢で、この日はわずかに神村学園が先んじたということだろう。
 3位の立命館宇治は留学生はいない。1区の山本で流れをつくり、終始トップの見える位置でレースをすすめたのは伝統の力というべきか。5人のうち3人までが1年生、2年生、来年もある1~2年生ふたりが3区、4区で区間賞をもぎとったのはみごと。
 今回は記念大会で11の地域代表が出場しているが、思わぬ健闘で大会をもりあげた。たとえば最後は9位になったが、銀河学院(中国)は前半から上位争いを演じていた。筑紫女学園(北九州)は7位入賞、豊田大谷(東海)は10位……。ベストテンに3チームもやってきた。それぞれ見事な戦いぶりであった。


佐久長聖
うわさにたがわぬ強さを発揮


 男子の注目はもっぱら佐久長聖の動向、5000mで13分台のランナーを6人もそろえたスピード力で大会新記録の更新なるか。迎え撃つのは昨年の覇者・倉敷という構図、3区に配したエースのキバティで好リズムに乗って今年も押し切るか。
 佐久長聖には留学生はいない。だが選手層の厚さでで優勝なるかどうか。あるいは大会新の期待も……。興味がつきないものがあった。

第1区(10km)
 南西の風1.5mという好コンディションのなか、八千代松陰の鈴木琉胤を先頭にして、47人のランナーは競技場をとびだしていった。1kmの通過は2:48、鈴木を中心に東洋大牛久の宮崎優、学法石川の増子陽太、須磨学園の折田壮太が前にきて、横ひろがりの大集団である。
 2kmをすぎて五条通りから西大路通りにはいったところで折田が先頭に立って、集団を引っ張りはじめる。3km通過は8:38、折田を先頭にして、宮崎、鈴木がつづき、少しづつ縦長の隊列になってゆく。いぜん2:50前半のペースがつづく。
 4kmになるとトップ集団は18チームぐらいにしぼられてくる。中間点の5kmの通過は14:32、日本選手最高と同タイムである。折田がひっぱり宮崎、大分東明の松井一、さらに後ろには増子、佐久長聖の永原颯磨がつけていた。
 レースを動かしたのは折田、6kmすぎてペースアップ、集団をばらしにかかる。反応したのは宮崎、そして永原がつづき、トップ集団は8チームになる。ここで昨年の覇者・倉敷の檜垣蒼は集団からこぼれていった。
 7kmになるとトップ集団は7チーム、須磨学園、東洋大牛久、佐久長聖、洛南、学法石川、埼玉栄となる。先頭の折田はここからさらにスピードアップ、7.5kmでは折田を先頭にして、永原、増子、宮崎、埼玉栄の松井海斗の5チームとなる。
 下りにさしかかった8kmで折田が仕掛けるも松井がついてくるが、ここで永原と宮崎らは遅れはじめる。かくして折田と松井の熾烈なマッチアップ。残り1kmで松井が仕掛けたが折田は離れることなく、最後の最後、折田がスパートでふりきった。
 トップは須磨学園、2位は埼玉栄で6秒遅れ、3位は東洋大牛久で9秒遅れ、4位は佐久長聖で17秒遅れ、5位は学法石川で18秒遅れ、6位は大牟田で26秒遅れ、7位は八千代松陰で31秒遅れ、8位は大分東明で34秒遅れ。倉敷は57秒遅れの16位と出おくれた。区間賞は須磨学園の折田壮太である。

第2区(3km)
 須磨学園の藤岡孝太郎がトップをゆくも、後ろからは埼玉栄の井上陸斗、佐久長聖の遠藤大成、学法石川の齋藤一筋がならんで追ってくる。烏丸通りから丸太町通りに出たところでは後続が追いつきダンゴ状態となる。
 そこから抜け出したのは齋藤と遠藤、最後まで激しいトップ争いがつづいたが、最後は齋藤が抜け出した。
 トップに立ったのは学法石川、2秒遅れで佐久長聖、3位は埼玉栄で4秒差、4位は須磨学園で6秒差、5位は大牟田で21秒差、6位は八千代松陰で21秒差、7位は洛南で24秒差、8位は國學院久我山で27秒差。倉敷は58秒遅れの17位といぜん低空飛行がつづいていた。なお区間賞は国学院久我山の寺田向希が獲得した。

第3区(8.1075km)
 トップに立った学法石川の馬場アンジェロ光を佐久長聖の山口竣平と須磨学園の堀野正太が並走しながら追ってゆく。後ろからは埼玉栄の佐藤大介もやってくる。山口と堀野は1.5kmで馬場に追いつき、山口がトップに立ち堀野がつづく。
 後続では留学生たちが動きはじめる。仙台育英のカビカ、そしてはるか後ろ、58秒差の17位でタスキをうけた倉敷のキバティが2kmすぎで、すでにして10人ぬきで7位まで押し上げてくる。
 先頭は山口と堀野が並走、学法石川の馬場はそこから15秒遅れている。後ろは佐藤、石川、大牟田の山口翔輝、仙台育英のカビカとつづき、八千代松陰の小河原陽琉とつづき、そのうしろからキバティがやってきた。
 中間点ではトップグループのあと埼玉栄、大牟田、仙台育英、学法石川、そしてキバティの倉敷がここまで押し上げ、トップグループとの差は32秒まで迫ってきた。残りの4kmで佐久長聖にどこまで迫るか。倉敷の連覇なるかを占う大きなポイントになってきた。ここ倉敷が佐久長聖をとらえれば、一気に流れが変わる。そんな潮目にさしかかっていた。
 5kmをすぎて佐久長聖の山口がしかけた。堀野を引き離しにかかる。後ろでは倉敷が埼玉栄をとらえて3位まえやってきた。
 6kmではトップの佐久と2位の須磨の差は12秒、後ろは倉敷、埼玉栄、大牟田が集団で追走していた。倉敷のキバティの追い上げもここまでだった。
 佐久長聖の山口が先頭でタスキリレー。2位須磨学園との差は18秒。倉敷・キバティは14人抜きで3位。佐久長聖とは22秒差。4位には札幌山の手のサミュエルが7人抜き、区間2位の快走で、ここまで押し上げてきた。トップとは28秒差なら大健闘である。5位は埼玉栄で30秒遅れ、6位は大牟田で30秒遅れ、7位は仙台育英で66秒遅れ、8位は八千代松陰で78秒遅れとつづいた。区間賞は倉敷のキバティである。

第4区(8.0875km)
 待望のトップに立った佐久長聖、濵口大和が快調に逃げる。倉敷と22秒差ならば、もうもらったと思ったろうか。
 後ろからは倉敷の桑田駿介が急追してくる。勝負どころの3区でエースが計算通りの快走で望みをつないだ。2.6kmで須磨学園の福冨翔をとらえた。後続は大牟田と埼玉栄が4位集団をなし、札幌山の手は遅れ始めた。
 4kmすぎの中間点では佐久の濵口がトップ、19秒差で2位集団から抜け出してきた倉敷の桑田がやってきた。桑田はさらに前を追い、6kmでは13秒差までその差を詰めた。だが追撃もそこまでだった。佐久の濵口は粘りを発揮して逃げ切ってしまった。
 2位は倉敷で14秒差。3位の須磨学園は45秒差と離れ、ここで佐久長聖と倉敷のマッチレースの様相を呈してきた。4位は大牟田で1分05秒差、5位は埼玉栄で1分16秒差、6位は札幌山の手で1分41秒差、7位は八千代松陰で1分40秒差、8位は洛南で1分54秒差とつづいた。区間賞は倉敷の桑田駿介である。

第5区(3km)
 倉敷が14秒差まで詰めてきて、勝負の流れはどう転ぶか。命運のかかる区間となった。だが佐久長聖の佐々木哲が快調に飛ばした。思いがけがけなく自分の出番がまわってきて心が昂揚したのか。1km=2:40秒というハイペースで入り、倉敷との差をたちまち25秒までひろげてしまう。その後も佐々木の走りはゆるぎなく、倉敷との差はひらく一方になってしまった。
 短い区間だが、その短い区間で佐久長聖は勝負を決してしまったのである。
 かくして再び流れをひきよせた佐久長聖はトップを盤石にし、2位の倉敷との差は51秒とひろがった。3位は須磨学園で1分23秒差、以下は大牟田、埼玉栄、八千代松陰、洛南、仙台育英とつづいた。区間賞は佐々木哲。なんと区間新記録である。

