矯正治療をお考えの方はたくさんいることと思います。
矯正治療を受ける際にネックとなるのは、治療の費用と期間、そして治療期間中の見た目でしょう。
オーソドックスな矯正治療では、歯の表側からブラケットを付けて歯を動かします。
見た目が気になる場合、歯の裏側にブラケットを付けるリンガル矯正や、透明なマウスピースを使うマウスピース矯正があります。
最近は、このマウスピース矯正が流行りのようで、希望する患者さんが少なくありません。
このマウスピース矯正で治せる歯列不正は、簡単なものに限られます。
すべてのケースをマウスピース矯正で治療できるわけではありません。
マウスピース矯正は、今までワイヤー矯正治療に携わったことのない歯科医師でも、簡単に導入できるメリットがあります。
しかしながら、もしマウスピース矯正でうまく歯が並ばなかった時には、ブラケットを付けてワイヤー矯正に移行しないといけなくなることを、治療開始前に念頭に置いておかなければなりません。
マウスピース矯正は万能ではないからです。
特に、噛み合わせをきちんと合わせるには、マウスピース矯正は不向きといえるでしょう。
先日、初診でお見えになった患者様は、他院で5年間マウスピース矯正をしていましたが、色白と不具合を訴え来院されました。
まず、マウスピースを5年も入れていたら、奥歯が噛まなくなるのは必至です。
この患者様も、奥歯が全く噛まなくなってしまい、どこで噛んでよいのか分からなくなってしまいました。
そればかりか、歯肉退縮がひどく、下顎前歯部をCT撮影すると、歯根が歯槽骨から飛び出しており、保存は不可能な状態です。
せっかく費用と時間をかけて治療をしたのに、抜歯になってしまっては元も子もありません。
しかも、歯周外科手術をしたのですが、これ以上は診れないと治療を放棄されてしまったのです。
歯周パックも外さずそのままに!
初診時正面。下顎前歯部に歯周パックが見られる。
上下の歯を噛ませると、前歯部しか噛んでおらず、奥歯はまったく噛み合わない。長期にマウスピース矯正を行った弊害。
信じられません。
同じ歯科医師として恥ずかしい思いでいっぱいです。
せめて治療をお断りするなら、区切りの良いところまでは責任をもってきちんと治療をするべきです。
それが出来ないのなら、最初から治療をするべきではないのです。
最近、このようにマウスピース矯正を何年も続けている患者さんを多く見ます。
確かに治療中の見た目は良いですが、仕上がりはワイヤー矯正にはかないません。
治療は、何でもそうですが、流行りに流されることなく、あくまで予後にこだわって治療を選択すべきでしょう。
それが、あなたの歯を守ることにつながるのです。