早稲田大学が16年ぶり制覇
新戦力の1年生2人が快走!
駅伝シーズンは毎年、出雲から幕あける
出雲全日本大学選抜駅伝は学生3駅伝の緒戦、むろんチャンピオンシップの大会だが、主力をなす関東の大学は、本大会にそれほど重きをおいていない。目標ははるか先にあるからである。
事実、出雲で勝とうが、伊勢路の全日本勝とうが、足もとの自校関係者はもとより、ひろく大学駅伝の世界でも、それほど評価されることはない。箱根で勝ってはじめて高い評価をうけるのである。だから出雲は箱根に向かう一プロセスであり、今シーズンの戦力を試す一レースというわけなのである。とくに箱根の雄というべき青山学院大や駒澤大などは、まさにそんなもくろみで本レースに臨んできていたのだろうか。今回のレースぶりをみると、そんなふうに裏読みしたくもなる。
勝負にそれほどこだわらないといっても、負けるより勝つほうが良いに決まっている。 今回、真正面から出雲を勝ちに来たチームは早稲田大、中央大、それに出雲3連覇をねらう國學院大の3大学だろう。事実、いずれも戦力充実が顕著で、周囲の下馬評でも高い評価をうけていた。
勝ちに来た3大学は最後まで、きわどく優勝争いに絡み、箱根の調整レースととらえる2大学は凡走に終わり、はっきりと明暗をわける結果になった。
それにしても近年の駅伝は世智辛くなった。
科学的なトレーニングが普及して、主力をなすチームの実力差はほとんどないにひとしい。5000m=13分台、10000m=28分台なんてあたりまえ、10000m=27分台もめずらしくはなくなった。だから大会当日の選手のコンディションやちょとした勝負のアヤで順位も大きく変動する。
思いがけなく一敗地にまみれた青山学院大の原監督は「駅伝力がなかった」と言い放った。「速さはあるが、強さがなかった。駅伝の負の連鎖が始まって、駅伝力を表現できなかった」……と。
駅伝力とは何なのか。選手個人の走力だけでなく、個々のランナーがレースの展開をよく見きわめて、チームにとってベストの走りをする。要するにそういう総合的なマネージメント能力ということになる。
進化し続ける駅伝レース、いままさにチームとしての、個々のランナー自身の「駅伝力」が問われる時代が到来したということなのだろう。そんなインパクトを強烈に印象づけた大会だった。
今大会から暑さ対策でスタート時間が約4時間繰り上げられれ、午前9時10分からになった。総距離、区間距離が短く、スピード駅伝といわれてきた本大会はさらにスピードアップ、優勝チームは大会記録を2分も更新、7位までが大会新という好記録ラッシュとなった。3区、4区、5区で区間新記録も続出した。
■第1区(8.0km)
スピードランナーがそろった第1区、曇天で気温20.7度、風もそれほどない。最高のコンデションで幕あけた。
スタート直後から中央大の藤田大智が先頭にとびだして、早くも集団は縦長になる。藤田の後ろには創価大の菅野元太(1年)と駒大の鈴木大翔(1年)がつけた。最初の1kmは2:36とこれは速い。
1.5kmになると集団は2つに分かれ、藤田が引っ張る第1集団には創価大、駒大、城西大、青学大、国学院大、早大ら13校がしっかりついている。それぞれハイペースに対応していて、藤田はここでぶっちぎりたかったのだろうが、後続ははなれない。
3km通過は8:22と区間新ペースである。
5km手前で藤田にかわって、第一工科大のC.S.プラガットと帝京大の松尾航希が集団の前に出てくる。さらに5.8kmになると順天堂大の小林侑世がスパート気味にトップに立った。後続では北大の大野憲尚がふらつきはじめ、大ブレーキ……。
6.6kmになって藤田がひっぱっていた集団が小林に追いつき、再び大集団となる。かくしてトップ集団は中央大、創価大、順天堂大、日大、城西大、青山学院大、帝京大、駒澤大……。アイビーリーグ選抜と早大がこの集団からこぼれてゆく。
6.9kmになって藤田がスパート、反応したのは青学の石川浩輝で、藤田にピタとつけ、創価大の菅野元太、駒澤大の鈴木大翔もついてくる。
