駒澤大学が4大会連続16回目の制覇
    第1区から他チームに追わせず圧勝

 

 駒澤大学は、留学生をひとり入れれば、全日本実業団駅伝でも優勝できる……。
 本戦をたたかった青山学院大学の監督・原晋さんが、大会終了後に口にした放言である。どうやら、戦うまえからギブアップの態で、運営管理車のなかでは、落ち着いて弁当を食っていたとか……。
 出雲につづいて、1区からトップを奪い、あとはもう後続に影さえ踏ませない。おいでおいての圧勝だった。各区間のランナーはいずれも前半は抑えて入り、後半にスピードアップして振り切る。まさに王者のレースぶりだった。
 駒澤大の総監督・大八木弘明さんは、MVPに2区を走った佐藤圭汰をあげた。たしかに区間新記録でレースの流れを決定づけたのはこの佐藤だが、勝負を決めたのは、3区の篠原倖太郎である。区間賞は逃したが、篠原が後続を1分もちぎって、独走態勢をつくったのである。あえて総監督がMVVPにしなかったのは箱根があるからだろう。こんなもので満足してもらってはこまる……。箱根で区間賞をとって勝負を決める働きを、この篠原にもとめているとみた。おそらく篠原は勝負どころの区間をまかされうことだろう。
 かくして本レースは前半にして、駒澤大がひとりわが道をゆき、もっぱらの興味は2位争い、シード権争いにしぼられてしまったのである。

第1区(9.5km)
 駒澤大にどのように挑むか。第1区はそんな各チームの思惑が見え隠れする注目の区間であった。青学の原監督が言うように、1区で駒澤にゆかせてしまえば、あとは「行け行けドンドン」になってしまう。ゆえに國學院大をのぞいて、多くのチームが前半重視のオーダーでのぞんできた。
 レースは中央大の吉居駿恭が先頭集団引っ張るかたちで進んだ。むろん吉井の後には青山学院大の若林宏樹、駒澤大の赤津勇進もつけている。1km=2:45とハイペースである。3km通過は8:35、しかしこのあたりからペースは落ち着いてくる。
 駒澤大にケンカを売ったのは青山学院大、4.3kmの登り坂にさしかかったところで、若林宏樹がいかにも坂道巧者らしく集団からするすると飛び出した。みるみるその差はひらいて独り旅となる。青山学院大の原監督は名古屋決戦がポイントと言っていたが、若林のしかけは予定の行動だったのだろう。
 5km通過は14:22、と区間新ペースである。6km、7kmをすぎても12~15秒の差は詰まらない。第2集団がようやく腰を上げて、若林を追う始めたのは8kmをすぎてからである。吉居のほか、駒澤大の赤津勇進、早稲田大の間瀬田純平などが追い始める、8.5kmあたりから若林の走りはさすがに苦しくなり、その差は詰まりはじめる。間瀬田、赤津,吉居のほか、創価大の織橋巧、大東文化大の佐竹勇樹らもやってくる。
 9kmをすぎて間瀬田がスパート、若林を一気にのみこんで抜き去っていった。ラストは赤津とのスプリント勝負になる。1区の競り合いを制したのは赤津で、出雲に続いてまたしても駒澤大がトップ通過を果たした。
 1区を終わってトップは駒澤大、1秒遅れで早稲田大、3位は中央大で3秒差、4位は創価大で6秒差、5位は大東文化大でで7秒差、6位は國學院大で7秒差、7位は東京国際大で8秒差、8位は青山学院大で8秒差とつづき、順天堂大は23秒遅れの13位、國學院大は27秒遅れの14位、城西大は50秒遅れの18位に甘んじた。

