名城大が史上初の7連覇を達成
   大東文化大、立命館大、城西大、日本体育大……

 

 名城大は今シーズンも強かった。
 今回はコースも一部変更され、例年になく上位争いはきびしくなるという下馬評もあったが、終わってみれば名城大の横綱相撲だった。前半はがっちりうけとめて、中盤から後半にかけて突っ放した。
 メディアの下馬評では大東文化大と日本体育大の評判がよかったが、結果は優勝争にも絡んでこれなかった。優勝争いに絡んできたのは立命館大であった。ところが下馬評ではどのメディアも、かつて4連覇したこともある立命館について、ほとんど無視していた。駅伝というものを知らなさすぎる。おそらく予備取材すらぜんぜんしていないのだろう。最近のメディアは自分の眼でみたり、足でかせいだ定かな情報をまったくなおざりにしているというほかない。
 7連覇をもくろむ名城大に喧嘩をしかけ、本気で勝ちに来たのは唯一、立命館大であった。もうひとつ挙げるならば、1区に準エースを配してきた日本体育大だろう。
 立命館は1区にエースの村松灯を器用、スタートからレースを引っ張り、終始レースを支配するという走りで、真向から勝負にきていた。エースをあえて名城の米澤にぶつけてきたのである。大東文化大は1年生を配して前半は辛抱の作戦に出たが、もう、この時点で優勝はあきらめている。米澤、村松にはじきとばされてしまった。
 かくして優勝争いは名城と立命館のマッチアップで中盤まですすんだ。だが、名城はさすが6連覇の王者である。駅伝というものの勝ち方を知っている。各区間のランナーがそれぞれ、自分の役どころを知っていた。3区でトップに立つと、あとはどのチームにも追わせなかった。

第1区(6.6km)
 スタートしてトラックの周回から立命館大の村松灯が先頭に立って果敢に集団をひっぱった。日本体育大も1区勝負にきていたが、頼みの保坂晴子がなんとトラック周回中に転倒するというアクシデント。保坂はすぐに立て直し、影響はなさそうであったが、勢いをそがれたことは事実であろう。
 1kmの通過は3:14とまずまずのペース。村松を先頭に名城の米澤奈々香、大東文化大の吉井優唯、日本体育大の保坂晴子、城西大の白木ひなの、関西大の前田彩花らがつづく。 2km通過は6:42とややスローの展開、まだ26チームがひとかたまりでつづいている。
 ようやく3kmになって3:11秒とペースが上がり、集団はすこしづつばらけはじまる。
 4kmもいぜん村松が先頭でレースを支配、集団はばらけて縦長になり関西外大、札幌国際大などが遅れ始めた。
 なぜ自分が1区に起用されたのか知っているというべきか。4.5kmになって村松がしかけた。それに米澤がつづき、前田、吉井、保坂はじりじりと遅れはじまた。予想通り、村松と米澤が抜け出してマッチアップ、エンジ対決となった。後ろは距離とともにすこしずつ置き去りにされていった。
 エンジ対決に決着がついたのは、残り300mの地点、ここれ村松がスパート、米澤をふりきった。
 トップ通過は立命館大、2位は名城大で3秒差、3位は関西大で16秒差、4位は日本体育大で16秒差、5位は拓殖大で30秒差、6位は城西大で30秒差、7位は東京農大で35秒差、8位は中央大で37秒差、大東文化大は38秒遅れの9位、上位を争うとみられていた大阪学院大は1分08秒とトップから大きく出遅れて19位だった。

第2区(4.0km)
 最短距離のこの区間、3秒差でトップをゆく立命館の太田咲雪を名城大の力丸楓が追ってくる。1kmのはいりは3:02……。
 2.1kmで力丸が太田に追いつき、しばらく並走していたが、力丸がとびだしてトップに立った。太田もそれほど遅れることなく追ってゆく。後ろでは3km手前で、拓殖大の岩崎麻知子が関西大の田代なのはを抜いて3位までやってきた。
 2区で早くも名城が独走態勢にはいるのかと思いきや、残り300mになって、太田が猛然とスパート、力丸をかわして中継所にとびこんだ。太田も区間賞、立命館は気合がはいっている。村松の勢いをそのまま引き継いで、1区、2区と連続区間賞である。
 かくしてトップは立命館大、2位は名城大で6秒遅れ、3位は拓殖大で38秒遅れ、4位は日本体育大で47秒遅れ、5位は関西大で49秒遅れ、6位は大東文化大で57秒遅れ、7位は中央大で66秒遅れ、8位は城西大で76秒遅れでつづいていた。

第3区(5.8km)
 トップをゆくのは立命館大の荒田悠良、名城大の石松愛朱加が追ってくる。石松は1kmで荒田に追いついて並走状態となる。うしろでは日本体育大の嶋田桃子が拓殖大の古澤日菜向をとらえて3位にやってくる。
 荒田と石松のマッチアップはつづき、1,8kmあたりからは石松が前に出て主導権を握るも、3,5kmになって石松がスパートして、とうとう名城がトップを奪う。その後はじりじりとその差がひろがっていった。
 かくして石松の区間賞で名城大がトップ、2位は立命館で31秒差、3位は日本体育大で55秒差、4位は関西大で57秒差、6位は城西大で1分2秒差、7位は大東文化大で1分26秒差、8位は大阪学院大で1分37秒差であった。

