長野が通算11度目の制覇!
   大会新で史上初の4連覇達成

 

 
 長野が強かった。
 第1区から飛び出して好位につけ、中盤は少したるんだものの、後半は独走態勢にもちこんだ。
 中高生、大学一般でメンバー構成する本大会は、高校生が中軸となる。高校生の強いチームが主導権を握る。そういう意味では暮れの高校駅伝で圧勝した佐久長聖のランナーの主力をそろえてきた長野、一般のふたりも佐久長聖の卒業生だから、佐久長聖の先輩後輩がフルに働いたことになる。
 女子の場合はオール立命館宇治だったが、男子の場合はオール佐久長聖で勝ちとったといえる。
 今シーズン最後の駅伝レースであるが、実業団のランナーはニューイヤー駅伝、大学生は箱根駅伝をおえて直後のせいもあって、トップクラスは顔を見せず、オールスター駅伝というわけにはいかなかったが、それでも箱根を制した青山学院大の黒田朝日(岡山)や若林宏樹(和歌山)や田中悠登(福井)、鶴川正也(熊本)などが顔を見せた。誰しも100%のパフォーマンスをみせたわけではないが、たとえば、最終区で黒田と田中がほぼ同時にタスキをもらい、笑顔で並走する姿など、この大会でしかみられない光景であった。
第1区(7.0km)
 平和大通りの下り坂を47人のランナーはひとかたまりになって、一気に下っていった。 大集団を引っ張ったのは兵庫の新妻遼己、1kmの通過は2:47……。後ろは京都の井上 朋哉、高知の髙石樹、福島の増子陽太らがつけていた。
 2kmになると新妻と増子が並走でトップ、後ろには高石、長野の濱口大和がつづいていた。新妻と増子がひっぱる展開ですすみ、中間点は9:49、区間記録よりも1秒遅いペースで進んだ。4kmをすぎてトップ集団は10チームほどになる。
 トップ集団に変化がうまれたのは5km過ぎ、ここで長野の濱口がスパートして抜け出しを図った。反応したのは増子と、宮城の近江亮で、この3人がトップ集団を形成する。
 6kmではトップ集団と2位グループとの差は5秒、区間賞争いは3人にしぼられたが、先にしかけたのは近江、残り500メートルでスパート、だが濱口がくらいつく。熾烈なトップ争いになったが、最後に抜け出したのは4連覇をねらう長野の濱口だった。
 かくして1区を終わってトップは長野、2位は3秒遅れで宮城、3位は14秒遅れで福島、4位は21秒遅れで兵庫、5位は21秒遅れで埼玉、6位は21秒遅れで高知、7位は22秒遅れで京都、8位は25秒遅れで岩手とつづいた。候補の一角・千葉は49秒送れの19位と出遅れた。区間賞は長野の濱口大和で19分33秒だった。

第2区(3km)
 中学生区間である。
 トップでタスキをもらった長野の増田大誠は後ろをひきはなしてゆく。後ろでは1km手前で福島の伊藤瞭太が宮城の阿部陽真を交わして2位にやってきて、長野を追い始める。はるか後ろでは神奈川の稲垣翔馴が1km=2:40というハイピッチで入り、1kmすぎでは早くも6人抜きで21位にやってきた。
 福島の伊藤と長野の増田との差は2kmをすぎて少しずつ詰まり始め、残り200mでは3秒となったが、なんとか増田が逃げ切った。
 2区を終わってトップは長野と変わらず、2位は3秒差で福島、3位は13秒差で宮城、4位は13秒差で兵庫、5位は18秒差で京都、6位は23秒差で大阪、7位は24秒差で高知、8位は26秒差で広島だった。区間賞は神奈川の稲垣翔馴で8分21秒である。

第3区(8.5km)
 前半の勝負どころとなるこの区間は大学生・一般の区間である。
 タスキ渡しの後、すぐに福島の谷中晴がトップをゆく長野の吉岡大翔に追いついて並走状態にもちこんだ。後ろは宮城、兵庫が3位集団、さらにうしろから京都、大阪、広島もやってくる。
 長野の吉岡はいまひとつのびない。3.9kmで谷中がトップに立ち、吉岡をひきはなしてゆく。3位は宮城の吉居大和が8秒差で追っていたが、5kmになると大阪、熊本、佐賀、青森、埼玉がやってきての6チームが3位集団となる。
 6kmをすぎるとトップをゆく福島の谷中と長野の吉岡との差は9秒とひろがり、うしろからは3位集団が接近してくる。
 6.5kmでは追われていた長野の吉岡が3位集団にのみこまれて、2位集団となってしまう。そのなかで終始主導権をにぎっていたのは熊本の鶴川正也である。鶴川とは対照的に宮城の吉岡は失速して、ずるずると順位を落としていった。
 トップの福島の谷中は追われながらも、トップをまもって中継所へとびこんだ。
 2位は熊本で7秒差、3位は大阪で14秒差、4位は佐賀で15秒差、5位は青森で17秒差、6位は21秒差で埼玉、7位は24秒差で長野、8位は27秒差で宮城とつづいた、千葉はいぜん16位と低空飛行をつづけていていたが、長野との差は24秒であった。区間賞は群馬の塩尻和也で23分36秒である。

第4区(5km)
 トップに立った福島のこの区は栗村凌、2位の熊本との差をじりじりと広げてゆく。後ろからじりじりとやってきたのが3区で7位と沈んだ長野で、この区の走者は石川浩輝である。
 福島の栗村は快調に飛ばして、3kmでは2位の熊本の一ノ瀬來祈との差を15秒としてしまった。後ろは長野の石川が追い上げてきて、佐賀、福岡、大阪、青森と3位集団をなしていた。
 4.2kmになると、熊本の一ノ瀬に3位集団が追いついてしまう。そして残り200mで、2位集団から佐賀の石川蒼大、福岡の森本守勇、長野の石川が抜け出して中継所にとびこんでゆく。
 激しい2位争いをしり目に福島の栗村は後ろをぶっちぎってタスキを渡した。
 2位は25秒差で福岡、3位は26秒差で佐賀、4位は26秒差で長野、5位は29秒差で大阪、6位は31秒差で熊本、7位は39秒差で青森、8位は46秒差で宮城であった。区間賞は福岡の森本守勇で14分05秒だった。

第5区(8.5km)
 2位から4位まで、ほとんどダンゴ状態でタスキがわたったなかで、勢いがついたのは長野である。佐々木哲が1km手前で2位に浮上して、福島の村越柊哉を追い始めた。1.3kmになるとその差は10秒と一気にその差が詰まった。そして2kmでとらえてトップに立つと、その差をみるみるひろげていった。3位争いは福岡と佐賀がはげしく競り合っていた。
 中間点を佐々木哲は11分42秒と区間記録より19秒速いペースである。2位とは22秒、3位集団とは37秒差にひろがった。
 はるか後ろからは千葉の鈴木琉胤がやってくる。5kmでは6人抜きで11位まで上げてきた。さらに前を追ってゆく。
 トップの佐々木の勢いは止まらない。6kmをすぎるともう後ろは見えなくなった。その後ろでは6kmで福岡の松田祐真、佐賀の岩佐太陽が、落ちてきた福島の村越に追いついてしまった。そのなかでは佐賀の岩佐が6.6kmで抜け出して2位に浮上してくる。
 はるか後ろは千葉の鈴木も快走、6.5kmでは大阪、7.2kmでは宮城をとらえて6位までやってきて、さらに順位をあげていった。
 トップに佐々木は後続を大きくぶっちぎって中継所へ。23分32秒と従来の区間記録を20秒も更新した。千葉の鈴木琉胤も23分46秒、これも区間新である。
 かくして長野がここでふたたびトップに立った。2位は1分04秒差で佐賀、3位は1分19秒差で千葉、4位は1分25秒差で福岡、5位は1分28秒差で埼玉、6位は1分29秒差で福島、7位は1分38秒差で宮城、8位は1分49秒差で広島だった。

第6区(3.0km)
 中学生区間である。
 5区の佐々木の快走で独走状態になった長野は中澤侑己、昨年は2区で登場している。落ち着いた走りだが1kmは2分49秒とこれまた速い。後ろはまったく追ってこない。中澤は独り旅、2位以下が熾烈な順位争いをくりひろげるなかで快走、その差をひろげて、長野の4連覇を確実なものとした。
 はげしい2位争いのなかで抜け出したのは5位発進の埼玉・小笠原慶翔である。
 トップ長野と2位にやってきた埼玉との差は1分25秒、3位は福岡で1分28秒差、4位は千葉で1分31秒差、5位は福島で1分39秒差、以下は佐賀、宮城、兵庫、広島、京都、と、それほど差はなく、入賞争いが熾烈になってきた。区間賞は埼玉の小笠原慶翔で8分36秒である。

第7区(13.0km)
 大量リードをもらった長野の伊藤大志、あとはタスキをゴールまで運んでゆくだけ、といわんばかりに、ゆうゆうと安芸路をゆく。
 後ろから長野を追う気概を見せたのは千葉の羽生拓矢である。トップまではとどかないまでも候補の一角らしいプライドというべきか。2.2kmで2位集団に追いつくと、埼玉、福岡、千葉をしたがえて長野を追い始めたのである。
 3.5kmでは羽生がそこから抜け出して2位に浮上するも、5.2km地点では長野と千葉との差は1分28秒と、むしろひろがってしまった。その後ろは埼玉で、福岡、福島、佐賀、広島、兵庫とつづいていた。
 長野の伊藤大志は1kmを2分50秒前後のペース、だが羽生は踏んばり、7kmをすぎると、その差は少しづつ詰まり始めた。9kmではその差1分06秒、しかし長野のタイムは区間新ペースである。
 羽生はなおも伊藤を追いかけ、12kmではその差48秒となるも、残りは1kmで追撃はそこまでだった。伊藤は羽生に影を踏ませずに逃げ切り、4連覇11度目制覇のゴールに飛び込んだ。区間賞は広島の菊地駿弥で36分58秒。開催地が最後に面目をほどこした。