第6区(5km)
 佐久長聖は6区で完全に流れに乗ってしまった。吉岡斗真は快調にとばした。1kmの入りが2:48、倉敷との差はたちまち1分をこえてしまう。中間点では1分12秒、3位には須磨学園がつづいていた。
 佐久の吉岡はらくらくと中継所へ。大会新記録を上回る1時間46分33秒で通過した。2位は倉敷で1分35秒差、3位は須磨学園で2分21秒差、そこから21秒のあいだに大牟田、埼玉栄、八千代松陰が入り、7位は洛南、8位は小林となっていた。この区間も区間賞は佐久長聖の吉岡斗真で、優勝を確実なものとした。

第7区(5km)
 後続を引き離した佐久長聖、この区間のランナー・篠和真も快調そのものだった。1km=2:48で入ると、まったくゆるぎがなかった。中間点での倉敷と差は1分38秒とひろがりかげん、大会新記録の期待が高まった。そのうしろ須磨学園と八千代松陰との3位争いがはげしくなっていた。
 佐久長聖の篠は楽々とゴールテープへ。2時間01分00秒は堂々の大会新記録である。
2位は倉敷、3位には平山櫂吏の区間賞の快走で八千代松陰がとびこんできた。

 優勝した佐久長聖は6年ぶり3回目の制覇である。大会新記録で、とうとう2時間00分台に突入目前まできた。留学生のいないメンバーで堂々の制覇である。
 区間賞がふたつ、区間2位がふたり、他のメンバーも5位以内で、終わってみればまったく危なげがなかった。5000mで13分台のランナー6人を擁するという選手層の厚さがモノをいったというべきか。総合力ではずば抜けていた。
 2位の倉敷は連覇にいどんだがとどかなかった。1区と2区のデキがいかにもわるすぎた。ここをうまくしのいでいれば、佐久長聖との争いはもうすこしきわどくなっていただろう。
 暮れの京都の街を背景にしての駅伝、ランナーたちはわが母校の前も駆け抜けてゆく。数ある駅伝レースのなかでも、観ていて実に楽しいものがある。

◇ 日時 2022年 12月25日(日) 女子:午前10時20分 男子:12時30分 スタート 
◇ コース:京都市・たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園 陸上競技場)発着 
男子:宝ヶ池国際会議場前折り返し7区間49.195Km 女子:烏丸鞍馬口折り返し5区間 21.975Km
◇ 天候:(午前10時)晴れ 気温:07.3度 湿度:37% 風:南南西1.14m (正午)晴れ 気温:10.5度 湿度::47% 風:南南西1,5m
◇ 女子:神村学園(瀬戸口凛、野口紗喜音、黒神璃菜、小倉陽菜、カリバ・カロライン)
◇ 男子:佐久長聖(永原颯磨、遠藤大成、山口竣平、濱口大和、佐々木哲、吉岡斗真、篠和真)
公式サイト: 
◇結果詳細:(男子)
      (女子)

 

 

積水化学が2年ぶり2度目の制覇
  明暗を分けたのはMGCか

 積水化学は予想以上に強かった。
 3区の佐藤早也伽でトップに立ってしまうと、もはや後続に追わせなかった。分厚い戦力がもたらした圧勝劇だった。
 1区でもし遅れることがあっても2区の山本有真で修正する。3区に佐藤早也伽をおいたのは、よほど調子が上がっているとみてのことだったのだろう。もし外国人特区の4区で資生堂に先に行かれることがあっても5区には新谷仁美がいる。2重、3重にそなえのある万全の態勢をしいていた。
 積水包囲網の各陣営はどうだったのか。資生堂、JP日本郵政、第一生命も手をこまねいていたわけではなく、それぞれ工夫のあるオーダーでのぞんできた。
 連覇をねらう資生堂は先手必勝、前半重視のオーダーでのぞんできた。1区から3区の五島、井出、一山で引き離し、積水にあきらめさせようという腹だったろう。
 第一生命も1区、3区にエースを配し、流れに乗ろうという腹つもりだったのだろう。
 JP日本郵政は中盤、後半勝負、オーソドックスな作戦でのぞんできた。いずれにしても3区の廣中でトップを奪い、積水をあわてさせようという腹だったのだろう。
 だが3チームともに、そのもくろみは脆くも潰えてしまった。
 なぜなのか?
 答えはMGCである。MGCで爆走してパリへの切符を獲得した鈴木優花、一山麻緒を3区のエース区間においた第一生命と資生堂、さらには5区に鈴木亜由子を配したJP日本郵政、いずれも計算通りにランナーが走らなかったのである。勝負どころで最高のパフォーマンスを発揮できなかったのが敗因のひとつといえそうである。
 ほかにも上位争いとは無縁だったが、1区に登場したワコールの安藤友香も、区間22位という信じられない成績であった。
 結果的に見てあのMGCの疲れがとれていなかった。彼女たちはあの勝負のかかったMGCで燃え尽きいてたのである。とすれば本当のところは、本大会で彼女たちを走らせてはならなかったのである。選手本位に考えれば……である。
 だが実業団のチームとしては、企業の顔でもあるから、企業の顔としてのPRパフォーマンスを発揮してもらわなくてはこまる。大会運営サイド、テレビ局としても、彼女たちがこぞって欠場ということになれば、視聴率に影響してしまう。スポンサーに顔向けが出来なくなるだろう。選手がどうのこうのではなく、スポンサーの顔がちらつくのである。
 少なくとも上記の3選手は、そんな板挟みのなかで走っていたのではないか。
 だが、しかし……である。
 現代の駅伝はごまかしができなくなっている。中途半端なコンディションでは、いくらトップ選手でも通用しない。名前などもはや通用しない。奇しくも、そんなことを考えさせられた大会だった。

第1区(7km)
 注目の第1区は、予想通りというべきか。ハイペースで幕あけた。
 スタート直後から、早くもトップに立ったのは資生堂の五島莉乃である。ハナから仕掛けて積水に喧嘩をふっかけてきた。
 1km=3:02……。早くも五島と日本郵政の菅田雅香が抜け出し、タテ長の展開になってしまった。2kmをすぎると五島は菅田をもぶっちぎって独り旅となる。2km通過は6:04で菅田のあとには三井住友海上の樺沢和佳奈、九電工の唐沢ゆり、パナソニックの信櫻空などがつづいていた。
 3km=9:14、4km=12:14と区間新ペース、後ろを30秒ほどもちぎってしまった。6kmになると2位には第一生命の小海遥があがってきて、後ろはむおみえない。はるか遠くで三井住友海上の樺沢、ダイハツの大森菜月、積水化学の田浦英理歌、のパナソニックの信櫻空などが集団でつづいていた。
 五島はそのままゆうゆうと後続を39秒ぶっちぎってタスキリレー、資生堂としては予定通りに展開となった。2位は第一生命、3位は41秒遅れで三井住友海上、4位はダイハツで41秒遅れ、5位は積水化学で43秒遅れ、6位はパばソニックで46秒遅れ、7位は天満屋で48秒遅れ、8位はエディオンで同じく48秒遅れとつづき、日本郵政は58秒遅れの12位とやや出遅れた。区間賞五島莉乃であった。

第2区(4.2km)
 今回から距離延長の第2区、予定通り先頭を奪った資生堂の2区はワコールから移籍してきた井出彩乃、順調な滑り出しでトップをひたはしる。
 後ろからは積水化学の山本有真がやってくる。第一生命の櫻川響晶とともに2位集団をなして井出を追ってゆく。後ろはダイハツの武田千捺、パナソニックの内藤早紀子……。 井出は後から追ってくる山本に詰められたがトップで中継所へ。3区には一山麻緒がいるのでトップ通過なら役割は果たしたというべきか。
 2位は積水化学で26秒差、3位は第一生命で38秒差、4位はパナソニックで40秒差、5位はダイハツで47秒差、6位は日本郵政で52秒差、7位は天満屋で1分差、8位も1分差でセンコーとつづいていた。区間賞は積水化学の山本有真が獲得した。