第2区(11.1km)
 エースが集まるこの区間、駒澤大の佐藤圭汰はぶっとばして、3km通過を8分10秒とハイペース、これに早稲田大・山口智規もついて行く。
 後ろは中央大、國學院大、東京国際大、創価大、大東文化大、青山学院大とつづき、順位争いははげしくなる。後方では東京農業大の1年生・前田和摩が3km通過8:17と快調にとばして、3人抜きで、7位にあがってくる。
 佐藤の5km通過は13:48、区間新ペースである。このあたりから山口はひきはなされてゆき、佐藤のひとりたびとなってゆく。2位の早稲田から17秒遅れて、東京国際大、青山学院大、中央大、帝京大が第2集団をなして追っていた。青山学院大の黒田朝日が快調に追っている。
 後続では7.5kmをすぎたあたりで順天堂大の三浦龍司が10位まで浮上してきた。8kmをすぎても佐藤は快調にとばしてトップを堅持、うしろは順位あらそいが激しくなり、9km手前になると青学の黒田、東京国際大のアモス・ベットが2位の早稲田をとらえた。その後ろからは東京農大の前田がやってきて、9.4kmあたりで中央大の中野翔太、帝京大の山中博生をとらえて、一気に5位までやってくる。
 駒澤大の佐藤はそのまま押し切って区間新記録、駒澤大の4連覇への足がかりをしっかり築いた。区間新といえば8位から2位まで順位をあげた青学の黒田、10位から4位まで押し上げた東京農大の前田も区間新をマークした。
 2区を終わってトップは駒澤大、2位は青山学院大で16秒差、3位は早稲田大で20秒差、4位は東京農大で30秒差、5位は中央大で34秒差、6位は東京国際大で34秒差、7位は帝京大で42秒差、8位は順天堂大で1分26秒差となり、國學院大は1分28秒遅れの10位、創価大は1分44秒遅れの11位、城西大は2分07秒遅れの13位と出遅れた。

第3区(11.9km)
 駒澤大の篠原倖太朗は落ち着いてはいった。前半は抑えて、後半ペースをあげるという作戦か。後ろでは早稲田の石塚陽士の追い上げが急で、2位の青山学院大の佐藤一世をとらえて、篠原の差をつめはじめる。
 3位争いがはげしくなり、中央大の吉居大和が4kmで青学の佐藤をとらえて、後続もやってきて激しくなる。
  駒澤・篠原の5kmの通過14:01、このあたりから石塚との差は20秒となり、少しづつひろがってゆく。
 3位争いははげしくなり、6.5kmでは東京国際大・佐藤榛紀、青山学院大・佐藤一世、東京農業大・原田洋輔、中央大・吉井大和が集団をなし、8秒遅れで帝京大・柴戸遼太が」つづくというありさまであった。
 7.5kmでは佐藤と石塚の差は36秒とひらき、駒澤の作戦がまっまとはまったの感あり、3位集団との差は55秒となっていた。
 10km手前になると3位集団から佐藤一世(4年)と東京国際大の佐藤榛紀が抜け出してきて2位の早大の石塚を追い始めた。
 後続の熾烈な争いを尻目に篠原はゆうゆうと逃げてタスキ渡し、2位には青学の佐藤が石塚とのスプリント勝負を制してとびこんだ。
 トップは駒澤大、2位は青山学院大で1分差、3位は早稲田大で1分01秒差、4位は東京国際大で1分10秒差、5位は帝京大で1分19秒差、6位は東農大で1分23秒差、7位は中央大で1分28秒差、8位は城西大で1分48秒差。区間賞は順位を5つ押し上げた城西大のヴィクター・キムタイが獲得した。

第4区(11.8km)
 1分の貯金をもらった駒澤大の赤星雄斗はゆうゆうトップをゆく。後ろは早大の工藤慎作と青学大の小原響がが並んで赤星を追ってゆく。そのうしろは帝京大、東京国際大、東農大、中大が4位集団を形成していた。
 赤星の5kmの通過は14:27秒、後ろは誰もやってこない。
 後続は8位発進の城西大の斎藤将也が猛然と追い上げてきて、7km手前では6位まで浮上、さらに前を追い始める。
 7kmすぎになると中央大の溜池一太が工藤と小原を抜いて一気に2位までやってきた。さらに7.6kmになると、斎藤が工藤を抜いて4位までやってくる。なおも斎藤の勢いはとまらず、9kmでは小原もとらえて5人抜きで3位まであがってくる。そして10kmでは溜池もh抜いて2位までやってきたのである。
 駒澤大のゆうゆうトップはゆるがず、さらに後続との差をひろげた。2位は城西大で1分22秒差、3位は中央大で1分34秒差、4位は青山学院大で1分39秒差、5位は東京農大で1分56秒差、6位は國學院大で1分57秒差、7位は東京国際大で2分06秒差、8位は早稲田大で2分11秒差となっていた。区間賞は城西大を6人抜きで2位まで押し上げた斎藤将也である。