■■ 最終順位 ■■
(1)長 野 2時間16分55秒(新)
(2)千 葉 +44秒
(3)福 島 +1分07秒
(4)広 島 +1分17秒
(5)埼 玉 +1分25秒
(6)佐 賀 +1分30秒
(7)福 岡 +2分02秒
(8)京 都 +2分03秒

(9)大 阪 +2分06秒
(10)兵 庫 +2分10秒

 王者長野はゆるがなかった。大会新による4年連続の11度目の制覇である。区間賞は2つながら、やはり一枚抜けた存在だったようである。
 好発進しながら中盤でやや失速するも、こらは余裕というべきか。4区、5区ではまたしっかり流れを呼びもどした。どこからでもゲームチェンジできるというところが、このチームの最大の強みだろう。
 2位には最後に千葉がやってきた。候補の一角といわれながら、前半に出遅れたのが痛かった。後半猛然と追い上げたが、そのときはすでに遅かった。2位はさすがというべきだが、優勝争いをしていない2位だから、額面よりも評価をさげざるをえない。
 3位の福島は前半のレースを支配していた。最後は息切れしてしまったが、長野と優勝争いしたのはこのチームであることを銘記しておこう。価値のある3位とみておきたい。
 4位の広島は最後に菊地駿弥の快走で圏外から一気に4位まで押し上げてきた。
 6位の佐賀は中盤、上位争いにからんでいた。入賞は大健闘というべきだろう。
 5位の埼玉、7位の福岡、8位の京都、それほど目だったレースをしたわけではないが、終わってみれば、いつのまにか入賞圏内に顔を出している。地力のある証というべきだろう。

◇日時 2025年01月19日(日)12時30分スタート
◇場所 広島市
◇コース 広島・平和記念公園発着/JR前空駅東折り返し、7区間48Km
◇天候:晴れ 気温:08.8℃ 湿度:56.0% 風:北西 0.7m(スタート)
◇長野(濱口大和、増田大誠、吉岡大翔、石川浩輝、佐々木哲、中澤侑己、伊藤大志)
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総合成績

 

 

京都が3年ぶり19度目の制覇
 2区で奪首、そのまま逃げ切った

 

 

 都道府県駅伝ナンバーワンを競う本大会、駅伝シーズンの掉尾を彩るレースに今回も423人のランナーが都大路を駈けぬけた。日本代表から中学生まで分厚い世代層がタスキを繋ぐ、中・長距離界のオールスターの顔見世というべきか、お祭り駅伝である。
 前回は宮城が伏兵ぶりを発揮して優勝をさらっていったが、今年は地元の京都が勝ちにきた。2回連続で2位に甘んじているだけに、是が非でも……という意気込みはメンバ編成からも如実であった。大学女子2冠の立命館大の主力、さらに高校女子4位の立命館宇治の主力をずらりとならべてきたのである。
 あとは宮城、長野、大阪という高校駅伝の強豪、千葉、神奈川などの首都圏チームがどのようにからんでくるか。オリンピアンの田中希実を10区に配した兵庫、廣中璃梨佳の長崎も見逃せない。勝負とは別に石川の10区に登場する五島莉乃の走りも見逃せないところだった。
 チャンピオンシップのメインの大会でないだけに、近年はトップアスリートは出場を回避するケースが多いが、女子長距離界を代表するランナーというべき、彼女たちが顔を見せてくれたのは、ファンとしてまことに僥倖というべきだろう。

第1区(6.0 km)
 この季節とはいえ気温6℃という肌寒い昼下がり、47チームのランナーたちはひとかたまりになって、たけびしスタジアムを後にしていった。
 スタジアムをとびだして1kmは3:09とまずまずのペース。大分の奥本菜瑠海が集団をひっぱる恰好で五条通をゆく。2kmすぎの五条通りを左折して西大路通りにはいっても奥本が先頭、東京の小川陽香、北海道の吉田彩心が後ろにつけている。
 中間点の通過の3km通過は9分28秒。奥本がここで集団をとびだした。後ろは神奈川の信櫻空、東京の小川、高知の穂岐山芽衣、千葉の田浦英理歌、京都の中地こころがつけている。
 3.9kmになると岡山の松下菜摘がひきいる集団がトップの奥本に接近、トップ集団はひとかたまりになる。山陰線のガードをくぐったところで、岡山の松下、長野の真柴愛里、大阪の水本佳菜、京都の中地、千葉の田浦、神奈川の信櫻がひとかたまりになってトップ争いとなる。
 4.7kmになると高校生の真柴が集団をひっぱりはじめ、残り500mでは岡山が脱落、5チームのトップ争い、激しいスパート合戦となるも、残り200mで千葉の田浦がトップを奪い、そのままタスキを渡した。
 かくして1区を終わってトップは千葉、2秒遅れで2位は長野、3位は3秒遅れで神奈川、4位は3秒遅れで京都m、5位は5秒遅れで大阪、6位は10秒遅れで山梨、7位は13秒遅れで東京、8位は15秒遅れで愛知とつづいた。区間賞は千葉の田浦英理歌(積水化学)で19分17秒、昨11月のクイーンズ駅伝1区につづいての区間賞である。
 
第2区(4.0 km)
 カーブが多く、下り坂もある。短い区間だが勝負のポイントになることもある。前半の流れを決めるという意味では重要な区間である。
 トップはほとんどダンゴ状態でタスキが渡った直後、神奈川の勝呂遥香が突っ込んで入り、トップに立った。大阪の西出優月が反応してトップ争い、京都の佐藤ゆあと長野の今井玲那が3位集団をなしていた。
 ここで冷静な反応をいせたのは京都の佐藤だった。前半はじっくりとかまえて大阪と神奈川の競り合いをみつめ、中盤をすぎて、じりじりと追い上げ、2.7kmで先頭集団においついた。
 大阪、神奈川、京都の三つ巴のつばつばぜり合いがつづいたが、主導権をにぎったのは京都の佐藤、残り300mでスパートして勝呂、西出を振り切った。京都は早くも2区でトップに立ってしまったのである。
 2位は3秒遅れで大阪、3位は4秒遅れで神奈川、4位は15秒遅れで長野、5位は19秒遅れで北海道、6位は24秒遅れで千葉、7位は25秒遅れで東京、8位は25秒遅れで鳥取とつづいた。区間賞は北海道の宇都宮桃奈(札幌山の手高)で12分33秒であった。

3区(3.0 km)
 中学生区間である。
 烏丸今出川から京都御苑を常に左側に見ながら下ってゆく。しかし調子にのって最初から突っ込むと、丸太町を右折してからのストレッチで失速する。……
 トップを行くのは京都の南村京伽、追うのは大阪の髙松凛緒と神奈川の新井璃桜だが、その差は詰まるようで詰まらない。
 2.3km、丸太町通りに入ってから南村がスパート、その差はどんどんとひろがった。紛れの多い中学生区間で冷静な対応、京都にとっては理想的な展開になった。
 2位の大阪は7秒遅れ、3位には長野がやってきて11秒差、4位は岡山で13秒差、5位は神奈川で15秒差、6位は愛知で23秒差、7位は福岡で24秒差、8位は東京で25秒差……。区間賞は群馬の藤澤心々(荒砥中)で9分30秒だった。

4区(4.0 km)
 上り基調で3か所のカーブのあるコースである。
 京都のこの区間は山本釉未である。全日本大学駅伝でも暮れの選抜駅伝でも区間賞と、いまいちばん調子に乗っているランナーである。
 山本はハナからすっ飛ばして、後続との差をひろげていった。東大路にはいった1km地点では後ろの集団と18秒差、後ろは長野、大阪、神奈川、岡山が2位集団を形成して追っていた。
 丸太町では山本と後ろの差は22秒差、白川通に入ると26秒差。2位争いは3.4kmで長野の名和夏乃子が抜けだした。はるか後ろからは兵庫の小林朝が10人抜きで21位から一気に11位まで順位をあげてきた。
 山本は独走状態にもちこんでタスキ渡し。2位には神奈川が盛り返してきて、29秒差。3位は31秒差で長野、4位は愛知で36秒差、5位は大阪で36秒差、6位は岡山で45秒差、7位は福岡で47秒差、8位は東京で59秒差であった。区間賞は京都の山本釉未(立命大)で12分49だった。

5区(4.1075 km)
 コースのまんなかに叡山電鉄の跨線橋があり、上り基調のコースである。
 京都のこの区間は芦田和佳、ゆうゆうとトップをゆく。1kmは3:03秒の入り、危なげない余裕の走りで、後続はどんどん遠ざかってゆく。後ろはほとんど見えなくなった。
 芦田は独走態勢をかためて国際会館前の中継所へとびこんでいった。
 2位は大阪で50秒差、3位は長野で50秒差、4位は神奈川で1分03秒差、5位は岡山で1分14秒差、6位は福岡で1分18秒差、7位は愛知で1分18秒差、8位は広島で1分22秒差だった。区間賞は京都の芦田和佳(立命館宇治高)で12分58秒であった。

6区(4.0875 km)
 5区の逆コースで叡山電鉄をまたぐ跨線橋のアップダウンのある下り基調のコースである。比叡おろしの追い風が吹くかどうか!。
 50秒もの貯金をもらった京都・村松灯は余裕の走りで跨線橋を越えていった。後ろは誰も来ない。独走状態で白川通りを下ってゆく。
 2位争いが熾烈で大阪の村井和果と長野の川上南海がびっしりと肩を接して、どちらも負けられないという気迫がぶつかりあう。二人が競ったせいだろう。競り合うことによってトップを行く村松との差はどんどん詰まり始めた。
 村松はそのまま逃げ切ってトップで中継所へ。2位に長野がやってきて34秒遅れ、3位は大阪で38秒遅れ、以降は1分以上遅れて千葉、神奈川、岡山、福岡、愛知とつづいた。区間賞は長野の川上南海(長野東高)で12分51秒だった。