第3区(10.6km)
 トップでタスキを受けたのは資生堂の一山麻緒、資生堂にしてみれば、すべて筋書き通りの展開だったことだろう。一山に課せられたのは、ここで独走態勢にもちこむことであった。
 一山はゆうゆうとトップを行く。2kmの通過は6:28……。
 後ろは積水化学の佐藤早也伽が追い、パナソニックの渡邊菜々美、ダイハツの加世田梨花、第一生命の鈴木優花が3位集団を形成して追うが、鈴木の走りがなぜか重い。うしろからは日本郵政の廣中璃梨佳が追ってきて、一気に3位集団をとらえた。集団はくずれはじめ、なんとここで鈴木がこぼれていった。第一生命としては大誤算だったろう。
 4kmをすぎると佐藤がトップの一山を追い始め、とうとう4.4kmで一山を一気に抜き去った。積水化学はここでトップに立った。
 後続の3位集団は渡邊が引っ張るかたちで2位に落ちた一山を追いはじまる。3位集団から廣中と渡邊が抜け出してきて、4,7kmでは一山をとらえて抜き去った。廣中に勢いが出てきた。だが渡邊もけんめいに粘っている。ふたりで先頭を行く佐藤を追ってゆく。
 廣中はペースアップするが渡邊もついてくる。5.7kmになるとトップをゆく佐藤との差はみるみる詰まってくる。
 粘る渡邊をじりじりと引き離した廣中は、7.4kmでとうとう先頭の佐藤に追いついてしまう。だが、ここからの佐藤の粘りがすごかった。廣中はなんどもすぱーとをかけて引き離そうとするが、佐藤はついてくる。7.8kmで廣中がふりきるかと思いきや、佐藤は離れなかった。
 そして中継所手前で、こんどは佐藤が渾身のスパート、廣中をふりきって中継所へとびこんでいった。
 3区の廣中と佐藤のトップ争いは、本大会の最大のみどころであった。ここ佐藤が廣中にぬかせなかったことが、最終的に積水の制覇に結びついたといえるだろう。
 かくして3区を終わって、トップは積水化学、2位は日本郵政で3秒差、3位はパナソニックで24秒差、4位はダイハツで49秒差、5位は第一生命で1分20秒差、6位は岩谷産業で1分24秒差、7位は資生堂で1分29秒差、8位は天満屋で2分01秒差となり、区間賞は廣中璃梨伽であった。トップ発進の資生堂はここで7位まで順位を落とし、優勝戦線からほとんど脱落した。

第4区(3.6km)
 外国人特区のこの区間、11人の外国人の7お雇いランナーが走っている。
 トップをゆく積水化学は佐々木梨七、追ってくるのは日本郵政の小坂井智絵だが、それより40秒差で追ってくる4位発進のパナソニックのニーヴァが気になるところ、ほかはすでにかなりの差がついている。
 佐々木はたんたんと前を向いて走り、3秒差で追ってくる小坂井との差はどんどん離れてゆく。後ろからはやはりパナソニックのニーヴァがやってきて、1.5kmで小坂井をとらえて2位までやってきた。しかし、トップの佐々木はふんばって、そこからニーヴァには追わせなかった。
 積水化学がトップをまもり、2位は大健闘のパナソニックで16秒差、3位は日本郵政で39秒差、4位は資生堂で1分11秒差、5位はダイハツで1分18秒差、6位は岩谷産業で1分53秒差、7位は第一生命だ1分56秒差、8位はスターツで2分32秒差であった。区間賞は京セラのアグネス・ムカリだった。

第5区(10km)
 トップで新谷仁美にタスキを渡す。積水化学にとっては、まさに予定通りの展開になっていた。
 新谷は1km=3:06、2km=6:16というペースで突っ走り、後続をひきはなしにかかった。 新谷は快走、後ろははなれる一方となった。5km通過は15:48であった。
 後続では7位発進の資生堂の高島由香が順位をあげてきた。5kmでは3位発進の日本郵政の鈴木亜由子にとりつき、パナソニックの中村優希にとりつき、6kmでは3チームで2位集団を形成した。
 独り旅の新谷の後ろではげしい2位争い、集団がばらけたのはお7km、高島が抜け出して2位まで浮上した。日本郵政の鈴木は走りが重く、8.2kmでは中村にもおいて行かれて、とうとう4位まで後退した。これでは3区で廣中がつくった上昇機運にのれそうもない。
 新谷は後続を1分02秒も引き離してタスキ渡し、2位は資生堂、3位はパナソニックで1分23秒差、4位は日本郵政で1分34秒差、5位はダイハツで1分47秒差、6位は岩谷産業で2分44秒差、7位は第一生命え3分05秒差、8位は天満屋で3分10秒差となった。なお区間賞は資生堂を2位まで押し上げた高島由香であった。

第6区(6.795km)
 新谷で後続を1分もちぎった積水化学は森智香子が落ち着いた表情でひたすら駈けてゆく。もううしろは誰もやってこない。後ろで束ねた髪を左右に翻しながら、タスキをゴールまで運んで行った。
 後ろでは日本郵政とパナソニック、資生堂の2位争い、天満屋、第一生命、岩谷産業の6位争いが熾烈になってくる。上位シードはこのメンバーで収まりそうで、8位をめぐる攻防は今回はないようだった。
 2位争いでは日本郵政の和田有菜の勢いがよさそうだった。5.1kmで2位をゆく資生堂の前田海音にに日本郵政の和田とパナソニックの森田香織が迫って、ゴールまでもつれそうだった。
 そんな後続を尻目に、積水化学の森はゆううゆう、笑顔で、そのまま2連覇のゴールにとびこんでいった。(6区の区間賞は天満屋の大東優奈)

 優勝した積水化学はまったく危なげなかった。3区でトップに立って、そのままゴールへ。区間賞こそ1つだが、全員が一ケタの期間順位、まだまだ余力とうものを感じる強い勝ち方であった。MVPをあげるとすれば3区で奪首した佐藤早也伽ということになるだろう。区間2位だが、道中、廣中とびっしり競り合って、抜かせなかった。この気迫が後続のランナーにも引き継がれたとみる。
 2位の日本郵政、最後の最後に競り勝って2位までやってきたところ、やはり地力のあるチームといえる。中盤までは積水と四つに組んでいたが、もうひとつのエース区間、5区の攻防で敗れた。この日の新谷と鈴木のデキの差が、そのまま勝敗につながった。
 3位のパナソニックは大健闘である。資生堂を競りつぶし、3強の一角を崩したのである。全員が区間1ケタ順位で、安定した走りをみせ、つねに上位をキープした。とくに3区の渡邊菜々美の走りが印象的だった。
 資生堂は4位に終わった。前半から果敢に攻めたレースぶりは好感がもてた。もし3区の一山がパンとしていたら、積水とくわどい勝負になっていたことだろう。しかし駅伝にい「たら」の話はない。
 クイーンズ8、シード8チームは、今回、エディオンと豊田自動織機が落選、天満屋が復活を果たし、岩谷産業が初めてシード権を獲得した。

◇ 日時:2023年11月26日(日)午後12時15分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース::松島町文化観光交流館前→弘進ゴムアスリートパーク仙台(宮城コース) 6区間計42.195㎞。
◇ 天気:晴れ 気温:10.0℃ 湿度:44% 風:西 3.90m
◇積水化学(田浦英理歌、山本有真、佐藤早也伽、佐々木梨七、新谷仁美、森智香子)
詳しい結果
公式サイト

 

 

 

東京が2年連続11度目の制覇達成
  宮城、福島、岩手、東北勢力が大健闘

 