7.3kmでは創価大の菅野元太が抜け出し、藤田、石川、鈴木がつづく形勢になる。はげしいトップ争いのすえに残り300の7.7kmで駒澤大の鈴木が抜け出してトップ通過、ルーキーの区間賞デビューである。
1区を終わって、トップは駒澤大、6秒遅れで2位は青山学院大、9秒遅れで3位は中央大、10秒遅れで4位は國學院大、12秒遅れで5位は日本大、13秒遅れで6位は順天堂大、16秒遅れで7位に早稲田大、16秒遅れで8位は創価大、19秒遅れで9位は帝京大、23秒遅れで10位はIVY選抜とつづいた。主力はそれぞれ好位置につけた。区間賞は鈴木大翔(駒澤大)で22分42秒である。
■第2区(5.8km)■
最短距離の2区はスピード勝負である。
駒澤大の上岡煌がトップをゆき、青山学院大の鳥井健太が追ってゆく、後続は國學院大の鼻野木悠翔らが集団を形成している。
1.9kmでは3位集団が2位の鳥井を吸収、さらに1位の上岡に追いつき、駒澤大、青学、中央大、順天堂大、國學院大、早稲田、創価大7人の先頭集団になる。
2.5kmで順天堂大の吉岡大翔が前に出る。2~3秒のリードをとったが、4.4kmで鳥井が率いる集団に吸収されてしまう。
5km付近で創価大がスパートして前に出るが、残り800メートル付近で中大の岡田開成(3年)が出る。これにくらいついたのが早稲田の本田桜二郎、残り650メートル付近でトップに立つ。1年生デビューの本田はそのまま逃げ切った。
かくしてトップは早稲田大、2秒差の2位に中央大、同タイムで3位が駒澤大、同タイムで4位に順天堂大、3秒差の5位に創価大、5秒差の6位に国学院大。16秒差の7位がIVY選抜、18秒差の8位に青山学院大、26秒差の9位に日本大学、46秒差の10位に帝京大とつづいた。区間賞は早稲田大の本田桜二郎で15分42秒だった。
早稲田が2区でトップに立って流れをつかんだのとは裏腹に、青山学院大は僅差ながら8位まで順位を落として、ここでリズムにのりそこなった。
■第3区(8.5km)■
この区間は2番目に距離が長く、準エース区間である。この区間を終わったところでのポジションが勝負を分けるという重要な区間である。
早稲田大の鈴木琉胤、中央大の三宅悠斗、駒澤大の植阪嶺児、順天堂大の井上朋哉がトップ集団を形成。その後ろから國學院大の辻原、創価大のS.ムチーニが追ってくるという展開……。1km=2:47秒の入り、2kmすぎで駒大・植阪がこぼれていった。トップ集団は早稲田、中央大、順天堂大、創価大の4チームとなる。後ろからは日本大学のS.キップケメイが急追、2.7kmで駒澤をとらえると、3.5kmではトップ集団に追いつき、8人抜きで一気にトップに立ってしまう。
4.5kmでは首位の日大と2位集団の順天堂大、國學院大、早稲田大、中央大は7秒差。創価大は13秒差の6位、駒大は22秒差の7位。青学大は遅れて59秒差。
6kmすぎでは國學院大の辻原が2位集団からこぼれる。日大のキップケメイが区間新ペースで快走し、後続との差をひろげてゆく。
7kmをすぎると早大の鈴木琉胤がスパートして2位集団が引っ張り、中央大の三宅悠斗がつく。順天堂大も2位集団から離されてゆく。
残り700mで2位の早稲田の鈴木は中央大の三宅を振り切って単独2位、はるか後ろではた早大が中大を突き放す。残り1キロを切ると城西大のアロンが青山学院大の飯田翔太をかわして10位までやってきた。。
かくして3区を終わって、日大が首位。早稲田大が9秒差の2位、中央が16秒差の3位、順天堂大が28秒差の4位、創価大が30秒差の5位。國學院大が39秒差の6位、IVY選抜が44秒差の7位、駒澤大が同タイムの8位。青山学院大は中継所の前で城西大を抜き返して10位にすべりこんだ。区間賞は日本大学のS.キップケメイで22分56秒は区間新記録、従来の記録を40秒更新した。区間2位の楠岡由浩(帝京大)も22分39秒、区間3位の早稲田大の鈴木琉胤も22分31秒で区間新である。
■第4区(06.2km)■