7区(4.0 km)
 差をつめられた京都は大西桃花は、慌てることなく冷静にトップをひた走る。その差はじりじりと開いていった。ふたたび後ろは小さくなっていった。2位争いは大阪が長野を交わして上がってきた。
 大西はあぶなげなくトップをまもり、京都は大会記録より10秒ほど劣るタイムで8区につないだ。
 トップは京都、2位は大阪で51秒遅れ、3位は長野で58秒遅れ、4位は愛知で1分46秒遅れ、5位は千葉で1分48秒遅れ、以下は神奈川、鹿児島、福岡であった。区間賞は京都の大西桃花(立命館宇治高)で12分42秒である。

8区(3.0 km)
 京都の木下彩英(京都光華中)は力強い走りで烏丸通りをのぼってゆく。もう後ろからは誰も来ない。その差はさらにひらいて後ろはもう見えなくなってしまった。
 木下はリードをひろげ、その差1分15秒という盤石の態勢をつくってアンカーの・川村楓につないだ。
 トップは京都、1分15秒遅れで2位は大阪、3位は1分24秒差で長野、4位は1分45秒差で鹿児島、5位は1分58秒差で愛知、以下は神奈川、岡山、福岡であった。区間賞は愛媛の源代恵麻(NiihamaT&F)で9分46秒であった。

9区(10.0 km)
 中継所では到着するランナーを待つ
 1分15秒もの貯金をもらった京都のアンカー・川村楓はゆうゆうの独走で西大路をくだっていった。
 川村がスタートしてからの中継所、到着するランナーを待つ田中希実と廣中璃梨佳がにこやかになにやら談笑する姿、この大会ならではのめずらしい一コマだった。
 川村の走りは気合の入っていた。彼女にしてみれば、はるか後ろとはいえ、兵庫・田中希実や長崎・廣中璃梨佳が追っているので、あんがい緊張していたのかもしれない。つねいトップモードのゆるぎない走りであった。
 5.0kmの通過は15分55秒、後ろとの差は2分04秒とひろがり、兵庫の田中との差は3分31秒とひろがり、もう誰も追ってこない独り旅になった。
 熾烈を極めたのは2位争いであった。
 7kmでは大阪の大森菜月に長野の和田有菜が追いつき、さらに後ろからは福岡の菅田雅香りと千葉の伊澤菜々花がやってきて4チームでによるメダル位争いとなった。
 トップの川村は最後まで力を緩めることなく、圧巻の走りでタケビシスタンドのトラックを周回、京都の3年ぶり19度目制覇のゴールにとびこんだ。
 2位争いは最後までもつれた。4チームのうちでは長野の和田が競技場の手前でこぼれ、大阪、千葉、福岡がもつれながら競技場になだれ込みトラック勝負、メダル争いはトラックまでもつれ、残り250mでスパートした福岡・菅田雅香を、残り50mで大阪・大森菜月が逆転して2位!福岡が3位、千葉が4位だった。
 区間賞は京都の川村楓(岩や産業)で31分48秒、2年続けての区間賞はみごと!

【上位10チーム】

優勝:京都 2時間15分26秒
2位:大阪 2時間17分52秒
3位:福岡 2時間17分53秒
4位:千葉 2時間17分57秒
5位:長野 2時間18分13秒
6位:広島 2時間18分42秒
7位:岡山 2時間18分45秒
8位:愛知 2時間18分49秒
9位:長崎 2時間19分03秒
10位:兵庫 2時間19分16秒

 優勝した京都は3年ぶり19回目の優勝、2区でトップを奪い、いちども首位を譲ることない圧勝劇であった。区間賞4つである。
 区間賞をとれなかったが、2区で4位からトップをうばった佐藤ゆあ、高校生ながら実業団の選手を退けた走り、冷静沈着さは見事。京都優勝の流れをつくったという意味で最大の立役者としておこう。
 高校生の選手がメンバーの軸になる本大会、京都は立命館宇治がひかえているので常勝チームである。このチームが負けるときは10kmを走るランナーを欠いたときである。今回はいまが一番油ののりきった川村楓がいるから危なげがなかった。
 さらに立命館大学の3人はいずれも立命館宇治の出身である。立命館グループの先輩・後輩のチームワークもフルに稼働したということか。
 2位の大阪は終始上位を占めて安定した戦いぶりであった。大阪薫英女学院の3人の安定した走りが光った。
 3位の福岡は後半追い上げて、最後は菅田雅香(JP日本郵政)の快走で一気にメダル圏内にやってきた。
 惜しかったのは最終5位に終わった長野である。1区の真柴愛里の快走にはじまって、6区の川上南海は区間賞、高校駅伝の覇者・長野東のランナーたちの快走で、最後の最後までメダル圏内という安定した走りだった。2位はあったはずである。

 オリンピアンの田中希実は区間6位、廣中璃梨佳は区間4位、五島莉乃は区間7位という結果。いずれもベストパフォーマンスを発揮するコンディションではなかったようである。それを承知にうえで、あえて本大会に顔を見せてくれた。駅伝ファンとしては実にありがたいと思った。


◇ 日時 2025年01月12日(日)12時30分スタート
◇ 場所 京都市
◇ コース たけびしスタジアム京都発着 宝ヶ池国際会議場前折り返し9区間49.195Km 
◇ 天候:晴れ 気温:07.9度 湿度:61% 風:東0.1m(12:00)
◇ 京都(中地こころ、佐藤ゆあ、南村京伽、山本釉未、芦田和佳、村松灯、大西桃花、木下彩英、川村楓)
公式サイト:
NHK:
詳しい成績
 

 

 

青山学院大が連覇で7度目の総合優勝
  箱根の山を区間新で制して、あとは独り旅!


 國學院大の学生駅伝3冠なるか。それとも青山学院大が連覇なるか。あるいは駒澤大がその間隙を突くか。3強対決に興味津々だったが、最終的に、この3強が上位を占めたものの、そこに至る筋道は単純のものではなく、その細部の大波小波が重層的にうねり、そこにこそ面白味のある大会だった。
 中央大のあれよあれよの遁走で幕あけ、あわや往路優勝の目すらあった往路、さらには舞台装置がそろった、5区の山登りの攻防……。復路は圧巻の山下り……。総合優勝をめぐる攻防のほか、その裏でひそかに死闘をつづけた青山学院大と駒澤の復路優勝争い。さらに復路の後半になって、4校で3つの椅子を争う、熾烈なシード権争い。見どころは実に盛り沢山だった。
「ああ。終わったワ」
 2区を走り終えたあるランナーが、荒い吐息を漏らしながら、放心したように遠くに視線をやり、ふいとつぶやいた一言が強く印象にのこった。
 さらに9区の横浜の給水所……。トップをひた走る青山学院大のキャプテン・田中悠登、後続を引き離して、もはや勝利を確信したといわんばかりに、ボトルをもらった給水メンバーと笑顔で乾杯するシーン……。こんなのアリか、と、思わず身を乗り出した。

第1区(21.3km)
 スタートしてまもなく専修大の新井友格がすっと前に出るも、500m付近で早くも中央大学の吉居駿恭がとびだして集団をひっぱった。1.0km=2:46、早くも100mほど集団を突き放す。 後ろの集団からは関東学生連合の片川祐大(亜大)が抜け出して引っ張りはじめる。
 5.0km通過はトップが吉居駿恭で13:56と区間新ペース、30秒ほどひらいて片川がつづき、そこから20秒ほど後ろに大集団がつづいていた。
 吉居と後続との差はどんどんひろがってゆく。誰も追わないのである。3強の誰かが飛び出せば、くらいつくが、それ以外の者ならば追わない、という暗黙の了解があったようである。かくして吉居はそれをあざ笑うかのように、ゆうゆうの独り旅である。
 7.8kmの八山では、吉居と片川の差は45秒、3位集団との差は1分08秒……。
 10kmを吉居は28:06秒、ここで区間記録を持つ兄大和(中大OB)には9秒遅れとなったが、3位大集団は約1:30遅れと、その差はさらにひろがった。
 15kmを吉居は42:30で通過、主力のいる3位集団との差は2分以上になってしまった。
 16kmをすぎてトップをゆく吉居の表情はさすがに苦しそうになるがペースにはゆるぎがない。後ろの集団もペースが上がり、東洋大の小林亮太、大東大の大濱逞真などが、かわるがわる前に出てきて集団をひっぱりはじめる。
 18kmの六郷橋。3位集団の先頭に日大の安藤風羽が出てくるが、ここで神奈川大の大岩
蓮はこぼれていった。ペースは一気にあがった。
 20kmでは青山学院大の宇田川瞬矢が遅れはじめる。集団を割ったのは駒澤大の帰山侑大、いちど後れた宇田川ももりかえして中継所に向かう。そんな後ろのせめぎ合いを尻目に吉居はトップ独走でタスキリレー。1時間01分07秒。3年前の兄の区間記録は破れなかったが堂々の区間賞。中央大はまさかまさかにトップに立った。
 2位は1分32秒遅れで駒澤大、3位は1分34秒遅れて日本体育大、4位は1分37秒遅れで早稲田大学、5位は1分39秒遅れで帝京大、6位は1分40秒遅れで國學院大、7位は1分
41秒遅れで山梨学院大、8位は1分43秒遅れで大東文化大、9位は1分45秒差で城西大、10位は1分45秒差で青山学院大とつづいた。