 本大会は東北地方の6県と、北海道、関東地方、甲信越地方と静岡県を加えた東日本18都道県代表の選抜チームでタスキでつなぐ駅伝大会である。
 福島テレビの提唱で始まった大会で、もともとは東北・北海道地区の女子長距離選手の強化を目的として開催されたものである。
 初回は同一道県から2チームの出場できたので、7道県から11チームが参加、福島県Aチームが優勝している。
 当時すでにして都道府県対抗女子駅伝がスタート(1983年)しており、初回終了後に大会規模を関東・甲信越地方を含めた東日本全体に拡大してはという声があり、主催者の福島テレビが受け入れたため、1985年より現在の東日本女子駅伝競走大会として再スタートしたのである。
 しかし東日本の女子の強化というねらいは理解できるが、駅伝大会の増えた現在では、いくぶん中途半端になりつつある。この時期、実業団選手は2週間後に全日本があるので、主力どころの選手は出てこない。大学生も年末の選抜に出るようなチームの選手はむずかしい。中・高校生も全日本がひかえている。
 大会の意義とありかたについては、再検討を要する時期に来ていると思えるが、中学生や高校生にとっては、大学生や実業団のランナーとタスキをつなぐというめったにない機会でもある。そういう意味で意義のある大会だといえる。
 今回も予想どうりに大学生、実業団からは主力は顔を見せなかった。名城大の米澤奈々香や増渕佑香など、よく出てきたな、と思う。埼玉の山ノ内みなみ、神奈川の出水田眞紀などはエントリーされていたものの、やはり出てこなかった。
 昨年の新谷仁美(東京)のように、図抜けた存在がいないだけに、レースは混戦模様となり、観るレースとしては面白かった。

第1区(6km)
 レースの主導権争いとなる第1区はそれゆえかスローの展開ではじまった。茨木の小野真緒(拓殖大1年)が集団をひっぱる。ピタと後ろにつけたのは東京の小川陽香(立教大1年)、宮城の米澤奈々香、福島の鈴木葵(ニトリ)など……。
 1km=3:21、2km=6:40……、超スローである。たまりかねたのか3kmをすぎて宮城の米澤がぺエースアップ、これに東京の小川がついてきて、2人が集団をひっぱった。4km=13:13で通過、5kmをすぎると、米澤、小川さらに鈴木が加わって三つ巴のトップ争い、さらに新潟の橋本和叶(新潟明訓高2年)もやってくる。
 6kmでは米澤、小川、鈴木が抜け出したが、残り500mになって後ろから山梨の飯島理子(埼玉医科大グループ)がやってきて、一気に先頭に立つ。けんめいに追ってきたのは米澤でふたりのマッチアップとなる。ふたりはほとんど同時にタスキを渡したが、わずかに先んじたのは宮城の米澤だった。
 かくしてトップは宮城、差なく2位は山梨、3位には岩手の高橋優菜(いまむら)が飛び込んできて2秒差、4位は東京で2秒差、5位は長野で3秒差、6位の福島も3秒差、7位は新潟で7秒差、8位は北海道で10秒差とつづき、神奈川は9位で11秒差、千葉は16秒差の11位、埼玉は21秒差の14位と出遅れた。

第2区(4km)
 山梨のベテラン飯野摩耶(SNOW)がトップをゆくも、1km手前ではやくも福島の岩崎麻知子(拓殖大1年)がやってきて先頭を奪う。後ろからは宮城の佐藤柚優(仙台育英学園高2年)、新潟の村山愛美沙(東北福祉大1年)、東京の山﨑空(ベアーズ)もやってきて、上位争いは混沌としてくる。
 2kmをすぎたところでは、トップは福島、東京、新潟、長野が2位集団をなし、さらに後ろからは北海道、千葉がつづいている。
 残り1kmをすぎると、トップをゆく飯島に北海道の石川苺(城西大)が追いつき、後ろは長野の窪田舞(長野東高 2年)、東京の山崎、さらにはるかうしろから埼玉の山田桃愛(玉川大4年)がやってきた。
 トップ争いは激しくなったが、最後は福島の岩崎が抜け出した。埼玉の山田は猛追、のころ200mで3位までやってきた。
 2区を終わってトップは福島、2位は長野で2秒遅れ、3位は埼玉で3秒遅れ、4位は北海道で7秒遅れ、5位は東京で8秒遅れ、6位は千葉で10秒遅れ、7位は新潟で11秒遅れ、8位は神奈川で14秒遅れとなり、1区でトップの宮城は28秒遅れの12位まで順位を落とした。
 区間賞は11位から一気に3位まで順位を押し上げた埼玉の山田桃愛が獲得した。

第3区(3km)
 上位は混戦で順位争いがはげしくなってくる。
 逃げるは福島の佐藤美空(学法石川高3年)、だが後ろは北海道、埼玉、長野、東京、千葉が集団で追ってくる。
 1.8kmになって、2位集団から東京の鈴木美海(順天高 3年)が抜け出してきた。後ろは長野、千葉、新潟、さらに後ろは北海道、埼玉、神奈川がつづいていた。
 追ってきた投稿の鈴木は残り600mで福島の佐藤をとらえてしまう。そしてその差をひろげ、勢いそのまま中堅所にとびこんだ。
 3区が終わったところでトップに立ったのは東京、2位は15秒差で福島、3位は17秒差で長野、4位は21秒遅れで新潟、5位は27秒遅れで神奈川、6位は30秒遅れで千葉、7位は35秒差で北海道、8位は38秒差で栃木、宮城は39秒差の9位、埼玉は41秒差で10位だった。
 区間賞は区間新の快走で東京を5位から一気にトップにひきあげた鈴木美海であった。

第4区(3km)
 中学生指定のこの区間、トップに立った東京の一兜咲子(杉並区立大宮中3年)が、ひたすら逃げて後続を引き離しにかかった。東京が逃げて、9位発進の宮城の男乕結衣(仙台市立五城中3年)がひたすら追ってくる。9位から6位へ、後ろには千葉、栃木、北海道
をしたがて、前を追ってゆく。
 中間点をこえて、2位の福島の丹野星愛(福島市立大鳥中 3年)を宮城の男乕がけんめいに追ってくる。残り200mで男乕はとうとう丹野をとらえて2位に浮上、後続をひきはなしトップの東京を追った。
 トップは東京がまもり、2位は宮城で18秒差、3位は福島で19秒差、東北勢力が大健闘している、4位は長野で31秒差、5位は神奈川、6位は北海道、7位は栃木、8位は千葉とつづき埼玉は1分09秒遅れの11位であった。
 区間賞は7人抜きで宮城を2位まで押し上げた男乕結衣が獲得した。

第5区(5.0875km)
 トップの東京は臼井瑠花(上水高2年)、2位の宮城・細川あおい(仙台育英学園高2年)が追ってくる。宮城の後ろは福島、その後ろは神奈川、北海道、栃木、千葉、長野がひとかたまりになっている。
 宮城がじりじりと東京に迫り、後ろでは千葉の風間歩佳(中央大4年)が,3.7kmで福島をとらえて、8位から一気に3位までやってきた。後ろは福島と神奈川。その後ろでは埼玉が11位から順位をあげてきた。
 トップ争いは東京の臼井を宮城の細川が激しく追い上げて、宮城が交わしたところでタスキリレーとなった。
 かくしてトップには宮城が立ち、同タイムで2位は東京、3位は千葉で45秒差、4位は神奈川で54秒差、5位は福島で57秒差、6位は北海道で1分05秒差、7位は新潟で1分06秒差、8位は埼玉で1分12秒差、長野は1分50秒差の11位であった。
 区間賞は宮城をトップに押し上げた細川あおいであった。

第6区(4.1075km)
 トップに立った宮城のこの区間は橘山莉乃(仙台育英学園高3年)である。東京の位田明優(錦城学園高3年)と肩を並べてスタートしていったが、じりじりとその差をひろげて追わせなかった。この時点で宮城と東京が一つ抜けた存在、後続との差はひろがり、両チームのマッチレースの様相となり、9区のランナーの力関係をみすえての攻防となった。
 宮城としては少しでもその差をひろげておきたいところ、東京としてはできるだけ離されずについてゆきたい……。
 6区を終わったところでトップは宮城、2位の東京との差は17秒、3位は千葉で1分02秒差、4位は神奈川で1分08秒差、4位は神奈川で1分08秒差、5位は福島で1分16秒差、6位は北海道で1分34秒差、7位は埼玉で1分37秒差、8位は新潟で1分39秒差であった。
 区間賞は宮城の橘山莉乃であった。

