『愛国百人一首』の選定された42首目は藤原師賢(もろたか)です。
(著者所持の『愛国百人一首』の藤原師賢の絵札)
思 ひ か ね
入 り に し 山 を
立 ち 出 で て
迷 ふ う き 世 も
た ゞ 君 の 爲
「思ひかね」とは、世の中の嘆きに堪えられなくてとのことです。
この歌は、元弘元(1331)年の後醍醐天皇の時代のものです。
歌の意(こころ)
思ってばかりいることに堪えられず、隠遁して入っていった山から、再びこの世をさまよって働くことにしたのは、わが身のためでなく、ただ一途に天皇様の御為に尽くすためです。
藤原師賢は、藤原道長の流れをくむ、分家の花山院の後継者で、後醍醐天皇に仕え、正二位大納言に昇進された人です。後醍醐天皇が鎌倉幕府打倒を目指す元弘の乱が起こる前に出家して、京都の山にこもっていましたが、乱が起こると還俗して、後醍醐天皇がおられる笠置山の行在所に立ち寄ったそうです。のちの北条氏に捕らえられ、下総国に流されてそこで亡くなりました。
この歌は、その元弘の乱を知り、還俗したときに、後醍醐天皇にお仕えするための想いを詠んだ歌です。
(著者所持の『愛国百人一首』の藤原師賢の読札・取札)
歌の解説は、『國魂 愛国百人一首の解説』著:西内雅と、愛国百人一首の12人の選定委員の一人である窪田空穂による『愛国百人一首』によって行っています。
『愛国百人一首』とは
『伊勢物語』を読む上で、和歌の理解のために読んだ本について