第2区
 1区でトップに立った中央大は溜池一太、ゆうゆうとトップをひた走る。後ろで動きがあったのは4位発進の早稲田大で、山口智規が突っ込んで入り、600mで駒澤大、日本体育大をかわして2位に浮上してきた。
 後ろでは14位発進の東京国際大のエティーリが2km手前で9人抜きで一気に順位をあげてくる。2.5kmでは日本体育大を抜いて4位までやってきた。3kmの通過は中央大の溜池が8:32で通過、早稲田の山口は8:11と速い。
 エティーリの勢いは止まらない。7.6kmでは駒澤大の篠原倖太朗を抜いて3位までやってきた。 
 8.3kmの横浜駅、溜池が独走で通過。1分11秒遅れで2位は早稲田の山口、3位は1分18秒差で東京国際大のエティーリ、國學院大の平林清澄は1分25秒差で5位、青山学院大の黒田朝日は1分34秒差の12位だった。
 9kmをすぎると、エティーリと篠原が2位の山口を追い始め、はるか後ろからは創価大の吉田響が順位を上げてきた。
 10km通過は中央大の溜池が28:26……。後ろの2位早稲田の山口と東京国際大のエティーリ、駒澤大の篠原との差はなくなり、11.7kmでエティーリは2位に浮上して11人抜き……。後方から5位集団がやってくる。
 15.3kmの権太坂、トップの溜池と2位駒大の篠原、東京国際大のエティーリとの差は1分10秒。青山学院大の黒田はやっとエンジンがかかり9位まで浮上してくる。
 権太坂の下りでエティーリが篠原をとらえて2位集団となる。早稲田の山口は力つきて、ずるずると落ちていった。
 16km手前になるとエティーリが篠原を引き離して単独2位にあがった。後ろは4位争いが熾烈になり、帝京大、國學院大、中央学大の3校。その後ろでは青山学院大・黒田朝日が早大を抜いてさらに前を追いかける。黒田のペースはさらにあがり、18km手前では4位集団にとりついた。
 19kmをすぎてもトップの溜池はマイペースで最後の戸塚の坂をのぼってゆく。黒田の勢いは止まらず、19.5kmでは4位集団を抜き去り、駒澤大の篠原を追い始める。創価大の吉田も快調で黒田を追っていた。
 黒田は20.2kmで並ぶ間もなく篠原を抜き去って3位に浮上、さらにエティーリも追い始める。後ろでは吉田が21.5kmで篠原をとらえて4位に浮上してきた。対照的に國學院大の平林清澄は最初に突っ込んだせいか、22kmをすぎて失速、中央学院大の吉田礼志にも交わされて8位に落ちた。
 中央大の溜池は首位をキープしてトップでタスキ渡し、2位は40秒差で東京国際大、3位は青山学院大で49秒差、4位は創価大で59秒差、5位は駒澤大で1分08秒差、6位は帝京大で1分22秒差、7位は中央学院大で1分31秒差、8位は國學院大で1分40秒差、9位は立教大で1分42秒差、10位は山梨学院大で1分57秒差だった。
 区間賞は東京国際大のリチャード・エティーリで1時間5分31秒は区間記録を18秒更新である。区間2位の創価大・吉田響、区間3位の青山学院大・黒田朝日も区間記録を更新した。

第3区
 中央大の本間颯の1kmは2:41、快投にとばして独走状態、5kmの遊行寺の坂を13:47で通過、その後も勢いはとまらない。
 7.7kmの藤沢、中央と2位の東京国際大とは53秒、3位の青山学院大とは57秒差、4位は創価大で1分09秒差、駒澤、國學院大までは1分59秒差となっていた。
 9.8kmになって青山学院大の鶴川正也が東京国際大の・佐藤榛紀の後ろにつく、佐藤もくらいついたが、10.2kmの給水地点で鶴川がひきはなして2位に浮上した。後ろでは國學院大の山本歩夢が駒澤大の谷中晴に追いついた。
 浜須賀から海岸通りに出てからも本間は快調だった。12kmをすぎて3位につけていた創価大のムチーニが追ってきた。12.5kmでは鶴川をあっという間にかわして2位に浮上してきた。
 14.4kmの茅ヶ崎ではトップの中央大、2位の創価大は1分07秒遅れ、3位の青山学院大は1分20秒遅れ、4位の東京国際大は1分29秒遅れ、5位集団の駒澤大と國學院大は2分18秒遅れ、7位には早稲田大がやってきて2分27秒遅れ、以下は城西大、立教大、帝京大とつづいていた。
 5位争いの駒澤大と國學院大、15.5kmで駒澤の谷中が、國學院大の山本を振り切って決着がついた。
 トップの本間は快調でリードをひろげながら湘南海岸を独り旅、後ろでは早稲田大の一年生・山口竣平が快調で、16.6kmで落ちてきた國學院大の山本をとらえて6位に浮上、さらに 18.2kmでは駒澤の一年生・谷中においついた。そして並走しながら19.2kmでは東京国際大をとらえて4,5位に浮上してきた。
 20kmをすぎて本間は険しい表情にはなったが、ペースは落ちることなく、後ろの創価大・ムチーニに追わせなかった。かくして中央大は平塚もトップでタスキ渡しである。
 2位は創価大で1分34秒差、3位は青山学院大で2分24秒差、4位は駒澤大2分56秒差、5位は早稲田大で2分57秒差、6位は國學院大で3分17秒差、7位は東京国際大で3分53秒差、8位は城西大で4分12秒差、9位は立教大で4分47秒差、10位は帝京大で5分01秒だった。区間賞は中央大の本間颯で1時間0分16秒である。


第4区(20.9km)
 中央大の白川陽大は1km=を2:43、たんたんとトップをひた走る。5kmの通貨は14:16。後ろからは青山学院大の太田蒼生が猛追してくる。6kmをすぎて太田は創価、中央との差を詰めてゆく。
 9.1kmの二宮では、トップ中央大と創価大との差は1分34秒、その12秒あとに青山学院大の太田が迫っていた。以下はトップから2分52秒遅れで駒澤大、3分10秒遅れで東京国際大、3分18秒遅れで早稲田大……。
 青学の太田は2位の創価大と差をどんどんと詰め、12km手前ではわずか10秒となり、13.2kmではとうとう創価大の野沢悠真をとらえて2位に浮上、さらに前を追い始めた。だが野沢もすぐには離れずに並走状態となる。
 太田の15kmは42:49で、トップをゆく中央大との差は15.4kmの酒匂橋1分14秒であった。太田は19.5kmで並走する野沢をふりきち、さらに中央との差をつめていった。青山学院大の往路優勝のカギは、ひとえにこの太田の走りにかかっていた。
 中央大の白川陽大は後ろに詰められながらも、なんとか駈け抜けてトップでタスキをつないだ。
 2位は青山学院大で45秒差、3位は創価大で1分16秒差、4位は駒澤大で2分18秒差、5位は國學院大で2分24秒差、6位は早稲田大で2分55秒差、7位は東京国際大で4分25秒差、8位は城西大で5分04秒差、9位は東洋大で5分22秒差、10位は日本体育大で5分40秒遅れとなっていた。区間賞は青山学院大の太田蒼生で1時間0分24秒(区間歴代2位)だった。

第5区(20.8km)
 1区で飛び出した中央大、とうとう最終区もトップでタスキをもらった。往路優勝もみえてきたのだが、後ろから青山学院大が45秒差に迫ってきた。往路の優勝争いは箱根の山の攻防にゆだねられたのである。
 逃げる中央大は園木大斗、3kmの入りは8:35、速いのではないか…と、解説者は懸念していた。追う青山学院大の若林宏樹はゆったりとした入りで。3.6kmの函嶺洞門では、その差は54秒とひろがっていた。
 後ろでは4位発進の駒澤大と5位発進の國學院大が、並走しながら3位の創価大を追っていたが、5kmでは駒澤大の山川拓馬が國學院大の高山豪起を振り切った。その高山を追ってきた早稲田の工藤慎作が6.5kmでとらえて、早稲田は5位に浮上、さらに前を追い始める。
 本格的な山登りになって、青山学院大・若林宏樹のエンジンが始動したのか。7.1kmの大平台ではトップをゆく園木と若林との差は32秒と、急激につまりはじめた。
 8.3kmのカーブでは園木のうしろに若林の姿がちらとみえてきた。その差はみるみる接近、9.3kmの宮ノ下ではわずか3秒、そして9.5kmになって、とうとう若林が園木をとらえて逆転トップに立った。後ろでは早稲田の工藤が4位の駒澤大・山川拓馬を猛然と追いかけていた。
 若林の10km通過は32:52、園木との差はみるみるひろがっていった。後ろでは早稲田の工藤の追い上げ急で、10.8kmでは駒澤大の山川をとらえて4位まであがってきた。
 11.9kmの小涌園では若林がトップ、18秒遅れで園木、2分04秒遅れで創価大の山口報輝がつづき、その23秒差に早稲田の工藤が迫っていた。工藤はぐんぐんと追い上げ、15.3kmではとうとう山口をとらえて3位まで浮上してくる。
 若林の勢いはその後も止まらず、芦之湯の15.8kmでは園木との差を1分03秒として独応体制で山下りにはいった。
 下りにはいっても若林は力強い腕振りで快走、区間新がくっきりと視野にはいってきた。最後は苦し気な表情をみせながらも芦ノ湖にむかって疾走、そのままそのままトップをまもって、2年連続7度目の往路優勝のゴールにとびこんだ。タイムは5時間20分02秒であった。区間賞は青学大の若林宏樹で1時間9分11秒、区間記録を3秒更新である。

【往路順位】
(1)青学大  5時間20分01秒
(2)中大      +1分47秒
(3)早大      +2分29秒
(4)駒大      +3分16秒
(5)創価大     +3分37秒
(6)国学院大    +5分25秒
(7)城西大     +5分57秒
(8)立大      +7分26秒 
(9)東洋大     +7分52秒
(10)日体大     +8分02秒
(11)東京国際大   +8分33秒
(12)中央学院大   +8分36秒
(13)順大      +8分39秒
(14)帝京大     +9分27秒
(15)山梨学院大  +11分02秒
(16)法大     +11分24秒
(17)日大     +13分03秒
(OP)関東学生連合 +13分04秒
(18)神奈川大   +13分38秒
(19)大東文化大  +13分43秒
(20)専大     +16分49秒