第7区(4km)
 宮城の長岡みさき(仙台育英学園高2年)が快走、東京との差を引き離しにかかった。
東京の野口麻衣子駒澤大学高2年)との差は、みるみるひろがってゆく。宮城がレースの主導権をにぎりはじめた。
 宮城の長岡は東京との差を37秒までひろげて8区へ。3位は千葉で1分32秒差、以下は福島、神奈川、新潟、埼玉、北海道……とつづいていた。
 区間賞は宮城の長岡みさき、これで長野は4区間連続の区間賞で、完全にレースの主導権をにぎった。

第8区(3km)
 中学生区間である。しかしトップをゆく宮城と東京にとっては、9区に引き継ぐまで、その差がどのようになるか。この区間の攻防によって優勝のゆくえがみえてくる、という意味で重要な区間であった。
 トップをゆく宮城と東京の差はほとんど動かなかった。東京にとってはひたすら耐える区間だったというべきか。結果はわずか4秒とはいえ、その差は詰まった。東京にとっては追撃の狼煙となった。
 かくして宮城はトップをまもったが、2位東京との差は28秒、3位は千葉で1分23秒差、4位は福島で1分36秒差、以下、神奈川、新潟、埼玉、岩手、長野とつづいていた。なお区間賞は静岡の遠藤蒼依(日本大学三島中2年)である。

第9区(10km)
 かくして勝負はアンカー決着にもちこまれた。
 トップをゆく宮城は門脇奈穂(拓殖大3年)、追う東京は増渕祐香(名城大4年)という大学生対決である。その差は28秒ならば逆転可能、増渕にとってみれば射程距離である。
 門脇を増渕がゆっくりと思ってゆく。1.5kmですでに5秒つまって、流れは追う側に傾いてゆく。
 後ろでは千葉の佐藤奈々(スターツ)に福島の石井寿美(シスメックス)が追いついて、マッチアップとなる。
 増渕は門脇との差をみるみるつめて、4kmでは後ろについて、並ぶ間もなく一気に置き去りにしていった。増渕は表情も変えることなく、あとはごゴールまで独り旅……。
 興味は3位争いだが、4km地点で福島の石井がスパート、千葉の佐藤を振り切った。
 8kmすぎになると2位争いが熾烈になる。増渕に置いて行かれた門脇に福島の石井が迫ってきた。そして9kmでは追いついてしまったのである。
 トップの増渕は後続を1分以上もちぎってゆうゆう2連覇のゴールへとびこんでいった。2位争いはトラック勝負までもつれ、最後は門脇が渾身のスパートで意地をみせた。
 区間賞は優勝を決めた増渕祐香と福島の石井寿美である。彼女なら、これぐらいの走りをして当然というべきだろう。

 優勝した東京は安定していた。区間賞は2つだが、各ランナーとも安定していた。長い距離で決め手のある増渕を生かせる展開になったので、もくろみどおりの戦いだったというべきだろう。
 2位に来た宮城は、終盤までレースを支配していた。実業団ランナーをもたず、中・高校生、大学生のチームである。区間賞5つは優勝した東京を上回っている。2003年の19回大会以来の2位である。もうひとり決め手のあるランナーがおれば、東京と最後まではげしく競りあっていただろう。
 3位には地元の福島が千葉とのマッチアップを制してとびこんできた。2006年以来の表彰台である。
 ほかで目立ったところでは、6位の岩手は初入賞、新潟が8位と久しぶりの入賞を果たした。
 2位の宮城、3位の福島と東北勢力が2チームも表彰台と大健闘、さらに岩手が6位に入賞するなど、奇しくも東北勢の健闘が顕著な大会となり、本大会の開催趣旨にかなったものとなった。


◇ 日時 2023年 11月 12日(日)12時03分スタート
◇ コース:誠電社WINDYスタジアム~国道4号~国道115号~フルーツライン折返し日本陸連公認「FTVふくしま」マラソンコース 9区間 42.195km
◇ 天候:出発時 くもり 気温08.60℃ 湿度65% 風:北東0.5m(12:00)
◇ 東京(小川陽香、山崎空、鈴木美海、一兜咲子、白井瑠衣、位田美優、野口麻衣子、根本心海、増渕祐香
公式サイト: 
総合成績

 

 

 

 

 

 駒澤大学が4大会連続16回目の制覇
    第1区から他チームに追わせず圧勝

 

 駒澤大学は、留学生をひとり入れれば、全日本実業団駅伝でも優勝できる……。
 本戦をたたかった青山学院大学の監督・原晋さんが、大会終了後に口にした放言である。どうやら、戦うまえからギブアップの態で、運営管理車のなかでは、落ち着いて弁当を食っていたとか……。
 出雲につづいて、1区からトップを奪い、あとはもう後続に影さえ踏ませない。おいでおいての圧勝だった。各区間のランナーはいずれも前半は抑えて入り、後半にスピードアップして振り切る。まさに王者のレースぶりだった。
 駒澤大の総監督・大八木弘明さんは、MVPに2区を走った佐藤圭汰をあげた。たしかに区間新記録でレースの流れを決定づけたのはこの佐藤だが、勝負を決めたのは、3区の篠原倖太郎である。区間賞は逃したが、篠原が後続を1分もちぎって、独走態勢をつくったのである。あえて総監督がMVVPにしなかったのは箱根があるからだろう。こんなもので満足してもらってはこまる……。箱根で区間賞をとって勝負を決める働きを、この篠原にもとめているとみた。おそらく篠原は勝負どころの区間をまかされうことだろう。
 かくして本レースは前半にして、駒澤大がひとりわが道をゆき、もっぱらの興味は2位争い、シード権争いにしぼられてしまったのである。

第1区(9.5km)
 駒澤大にどのように挑むか。第1区はそんな各チームの思惑が見え隠れする注目の区間であった。青学の原監督が言うように、1区で駒澤にゆかせてしまえば、あとは「行け行けドンドン」になってしまう。ゆえに國學院大をのぞいて、多くのチームが前半重視のオーダーでのぞんできた。
 レースは中央大の吉居駿恭が先頭集団引っ張るかたちで進んだ。むろん吉井の後には青山学院大の若林宏樹、駒澤大の赤津勇進もつけている。1km=2:45とハイペースである。3km通過は8:35、しかしこのあたりからペースは落ち着いてくる。
 駒澤大にケンカを売ったのは青山学院大、4.3kmの登り坂にさしかかったところで、若林宏樹がいかにも坂道巧者らしく集団からするすると飛び出した。みるみるその差はひらいて独り旅となる。青山学院大の原監督は名古屋決戦がポイントと言っていたが、若林のしかけは予定の行動だったのだろう。
 5km通過は14:22、と区間新ペースである。6km、7kmをすぎても12~15秒の差は詰まらない。第2集団がようやく腰を上げて、若林を追う始めたのは8kmをすぎてからである。吉居のほか、駒澤大の赤津勇進、早稲田大の間瀬田純平などが追い始める、8.5kmあたりから若林の走りはさすがに苦しくなり、その差は詰まりはじめる。間瀬田、赤津,吉居のほか、創価大の織橋巧、大東文化大の佐竹勇樹らもやってくる。
 9kmをすぎて間瀬田がスパート、若林を一気にのみこんで抜き去っていった。ラストは赤津とのスプリント勝負になる。1区の競り合いを制したのは赤津で、出雲に続いてまたしても駒澤大がトップ通過を果たした。
 1区を終わってトップは駒澤大、1秒遅れで早稲田大、3位は中央大で3秒差、4位は創価大で6秒差、5位は大東文化大でで7秒差、6位は國學院大で7秒差、7位は東京国際大で8秒差、8位は青山学院大で8秒差とつづき、順天堂大は23秒遅れの13位、國學院大は27秒遅れの14位、城西大は50秒遅れの18位に甘んじた。