3区でトップに立った日本大のこの区間は1年生の首藤海翔、同じく1年生の早稲田大の新妻遼己が猛然と追ってゆく。みるみるその差は詰まって、1kmではとうとう背後に食らいつき、並ぶまのなく交わしてトップに立つと、その差をじりじりとひろげてゆく。後ろからは中央大の濱口大和が追ってくるという展開……
早稲田、日大、中央大……
ひさしぶりに箱根伝統校がそろいぶみでトップ争いを演じている。早稲田大、中央大の復活が昨今の箱根を盛り上げている。日大もなんとか踏んばってほしいものである。
4位争いは順天堂大と創価大が競り合い、後ろから國學院大の野中恒亨が追ってきて、3.8kmで4位集団に追いついた。
新妻遼己はその後も快調でトップを独走、日大との差は5km過ぎで100mになってしまった。5.5kmをすぎると、3位をゆく中央大の濵口大和の4位集団から抜け出した國學院大の野中恒亨が接近してくる。後ろでは青山学院大がリズムに乗れなくて11位まで順位を落とした。
早稲田のルーキー・新妻遼己のトップはゆるがず、トップで中継所にとびこんだ。2位の日本大は16秒差、3位の中央大は26秒差、4位國學院大は34秒差、5位は創価大で40秒差、6位は順天堂大で45秒差、7位は駒澤大で49秒差、8位はIVY選抜で50秒差、9位は帝京大で57秒差、10位は城西大で1分53秒差、青山学院大はとうとう10位からも陥落してしまった。
区間賞は早稲田の新妻遼己で17分10秒で区間新記録、さらに区間2位の國學院大・野中恒亨の17分14秒も区間新である。
二人の1年生ルーキーの快走で古豪3強対決を制した早稲田大は、この区間で久しぶりの制覇への道筋をきりひらいた。好リズムにのって、あとは実績のある上級生にゆだねるという絶好の展開になった。
■第5区(06.4km)■
トップをゆく早稲田大の山口竣平は1kmの入りが2:35、1~2kmが2:45……、ゆうゆうとトップをゆく。後ろから追ってくるのは日本大学の長澤辰朗、さらに後ろから中央大学の柴田大地が追ってきて、2.1kmでは日大、中央大が並走状態になる。
そんな2位争いを尻目に山口は悠々トップをゆく。2位争いは熾烈をきわめ、4,6kmになって日大の長澤が中央の柴田をふりきった。
はるかうしろではIVY選抜のDerek Amiconが快走、5kmすぎでは創価大の山口翔輝に接近、5km手前では5位まで浮上してきた。アイビーリーグ選抜は大健闘、終始上位にふんばっている。
早稲田の山口竣平は危なげない走りでトップをまもり、アンカーの工藤慎作にタスキをゆだねた。
2位は日大で23秒差、3位は中大で32秒差、4位は國學院大で38秒差、5位はIVY選抜で51秒差、6位は創価大で54秒差、7位は駒澤大で1分9秒差、8位は帝京大で1分18秒差、9位は順天堂大で1分18秒差、10位は城西大で2分10秒差と続いた。
区間賞は早稲田の山口竣平で17分35秒、堂々の区間新記録である。ちなみに区間2位のIVY選抜・Derek Amiconの17分36秒、区間3位の日大・長澤辰朗の17分42秒も区間新であった。
■第6区(10.2km)■
トップでタスキをもらった工藤慎作、23秒差のリードをにぎって、1kmは2:47と安定した走りでゆうゆうトップをゆく。
後ろでは2位以下の順位あらそいが熾烈になる。
1.8kmになると國學院大の髙石樹が中央大の柴田大地をとらえて、さらに2位の日本大にも迫る勢いをみせる。
2.4km地点で首位の早稲田大と2位の國學院大は25秒差、3位中央大は28秒差、4位日本大は30秒差。5位創価大は51秒差、6位IVY選抜は54秒差、7位駒澤大は1分13秒差……。
3.1kmではIVY選抜が創価大をとらえて4位にやってくる。
5kmすぎになって創価大は駒澤大、帝京大、順天堂大の集団に交わされてゆく。6.2kmになると6位集団が5位の日本大を吸収して5位集団となる。
IVY選抜も快調でAcer Iversonが7kmで3位までやってくる。 、
8.3kmでは5位集団の駒澤大、帝京大、順天堂大が4位の中央大に接近、そのタイミングで順天堂大の山本悠が猛然とスパートして抜け出した。