▼復路
第6区(20.8km)
 往路優勝の青山学院大にとって、3強の一角・國學院大は5分以上の後れとなってしまったので、総合優勝の当面の相手は3分12秒遅れで3位の駒澤大ということになった。
 青山学院大の6区は山下りのスペシャリスト・野村昭夢、追う駒澤大は伊藤蒼唯であった。
 野村は1km=2:49でゆったりと入る。5kmの芦之湯を野村は15:58で通過。2分07秒差で2位中大。青学大との差は20秒ほどひらいた。2分55秒差で3位早大。3分21秒差で4位駒大。駒大・伊藤は3位早大との差を20秒ほどつめてきた。東洋大が立教大を抜き8位浮上。13位発進の順大が10位浮上してきて、シード権内に入った
 野村は下りにはいっても快走がつづく。すっ飛びころげるようにに軽快にくだってゆく。区間新ペースである。
 9.1kmの小涌園前では2位の中央大とは2:54秒差、3位の早稲田とは3:16秒差、4位の駒澤には3:21の差をつけてしまったのである。野村の10km通過は28:32であった。
 後ろの駒澤大の伊藤は早稲田との差を少しづつ詰め、11.6kmでは5秒差に迫り、11.8kmの宮ノ下では早稲田の6区のランナー・山崎-吹をとらえて3位まであがってきた。
 13.4kmの大平台のへピンカーブで野村は区間記録を24秒上回る37:06で通過、2位の中央大とは3:20差、3位の駒澤大との差を3:41とした。
 15kmの野村の通過は40:58で区間記録を32秒も上回るペース、夢の56分台が現実のものとなってきた。箱根湯本を過ぎて、18km、野村は原監督の激で背中を押され最後の力をふり絞る、圧倒的な走りでそのまま中継所にとびこんだ。
 2位の中央大との差は3分50秒、3位の駒澤大との差は4分08秒とひらいた。4位は早稲田大学で4分38秒差、5位は創価大で6分23秒差、6位は城西大で7分17秒差、7位は國學院大で8分19秒差、8位は立教大で9分58秒差、9位は東洋大で10分01秒差、10位は東京国際大で10分48秒差だった。区間賞は青山学院大の野村昭夢で史上初の56分分台の56分47秒。駒澤大との差を4分以上にしてしまった。に

第7区(21.3km)
 青山学院大は6区・野村の区間新の快走で、当面のライバル・駒澤大との差を4分以上にしてしまったが、往路優勝をねらう駒澤は、ここにエースの佐藤圭汰を配してきた。この7区の攻防で、総合優勝はほぼめどがつきそうになってきた。
 トップを行く青山学院大の白石光星のはるか後ろで駒澤大の佐藤圭汰はハイペースで入り、前をゆく中央大の岡田開成を追っていた。岡田にとって佐藤は同じ洛南高校の先輩にあたる。洛南の先輩・後輩対決である。
 2.7km地点で佐藤は岡田との差を10秒、そして4.5kmではとうとう追いついた。岡田もすぎに離されずにくらいつき、そこから並走がつづく。
 白石はたんたんとトップをひた走り、7km通過は19:55……。はるか後ろでは順天堂大の11位発進の吉岡大翔の快走がつづいていた。8.1kmでは東京国際大の冨永昌輝をひきつれて、東洋大の内堀勇をとらえ、さらに8位の立教大の小倉史也をまきこんで8位グループとなる。
 白石の10km通過は28:55……、追ってくる佐藤は10.2kmで岡田をひきはなして単独2位となり、トップの白石を追ってゆく。
 11.8kmの二ノ宮では、トップをゆく白石と佐藤の差は3:16、3分35秒遅れで中央大学がつづき、シード権争いは熾烈になり、東洋大と立教大が10位で併走。順大、東京国際大とは引き離されてしまった。
 しかしシード権争いはますますはげしくなり、14.4kmでは12位の帝京大が追ってきて、東洋大、立教大との争いに参戦してきた。
 15kmは青山学院大の白石光星は44分14秒で通過。駒大・佐藤圭汰は42分43秒、佐藤のペースは落ちることなく、18.3km出は2分02秒となる。白石はその差を詰められたものの、しっかりその差をキープしてトップを守った。
 シード権争いは、さらに熾烈になり、日本体育大の住原聡太が追い上げてきて、シード権内に押し上げてきた。
 かくしてトップは青山学院大で変わらず、2位には駒澤大が浮上して1分40秒差、3位は中央大で3分46秒差、4位は早稲田大で4分53秒遅れ、5位は創価大出6分22秒遅れ、6位は國學院大で7分30秒遅れ、7位は城西大で8分34秒遅れ、8位は順天堂大で9分58秒遅れ、9位は東京国士大で10分06秒遅れ、10位は日本体育大で10分53秒遅れ。しかし11位以降の帝京大、東洋大、立教大、中央学院大もそれほど大差なく、シード権争いは混沌としてきた。区間賞は駒澤大の佐藤圭汰で1時間0分43秒、区間記録を5年ぶりに57秒更新した。

第8区(21.4km)
 7区で駒澤大に追われた青山学院大、この区間は塩出翔太である。昨年も区間賞の塩出は落ち着いてトップをひた走る。駒澤大には追わせずに7kmの茅ヶ崎ではその差を1分50秒と10秒ほどひろげてしまった。12.0kmでは区間新ペースの35分34秒と快走、駒澤大追撃の流れを完全に断ち切ってしまった。
 15.9kmの遊行寺の坂でも駒澤大との差は1分48秒とほぼ変わらず、塩出はたしかなピッチを刻んで坂をかけあがっていった。後ろではシード権争いが熾烈をきわめ、東洋大、日本体育大、東洋大が圏内でもつれあう展開がつづいた。
 8区を追ってトップの青山学院大はゆるがず、1分56秒遅れで2位は駒澤大学、3位は6分36秒遅れで早稲田大学、4位は8分02秒差で創価大学、5位は國學院大で8分03秒遅れ、6位は中央大で9分24秒遅れ、7位は城西大で10分42秒遅れ、8位は順天堂大で10分59秒遅れ、9位は日本体育大で11分12秒遅れ、10位は東洋大で11分12秒遅れ……、しかし11位の帝京大、12位の東京国際大、13位の立教大まで、まだまだ予断をゆるさない雰囲気であった。区間賞は青山学院大の塩出翔太で2年連続。1時間4分14秒だった。
 青山学院大がリードを保ち、駒大との差は1分56秒と平塚から差がひろがった。7位城西大、8位順大、9位日体大、10位東洋大までがシード圏内。11位帝京大はシードから23秒差、東京国際大は52秒差、立教大は57秒差。7位から13位は1分27秒差という接戦

第9区(23.1km)
 トップの青山学院大は田中悠登、2分近い貯金をかかえて、悠然とさかをくだってゆく。3.0kmは8:23、5.0kmは14:11秒で、ひとりわが道をゆく。
 権太坂では田中と駒澤大の村上響との差は1:48とややつまり加減になるが、軽快に坂を駈けのぼっていった。
 14.7kmの横浜では田中と村上の差は1分49秒で、膠着状態となり、田中は余裕の走りというべきか。給水ポイントで、同級生の給水ランナーとドリンクで笑顔の乾杯!
 田中はペースをしっかり守って走り、生麦では2分05秒と追ってくる駒澤との差は逆に開きかげんになる。
 シード争いはいぜん激烈で、帝京大が押しあげてきて、東洋、順天堂、東京国際大、日本体育大あたりがひしめきあっていた。
 青山学院大の田中は笑顔のタスキリレー、2位駒澤大との差を2分21秒差とひろげてしまった。3位は早稲田大で8分31秒遅れ、4位は國學院大で8分31秒遅れ、5位は創価大で9分43秒遅れ、6位は中央大で10分30秒遅れ、7位は城西大で10分30秒遅れ、8位は東洋大で11分55秒遅れ、9位は帝京大で11分59秒遅れ、10位は順天堂大で12分05秒遅れ……。10位順大と11位の東京国際大は22秒差、日体大は26秒差でつづいていた。区間賞は城西大の桜井優我で1時間8分27秒であった。

第10区(23.0km)
 トップをゆく青山学院大は一年生の小河原陽琉、2分以上の貯金をもらって余裕のハリリというべきか。5.9kmの鎌田では駒澤との差を2分44秒とひろげてしまった。13.5kmの八山では2分56秒差とひろがってしまい、青学の総合制覇はゆるがぬものとなった。焦点は復路優勝争いにしびられた。この時点では駒澤が20秒ほど青学に先んじていた。
 問題はシード権争いであった。15kmでは帝京大、東洋大、東京国際大、順天堂大が8位集団でしのぎ削り合い、4校のうち上位3校を争うかたちになった。
 熾烈なシード権争いを知ってか知らいでか、小河原は銀座を軽快に駆け抜け、日本橋から大手町に向かい、両手人差し指で頬を突くポーズでテープを切った。10時間41分20秒の大会新記録で2年連続8度目の総合優勝である。2分50秒差で2位駒澤大学
 シード権争いは最後の最後までもつれる4校の大接戦となったが、8位には東京国際大、9位には東洋大、10位に帝京大がとびこみ、順天堂大がわずか7秒差で涙をのむ結果になった。