第2区(11.1km)
 エースが集まるこの区間、駒澤大の佐藤圭汰はぶっとばして、3km通過を8分10秒とハイペース、これに早稲田大・山口智規もついて行く。
 後ろは中央大、國學院大、東京国際大、創価大、大東文化大、青山学院大とつづき、順位争いははげしくなる。後方では東京農業大の1年生・前田和摩が3km通過8:17と快調にとばして、3人抜きで、7位にあがってくる。
 佐藤の5km通過は13:48、区間新ペースである。このあたりから山口はひきはなされてゆき、佐藤のひとりたびとなってゆく。2位の早稲田から17秒遅れて、東京国際大、青山学院大、中央大、帝京大が第2集団をなして追っていた。青山学院大の黒田朝日が快調に追っている。
 後続では7.5kmをすぎたあたりで順天堂大の三浦龍司が10位まで浮上してきた。8kmをすぎても佐藤は快調にとばしてトップを堅持、うしろは順位あらそいが激しくなり、9km手前になると青学の黒田、東京国際大のアモス・ベットが2位の早稲田をとらえた。その後ろからは東京農大の前田がやってきて、9.4kmあたりで中央大の中野翔太、帝京大の山中博生をとらえて、一気に5位までやってくる。
 駒澤大の佐藤はそのまま押し切って区間新記録、駒澤大の4連覇への足がかりをしっかり築いた。区間新といえば8位から2位まで順位をあげた青学の黒田、10位から4位まで押し上げた東京農大の前田も区間新をマークした。
 2区を終わってトップは駒澤大、2位は青山学院大で16秒差、3位は早稲田大で20秒差、4位は東京農大で30秒差、5位は中央大で34秒差、6位は東京国際大で34秒差、7位は帝京大で42秒差、8位は順天堂大で1分26秒差となり、國學院大は1分28秒遅れの10位、創価大は1分44秒遅れの11位、城西大は2分07秒遅れの13位と出遅れた。

第3区(11.9km)
 駒澤大の篠原倖太朗は落ち着いてはいった。前半は抑えて、後半ペースをあげるという作戦か。後ろでは早稲田の石塚陽士の追い上げが急で、2位の青山学院大の佐藤一世をとらえて、篠原の差をつめはじめる。
 3位争いがはげしくなり、中央大の吉居大和が4kmで青学の佐藤をとらえて、後続もやってきて激しくなる。
  駒澤・篠原の5kmの通過14:01、このあたりから石塚との差は20秒となり、少しづつひろがってゆく。
 3位争いははげしくなり、6.5kmでは東京国際大・佐藤榛紀、青山学院大・佐藤一世、東京農業大・原田洋輔、中央大・吉井大和が集団をなし、8秒遅れで帝京大・柴戸遼太が」つづくというありさまであった。
 7.5kmでは佐藤と石塚の差は36秒とひらき、駒澤の作戦がまっまとはまったの感あり、3位集団との差は55秒となっていた。
 10km手前になると3位集団から佐藤一世(4年)と東京国際大の佐藤榛紀が抜け出してきて2位の早大の石塚を追い始めた。
 後続の熾烈な争いを尻目に篠原はゆうゆうと逃げてタスキ渡し、2位には青学の佐藤が石塚とのスプリント勝負を制してとびこんだ。
 トップは駒澤大、2位は青山学院大で1分差、3位は早稲田大で1分01秒差、4位は東京国際大で1分10秒差、5位は帝京大で1分19秒差、6位は東農大で1分23秒差、7位は中央大で1分28秒差、8位は城西大で1分48秒差。区間賞は順位を5つ押し上げた城西大のヴィクター・キムタイが獲得した。

第4区(11.8km)
 1分の貯金をもらった駒澤大の赤星雄斗はゆうゆうトップをゆく。後ろは早大の工藤慎作と青学大の小原響がが並んで赤星を追ってゆく。そのうしろは帝京大、東京国際大、東農大、中大が4位集団を形成していた。
 赤星の5kmの通過は14:27秒、後ろは誰もやってこない。
 後続は8位発進の城西大の斎藤将也が猛然と追い上げてきて、7km手前では6位まで浮上、さらに前を追い始める。
 7kmすぎになると中央大の溜池一太が工藤と小原を抜いて一気に2位までやってきた。さらに7.6kmになると、斎藤が工藤を抜いて4位までやってくる。なおも斎藤の勢いはとまらず、9kmでは小原もとらえて5人抜きで3位まであがってくる。そして10kmでは溜池もh抜いて2位までやってきたのである。
 駒澤大のゆうゆうトップはゆるがず、さらに後続との差をひろげた。2位は城西大で1分22秒差、3位は中央大で1分34秒差、4位は青山学院大で1分39秒差、5位は東京農大で1分56秒差、6位は國學院大で1分57秒差、7位は東京国際大で2分06秒差、8位は早稲田大で2分11秒差となっていた。区間賞は城西大を6人抜きで2位まで押し上げた斎藤将也である。

第5区(12.4km)
 この区間にはいると気温が20℃を越えて、ランナーにとっては過酷な条件となってしまう。
 駒澤大の伊藤蒼唯はやはり前半を抑えて王者の走り。城西大の野村颯斗が追い、後方では中央大の本間颯と青山学院大の山内健登が3位争い、4.6kmで山内が野村をとらえた。後方からは14位まで順位を落としていた創価大が、吉田響の快走で順位をあげてくる。
 駒澤の伊藤は2位以下をさらに引き離して、独りわが道をゆくというありさま。追ってきたのは山内だが、もはや背中すらみえなかっただろう。
 10km地点では3位は中央大、4位は國學院大、以下、城西、東農大とつづいていたが、シード権争いは熾烈になってくる。
 かくしてトップは駒澤大学、2位は青山学院大で青山学院大で1分55秒差、3位は國學院大で2分09秒差、4位は中央大で2分16秒差、5位は城西大で2分33秒、6位は東京国際大で3分25秒差、7位は早稲田大で4分04秒差、8位は大東文化大で4分06秒差、ここまでがシード圏内。8位にわずか1秒差で9位は創価大、8位に14秒差で10位に東京農業大。7位・早稲田大から10位・東京農業大まではわずか16秒差以内という大混戦になってきた。なお区間賞は14位から9位まで順位を押し上げた創価大の吉田響が獲得した。
 なお5区終了時点で、関東勢以外では16位の大阪経済大がトップ、つづいて17位には立命館大、18位に関西大となっていた。大阪経済大は15位の国士舘大に1分25秒差。オープン参加の日本学連選抜は13位というポジションだった。

第6区(12.8km)
 この区間にはいって、さらに気温は上昇して、11月だとうのに23℃をこえ、選手の体感温度はさらに上回っていただろう。
 暑さをものともせずに大会新がかかっている駒澤の安原太陽は果敢に攻めた。後続との差はさらにひろがってゆく。
 6kmすぎで2位の青学・荒巻朋熙との差は2分04秒、3位は國學院大の嘉数純平で2分32秒差、ならぶようにして4位は中央大の吉中祐太とつづき、5位には2分54秒差で城西大の桜井優がつづいていた。後方ではワンジルの大東文化大は7位までやってきた。
 シード権争いは早稲田大と創価大が並走で、しのぎをけずっていたが、9kmすぎて早稲田大がふりきった。
 10kmすぎになっても安原の走りは衰えることなく、荒巻が必死に追うも、その差はつまらない。その後ろでは中央大の吉中と國學院の嘉数が激しく競っていた。後ろでは大東文化大ののワンジルが東京国際大の生田琉海を抜き6位浮上してきた。
 かくして6区を終わってトップの駒澤大はゆるがず、安原太陽は区間賞。2位は青山学院大で2分21秒差、3位は中央大で2分58秒差、4位は國學院大で3分04秒差、5位は城西大で4分02秒差、6位は大東文化大で4分29秒差、7位は東京国際大で4分31秒差、8位は早稲田大で5分41秒差であった。9位以下は、シード圏内に44秒差の帝京大、1分03秒差の東海大、1分09秒差の創価大、1分12秒差の東京農業大 2分36秒差の東洋大、2分57秒差の順天堂大とつづいていた。