早稲田の工藤晋作は3位以下の激しい順位争いを尻目に独走状態、そのままゴールにとびこんでいった。
「山の名探偵」という異名をもつアンカーの工藤、人気アニメ・名探偵コナンの「真実はいつも一つ」で知られる決めポーズでのフィニッシュだった。2時間5分56秒の大会新記録。区間賞はむろん工藤慎作で29分00秒だった。
優勝した早稲田大学は16年ぶりの出雲制覇である。大会記録を2分も更新するという堂々たる優勝。6区間のうち4つの区間賞、3つの区間で大会新、終わってみれば圧勝だった。大会前から優勝候補の筆頭という呼び声が高かったが、ひとりの凡走もなく、その実力をいかんなく発揮したといえる。
古豪復活というべきか。近年とみに上昇機運にある早稲田大、新戦力となるべき1年生がレースで通用することを確認、全日本、箱根へとステップアップする弾みをつけた。
優勝への道筋をつくったのは1年生の2人で、早稲田としては、新戦力を試すという意味でも、きわめて意味深い大会となった。ほかにも有力なランナーを持っており、全日本にむけて視界良好となったといっていいだろう。箱根はともかく全日本までは、この早稲田を中心に展開してゆくことになろう。
2位の國學院大は出雲3連覇はならなかった。主力4人を送り出したあとも、つねに上位をキープして、安定した力を見せつけた。距離の長くなる全日本で、早稲田を相手にどのような戦いぶりをみせるのか。興味深いものがある。
3位にはアイビーリーグ選抜がとびこんできた。下馬評でも評価が高かったが、噂にたがわぬ実力を発揮した。寄せ集めの選手でのチーム、ロードのレースで駅伝などしらない選手ばかりにもかかわらず最終3位まで押し上げてきた。個々のランナーの潜在能力は高く、そのうちに日本チームは足もとをすくわれるやもしれない。
4位にやってきた順天堂大は大健闘、中央大、駒澤大、青山学院大を上回ったのは、やはり潜在能力の高さゆえのことだろう。ダークホース的で不気味な存在というべきか。
中央大の5位は少々意外な気がする。個々のランナーの力は早稲田と匹敵、あるいはそれ以上なので、もう少し優勝にきわどく肉薄してもよかったはずである。中央はこのところつねに候補の一角にあげられているが、本戦になると力を発揮できないでいる。それはやはり原監督がいうところの「駅伝力」に問題があるせいだろう。ひとたび流れに乗れば突き抜ける力があるだけに、全日本での動向を見定めたい。
意外な結果といえば、駒澤大の7位、青山学院大の11位(関東勢10チームのうち最下位)だろう。出雲や全日本は眼中になく、ハナから箱根シフトで臨んでいるせい、といううがった見方もああるが、それにしても、首をかしげたくなる結果である。
しかし、駒澤は7位とはいえ、トツプとは2分以内の差、昨年、青学が出雲7位から箱根を制した例もあるから、まだ許容範囲だろう。全日本での巻き返しはあるとみよう。
思案にあまるのは青山学院大である。箱根3連覇中の青学……、なんと関東勢10校のうち最下位、トップから4分も離された。昨年のように絶対的なエースもいない。はたして、これで浮上できるのだろうか。その判断はひとまず措くことにする。
伊勢路の全日本で巻き返しもかなり苦しそうな感じである。原監督のお手並みをとくと拝見したい。
◇日時 2026年 10月 12日(月=祝)09時30分 スタート
◇コース:出雲大社正面鳥居前~出雲ドーム前=6区間45・1㎞
◇天候:くもり 気温20.7℃ 湿度76% 風:東2.0m
◇早稲田大学(古倉ヤナブ直希、本田桜二郎、鈴木琉胤、新妻遼己、工藤慎作)
◇結果詳細 https://www.izumo-ekiden.jp/assets/pdf/record2026.pdf
◇公式サイト https://www.izumo-ekiden.jp/
富士通 https://www.fujitv.co.jp/sports/ekiden/izumo/index.html
文化放送 https://www.joqr.co.jp/qr/program/izumo/




