東京が2年連続11度目の制覇達成
  宮城、福島、岩手、東北勢力が大健闘

 

 本大会は東北地方の6県と、北海道、関東地方、甲信越地方と静岡県を加えた東日本18都道県代表の選抜チームでタスキでつなぐ駅伝大会である。
 福島テレビの提唱で始まった大会で、もともとは東北・北海道地区の女子長距離選手の強化を目的として開催されたものである。
 初回は同一道県から2チームの出場できたので、7道県から11チームが参加、福島県Aチームが優勝している。
 当時すでにして都道府県対抗女子駅伝がスタート(1983年)しており、初回終了後に大会規模を関東・甲信越地方を含めた東日本全体に拡大してはという声があり、主催者の福島テレビが受け入れたため、1985年より現在の東日本女子駅伝競走大会として再スタートしたのである。
 しかし東日本の女子の強化というねらいは理解できるが、駅伝大会の増えた現在では、いくぶん中途半端になりつつある。この時期、実業団選手は2週間後に全日本があるので、主力どころの選手は出てこない。大学生も年末の選抜に出るようなチームの選手はむずかしい。中・高校生も全日本がひかえている。
 大会の意義とありかたについては、再検討を要する時期に来ていると思えるが、中学生や高校生にとっては、大学生や実業団のランナーとタスキをつなぐというめったにない機会でもある。そういう意味で意義のある大会だといえる。
 今回も予想どうりに大学生、実業団からは主力は顔を見せなかった。名城大の米澤奈々香や増渕佑香など、よく出てきたな、と思う。埼玉の山ノ内みなみ、神奈川の出水田眞紀などはエントリーされていたものの、やはり出てこなかった。
 昨年の新谷仁美(東京)のように、図抜けた存在がいないだけに、レースは混戦模様となり、観るレースとしては面白かった。

第1区(6km)
 レースの主導権争いとなる第1区はそれゆえかスローの展開ではじまった。茨木の小野真緒(拓殖大1年)が集団をひっぱる。ピタと後ろにつけたのは東京の小川陽香(立教大1年)、宮城の米澤奈々香、福島の鈴木葵(ニトリ)など……。
 1km=3:21、2km=6:40……、超スローである。たまりかねたのか3kmをすぎて宮城の米澤がぺエースアップ、これに東京の小川がついてきて、2人が集団をひっぱった。4km=13:13で通過、5kmをすぎると、米澤、小川さらに鈴木が加わって三つ巴のトップ争い、さらに新潟の橋本和叶(新潟明訓高2年)もやってくる。
 6kmでは米澤、小川、鈴木が抜け出したが、残り500mになって後ろから山梨の飯島理子(埼玉医科大グループ)がやってきて、一気に先頭に立つ。けんめいに追ってきたのは米澤でふたりのマッチアップとなる。ふたりはほとんど同時にタスキを渡したが、わずかに先んじたのは宮城の米澤だった。
 かくしてトップは宮城、差なく2位は山梨、3位には岩手の高橋優菜(いまむら)が飛び込んできて2秒差、4位は東京で2秒差、5位は長野で3秒差、6位の福島も3秒差、7位は新潟で7秒差、8位は北海道で10秒差とつづき、神奈川は9位で11秒差、千葉は16秒差の11位、埼玉は21秒差の14位と出遅れた。

第2区(4km)
 山梨のベテラン飯野摩耶(SNOW)がトップをゆくも、1km手前ではやくも福島の岩崎麻知子(拓殖大1年)がやってきて先頭を奪う。後ろからは宮城の佐藤柚優(仙台育英学園高2年)、新潟の村山愛美沙(東北福祉大1年)、東京の山﨑空(ベアーズ)もやってきて、上位争いは混沌としてくる。
 2kmをすぎたところでは、トップは福島、東京、新潟、長野が2位集団をなし、さらに後ろからは北海道、千葉がつづいている。
 残り1kmをすぎると、トップをゆく飯島に北海道の石川苺(城西大)が追いつき、後ろは長野の窪田舞(長野東高 2年)、東京の山崎、さらにはるかうしろから埼玉の山田桃愛(玉川大4年)がやってきた。
 トップ争いは激しくなったが、最後は福島の岩崎が抜け出した。埼玉の山田は猛追、のころ200mで3位までやってきた。
 2区を終わってトップは福島、2位は長野で2秒遅れ、3位は埼玉で3秒遅れ、4位は北海道で7秒遅れ、5位は東京で8秒遅れ、6位は千葉で10秒遅れ、7位は新潟で11秒遅れ、8位は神奈川で14秒遅れとなり、1区でトップの宮城は28秒遅れの12位まで順位を落とした。
 区間賞は11位から一気に3位まで順位を押し上げた埼玉の山田桃愛が獲得した。