第7区(17.6km)
 12時ごろの松阪市は気温23.3度、湿度65%と11月とは思えない暑さのなか、鈴木芽吹は田沢簾の記録更新をねらってか、果敢に攻めた。積極的な仕掛けで、なんと5km=14:01である。
 ずっと後方では創価大のスティーブン・ムチーニが追い上げて開始、3kmすぎて帝京大・日高拓夢とらえ9位に浮上してくる。
 國學院大の平林清澄もハイピッチで追い上げ、3km=8:27という入り、4kmでは前をゆく中央大の湯浅仁に追いついて並走しながら、2位の青山学院大の太田蒼生を追い始める。
 10km地点ではトップ駒澤大と2位青山諾院大との差は2分45秒、さすがの芽吹も暑さでへばってきたようす。並走する国学院大と中央大は3分25秒差。シード権争い、8位早大と9位創価大の差が36秒に縮まっていた。
 鈴木は区間記録はならなかったが、しっかり逃げ切った。2位は青山学院大で2分49秒差、3位はラストのスプリント勝負で中央大、2位の青学に8秒差に迫った。そこから1秒差で4位は国学院大、5位は大東文化大、6位は城西大とつづき7位の東京国際大と8位の早稲田大は同着、9位の創価大とはわずか4秒、最終区のシード権争いは混沌としてきた。
 なおこの区の区間賞は鈴木芽吹ではなく終始、中央大と競り合っていた國學院大の平林 清澄であった。

第8区(19.7km)
 トップをゆく駒澤大のアンカーは山川 拓馬は安定した走りでっもう後続は離れる一方になった。
 注目はもっぱら青山学院大、國學院大、中央大との2位争い、さらには東京国際大、早稲田大、創価大によるシード権争いであった。
 シード権争いで主導権をにぎったのは創価大の吉田凌だった。2.8kmで吉田は東京国際大の川内琉生とともにペースアップ、早稲田大の伊福陽太を置き去りにしていた。創価大は一気に7位まで浮上した。
 トップの山川はまったく安定した走りで独走、8kmすぎでは2位の青山学院大の田中悠登と3位グループの中央大の阿部陽樹、國學院大の伊地知賢造との差は13~15秒、そこから詰まるようで詰まってこない。
 シード権争いは8位東京国際大と9位早大の差は53秒とひろがり、早稲田大はシード落ちのピンチとなる。
 熾烈をきわめたのは2位争いである。渡会橋では青学と3位集団との差は8秒となり、もはや2位集団になるのも時間の問題かとお思いきや、その差は詰まらないのである。11kmああたりから14kmまで、3秒の差がつまらなかった。田中がもちこたえていたのである。阿部と伊地知がようやく田中に追いついてのは15kmすぎだった。そこから激しい三つ巴の2位位争いとなる。
 17.5kmで阿部がしかけるも、伊地知と田中は離れない。18.7kmでこんどは伊地知がしかけたが、田中がついてゆく。ふたりのマッチアップとなったが、ゴール前で青学の田中が競り勝った。
 駒澤の山川はそれより5分前に2度目の4連覇、16回目制覇のゴールテープを笑顔でとびこんでいた。山川は堂々の区間賞である。

 駒澤大は危なげない戦いぶりだった。2度目の4連覇、16度目の制覇、次は2年連続の学生駅伝3冠という未踏の金字塔に挑む。
 8区のうち半分の4区間で区間1位、のこりの4区もすべて3位以内で、きわめて安定しており、まったくつけ入る余地がない。前派のさえて、後半になってペースアップし、相手を突き放す。王者の駅伝をみせつけられた。分厚い戦力をもっており、箱根も駒澤の優勝はゆるがないだろう。
 駒澤1強……。
 今シーズンの学生駅伝はそんなイメージである。いまや他の大学では、とても太刀打ちできそうにない。
 2位には青山学院大がとびこんできた。前半に勝負をかけ、駒澤大に果敢に挑んできたのはこの青学だけである。その勇気ある戦いぶりを讃えておきたい。区間賞こそないが、全員が堅実に自分の役割を果たした。長い距離になれば、さらに力が出るだろうから、箱根の戦いぶりを注目したい。
 3位の國學院大も持てる力を発揮したといえる。このチームも距離が長くなれば、さらに上積みがみこめるだけに、期待したいものである。
 4位の中央大、さらに5位の城西大、6位の創価大も地力がついてきた感があり、駒澤包囲網をしいて、箱根を面白くしてほい。
 期待外れは早稲田大学か。前半は好勝負していたが、後半になって、大きくくずれたのはどういうことなのだろう。この数年、どうもちぐはぐな戦いぶりが目立つ。なんとか立て直して、箱根のシード権だけは死守してほしいものである。


◇ 日時 2023年 11月5日(日)午前8時10分スタート 
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km 
◇ 天候:晴れ  気温16.9℃ 湿度85% 風:北東:1.9m(名古屋 8:00) 
◇ 駒澤大学(赤津勇進、佐藤圭汰、篠原倖太郎、赤星雄斗、伊藤蒼唯、安原太陽、鈴木 芽吹、山川拓馬)
総合成績
公式サイト: 
tv asahi:h
 

 

 

  名城大が史上初の7連覇を達成
   大東文化大、立命館大、城西大、日本体育大……

 

 名城大は今シーズンも強かった。
 今回はコースも一部変更され、例年になく上位争いはきびしくなるという下馬評もあったが、終わってみれば名城大の横綱相撲だった。前半はがっちりうけとめて、中盤から後半にかけて突っ放した。
 メディアの下馬評では大東文化大と日本体育大の評判がよかったが、結果は優勝争にも絡んでこれなかった。優勝争いに絡んできたのは立命館大であった。ところが下馬評ではどのメディアも、かつて4連覇したこともある立命館について、ほとんど無視していた。駅伝というものを知らなさすぎる。おそらく予備取材すらぜんぜんしていないのだろう。最近のメディアは自分の眼でみたり、足でかせいだ定かな情報をまったくなおざりにしているというほかない。
 7連覇をもくろむ名城大に喧嘩をしかけ、本気で勝ちに来たのは唯一、立命館大であった。もうひとつ挙げるならば、1区に準エースを配してきた日本体育大だろう。
 立命館は1区にエースの村松灯を器用、スタートからレースを引っ張り、終始レースを支配するという走りで、真向から勝負にきていた。エースをあえて名城の米澤にぶつけてきたのである。大東文化大は1年生を配して前半は辛抱の作戦に出たが、もう、この時点で優勝はあきらめている。米澤、村松にはじきとばされてしまった。
 かくして優勝争いは名城と立命館のマッチアップで中盤まですすんだ。だが、名城はさすが6連覇の王者である。駅伝というものの勝ち方を知っている。各区間のランナーがそれぞれ、自分の役どころを知っていた。3区でトップに立つと、あとはどのチームにも追わせなかった。

第1区(6.6km)
 スタートしてトラックの周回から立命館大の村松灯が先頭に立って果敢に集団をひっぱった。日本体育大も1区勝負にきていたが、頼みの保坂晴子がなんとトラック周回中に転倒するというアクシデント。保坂はすぐに立て直し、影響はなさそうであったが、勢いをそがれたことは事実であろう。
 1kmの通過は3:14とまずまずのペース。村松を先頭に名城の米澤奈々香、大東文化大の吉井優唯、日本体育大の保坂晴子、城西大の白木ひなの、関西大の前田彩花らがつづく。 2km通過は6:42とややスローの展開、まだ26チームがひとかたまりでつづいている。
 ようやく3kmになって3:11秒とペースが上がり、集団はすこしづつばらけはじまる。
 4kmもいぜん村松が先頭でレースを支配、集団はばらけて縦長になり関西外大、札幌国際大などが遅れ始めた。
 なぜ自分が1区に起用されたのか知っているというべきか。4.5kmになって村松がしかけた。それに米澤がつづき、前田、吉井、保坂はじりじりと遅れはじまた。予想通り、村松と米澤が抜け出してマッチアップ、エンジ対決となった。後ろは距離とともにすこしずつ置き去りにされていった。
 エンジ対決に決着がついたのは、残り300mの地点、ここれ村松がスパート、米澤をふりきった。
 トップ通過は立命館大、2位は名城大で3秒差、3位は関西大で16秒差、4位は日本体育大で16秒差、5位は拓殖大で30秒差、6位は城西大で30秒差、7位は東京農大で35秒差、8位は中央大で37秒差、大東文化大は38秒遅れの9位、上位を争うとみられていた大阪学院大は1分08秒とトップから大きく出遅れて19位だった。