 総合優勝した青山学院大は往路で区間賞2つ、復路で3つ……と、安定し戦いぶりであった。どこからでもゲームチェンジができる。そういう鉄壁の布陣であった。今回はとくに全日本で悔しい思いをした4年生のがんばりがすごかった。メンバーそれぞれが自分の役割をよく理解していて、その通りに実行して見せた。とくに、2区の黒田、4区の太田、5区の若林、6区の野村、8区の塩出……。
 4区からエンジンがかかって、5区、6区の箱根の上り下りで圧倒的な強さを発揮した。箱根の山で区間新で走られてはどうしようもない。2位の駒澤大とはタイム以上に差があり、格の違いを感じさせられた。
 2位の駒澤大は復路優勝をもぎとった。往路は2区で流れに乗りそこなったのが原因か。エースの篠原倖太朗は区間5位、國學院大の平林と同じように、最初からハイペースで突っ込んでしまったのが後半伸びなかった原因なのだろう。
 復路は佐藤の快走が大きかったが、5人のメンバーは堅実につないでの復路優勝は評価できる。今回のメンバー10人のうち、卒業するのは2区の篠原ひとりで、他の9人が来年にのこった。とくに山の上り下りの山川と伊藤が残っているのは大きい。青山学院大は今回優勝の立役者となった若林、野村が卒業して、入れ替わるのとは裏腹に、駒澤大はさらに上積みがみこめる。来年は今年以上に期待できそうである。
 3位の國學院大は、最終的に3位まで押し上げてきたが、優勝候補の一角にあげられながら、いちども首位戦線に出てこれなかったという意味では完敗だろう。2区の平林清澄、3区の山本歩夢で一気にトップに立ちたかったのだろうが、平林が東京国際大のエティーリにあおられてハイペースでに巻き込まれてしまった。むろんそれもあるが、最大の敗因は5区、6区の山の上り下りに人材を欠いたこと。それがすべてだろう。それでも総合3位まで押し上げてきたのは層の厚さというべきか。
 4位の早稲田大、5位の中央大は大健闘ではないか。
 早稲田大は3区で1年生の山口竣平、5区では2年生の工藤慎作が快走、早稲田大の躍進、古豪復活の原動力となった。来年は二人ともエースとしてチームの中核をなすだろう。 中央大はあわや往路優勝という目もあった。1区の吉居は力のあるランナーだが、中央大は優勝戦線のノーマークとみて、他のチームは先にゆかせてしまった。結果、あれよあれよの逃走劇……、いわば展開にめぐまれたといえるが、みごとな戦いぶりだった。
 上位争いとは別に、シード権争い激烈なものがあった。最後は4校で3つ枠を争うというとんでもない展開、結果、予選会上がりの順天堂大が貧乏くじをひいた。予選会を1秒差で勝ち上がったチームが、本線で最後までシード権争いにからんだ。やはり大健闘したというべきだろう。


◇ 日時 2024年1月2(木)~3日(金水) :午前8時00分 スタート
◇ コース: 東京・読売新聞東京本社前~箱根・芦ノ湖間を往路5区間(108.0Km)、復路5区間(109.9Km)の合計10区間(217.9km)
◇天気:往路 晴れ 気温:05.0℃ 湿度55%: 風: 
      :復路 晴れ 気温:01.0℃ 湿度:  風:
◇青山学院大(宇田川瞬矢、黒田朝日、鶴川正也、太田蒼生、若林宏樹、野村昭夢、白石光星、塩出翔太、田中悠登、小河原陽琉)
公式サイト:
総合成績
 

 

 

旭化成が3年ぶり26度目の制覇
  Hindaとのアンカー勝負を制す

 

 トヨタ自動車の連覇なるか。それとも、Honda、あるいは前回3位で地力のあある旭化成、東日本予選を制した新興のGMOインタネットグループをくわえた4強がからんでくるか。
 レースは予想通り、この4強の争いになり、観るレースとしては、最後まで眼はなしできない興趣つきないものとなった。
 オリンピックが終わって、今年は東京で世界陸上がある。マラソン・長距離のあたらいい勢力が台頭してくるのか。そんな新時代の幕あけを感じさせてくれるデカイ前歯の選手の出現を予感させてくれるだろうか? そんな期待感がもてるランナーの出現を期待したのだが、そういう意味では、いささか期待外れに終わったようである。
 たとえば、スーパールーキーというべき吉井大和選手(トヨタ自動車・中央大出身)、鈴木芽吹選手(トヨタ自動車・駒澤大出身)、三浦龍司選手(SUBARU・順天堂大出身)、佐藤一世選手(SGホールディングス・青山学院大出身)なども、このなかにはいると、それほど突出した感がなかった。ありふれた駅伝ランナーに埋没してしまわないように、目標を高くもってほしいと思う。

第1区(12.3km)
 毎年、この区間は、各陣営ともに「様子見」で、牽制しながら大集団で推移し、ラストのスパート合戦で中継所へどっとなだれ込む。そんな展開になる。
 だが今回は少しようすがちがった。
 号砲とともに、ひらまつ病院の荻久保寛也がとびだしたが、すぐにGMOの吉田祐也がするすると前に出てきた。1kmの通過が2:49、その後ろにはSUBARU・三浦龍司の顔がみえるも大集団がつづく。
 1~2kmは2:47、少しづつタテ長になってゆく。3.5kmになると先頭集団は2つに分裂かげん、5km通過は13:57と区間新ペースで吉田がひっぱる。覚悟を決めての飛び出しのようである。後ろにはHondaの森凪也、トヨタ自動車の吉居大和、富士通の塩沢稀夕がつけ、三浦龍司もいる。
 7kmではトップ集団は16チーム、第2集団は14チームぐらい。7~8kmは2:58とペースは少し落ち着いてくる。ペースが落ちたとみたのか、9kmになると荻久保寛也がスパートをかけるが、10kmでは吉田が再び先頭に立つ。10km通過は28:28……。このあたりからペースは上がってきて11kmでは、トップは吉田、後ろは旭化成の長嶋幸宝、塩澤、ヤクルトの中村大聖、三浦などがつづく。
 残り1kmでトップ集団は10人ぐらいがつけていた、レースが動いたのはこのあたりからで、長嶋がスパート、反応したのは中村、あとは三浦、吉田、JR東日本の西脇翔太、塩澤らが、どっと中継所になだれこんだ。
 1区を終わってトップは旭化成、2位は1秒遅れでヤクルト、3位は2秒遅れでSUBARU,
4位は2秒遅れでGMO、5位は3秒遅れでJR東日本、6位は3秒遅れで富士通、7位は4秒遅れでロジスティード、8位は4秒遅れで住友電工とつづいた。区間賞は旭化成の長嶋幸宝で34:29だった。
 なおHondaは5秒遅れの9位トヨタ自動車は13秒遅れの13位に甘んじていた。

第2区(21.9km)
 タスキ渡しのあと、すぐにトップに踊り出たのはGMOの今江勇人だった。今江を先頭にトップ集団は7チーム、今江のほか富士通の鈴木健吾、Hondaの小山直城、SUBARUの清水歓太、旭化成の茂木圭次郎、JR東日本の片西景、ロジスティードの四釜峻佑であった。
 8位集団はヤクルトの蒲田航生、YKKの細森大輔、住友電工の阿部弘輝……
 トップ集団の3kmは8:26とハイペース、3.7kmでは13位発進のトヨタ自動車の鈴木芽吹とSGホールディングの近藤幸太郎が8位グループに追いついてくる。
 5kmは今江が先頭で13:57、片西が遅れだして7人となる。Kaoの池田耀平は5.7kmで7位集団の近藤、鈴木に取りついた。
 10km通過は28:22……。GMO・今江勇人、富士通・鈴木健吾、SUBARU・清水歓太、旭化成・茂木圭次郎、Honda・小山直城と変わらず。第2集団はトヨタ自動車の鈴木芽吹、SGの近藤幸太郎、Kaoの池田耀平で、その差は10秒となっていた。 後ろではトヨタ紡織の羽生拓矢が9人抜きで21位に浮上してきた。
 12.5kmになるとトップ集団から今江と鈴木健吾が抜け出して、清水、茂木、小山は10mほど後方に退くも、13kmになって小山がまた先頭集団に押し上げてくる。13.9kmでは鈴木健吾が後退、かわって茂木が先頭集団に加わってくる。
 14.7kmになると鈴木健吾、清水歓太の4位集団をトヨタの鈴木芽吹、Kaoの池田耀平が追ってくる。そして15kmでは4位まで浮上してきた。
 トップ争いは15.6kmで今江がスパート、茂木に5m、小山に20mほどの差をつけてしまう。17kmになると今江と茂木の差は50mにひろがってしまった。後ろからは12位からごぼうぬきで順位をあげてきた鈴木芽吹と池田が追ってきて2位集団に浮上してきた。2位集団はさらに今江を追いかけはじめGMO今江との差は10秒とせまってくる。
 19km手前になると今江と2位集団との差はわずか6秒となるも今江は21kmすぎてスパート追撃を許さなかった。
 今江の20km通過は56:42、そのままタスキをつないだ。
 2区を終わってトップはGMO、2位は11秒遅れでトヨタ自動車、3位は12秒遅れでKao、4位は旭化成で29秒遅れ、5位はHondaで36秒遅れ、6位はSGホールディングスで55秒遅れ、7位は黒崎播磨で59秒遅れ、8位はSUBARUで1分16秒遅れ……であった。区間賞はKaoの池田耀平で1時間1分48秒だった。

第3区(15.3km)
 GMOの鈴木塁人が快調に飛ばすも、後ろからトヨタ自動車の太田智樹がどどん差を詰めてくる。そして3.1kmでとうとう鈴木をとらえてトップに立った。
 Kaoの杉山魁声も追い上げてきて上位の2人に迫ってくる。さらにそれらを上回るペースで葛西潤が突っ込み、4kmすぎでは先頭との差が10秒をきってくる。葛西は5km手前で3位に浮上してきた。
 5km通過は太田がと鈴木が13:51,葛西は13:57……、そして6kmではとうとう先頭集団に追いついてしまう。
 7kmになると太田と葛西が鈴木を置き去りにしていった。
 太田と葛西は激しい先陣争いがつづき、10.0kmの通過は27分42秒……。決着がついたのは13.2km、太田がスパートして、葛西を引き離した。
 トップはトヨタ自動車、2位は10秒遅れで旭化成、3位は59秒遅れでGMO、4位は1分06秒遅れで住友電工、5位は1分09秒遅れでHonda、6位はKaoで1分17秒遅れ、7位はSGホールディングで1分29秒遅れ、8位はSUBARUで1分40秒遅れとなった。区間賞は住友電工の田村和希で42:58だった。

第4区(07.5km)
 外国人特区のこの区間……
 トヨタのキバティが追ってくる旭化成との差をひろげてゆく。2kmすぎになるとGMOのジャコブにHondaのヴィンセントが追いついて並走……。キバティは4kmを10:56というペースで快走……。追ってくる旭化成との差をひろげていった。
 かくしてトヨタ自動車の首位はゆるがず、2位は26秒差で旭化成、3位は48秒差でhonda、4位は48秒差でGMO、5位はKaoで1分03秒差、6位は住友電工で1分17秒差、7位は黒崎播磨で1分39秒差、8位はSGホールディングスで1分41秒差とつづいた。区間賞はHondaのY.ヴィンセントで20:37である。