第4区(4.8km)
 この区はいわばつなぎの区間、それぞれ良いポジションを保って5区のエース区間にタスキをつなぎたい。
 名城大の薮谷奈瑠(1年)が首位で逃げにかかる。31秒の貯金があれば、ほとんど独走状態である。追う立命館大は中地こころ、背中はみえないがひたすら追ってゆく。つなぎの区間ながら、ここで名城大との差がひろがれば、勝負は決してしまう。
 後ろからは7位発進の大東文化大・蔦野萌々香も遅ればせながら、順位をあげてきて、5区のサラ・ワンジルに望みを託そうとする。それぞれ思惑めぐる区間となった。
 向かい風の強いこの区間、ピッチ走法の中地こころは駅伝巧者らしくうまく走りをまとめた。中盤までは萩谷に先行を許したが、じりじりとその差を詰めてきた。中継点では萩谷の後ろに中地の姿がくっきりとみえた。名城大はトップを堅守したが、立命館大はまだ死んではいなかった。中地はなんと区間賞、名城との差を13秒まで詰めた。
 4区を終わって、トップは名城大、2位は立命館大でその差は13秒、3位には城西大が来て、1分09秒差、4位は大東文化大で1分13秒差、以下は日本体育大、拓殖大、関西大、大阪学院大とつづいていた。

第5区(9.2km)
 最長距離のこの区間、トップをゆく名城大・原田紗希にすれば、立命館が追ってきても、大東文化大のワンジルがくるだろうか、とにかくトップでアンカーの谷本七星にタスキをつなぎさえすれば、それでいい。あとはエースの谷本がなんとかしてくれる。そんな心境だったろう。
 原田はしっかり先頭でひたすら逃げた。追ってくる立命館大の福永楓花がみえるが、その差は詰まらない。後ろからは大東のワンジルがハイペースで追ってくる。3kmでワンジルは3位までやってくる。後ろからは城西大の高橋葵と大阪学院大の永長里穂がならんでやってくる
 5kmでは原田と福永の差は33秒と開き気味、後ろからワンジルがやってきて、福永と14秒差に迫っていた。ワンジルもそこからあまりペースがあがらず、ようやく6kmで福永をとらえて2位に浮上したが、そこからそれほどペースがあがらなかった。
 7km、トップの原田は苦しげな走りになるが、ワンジルには追い抜くほどの罰発力はない。その後ろでは福永が等間隔でくらいついている。あとはガマン比べのような様相になったが、原田は粘りきって谷本にタスキをつないだ。
 5区を終わってトップは名城大、2位は大東文化大で15秒差、3位は立命館で30秒差、4位は日本体育大で50秒差、5位は城西大で1分13秒差、6位は関西大で1分56秒差、7位は大阪学院大で2分差、8位には東北福祉大が浮上、3分09秒差でつづいていた。

第6区(7.6km)
 今回から900mほど距離延長になった最終区、奇しくも名城大、大東文化大、立命館大が30秒以内につけるという三つ巴の様相となった。
 名城大の谷本七星は落ち着いた入りで、ゆうゆうトップを独走する。後ろからは3位発進のう立命館大・小林朝が1.3kmあたりで大東文化大の野田真理耶を抜き去るも、野田がけんめいにくらいついて並走状態になる。ともに谷本を追い始めるが、その差はつまらない。
 5kmは谷本が悠々のトップ、2位集団との差は31秒差、黒ぶち眼鏡の谷本の顔から、ほのかに笑みがこぼれている。走るのが楽しくてたまらないという表情である。
 はるか後方ではシード権争いが熾烈になっていた。5区で8位浮上の東北福祉大を追って、東農大と拓殖大がしのぎを削っていた。
 谷本はそのまま後ろをぶっちぎって競技場へ、ゆうゆう7連覇のテープをきった。2位争いは最後まで熾烈をきわめ、トラック勝負の直線で、最後は野田が胸一つだけ先んじた。
 名城大は史上初の7連覇。区間賞は2つながら、ランナー全員がそれぞれじぶんの役どころをきちんとわきまえていた。図抜けた存在はいないが、駅伝の勝負の勘どころをよくわきまえている。タイム最上の圧勝というべきであろう。
 来年もこのメンバーのうち5人が残るとすれば、まだまだ名城の時代はつづくのだろう。
 2位には大東文化大がやってきた。ひとえに留学生ワンジルの快走がもたらしたといえる。メンバのうち5人が1年生で全員が次回ものこるとすれば、ここから相当の上積みがみこめるだろう。
 3位の立命館大は、最初から最後まで優勝争いにからんでいた。最後は3位になったものの。その戦いぶりはみごとだった。名城を上回る3つの区間賞である。チーム力はじわーっと上昇しており、5人のメンバーが次回にも残るので、またまた三つ巴の戦いになりそうである。ベストメンバーが組めれば、名城と好勝負かもしれない。

 4位の城西大は大健闘であろう。つねにシード権圏内をキープ、後半の距離の長い区間でも上位をキープした。このチームも全員が次回にも残るので期待できそうである。
 5位の日本体育大は候補の一角で、数字の上からは優勝候補、事実、各ランナーは堅実に走っているが、今回は流れに乗れなかったようである。
 8位にとびこんでシード権をもぎとったのは東北福祉大、5区、6区での粘りはみごとだった。
 さて7連覇を達成した名城大、まだまだ王座はゆるがないようだが、そろそろ1強といわれる時代は終わるのではないか。次回あたりは、もっとくわどい勝負になるように思われるのだが、果たして……。


◇ 日時:2022年10月30日(日)午後0時10分スタート
◇ 場所:宮城県仙台市
◇ コース:仙台市陸上競技場(スタート)→仙台市役所前市民広場(フィニッシュ)6区間計38.0㎞。
◇ 天気:くもり 気温:18.4℃  湿度:57% 風:北北西6.7m
◇ 名城大学(米澤奈々香、力丸楓、石松愛朱加、萩谷奈瑠、原田紗希、谷本七星)
詳しい結果:
公式サイト
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