第2区(4.0km)
 最短距離のこの区間、3秒差でトップをゆく立命館の太田咲雪を名城大の力丸楓が追ってくる。1kmのはいりは3:02……。
 2.1kmで力丸が太田に追いつき、しばらく並走していたが、力丸がとびだしてトップに立った。太田もそれほど遅れることなく追ってゆく。後ろでは3km手前で、拓殖大の岩崎麻知子が関西大の田代なのはを抜いて3位までやってきた。
 2区で早くも名城が独走態勢にはいるのかと思いきや、残り300mになって、太田が猛然とスパート、力丸をかわして中継所にとびこんだ。太田も区間賞、立命館は気合がはいっている。村松の勢いをそのまま引き継いで、1区、2区と連続区間賞である。
 かくしてトップは立命館大、2位は名城大で6秒遅れ、3位は拓殖大で38秒遅れ、4位は日本体育大で47秒遅れ、5位は関西大で49秒遅れ、6位は大東文化大で57秒遅れ、7位は中央大で66秒遅れ、8位は城西大で76秒遅れでつづいていた。

第3区(5.8km)
 トップをゆくのは立命館大の荒田悠良、名城大の石松愛朱加が追ってくる。石松は1kmで荒田に追いついて並走状態となる。うしろでは日本体育大の嶋田桃子が拓殖大の古澤日菜向をとらえて3位にやってくる。
 荒田と石松のマッチアップはつづき、1,8kmあたりからは石松が前に出て主導権を握るも、3,5kmになって石松がスパートして、とうとう名城がトップを奪う。その後はじりじりとその差がひろがっていった。
 かくして石松の区間賞で名城大がトップ、2位は立命館で31秒差、3位は日本体育大で55秒差、4位は関西大で57秒差、6位は城西大で1分2秒差、7位は大東文化大で1分26秒差、8位は大阪学院大で1分37秒差であった。

第4区(4.8km)
 この区はいわばつなぎの区間、それぞれ良いポジションを保って5区のエース区間にタスキをつなぎたい。
 名城大の薮谷奈瑠(1年)が首位で逃げにかかる。31秒の貯金があれば、ほとんど独走状態である。追う立命館大は中地こころ、背中はみえないがひたすら追ってゆく。つなぎの区間ながら、ここで名城大との差がひろがれば、勝負は決してしまう。
 後ろからは7位発進の大東文化大・蔦野萌々香も遅ればせながら、順位をあげてきて、5区のサラ・ワンジルに望みを託そうとする。それぞれ思惑めぐる区間となった。
 向かい風の強いこの区間、ピッチ走法の中地こころは駅伝巧者らしくうまく走りをまとめた。中盤までは萩谷に先行を許したが、じりじりとその差を詰めてきた。中継点では萩谷の後ろに中地の姿がくっきりとみえた。名城大はトップを堅守したが、立命館大はまだ死んではいなかった。中地はなんと区間賞、名城との差を13秒まで詰めた。
 4区を終わって、トップは名城大、2位は立命館大でその差は13秒、3位には城西大が来て、1分09秒差、4位は大東文化大で1分13秒差、以下は日本体育大、拓殖大、関西大、大阪学院大とつづいていた。

第5区(9.2km)
 最長距離のこの区間、トップをゆく名城大・原田紗希にすれば、立命館が追ってきても、大東文化大のワンジルがくるだろうか、とにかくトップでアンカーの谷本七星にタスキをつなぎさえすれば、それでいい。あとはエースの谷本がなんとかしてくれる。そんな心境だったろう。
 原田はしっかり先頭でひたすら逃げた。追ってくる立命館大の福永楓花がみえるが、その差は詰まらない。後ろからは大東のワンジルがハイペースで追ってくる。3kmでワンジルは3位までやってくる。後ろからは城西大の高橋葵と大阪学院大の永長里穂がならんでやってくる
 5kmでは原田と福永の差は33秒と開き気味、後ろからワンジルがやってきて、福永と14秒差に迫っていた。ワンジルもそこからあまりペースがあがらず、ようやく6kmで福永をとらえて2位に浮上したが、そこからそれほどペースがあがらなかった。
 7km、トップの原田は苦しげな走りになるが、ワンジルには追い抜くほどの罰発力はない。その後ろでは福永が等間隔でくらいついている。あとはガマン比べのような様相になったが、原田は粘りきって谷本にタスキをつないだ。
 5区を終わってトップは名城大、2位は大東文化大で15秒差、3位は立命館で30秒差、4位は日本体育大で50秒差、5位は城西大で1分13秒差、6位は関西大で1分56秒差、7位は大阪学院大で2分差、8位には東北福祉大が浮上、3分09秒差でつづいていた。

第6区(7.6km)
 今回から900mほど距離延長になった最終区、奇しくも名城大、大東文化大、立命館大が30秒以内につけるという三つ巴の様相となった。
 名城大の谷本七星は落ち着いた入りで、ゆうゆうトップを独走する。後ろからは3位発進のう立命館大・小林朝が1.3kmあたりで大東文化大の野田真理耶を抜き去るも、野田がけんめいにくらいついて並走状態になる。ともに谷本を追い始めるが、その差はつまらない。
 5kmは谷本が悠々のトップ、2位集団との差は31秒差、黒ぶち眼鏡の谷本の顔から、ほのかに笑みがこぼれている。走るのが楽しくてたまらないという表情である。
 はるか後方ではシード権争いが熾烈になっていた。5区で8位浮上の東北福祉大を追って、東農大と拓殖大がしのぎを削っていた。
 谷本はそのまま後ろをぶっちぎって競技場へ、ゆうゆう7連覇のテープをきった。2位争いは最後まで熾烈をきわめ、トラック勝負の直線で、最後は野田が胸一つだけ先んじた。
 名城大は史上初の7連覇。区間賞は2つながら、ランナー全員がそれぞれじぶんの役どころをきちんとわきまえていた。図抜けた存在はいないが、駅伝の勝負の勘どころをよくわきまえている。タイム最上の圧勝というべきであろう。
 来年もこのメンバーのうち5人が残るとすれば、まだまだ名城の時代はつづくのだろう。
 2位には大東文化大がやってきた。ひとえに留学生ワンジルの快走がもたらしたといえる。メンバのうち5人が1年生で全員が次回ものこるとすれば、ここから相当の上積みがみこめるだろう。
 3位の立命館大は、最初から最後まで優勝争いにからんでいた。最後は3位になったものの。その戦いぶりはみごとだった。名城を上回る3つの区間賞である。チーム力はじわーっと上昇しており、5人のメンバーが次回にも残るので、またまた三つ巴の戦いになりそうである。ベストメンバーが組めれば、名城と好勝負かもしれない。

 4位の城西大は大健闘であろう。つねにシード権圏内をキープ、後半の距離の長い区間でも上位をキープした。このチームも全員が次回にも残るので期待できそうである。
 5位の日本体育大は候補の一角で、数字の上からは優勝候補、事実、各ランナーは堅実に走っているが、今回は流れに乗れなかったようである。
 8位にとびこんでシード権をもぎとったのは東北福祉大、5区、6区での粘りはみごとだった。
 さて7連覇を達成した名城大、まだまだ王座はゆるがないようだが、そろそろ1強といわれる時代は終わるのではないか。次回あたりは、もっとくわどい勝負になるように思われるのだが、果たして……。


◇ 日時:2022年10月30日(日)午後0時10分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース:仙台市陸上競技場(スタート)→仙台市役所前市民広場(フィニッシュ)6区間計38.0㎞。
◇ 天気:くもり 気温:18.4℃  湿度:57% 風:北北西6.7m
◇ 名城大学(米澤奈々香、力丸楓、石松愛朱加、萩谷奈瑠、原田紗希、谷本七星)
詳しい結果:
公式サイト
NTV