第5区(15.9km)
 トップのトヨタ自動車は西山雄介、向かい風の上州路をハイペースで突っ込んでゆく。1kmは2:43である。後ろはHondaの青木涼真ががあがってきて、GMOの小野知大を突き放して1.5kmでは3位までやってくる。
 5kmではHondaの青木涼真が区間トップ。1位トヨタ自動車との差を14秒ほど詰めてくる
 青木の勢いがとまらず6.4kmでは旭化成の大六野英畝に追いつき、並走でトヨタ自動車を追い始める。
 10km手前では青木、大六野と西山の差は10秒と迫ってくる。じりじりとその差は詰まってくる、登りの松原橋では西山と青木、大六野との差はわずか3秒、その後ろのGMOとの差は1分34秒、その後ろにはKaoが続いていた。
 そして11.3km……。
 とうとう青木、大六野が西山に追いついてしまう。勢いはもっぱら追ってくるほうにあり、西山はじりじりと遅れていった。
 トップ争いは青木と大六野の争いなったが14.5kmで青木がスパートその差はひろがっていった。
 かくしてHondaが初めてトップに立った。2位は旭化成で10秒差、3位はトヨタ自動車で55秒差、4位はGMOで2分20秒差、5位は住友電工で2分33秒差、6位は三菱重工で2分34秒差、7位はKaoで2分39秒差、8位はSUBARUで2分50秒差だった。区間賞はHondaの青木涼真で46:36だった。

第6区(11.4km)
 トップに立ったHondaは新戦力の久保田徹、向かい風のなか、ゆうゆうとトップをゆく。旭化成位の齋藤椋もじっくりとかまえて追ってゆく。4.5kmでその差は16秒だから離れもつまりもしていない。だが、8kmあたりから少しづつ詰まりかげんになった。逃げる久保とは突っ放しにかかるが、斎藤はくらついている。
 8kmではその差8秒まで詰まったが、最後は久保田が逃げ切った。
 かくしてトップのHondaはゆるがず、2位は旭化成で12秒差、3位はトヨタ自動車で52びょさ、4位はGMOで1分57秒差、5位は三菱重工で3分04秒差、6位は住友電工で3分05秒差、7位はSUBRUで3分35秒差、8位は富士通で3分45秒差だった。区間賞はGMOの嶋津雄大で32:50秒だった。
 18年連続出場の中国電力・岡本直己はこの区間でラストラン苦しそうに喘ぎながらも猛然と前を追う姿が印象に残った。

第7区(15.6km)
 トップをゆくHondaのアンカーは中山顕、12秒差で旭化成のは井川龍人が追ってゆく。優勝争いはこの2チームにしぼられた。
 追う井川は一気に差を詰めにかかり2.5kmではその差5秒、その後もじりじりと差を詰め4.6kmでは追いついて、ピタと背後にくらいついた。だが、すぐには前に出ない。そこからたがいにようすをうかがいながらのマッチアップがつづいた。
 9kmすぎでは、トップグループと3位トヨタ自動車・田中秀幸との差は1分04秒。4位GMO・村山紘太との差は2分19秒。三菱重工、住友電工の5位集団と8位、9位のKao、富士通との差は20秒となっていた。
 井川と中山はたがいにけんせいしながら、仕掛けどころをさぐる展開がつづいた。どうやら最後のスパート合戦にもちこまれそうな雰囲気になってきた。
 仕掛けたのは井川だった。残り600mの15kmでスパート、その差はみるみるひろがってゆき、そのままゴールを突き抜けた。
 旭化成が5年ぶり制覇、タイムは4時間47分32秒……2位は8秒差でHonda、前回覇者のトヨタ自動車は3位。GMOは過去最高4位でフィニッシュ。5位は地元SUBARU、住友電工は初入賞で6位、7位・三菱重工、8位・富士通とつづいた。区間賞は旭化成の井川龍人で45:52(区間新)だった。

 旭化成は5年ぶり26回目の制覇である。
 旭化成は区間賞は2つだが、メンバー全員が安定した力を発揮して、常にトップをうかがえるポジションを占めていた。長嶋、葛西、井川、斎藤の若い新勢力が、いかんなく力を発揮して勢いがあった。若い新勢力と茂木、大六野のベテランがうまくかみ合い、それが総合力に結びついたといえる。
 2位にはHondaがやってきた。トップトとの差はわずか8秒……。最後は競り負けたが地力のあるところをみせてくれた。
 連覇をねらったトヨタ自動車はいっときはトップに立つこともあったが3位におわった。しかし中盤まではレースを支配していたのはさすがである。最後は競り負けてしまったが、ルーキーの鈴木芽吹が最長距離区間で区間2位、12位から10人抜きで一気に2位まで押し上げてきた快走は将来性を感じさせるものがあった。
 大健闘は6位にやってきた住友電工だろう。前回21位から一気に入賞圏内に押しがあげてきた。3区で区間賞をもぎとった田村和希で4位まで浮上、その後も落ちなかったのは地力のついた証拠だろう。
 優勝した旭化成、Honda、トヨタ自動車が3強をなすのだが、選手の消長がはげしく、戦力の保持、整備もむずかしそうである。企業としての業績や、企業の競技に対する取り組みの姿勢も微妙に戦力強化に影響してきそうである。連覇がむずかしいのもむべなるかなである。


◇ 日時 2025年 1月 1日(水=祝) 9時15分 スタート 
◇ 気象 天気:晴 気温6.5 湿度41% 西2.0m(午前9:15現在)
◇ コース:群馬県庁スタート~高崎市役所~伊勢崎市役所~太田市尾島総合支所~太田市役所~桐生市役所~JA赤堀町~群馬県庁をゴールとする7区間100km
◇旭化成(長嶋幸宝、茂木圭次郎、葛西潤、キプルト・エマニエル、大六野英敏、齋藤 椋、井川龍人)
TBS公式サイト
総合成績

 

 

立命館大学が7年ぶり6度目の制覇
   
大会新で2冠達成



 先の全日本でこの7年あまり絶対王者の名をほしいいままにしてきた名城大学がやぶれ、大学女子駅伝もにわかに中心的存在がなくなり、新しい基軸にむけてスタートした感があった。
 全日本を制した立命館大はまさに古豪復活、頂点に立ったが、果たして今後も立命館大を中心にまわってゆくのか。それとも割拠の時代になるのか。本大会は奇しくも、そういう意味で、大学女子の新時代を占う大会となった。
 名城大の巻き返しがあるのか。立命館大がそのまま勢いに乗ってゆくのか。それとも常に優勝戦線にあって、壁を超えられない大東文化大の躍進があるのか。それとも新勢力の城西大に、さらなる上積みはあるのか。全日本で流れにのりそこなった日本体育大にもチャンスはありそうだった。
 駅伝はチームとしての勢いとリズムがポイントである。
 立命館大に勢いがあり、流れが来ているとみたが、現実のレースはそうかんたんではなく、一筋縄ではいかないようだった。日本体育大、大東文化大がはげしく絡んできて、この3強は、いずれもチャンスがあった。最後まで眼はなしできない、観戦者としては、実に見ごたえのあるレースだった。
 勝負のゆくえが最後に立命館大学に収斂していったのは、やはり総合力がモノをいったということなのだろう。
 それにしても……
 タスキをつなぐ駅伝は最後にモノをいうのは「チーム力」なのだなあ……と、思いを新たにした。スーパースター、大砲というべき図抜けた存在がひとりいたとしても、それだけでは勝てない。個人の実力もさることながら、チームとしてうまれたプラスアルファーが最後の決め手となることを思い知らされた。

第1区(4.1km)
 はげしく主導権を争う第1区は、思いがけない展開で幕あけた。
 1kmの通過は3:16という速い入りで、この日が20歳の誕生日だという立命館大の太田咲雪が集団をひっぱるかたちではじまった。
 早くもタテ長になりつつあるなか、1.6kmになって、やにわに全日本大学選抜の小川陽香が集団を割った。予定調和をきらったのか。ひとり集団から抜け出したののである。2.6kmでは2位集団との差は50mとなり、独り旅……。後ろは太田、拓殖大の岩崎麻知子、日本体育大の柳井桜子、大東文化大の相場茉奈らがつけていた。
 トップの小川は2~3kmは3:02というハイペース、3kmでは2位集団との差は15秒とひらいた。このハイペースのつばぜり合いに名城大の柳葉あずみは意外にもついてゆけずに、ずるずると2位集団からこぼれていった。
 小川はそのままトップでタスキリレー、だが2位争いは大混戦となり、最後は兵庫大の樽本知夏と立命館大の太田がほとんど同時にとびこんだ。
 かくしてトップは全日本選抜、2位は兵庫大、3位は立命館大で15秒差、4位は大阪学院大、5位は拓殖大、6位は大東文化大で、ここまでが16秒差、7位は順天堂大で18秒差、8位は中京学院大で20秒差とつづいた。日本体育大は21秒遅れの11位、名城大は33秒暮れの15位、城西大は48秒差の18位と出遅れた。区間賞は全日本選抜の小川陽香(立大2年)で区間タイの12:42であった。

第2区(6.8km)
 タスキがわたってすぐに動いたのは立命館大の村松灯、600mで兵庫大の長岡あずを交わして2位に浮上してくる。
 トップは全日本大学選抜の丸毛萌愛(駿河台大)、2位集団は太田、長岡、さらには大東文化大の野田真理耶、日本体育大の斎藤みうもやってきて4チームがひとかたまりになる。
  3.3kmになると2位集団からぬけだした斎藤みゆが丸毛をとらえて、トップ集団となってしまう。その後ろに野田、村松、長岡が集団をなしてつづいていた。
 斎藤がイニシャティブをにぎり、3.9kmでは単独トップに立つ。その差はすこしづつ拡がり、5kmでは2位集団との差は15秒、後ろは太田がひっぱるかたちとなった。斎藤は最後はへばったもののトップでタスキ渡し、日本体育大をトップに押し上げた。
 2位は大東文化大、3位は立命館大で9秒差、4位は兵庫大で10秒差、5位は全日本大学選抜で39秒差、6位は大阪学院大で41秒差、7位は順天堂大で41秒差、8位は関西大で59秒差、なお名城大はいぜん13位、城西大は18位に甘んじていた。区間賞は日本体育大の齋藤みうで13:46秒だった。

