形質(遺伝形質)とは、生物のもっている体の形や特徴のことを指します。
遺伝学では、環境的影響の結果として後天的に獲得した形質(獲得形質)は遺伝しないというのが原則とされています。
しかし、近年の研究では、後天的に獲得した(変化した)形質の遺伝は起こりうることが分かってきています。
ソフトフードが咀嚼器官に与える影響は非常に大きく、顎骨や筋肉、そして歯列(歯並び)に形態的変化をもたらします。
このような現象は、機能の低下に伴う形態の退行性変化と考えられ、まさに獲得形質といえるでしょう。
例えば、両親の歯並びは良くても、子供の歯並びが悪くなってしまうことは日常的にはよくあることで、後天的な環境要因を見逃すことは出来ません。
マウスを使った実験では、5世代に渡りソフトフードを用いて飼育・繁殖を繰り返したところ、下顎骨の縮小が認められ、しかも世代を追うごとに下顎骨の縮小が増大したと報告しています。
ヒトに当てはめるなら、下顎骨の縮小は歯並びに重大な影響を与えます。
獲得形質は遺伝しないというのが通説ですが、環境が遺伝に影響を与える可能性が示唆されているのです。
代々伝統的な食習慣・生活習慣をもつ国で暮らしてきた、ある歯並びの美しい留学生は、日本の環境の中で子供を育て、わずか一世代にして起こった子供の歯並びの変化に驚きを隠せませんでした。
生活習慣というものは、形質を変えるほどの影響力があるものなのです。
子育て世代のみなさん、どうか良く噛む食事で、未来を担う健康な子供たちを育みましょう。