こころ
夏目漱石の『こころ』の感想文を書きます。
この小説では、「日本の近代化と日本人」について書かれていると感じました。
私は以前、なんとなくこの小説を理解する鍵は、茂木大将が明治天皇の崩御に際し、殉職されたという出来事にあると考えておりました。
この小説はかなり前に読んだ作品ではありますが、それを今、書いてみるのは、このあたりの考えが少しだけつながったので忘れないように、また、自分の考えを改めるためです。
私は最近、夏目漱石の『私の個人主義』、『それから』を読んでみて、漱石の考える「近代化と日本人」について少し私なりに思うところがありました。
『それから』では、主人公の大介が、現代の日本人は己が生き延びるために不義なことも行う。と説いていたように、近代化により、日本人は己の実利のために、それにより人との絆は希薄になった。そして日本人が昔から持っていた心を失ってしまった。私は『こころ』でも同じことが言えるのではないかと考えました。
主要な登場人物は4人ほどいると記憶しておりますが、核となるのは先生とKであると思います。
先生は近代日本人を、Kは近代化前の日本人の心を表わしていると考えました。
Kは己の信念に従い、生きる人として描かれていたと思います。養父からの進学の提案を蹴って、学費の援助を切られても自分の道を進むというある意味で愚直な人間でした。彼には利ではなく自己の正義をとるという強さがあり、彼のもっているその強さに先生も得体の知れぬものを感じていました。
対して先生は、Kのそのような生き方が理解できない、どちらかと言えば己が生きるために損得を考えて生きるという人という書かれ方をしていると感じました。
先生は友人を裏切って姑息な手を使おうとする自分と、お嬢さんを手に入れたいという自分との間で葛藤します。最後は己の利己心が勝ったわけですが、この先生の行動がKを自殺に追い込んでしまいます。
己の利己心からの行動をとり、K(日本人の心)を殺してしまう。
日本人の心を捨てて利己的な行動に出たことは、先生が完全な近代日本人になったことを表わしていると考えます。
さらにその後、先生はお嬢さんと結婚することが出来ますが、お嬢さんにはKの自殺の理由を伏せて暮らしています。
先生はKという友人を失い、妻に自らの内面を打ち明けることも出来ないといった孤独にさいなまれているというわけです。
そして最後に明治天皇という日本人古来からの心の象徴を失った茂木大将と同じく、先生も自殺の道を選択してしまいます。
文明が進むにつれて、人は社会の歯車として生活することを強いられ、個人としての生き方、その国の文化が徐々に薄まっていくというのは色々言われているのではないかと思います。
文明の飛躍的進歩を遂げる現代こそ、何が失われてしまったのかということを自覚することは大切なことなのかもしれないと思いました。
THE GOAL
エリヤフ=ゴールドラット先生の『THE GOAL』の読書感想文を書きます。
あらすじ
主人公アレックスはある機械工場の所長。アレックスの工場では最新の機械を導入し、効率も最大限に高められ、生産コストも抑えられている。しかし、それに反し工場の業績は悪化する一方だった。
そんなある日、本社から工場閉鎖を告げられる。タイムリミットは3カ月、この期間までに工場の業績を回復させることが出来なければ、アレックスも、工場で働く600人もの従業員も職を失ってしまう。
失意の中、自室で考え込むアレックスは、空港で大学時代の恩師、物理学者であるジョナに偶然出会ったことを思い出す。その際、アレックスはジョナに
・企業の真の目的とは何か?
という質問をされる。
アレックスはもう一度ジョナに出会いアドバイスをもらおうとするが、それは従来の工場の生産システムでは考えられない型破りなものであった。アレックスと仲間はジョナの言葉の真意を見つけ出し、試行錯誤しながら工場再生を図る。
しかし、多忙な日々を過ごし家族を犠牲にしてしまったアレックスの元から、最愛の妻は姿を消す。工場の再生、家庭の崩壊。二つの大きな問題に主人公アレックスは、どのような思考プロセスでどのような解を見出すのか。
感想
書きかけですが、
この本の日本語訳の出版はしばらくの間禁止されていました。その理由は「日本は部分最適化に関しては世界で超一級だ。もし日本にこの本に書いてあるような全体最適化の手法を与えてしまえば、それは貿易摩擦を巻き起こす。」という著者の意向からでした。
この本はかなり有名な本らしいのですが、僕がこの本を知ったのは大学3年の時の講義で、先生がこの本の紹介をしてくださったことがきっかけとなりました。
この本は、生産システムという分野ではトヨタのJITと並び有名なTOC理論(制約条件の理論)を読むだけで理解できる構成になっているようです。
生産工学の知識をほとんど持たない僕の感想では、この本に書いてあるTOCの理論とはかなり当たり前のこともあるし、確かにそうだなと納得させられるものもあります。全体を通して理論自体は案外簡単なのかなという印象を受けました。しかし、本当はもっと難しい数式で記述されるものだとは思うので、この本だけを読んで知ったかするつもりはありません。TOCの理論を実生活にも応用できたら面白いだろうなと思います。
また、この本に出てくる物理学者のジョナは、ソクラテスの問答法のような教示をアレックスに施します。一口に言うと「質問する。ヒントだけ与える。そして答えは考えさせる。」
といったものです。アレックスはすぐにソリューションを教えてくれないジョナにやきもきもしますが、後に自分で答えを出すことの重要性を認めています。ジョナの言葉はどれも従来の工場では考えられないものばかりでした。でも、だからこそ自分で考えて自力で答えを出さなければ信じられない、相手からいきなり答えを与えられてもそれは突飛なものにしか見えず、最後まで信じて履行することは出来ないでしょう。
相手に向けた意思決定の方法、つまり相手に自分の考えを伝え、それを実行させる方法を示しています。ソクラテスの、彼が他のソフィストよりも優れていると称する所以である考え「無知の知」を弟子たちに悟らせるための問答法もこのためにあったのかと思いました。
目上の人にそんなことするのは難しいですけどね。