第3区(3.3km)
 平坦な短いコースのこの区間、トップに立った日本体育大の斎藤一乃が逃げるが後ろから3位発進の立命館大の森安桃風が500mで早くも大東文化大の川瀬真由をかわして2位に浮上、斎藤を追い始める。その差は少しづつ詰まりはじめるが、詰まるようで詰まらない。斎藤は粘りに粘って追わせない。あれよあれよ……と斎藤は逃げ切ってしまった。
 2位は立命館大で3秒差、3位は大東文化大で5秒差、4位は兵庫大で43秒差、5位は順天堂大で46秒差、6位は大阪学院大で55秒差、7位は全日本大学選抜で58秒差、8位は筑波大で1分19秒差とつづいた。城西大は1分32秒差の13位、名城大は1分41秒差の14位とトップとはタイム差がひろがってゆく。
 区間賞は立命大の森安桃風で10:14だった。

第4区(4.4km)
 3区を終わったところで、名城大はトップグループからむしろ離されかげんにあり、この時点で優勝争いは立命館大、大東文化大、そして大健闘の日本体育大にしぼられたようであった。
 トップをゆく日本体育大の山崎りさ、だが700mで立命館大の山本釉未、大東文化大の蔦野萌々香が追いついてトップ集団となる。
 優勝を争う3チームがダンゴ状態となったが、2,6kmの上り坂で山本がスパート、山崎がくらいつくが、蔦野はここでおかれてゆく。山本、山崎のマッチアップとなり、1年生と4年生の壮絶なつばぜり合いになる、4年生の山崎がなんどかゆさぶりをかけるのだが、山本には通じない。二人の競り合いのとばっちりをうけて3.5kmで蔦野は50m以上の差をつけられてしまった。5区のワンジルにタスキが渡るときに、できるだけ差を少なくしておくたいという底意はあっただろうが、思うにまかせずその差はひろがってゆく。
 二人のマッチアップは4kmで山本が渾身のスパート、そのとき山崎にはもう余力がなかった。
 4区を終わってトップは立命館大、2位は7秒遅れで日本体育大、3位は36秒遅れで大東文化大、4位は1分29秒遅れで大阪学院大、5位は1分43秒遅れで筑波大、6位は1分43秒遅れで城西大、7位は1分45秒遅れで東北福祉大、8位は1分45秒遅れで順天堂大とつづいた。区間賞は立命館大の山本釉未で13:54(区間新)だった。

第5区(10.5km)
 連続区間賞で勢いにのる立命館大、だが後ろから大東文化大のワンジルが追ってくる。36秒差というのは微妙な差であった。大東にしてみればトップに立つことはもちろん、ここで少なくとも1分以上の差をつけておきたいところ。
 トップを行くのは立命館大の土屋舞琴、安定したピッチでトップを行くも2位発進の日本体育大の尾方唯莉がひたひたと追ってくる。その後ろから大東文化大のワンジルがハイペースでどんどんせまってくる。
 さらにはるか後方では拓殖大の不破聖衣来がハイペースで突っ込み、ごぼう抜きで3km手前では5位までやってくる。
 トップ争いも風雲急をつげてきた。
 3.5kmでワンジルは尾方をとらえて2位に浮上、さらに勢いそのまま3,7kmで、とうとう土屋をとらえてトップに立ってしまう。
 ワンジルはどんどん前に行き、土屋は尾方に追われ、4.6kmでは2位集団となる。尾方と土屋は2位集団をなし、たがいに競り合いながらワンジルを追い始める。ワンジルと2位集団との差は思いのほかひらかない。6kmではわずか11秒……。
 ワンジルは前半を突っ込みすぎたのか、トップに立ってから空転したらしく、それほど伸びなかった。土屋と尾方はぴたと肩を並べて並走、最後まで競り合いがつづいた。
 かくしてトップは大東文化大、2位は26秒差で日本体育大、3位は31秒差で立命館大、4位は不破聖衣来の快走で拓殖大がきた。その差は1分34秒、5位は順天堂大で2分12秒差、6位は大阪学院大で2分14秒差、7位は名城大で2分35秒差、8位は城西大で2分47秒差だった。区間賞は大東大のサラ・ワンジルで33:45だった。
 ワンジルのトップ通過は大東文化大陣営にすれば予定通りだったろうが、立命館との差が31秒というのは、果たしてどうだったのだろうか。、

第6区(6.0km)
 山登りをひかえた平坦なコース、
 トップをゆくのは大東文化大の四元桃奈であった。
 3位発進の立命館大の福永楓花、1km手前で日本体育大の嶋田桃子をとらえて並走にもちこみ、四元を追い始める。四元との差はじりじりと詰まり、3.5kmでは追う二人が四元をとらえて逆転。福永が先頭にたち、嶋田がくらいつく展開になる。あおりをくった四元はじりじりと引き離されていった。
 福永と嶋田のあらそいはラストまで持ち越され、のこり600mで福永がスパートして、嶋田を振り切った。
 立命館大がまたしてもトップに立ち、2位は6秒差で日本体育大、3位は大東文化大で49秒差、4位は拓殖大で2分06秒差、5位は大阪学院大で2分36秒差、6位は順天堂大で2分48秒差、7位は名城大で3分18秒差、8位は城西大で3分43秒差とつづいた。区間賞は立命館大の福永楓花で19分12秒は区間新であった。


第7区(8.3km)
 最終区は最大の難関区、たすきを受けた3km過ぎから厳しい上り坂、その高低差は4.6kmで169m。他に類を見ない過酷な区間で、大逆転劇もありうる。
 トップに立った立命館大は中地こころ、安定したゆるぎないピッチ走法で先頭をひた走る。2位の日本体育大は飯田和代とは格がちがう。その差はみるみるひろがっていった。大東大の平尾暁絵との差は250mにもなってしまう。
 中地は自信に満ちた走りで、どんどん後続をひきはなす。4.5kmでは飯田との差は50秒、平尾との差は1分20秒となった。後ろは拓殖大、大阪学院大、順天堂大、名城大、城西大とつづいていた。
 中地は上り坂が急になっても安定していた。ピッチ走法だから容易にくずれることがない。後ろでは大東文化大が6.2kmで日本体育大をとらえて2位に浮上、城西大の石川苺が2つ順位をあげてきた。
 中路は後続を大きく引き離して競技場に帰ってきた。悠然とグランドを周回し、キャプテンの村松灯ほかメンバーの大声援を受けて、そのまま復活優勝のゴールに飛び込んでいった。大会新記録で後続を2分以上もひきはなした。昨年までとはまるで別人の中地がそこにいた、区間賞は立命館大のその中地こころで29:00だった。
 かくして優勝は立命大、以下は大東文化大、日本体育大、拓殖大、順天堂大、城西大、大阪学院大、名城大とつづいた。

 立命館大は7年ぶり6度目の制覇、大会新というオマケまでついた。終わってみれば後続を2分以上もちぎった圧勝だが、道中はそれほど楽なレースではなかった。メンバー全員が強い思いをつないでもぎとった勝利というべきだろう。
 区間賞は4つ(うち区間新が二つ)、区間3位が二つ、区間6位がひとつ……。前半からトップをねらえる位置をキープ、後半に圧倒的な強さを発揮した。前半はエースクラスが好位置をキープ、繋ぎの区間で1年生二人が区間賞、最後は4年生の二人が区間賞でしめくくった。
 先の全日本ではメンバーにすら入れなかった福永楓花が区間新でトップに躍り出た。初出場の1年生も区間賞を獲る。層の厚さというものがモノをいったといえそうである。
 大東文化大は今回もまた2位におわった。シルバーコレクターというあまりうれしくないポジションから抜け出すことが出来なかった。だが前半から好位置につけ、予定通りに5区のサラ・ワンジルでトップを奪った。それで勝てなかったのならば、いたしかたがなかろう。
 3位には日本体育大学がやってきた。全日本9位からみごとに復活を果たした。もともと地力のあるチームだから、驚くにはあたらない。中盤までレースを支配していたのは、この日本体育大だった。
 4位には拓殖大がやってきた。不破聖衣来が区間2位と、6人抜きの快走で一気に順位を押し上げた。彼女はまだまだ復活途上だが、女子長距離のスーパーエースである。今後を期待したい。
 5位の順天堂大も大健闘というべきだろう。前半から10位以内につけて、後半も粘りぬいた。城西大や名城大を上回ったのはみごと。
 意外だったのは名城大である。今シーズンはコンディションがととのわなかったのだろうが、なんと入賞圏内の8位ぎりぎりというのは、どういうことなのか。前回は1区・柳楽、2区・米澤でトップを突っ走ったのだが、今回は同じ布陣で、13位と大きく遅れをとった。あまりにも崩れかたがひどすぎる。6連覇をなしとげた常勝チームが、ここまで崩れるとは……。驚嘆あるのみである。チーム内に何かがあったのだろう。指導体制もふくめて刷新することが急務ではないか。

 来シーズンは復活した立命館大中心にまわってゆくのだろう。今回の中心をなした3人の4年生がぬけても選手層も分厚そうなので、ゆるぎそうにはない。大東文化大、日本体育大学、城西大などが追う展開になるだろう。さらに名城大がどのように建て直してくるかもみまもりたい。

◇ 日時 2024年 12月30日(月) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)くもり 気温:08.6℃ 湿度:60% 風:北1.0m
◇立命館大学(太田咲雪、村松灯、森安桃風、山本釉未、土屋舞琴、福永楓花、中地こころ)
公式サイト
フジテレビ
結果詳細