第3区(3km)
 上位は混戦で順位争いがはげしくなってくる。
 逃げるは福島の佐藤美空(学法石川高3年)、だが後ろは北海道、埼玉、長野、東京、千葉が集団で追ってくる。
 1.8kmになって、2位集団から東京の鈴木美海(順天高 3年)が抜け出してきた。後ろは長野、千葉、新潟、さらに後ろは北海道、埼玉、神奈川がつづいていた。
 追ってきた投稿の鈴木は残り600mで福島の佐藤をとらえてしまう。そしてその差をひろげ、勢いそのまま中堅所にとびこんだ。
 3区が終わったところでトップに立ったのは東京、2位は15秒差で福島、3位は17秒差で長野、4位は21秒遅れで新潟、5位は27秒遅れで神奈川、6位は30秒遅れで千葉、7位は35秒差で北海道、8位は38秒差で栃木、宮城は39秒差の9位、埼玉は41秒差で10位だった。
 区間賞は区間新の快走で東京を5位から一気にトップにひきあげた鈴木美海であった。

第4区(3km)
 中学生指定のこの区間、トップに立った東京の一兜咲子(杉並区立大宮中3年)が、ひたすら逃げて後続を引き離しにかかった。東京が逃げて、9位発進の宮城の男乕結衣(仙台市立五城中3年)がひたすら追ってくる。9位から6位へ、後ろには千葉、栃木、北海道
をしたがて、前を追ってゆく。
 中間点をこえて、2位の福島の丹野星愛(福島市立大鳥中 3年)を宮城の男乕がけんめいに追ってくる。残り200mで男乕はとうとう丹野をとらえて2位に浮上、後続をひきはなしトップの東京を追った。
 トップは東京がまもり、2位は宮城で18秒差、3位は福島で19秒差、東北勢力が大健闘している、4位は長野で31秒差、5位は神奈川、6位は北海道、7位は栃木、8位は千葉とつづき埼玉は1分09秒遅れの11位であった。
 区間賞は7人抜きで宮城を2位まで押し上げた男乕結衣が獲得した。

第5区(5.0875km)
 トップの東京は臼井瑠花(上水高2年)、2位の宮城・細川あおい(仙台育英学園高2年)が追ってくる。宮城の後ろは福島、その後ろは神奈川、北海道、栃木、千葉、長野がひとかたまりになっている。
 宮城がじりじりと東京に迫り、後ろでは千葉の風間歩佳(中央大4年)が,3.7kmで福島をとらえて、8位から一気に3位までやってきた。後ろは福島と神奈川。その後ろでは埼玉が11位から順位をあげてきた。
 トップ争いは東京の臼井を宮城の細川が激しく追い上げて、宮城が交わしたところでタスキリレーとなった。
 かくしてトップには宮城が立ち、同タイムで2位は東京、3位は千葉で45秒差、4位は神奈川で54秒差、5位は福島で57秒差、6位は北海道で1分05秒差、7位は新潟で1分06秒差、8位は埼玉で1分12秒差、長野は1分50秒差の11位であった。
 区間賞は宮城をトップに押し上げた細川あおいであった。

第6区(4.1075km)
 トップに立った宮城のこの区間は橘山莉乃(仙台育英学園高3年)である。東京の位田明優(錦城学園高3年)と肩を並べてスタートしていったが、じりじりとその差をひろげて追わせなかった。この時点で宮城と東京が一つ抜けた存在、後続との差はひろがり、両チームのマッチレースの様相となり、9区のランナーの力関係をみすえての攻防となった。
 宮城としては少しでもその差をひろげておきたいところ、東京としてはできるだけ離されずについてゆきたい……。
 6区を終わったところでトップは宮城、2位の東京との差は17秒、3位は千葉で1分02秒差、4位は神奈川で1分08秒差、4位は神奈川で1分08秒差、5位は福島で1分16秒差、6位は北海道で1分34秒差、7位は埼玉で1分37秒差、8位は新潟で1分39秒差であった。
 区間賞は宮城の橘山莉乃であった。