第5区(12.4km)
 この区間にはいると気温が20℃を越えて、ランナーにとっては過酷な条件となってしまう。
 駒澤大の伊藤蒼唯はやはり前半を抑えて王者の走り。城西大の野村颯斗が追い、後方では中央大の本間颯と青山学院大の山内健登が3位争い、4.6kmで山内が野村をとらえた。後方からは14位まで順位を落としていた創価大が、吉田響の快走で順位をあげてくる。
 駒澤の伊藤は2位以下をさらに引き離して、独りわが道をゆくというありさま。追ってきたのは山内だが、もはや背中すらみえなかっただろう。
 10km地点では3位は中央大、4位は國學院大、以下、城西、東農大とつづいていたが、シード権争いは熾烈になってくる。
 かくしてトップは駒澤大学、2位は青山学院大で青山学院大で1分55秒差、3位は國學院大で2分09秒差、4位は中央大で2分16秒差、5位は城西大で2分33秒、6位は東京国際大で3分25秒差、7位は早稲田大で4分04秒差、8位は大東文化大で4分06秒差、ここまでがシード圏内。8位にわずか1秒差で9位は創価大、8位に14秒差で10位に東京農業大。7位・早稲田大から10位・東京農業大まではわずか16秒差以内という大混戦になってきた。なお区間賞は14位から9位まで順位を押し上げた創価大の吉田響が獲得した。
 なお5区終了時点で、関東勢以外では16位の大阪経済大がトップ、つづいて17位には立命館大、18位に関西大となっていた。大阪経済大は15位の国士舘大に1分25秒差。オープン参加の日本学連選抜は13位というポジションだった。

第6区(12.8km)
 この区間にはいって、さらに気温は上昇して、11月だとうのに23℃をこえ、選手の体感温度はさらに上回っていただろう。
 暑さをものともせずに大会新がかかっている駒澤の安原太陽は果敢に攻めた。後続との差はさらにひろがってゆく。
 6kmすぎで2位の青学・荒巻朋熙との差は2分04秒、3位は國學院大の嘉数純平で2分32秒差、ならぶようにして4位は中央大の吉中祐太とつづき、5位には2分54秒差で城西大の桜井優がつづいていた。後方ではワンジルの大東文化大は7位までやってきた。
 シード権争いは早稲田大と創価大が並走で、しのぎをけずっていたが、9kmすぎて早稲田大がふりきった。
 10kmすぎになっても安原の走りは衰えることなく、荒巻が必死に追うも、その差はつまらない。その後ろでは中央大の吉中と國學院の嘉数が激しく競っていた。後ろでは大東文化大ののワンジルが東京国際大の生田琉海を抜き6位浮上してきた。
 かくして6区を終わってトップの駒澤大はゆるがず、安原太陽は区間賞。2位は青山学院大で2分21秒差、3位は中央大で2分58秒差、4位は國學院大で3分04秒差、5位は城西大で4分02秒差、6位は大東文化大で4分29秒差、7位は東京国際大で4分31秒差、8位は早稲田大で5分41秒差であった。9位以下は、シード圏内に44秒差の帝京大、1分03秒差の東海大、1分09秒差の創価大、1分12秒差の東京農業大 2分36秒差の東洋大、2分57秒差の順天堂大とつづいていた。


第7区(17.6km)
 12時ごろの松阪市は気温23.3度、湿度65%と11月とは思えない暑さのなか、鈴木芽吹は田沢簾の記録更新をねらってか、果敢に攻めた。積極的な仕掛けで、なんと5km=14:01である。
 ずっと後方では創価大のスティーブン・ムチーニが追い上げて開始、3kmすぎて帝京大・日高拓夢とらえ9位に浮上してくる。
 國學院大の平林清澄もハイピッチで追い上げ、3km=8:27という入り、4kmでは前をゆく中央大の湯浅仁に追いついて並走しながら、2位の青山学院大の太田蒼生を追い始める。
 10km地点ではトップ駒澤大と2位青山諾院大との差は2分45秒、さすがの芽吹も暑さでへばってきたようす。並走する国学院大と中央大は3分25秒差。シード権争い、8位早大と9位創価大の差が36秒に縮まっていた。
 鈴木は区間記録はならなかったが、しっかり逃げ切った。2位は青山学院大で2分49秒差、3位はラストのスプリント勝負で中央大、2位の青学に8秒差に迫った。そこから1秒差で4位は国学院大、5位は大東文化大、6位は城西大とつづき7位の東京国際大と8位の早稲田大は同着、9位の創価大とはわずか4秒、最終区のシード権争いは混沌としてきた。
 なおこの区の区間賞は鈴木芽吹ではなく終始、中央大と競り合っていた國學院大の平林 清澄であった。

