「士農工商」の士とは、戦争する人(兵士)という意味ではない | えいいちのはなしANNEX

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「士農工商」って何か、という話。
これは身分制度を表す用語ではありません。もともと漢語(古代中国語)で、天下万民、くらいの意味の四字熟語です。
儒教の価値観でだいたい偉いとされる順番で並んでいる、というだけです。四つの身分に峻別されていたわけでもないし、この四つに当てはまらない職業だってあるわけですけど、そんなに細かいことはまあいいんで、つまりすべての国民、くらいの意味です。
「士」というのは科挙に合格した高級役人のことで、まあ平たく言えば支配階級の人間です。「士」は「仕」と同じで、国家に仕える者、つまり皇帝の家臣が、士です。
これが日本に入ってくると、「武をもってさぶらう(仕える)者」つまり「侍(さむらい)」を、武士と呼ぶようになります。
単に武器を持って武装しているやつは武士とはいいません。偉い人から資格を与えられた者、平たくいうと朝廷から官位を貰っているような、身分を与えられた者だけが、武士です。
武士の世になると、大名の正規の家臣が武士と呼ばれるようになります。それに対して、戦争のときにだけ臨時に集められる、または金目当てに勝手に集まってくるやつは「足軽」と呼ばれます。こいつらは武士の身分をもっていません。つまり正社員ではなくハケン、みたいなものです。
江戸時代でいうと、大名(藩)の家来を「藩士」と呼びますが、藩で働いていても正規メンバーに入らない者は「足軽」です、農民と同じ身分です。
「士」というのは職業ではなく身分です。戦争する兵のことを武士というのではありません。

現代でも、「弁護士」「税理士」などで分かるように、「~士」というのは国家試験を通って資格を持っている者です。