第7区(4km)
 宮城の長岡みさき(仙台育英学園高2年)が快走、東京との差を引き離しにかかった。
東京の野口麻衣子駒澤大学高2年)との差は、みるみるひろがってゆく。宮城がレースの主導権をにぎりはじめた。
 宮城の長岡は東京との差を37秒までひろげて8区へ。3位は千葉で1分32秒差、以下は福島、神奈川、新潟、埼玉、北海道……とつづいていた。
 区間賞は宮城の長岡みさき、これで長野は4区間連続の区間賞で、完全にレースの主導権をにぎった。

第8区(3km)
 中学生区間である。しかしトップをゆく宮城と東京にとっては、9区に引き継ぐまで、その差がどのようになるか。この区間の攻防によって優勝のゆくえがみえてくる、という意味で重要な区間であった。
 トップをゆく宮城と東京の差はほとんど動かなかった。東京にとってはひたすら耐える区間だったというべきか。結果はわずか4秒とはいえ、その差は詰まった。東京にとっては追撃の狼煙となった。
 かくして宮城はトップをまもったが、2位東京との差は28秒、3位は千葉で1分23秒差、4位は福島で1分36秒差、以下、神奈川、新潟、埼玉、岩手、長野とつづいていた。なお区間賞は静岡の遠藤蒼依(日本大学三島中2年)である。

第9区(10km)
 かくして勝負はアンカー決着にもちこまれた。
 トップをゆく宮城は門脇奈穂(拓殖大3年)、追う東京は増渕祐香(名城大4年)という大学生対決である。その差は28秒ならば逆転可能、増渕にとってみれば射程距離である。
 門脇を増渕がゆっくりと思ってゆく。1.5kmですでに5秒つまって、流れは追う側に傾いてゆく。
 後ろでは千葉の佐藤奈々(スターツ)に福島の石井寿美(シスメックス)が追いついて、マッチアップとなる。
 増渕は門脇との差をみるみるつめて、4kmでは後ろについて、並ぶ間もなく一気に置き去りにしていった。増渕は表情も変えることなく、あとはごゴールまで独り旅……。
 興味は3位争いだが、4km地点で福島の石井がスパート、千葉の佐藤を振り切った。
 8kmすぎになると2位争いが熾烈になる。増渕に置いて行かれた門脇に福島の石井が迫ってきた。そして9kmでは追いついてしまったのである。
 トップの増渕は後続を1分以上もちぎってゆうゆう2連覇のゴールへとびこんでいった。2位争いはトラック勝負までもつれ、最後は門脇が渾身のスパートで意地をみせた。
 区間賞は優勝を決めた増渕祐香と福島の石井寿美である。彼女なら、これぐらいの走りをして当然というべきだろう。

 優勝した東京は安定していた。区間賞は2つだが、各ランナーとも安定していた。長い距離で決め手のある増渕を生かせる展開になったので、もくろみどおりの戦いだったというべきだろう。
 2位に来た宮城は、終盤までレースを支配していた。実業団ランナーをもたず、中・高校生、大学生のチームである。区間賞5つは優勝した東京を上回っている。2003年の19回大会以来の2位である。もうひとり決め手のあるランナーがおれば、東京と最後まではげしく競りあっていただろう。
 3位には地元の福島が千葉とのマッチアップを制してとびこんできた。2006年以来の表彰台である。
 ほかで目立ったところでは、6位の岩手は初入賞、新潟が8位と久しぶりの入賞を果たした。
 2位の宮城、3位の福島と東北勢力が2チームも表彰台と大健闘、さらに岩手が6位に入賞するなど、奇しくも東北勢の健闘が顕著な大会となり、本大会の開催趣旨にかなったものとなった。


◇ 日時 2023年 11月 12日(日)12時03分スタート
◇ コース:誠電社WINDYスタジアム~国道4号~国道115号~フルーツライン折返し日本陸連公認「FTVふくしま」マラソンコース 9区間 42.195km
◇ 天候:出発時 くもり 気温08.60℃ 湿度65% 風:北東0.5m(12:00)
◇ 東京(小川陽香、山崎空、鈴木美海、一兜咲子、白井瑠衣、位田美優、野口麻衣子、根本心海、増渕祐香
公式サイト: 
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