第8区(19.7km)
 トップをゆく駒澤大のアンカーは山川 拓馬は安定した走りでっもう後続は離れる一方になった。
 注目はもっぱら青山学院大、國學院大、中央大との2位争い、さらには東京国際大、早稲田大、創価大によるシード権争いであった。
 シード権争いで主導権をにぎったのは創価大の吉田凌だった。2.8kmで吉田は東京国際大の川内琉生とともにペースアップ、早稲田大の伊福陽太を置き去りにしていた。創価大は一気に7位まで浮上した。
 トップの山川はまったく安定した走りで独走、8kmすぎでは2位の青山学院大の田中悠登と3位グループの中央大の阿部陽樹、國學院大の伊地知賢造との差は13~15秒、そこから詰まるようで詰まってこない。
 シード権争いは8位東京国際大と9位早大の差は53秒とひろがり、早稲田大はシード落ちのピンチとなる。
 熾烈をきわめたのは2位争いである。渡会橋では青学と3位集団との差は8秒となり、もはや2位集団になるのも時間の問題かとお思いきや、その差は詰まらないのである。11kmああたりから14kmまで、3秒の差がつまらなかった。田中がもちこたえていたのである。阿部と伊地知がようやく田中に追いついてのは15kmすぎだった。そこから激しい三つ巴の2位位争いとなる。
 17.5kmで阿部がしかけるも、伊地知と田中は離れない。18.7kmでこんどは伊地知がしかけたが、田中がついてゆく。ふたりのマッチアップとなったが、ゴール前で青学の田中が競り勝った。
 駒澤の山川はそれより5分前に2度目の4連覇、16回目制覇のゴールテープを笑顔でとびこんでいた。山川は堂々の区間賞である。

 駒澤大は危なげない戦いぶりだった。2度目の4連覇、16度目の制覇、次は2年連続の学生駅伝3冠という未踏の金字塔に挑む。
 8区のうち半分の4区間で区間1位、のこりの4区もすべて3位以内で、きわめて安定しており、まったくつけ入る余地がない。前派のさえて、後半になってペースアップし、相手を突き放す。王者の駅伝をみせつけられた。分厚い戦力をもっており、箱根も駒澤の優勝はゆるがないだろう。
 駒澤1強……。
 今シーズンの学生駅伝はそんなイメージである。いまや他の大学では、とても太刀打ちできそうにない。
 2位には青山学院大がとびこんできた。前半に勝負をかけ、駒澤大に果敢に挑んできたのはこの青学だけである。その勇気ある戦いぶりを讃えておきたい。区間賞こそないが、全員が堅実に自分の役割を果たした。長い距離になれば、さらに力が出るだろうから、箱根の戦いぶりを注目したい。
 3位の國學院大も持てる力を発揮したといえる。このチームも距離が長くなれば、さらに上積みがみこめるだけに、期待したいものである。
 4位の中央大、さらに5位の城西大、6位の創価大も地力がついてきた感があり、駒澤包囲網をしいて、箱根を面白くしてほい。
 期待外れは早稲田大学か。前半は好勝負していたが、後半になって、大きくくずれたのはどういうことなのだろう。この数年、どうもちぐはぐな戦いぶりが目立つ。なんとか立て直して、箱根のシード権だけは死守してほしいものである。


◇ 日時 2023年 11月5日(日)午前8時10分スタート 
◇ コース:熱田神宮西門前(名古屋市熱田区神宮)→ 伊勢神宮内宮宇治橋前(伊勢市宇治館町) 8区間 106.8 km 
◇ 天候:晴れ  気温16.9℃ 湿度85% 風:北東:1.9m(名古屋 8:00) 
◇ 駒澤大学(赤津勇進、佐藤圭汰、篠原倖太郎、赤星雄斗、伊藤蒼唯、安原太陽、鈴木 芽吹、山川拓馬)
総合成績
公式サイト: 
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